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龍神転生!世界の守護者は今日も気まま

シーチキンたいし

人生最大の不幸と神様



「御崎さん、コレお願いね!」

「は、はい!」

「あぁ、御崎さんこっちも」

「はいっ!」

その日も、私は仕事に忙殺されていた。

私は御崎みさき 真理亜まりあ25歳OL。就職して、2年目。人生の選択をミスしたらしい。

私の就職した会社は所謂ブラック企業と言うものだった。休みはほとんどなく、有給すらとらせてもらえない。定時内で終わるような仕事内容ではなく、いつも終電ギリギリまで残業。

身体も心もすり減るばかりだ。

「……今日も終わった…、ヤバイ!終電!」

私は終電に間に合わせるため急いで会社を出た。

だけど、それがこれから起こる人生最大の不幸の始まりとは思わなかった。





「あ、れ……?」

「御崎?!目が覚めたんですね!」

「き、奇跡だ!先生!御崎さんが目を覚ましました!」

目が覚めたら知らない天井だった。

白い天井。いったい私は……?

「御崎さん、わかる?ここは病院だよ」

「びょ……いん?」

そこで私は最後の記憶を思い出した。

終電ギリギリになってしまい、急いで駅に向かって走っていたときだった。信号で足止めされた私は、時計と睨み合いながら「早く青になれ!」と焦っていた。

そんなとき、後ろから誰かに押され、気づいたら道路に投げ出されていた。どうやら酔っぱらいにぶつかられたらしい。

そして、そこに運悪くトラックがやって来て──そっか、私、轢かれたんだ。

「とても、ひどい状態だった。息をしているのが不思議なほどに。手術も成功したけど、目を覚ますかどうかは五分五分だった。本当に奇跡だ」

「し、ごとは?」

「仕事?無理だよ……君のその身体じゃ。目が覚めたばかりで酷なことを言うけど…、君はかなり人体を損傷してね。右足は切断。左足も健が切れて二度と動かない。右手は辛うじて無事だったけど、左手も神経が傷ついて咄嗟の動きは出来ないし、物を握ることも難しい。左目はトラックの破片が突き刺さって失明してる。日常生活に戻るのは……正直厳しいよ」


何を言われたのか、全く理解できなかった。でも自分の身体に意識を向ければ、容易に理解できた。いや、理解せざるえなかった。

今まで当たり前にあった右足がない。左足が動かない。右手は動くけど、左手はまるで自分の身体じゃないみたいに動かしにくい。そして、片目が見えなくて距離感の掴めない視界。

私は、今まで当たり前にあったもの全てを無くしたのだと理解せざるえなかった。

「ふっ……っう、ぅぅ、ぁ……っ」

涙が止まらなかった。私は、何故こんな風になってしまったの?私の身体を返して!

そういって罵ってしまいそうになる、誰かを呪わずにはいられなくなってしまう。

わずかばかりの抵抗のように、右目からは涙が止めどなく溢れてきた。しかし、もう二度と、左目から涙が流れることはない。


それから2ヶ月くらいは大変だった。

私のことはテレビで大々的に取り上げられるほどの大事件となったからだ。

どのテレビでも、奇跡の生還!などともてはやしたり、事故の原因のひとつに会社で超過業務が心身に影響を出したのでは?と会社をバッシングするものだったり。

私の心とは裏腹に、メディアは面白おかしく取り上げる。

うんざりするほど「取材したい」と病院に押し掛ける人たちもいる。しまいには、病室まで無断で入ってくる者までいた。

放っておいてほしいのに、周りがそれを許さない。


私は、ただ、病室のベッドで絶望に暮れるだけだった。

もう二度と動くことの無い左足と、もう二度と戻らない右足。ベッドから起き上がることもままならない。

私の日常当たり前が、全てもう帰ってこない。


もう何年ここにいるだろう?動かない身体に絶望し続ける日々をただ繰り返す。

周りも興味を失ったように、ここへ訪れることが無くなった。ようやく静かになったな。

『やぁ、はじめまして』

そのとき、私は初めての目の前の人物を認識した。その人は誰だろう?そもそも人?って疑うレベルの容姿だ。

この病室は、先生の計らいでずっと面会謝絶。誰も入ってこないはずなのに。

よく見れば景色が止まっている。車も木から落ちる葉っぱも、まるで浮いているかのように止まっている。

「あなたは…死神?私を迎えに来てくれたの?」

『んー……半分正解で半分ハズレ。僕は死神なんかじゃないよ』

「じゃあ、悪魔?」

『どうしても悪い方に持っていくんだね。僕は神様。君に提案があってきたんだ』

この目の前の存在が神様?

私をこんな風にしたのに?って、神様をうらんでも意味無いか……。

『悪いけど、それは僕じゃないよ。僕は別の世界の神様だからね』

心を読まれた?神様ならそれくらいできるか。

「どうして……私なの?」

『説明すると長くなるんだけどね。君は本来もっと軽い怪我ですむはずだったんだけど…地球の神が運命の調整を間違ってね。まぁ、これだけたくさんの生命が生きてる世界はそう多くない。しかも地球の神はそれを一人で処理してるもんだからね…あれほど眷属を作れって言ったのに。ごめんね?』

つまり、私は本当に神様のせいでこの大ケガだったのか。

『なんとか、一命はとりとめられたけど、急に運命を弄ったもんだから、その分の因果が残ってしまってね。それが君の怪我さ。』

私が奇跡の生還を果たしたのも、神様のお陰だったらしい。

私はどうすればいいの?命を救ってくれた神様に感謝すればいい?あのまま殺してくれればよかったのにと恨めばいい?

『それは君の自由さ。そうそう、そこで提案さ。これは地球の神にも許可をとってある。君の好きに選んでいいよ』

「てい……あん?」

『僕の仕事を手伝ってくれるなら、君に新たな身体と新たな生を与えよう』

それはとても魅力的な提案だ。

「……仕事って?」

『簡単なことさ。僕の世界で生きてさえいてくれればいい』

「そんなこと?」

聞いてみれば簡単なことだ。だが、こう言うことには裏がある。またブラックだったらたまらない。

『酷いな。僕はブラックな仕事を君に押し付けたりしないよ。まぁ、でもある意味大変な事でもあるんだ』

「生きる…だけなのに?」

『君に用意した身体って言うのがね、龍神なんだよ。所謂ドラゴンさ』

ぎょっとした。どうやら人間ではなくドラゴンになるらしい。

『僕の世界はね、地球と違ってマナ…魔力が豊富なんだ。だから、魔法もあるし、魔物も出る。とっても安全な世界で安全な国にいた君には堪えるかもしれないが、少しばかり命が軽い世界でね。かといって殺伐としてるわけでもないよ?それなりに文明もあるし、人もちゃんといるよ』

提案を受けるつもりで聞いているので、さすがに生命体が私しかいないとかはやめていただきたい。

『心配しなくてもちゃんと人も居るし国もあるよ。それで、何故龍神かって言うとね。先代の龍神が死んでしまったからさ』

え?龍神って龍の神様だよね?ちょー強そうなのに?死んじゃうの?

『まぁ、これはちょっとイレギュラーだったんだよ。僕の世界はね、僕が産み出した龍神に世界の管理を任せていたんだ。神は直接下界に干渉すると、君みたいに因果を歪めることになってしまう。それが積み重なると世界が崩壊しかねないんだ。だからある程度創造が終わると眷属に管理を任せてしまう。そして、神が直接動くのは世界の危機だけだ』

「じゃあ、龍神がいないのは……世界の危機に入るってこと?」

『察しがいいね。その通り、龍神は存在するだけで、周囲のマナを圧縮して精霊を産むんだ。その精霊達は世界に散らばって、土地や自然をよくしたり汚れを払ったり、世界の浄化を手助けしてくれる。僕の世界には必要不可欠な存在さ。だけど、その精霊を産む僕の眷属たる龍神が死んでしまった。』

精霊を産む龍神が居ないから、精霊が居なくなっていく一方だってこと?

『そう。まぁ、これも僕の世界の人族が原因何だけどね。』

人族が原因?まさか、先代の龍神が死んでしまったのって……

『そう、まぁ間接的にね。言ったろ?精霊は世界に必要不可欠な存在だって。僕の世界の知的生命体が、精霊を自覚するようになった頃、精霊と共生し、魔法と言う技術を編み出した。魔法とは、自信の魔力を精霊に与えて世界に干渉して現象を起こす。これが魔法さ。そんな精霊をまるで奴隷か道具のように使ったり、実験したりね。それは酷いもので、それを知った龍神が国を一つ滅ぼしたくらいだ。それで人々は龍神を邪悪なものと決めつけて討伐に乗り出した。もちろんただの人間が龍神に叶うわけもない。彼等は禁忌を犯した。』

なんか、聞いたらいけないような……。神様すごく怒ってる?まぁ、そうだよね、眷属ってことは子供みたいなものだよね?

『ふふっ、気を使ってくれありがとうね。それで、その禁忌ってのが“勇者召喚”なのさ。』

勇者召喚?それってラノベみたいな?魔王を倒すために異世界より勇者を召喚…みたいなあれ?

『そう。本来生命が世界を越えることは、神が許さないかぎり不可能だ。勇者召喚はそれを無視して、異世界に次元の穴を繋げて、人を呼び込む禁忌の魔法さ。もちろん落ちてきた人をもとの世界に戻す方法もないし、そもそも空けてしまった次元の穴を塞ぐこともない。ほんとはた迷惑なものさ』

うわぁ……勇者召喚ひどすぎる。

ちょっと待って?じゃあ、その穴はどうしたの?

『それが龍神が死んでしまった原因さ。次元の穴を放っておくと、世界と世界が衝突して穴を空けた方も穴が空いた方も消滅しかねない。世界の危機だったんだけどね、あの子はそれを一人で解決してしまった。その代償があの子の死さ。命と引き換えに、呼び込んだ勇者を元の世界に戻して穴を塞いだんだ。』

間接的にって、そう言うことか。かわいそう……龍神さん。

『龍神が居なくなってしまえば、世界は崩壊の一途を辿るしかない。僕も看過できなくてね、少し灸を据えるため、滅亡寸前まで放置することにしたんだ。ようやく世界の人々も理解してくれたけど、やっぱり一部にはまだ精霊を虐げる者も少なくない。』

やっぱりそう言う人もまだいるんだ。

『そこで君に新たな僕の眷属、龍神としてあの世界に行ってほしい。というのが僕の提案さ。もちろんいろいろサービスするよ。まぁもともと神の眷属なんだから高性能なんだけどね』

「人の……姿になれる?」

『人化の魔法ならあるよ。龍神になれば魔法は好きなように使えるからね』

「……いくよ、神様の仕事、引き受ける」

『…提案しといて何だけど、本当にいいのかい?確かに高性能だけど、まだまだ厄介なことも多い世界だし、龍神ってだけで、厄介事も舞い込んでくるだろう』

「……もしも、それで私が人を傷つけたとして、神様からなにか罰とかあるの?」

『ないよ。龍神は世界の管理を任せている存在だ。僕ら神にとって生命とは種が違えど一つの生命体だ。それはつまり魔物であろうと人であろうと同じと言う意味さ。人だけに贔屓はないよ。だから、君が一つの生命を滅ぼしても、それは世界の意思だったんだねぐらいなものさ。それに君は理不尽な理由で傷つけたりしないだろ?』

軽い。……世界の意思めっちゃ軽いわ。

まぁ、それなら、断る理由なんか一つもないな。

「行くよ。この動かない身体のままなんてもう嫌。もう一度自由に動きたいの。どんな面倒事が舞い込んでくるとしても、私にとっては動けるようになることと比べたら些細なことよ」

『そういってもらえて助かるよ』

「私の身体はどうなるの?」

『当たり障りの無い君の魂のコピーを入れて寿命まで生きてもらうよ。さすがにいきなり君を殺してしまうと、また因果を歪めて、調整に手間取るからね。そこら辺は地球の神がやることさ』

「……そう。コピーでも可愛そうね。私のこの身体は、本当にピクリとも動かないから」

『……君は優しいね。心配せずとも、地球の神が上手くやってくれるさ。さ、そろそろ行こうか』

「……うん。」


こうして私は神様の手をとって、この世界との別れを果たした。
 

「…さようなら、私」


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