滅亡変革~平和ルートを探すため~

留野洸希

4話

 別世界?から戻ってきたアレオは目を開けると、眩暈がして一瞬倒れそうになった。
 寸でのところで持ち直したが、魔力(マナ)が大分少なっていることを実感した。

 すぐに魔族の片を付けないと、もたないかもしれないと思ったアレオは急いでミクサを探した。
 彼女が来た道を探してみるがどこにもいなかった。

 魔力探知を使ってみる。
 すると、人通りが少ない裏通りのところに彼女の反応があった。
 急いで向かってみるが、そこにはしゃがみ込んで俯いているミクサがいた。

「どうしたの、お母さん?」

 ミクサは顔を上げ、アレオの姿を目の当たりにすると首を横に何度も振った。
 様子が明らかに変であることは言うまでもない。

「来ないで!」
「大丈夫だよ。ボクが守ってあげる。だからお母さんは一緒にいてくれる?」
「嫌! だって……。だって、どうして同じことが何回も繰り返されているのよ? 貴方と一緒にいたってどうせ繰り返されるだけよ!」

 その言葉でアレオは察した。
 彼女も彼自身と同じように過去に戻ってきている。

 アレオはミクサに近付こうとするが、彼女は手や脚で殴ったり蹴ったりして抵抗してくる。

 少ない魔力(マナ)で彼女を捕縛しようか迷ったが、不安定な女性ほど安心させるほかないと考えた。
 人間というのは不安のときは支えが必要であると思っているからだ。

「大丈夫。大丈夫」

 アレオは自分に暗示をかけるように言いながらミクサに抱きついた。
 最初は抵抗を見せていたミクサであったが、徐々に心を開いていった。
 すると、彼女は泣き始めてしまった。

 しばらくアレオはミクサの頭を撫でていると、彼は真実を告げた。

「ゴメンね、お母さん。実は魔族の長を倒した未来からきたの。だから魔族には負けないから安心して」
「え? どういうこと……なの?」

 刹那――。

 魔族が襲撃してきたように人々が悲鳴を上げ始めた。

 アレオが魔族を撃退しようと向かおうとすると、ミクサが手を取ってきた。

「行かないで! もしその話が本当だとしても、あなたの中からは魔力(マナ)をあまり感じられない。だから、無謀な戦いはしないで! 前にあなたが言った通り逃げましょう!」
「ヤダ!」

 アレオは自然と断っていることに彼自身驚いていた。
 でもすぐにその理由は解った。

「どうして……?」

 切羽詰まった顔でミクサは問いかけてきた。

 一呼吸おいてアレオは宣言した。

「だって、だってボクはこの街の人が好きだから! 前は守れなかったの。だから守らせて、お願い!」

 ミクサの手の力が緩んだので、ニコッとアレオは笑い手を払いのけた。
 空を飛んだ彼は、残り少ない魔力(マナ)で魔族を攻撃しようとした。
 飛ぶだけでも結構しんどいほど魔力(マナ)が減っている。

 修羅場は幾度も潜り抜けてきた。
 だけど、魔力(マナ)がない場合はあまりない。
 そんな状態なのに、ミクサやこの街の人々を救いたいと思っている彼がいる。

 二度も魔族の魔力(マナ)を感じているので、嫌でも感覚で撃っても大丈夫なはず。
 その感覚は、熟練の職人が慣れている仕事に似ている仕事をするようなものと似ている。
 半場、博打も兼ねているがアレオは魔族の魔力だけを感知した。

 その一心で魔族だけに追尾する魔法を解き放った。

「浮遊する炎の柱(フロー・バーニング)!」

 多少の被害は出るかもしれないけど、犠牲が出るよりはマシ。
 そう賭けに出たが父親のことを思って、後悔が出てきた。

 ――ボクがいなくなったらお母さんは泣くんだろうな。
 ――ああ、お父さんもこの手で救いたかったな……。

 瞬間、アレオの中の魔力(マナ)が底を尽きてしまった。
 結果、魔力(マナ)の欠乏が起こってしまった。

                   □■□

 意識がない中、夢なのか解らないがフーゴが頭の中に出てきた。

「おめでとう! 君は初めて母親であるミクサを救えたね。これで私も一安心できるよ。次も私たちの同胞も助けてあげてね」

 そう言われた気がした。

 ――後半、言っている意味が分かりませんよ。

 アレオは苦笑いしながらそう言おうと思ったが、口が動かなかった。

 その時、アレオはミクサの声がはっきりと聞こえてきた。

「アレオ、ゴメンね。あの時もこうやってわたしが守ってあげなきゃいけなかったのにね」

 アレオはゆっくりと重い瞼を開けた。
 すると、彼は彼らの家の中にいた。

「だ、大丈夫、アレオ? ある程度、魔力は回復したみたいだけど動ける?」

 アレオは思い通りに動かせるかどうか確かめながら、全身を動かしてみる。
 多少の痛みは出るが、日常的の範囲内では行動できるであろう。

「うん。……大丈夫だよ。だけど、あれからどうなったの? 魔族は?」
「落ち着きなさい。多少のけが人は出たけど、そこまで深刻じゃないわ。――だけど、」

 ミクサはアレオを横にさせた。
 含みのある言い方であったので、アレオは体を動かして反抗するが力の関係上負けてしまう。

「その前に聞かせてくれる? 未来では私はどうなったの?」
「お母さんは――」
「殺されたことは解っているの。だけど私が心配しているのは利用されていないかってこと」

 アレオは親指をグッと立てて宣言した。

「大丈夫だよ。もし利用されていたとしても、逆に利用してやるから」

 ミクサは大きな溜め息をついて二三回首を振ると、紙を見せてきた。

「何これ?」

 アレオは紙を指差しながら聞いてきた。
 手を合わせてミクサは謝った。

「ゴメン、アレオ。もうここには住めなくなっちゃったの。誰かがアレオが魔法を使えるって街で噂になっていたの。だから――」

 読んでみると、人間が住んでいる街や村での立ち入りを禁止する。
 そんな内容が書かれていた。

 ミクサはアレオの頭を撫でてきた。
 首を振ってフォローでアレオは語った。

「大丈夫だよ。未来では旅をするのは慣れているの。ボクね、未来ではお母さんと旅するのが夢だったんだ」

 アレオは笑顔で語ると、引きつった笑顔でミクサは彼に抱きついた。
 すぐにアレオはミクサに抱っこされ、住んでいる家から荷物を纏めて夜逃げするように出た。

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