海賊に殺された現代船乗りだけど、異世界転生のしたので、色々あって海軍に入隊します! 〜知恵と経験を武器に、海賊だらけの海を生き抜いていく~
第6話 男女の隔たり
足を滑らせ転んでしまったシャロレッタは、茶髪の訓練兵の追撃を受けそうになる。
「もらたっあ!」
「くっ……!」
ガシッ……ゴロッ!
片足を上げて踏みつけようとしてくる相手の軸足を、自身の両脚で挟み込み横転することで、相手を転ばせようとする。
「のわっ!」
ドサッ!
シャロレッタの思惑どおり、訓練兵は再度地面に倒れた。
「くらえっ!」
「ぐあっ!? てめっ、汚ねぇぞ!」
転んだ相手の顔に泥を投げつけ、時間を稼いだ。
「勝負に卑怯も汚いもあるもんか!!」
顔の泥を払おうとする相手の腕を自分の両脚で挟んで固定し、同時に親指を天井に向かせる形で相手手首を掴み、自身の体に密着させる。
「今度は何をするつもりだ!?」
「こうするんだよっ!」
この状態から骨盤のあたりを支点にして相手の腕を反らせる。
柔道で最もポピュラーな関節技、[腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)」だ。
「ぐああっ!! お、折れる……」
「痴漢するような奴の腕なんて、へし折ってやるぜ!!」
茶髪の訓練兵の肘関節が可動域を越えて伸ばされる。
こうなってしまえば、体格差等関係無かった。
この男も降参すれば良いものを、女であるシャロレッタに負けることを嫌がり、意地を張っていた。
「な、なんの証拠があって……」
「この引っ掻き傷が何よりの証拠だぁ!」
この期に及んで、罪を認めない彼に業を煮やしたシャロレッタは、とどめを刺すべく、更に体を仰け反らせた。
ゴキッ……
思ったより小さな音が響いて、相手の肘が有らぬ方向へ曲がっていた。
「ウギャァァ゛ァ゛ァ゛!!?」
腕を折られた相手はその痛みから、今までに出したことの無いほど、大きな悲鳴をあげた。
「お、おい! お前、大丈夫か!?」
「い、いでぇよぉ゛!! 母ちゃん~!」
「おい、グリーブス! 何もここまですること無いだろ!!」
 茶髪の訓練兵の元に駆け寄った教官が、怪我をさせたことを叱責する。
「教官! 失礼ながら彼は降参の意思を示しませんでした! なので、彼にも責任が有るかと思います!」
ここで彼の所業を話しても良かったのだが、それを承知で入隊しているのもあり、今回は黙っておくのが得策と判断した。
「な……!? だからと言って……」
「私も見てましたが、彼は降参しませんでした!」
既に自分の相手を倒し、シャロレッタと茶髪の訓練兵の戦いを見ていたジャックが、掩護射撃に入る。
「ジャック、お前……」
 予期していなかった友の助力に、言葉が見つからなかった。
「それに、最初にこのルールを示したのは教官ですよね?」
「そうだよな……降参しないのに、解放したら不意打ちされそうだもんな」
「俺だってああしてるぜ」
「ぐぅ……もういい! 誰かコイツを運ぶのを手伝え!」
茶髪の訓練兵は、あまり日頃の評判が良くないのか、他の訓練兵もジャックに同意する。
その場の空気が自分にとって不利だと察した教官が、最もな理由で話を打ち切った。
何人かの訓練兵が搬送に手を貸して、教官達は救護施設に向かった。
そして、教官達の姿が見えなくなった所で……
「すげぇじゃねえか、シャロレッタ! お前、あんなに強かったんだな!」
「あぁ、あのいけ好かない大男を無傷で倒したんだもんな!」
「これでアイツも、二度と威張り散らしたりしないだろうな!!」
「グリーブス! あの技、俺にも教えくれよ!」
ジャックを始め、その場に居た訓練兵達が、口々にシャロレッタの強さを賞賛した。
「ま、まぁ……それほどでも、あるかな?」
「なんだよ、ちょっとは謙遜しろよ~!」
同じ組の訓練兵がシャロレッタにじゃれつくように、肩を組んできた。
まるで同性にそうするように。
「ちょ、やめろって!」
「あー!、お前最初あんだけ女が来るのは好かん、って言ってた癖に!」
「あんな戦い見せつけられたら、関係ねぇよ!」
確かに、じゃれついてきた訓練兵は当初、シャロレッタのことを快く思って居なかった。
別に、彼に限った話では無かったが。
しかし、今回の彼女の健闘により、同期の訓練兵達からの見方が変わり、仲間と認めるようになったようだ。
「よーし!じゃあ教官も居ないことだし、皆でフットボール(8世紀頃のイングランド発祥の球技。サッカーの起源ともされている)やろうぜ!」
「おう、やろうぜ! サボってもバレねえだろ」
「グリーブスも来いよ!」
一人の訓練兵の提案により、皆が広場に向かって歩き出した。
シャロレッタも他の皆と歩きながら、ジャックの横に並ぶ。
「なあ、ジャック……ありがとな。お前の一言が無ければ俺が罰を受けてたかもしれなかった」
「気にすんな、仲間だろ?」
「……おう!」
その後シャロレッタは仲間たちと、心の底からフットボールを楽しんだ。
今の彼らからは、性別の違いによる隔たりはもう感じられなかった。
その日の夜、彼らは訓練中に遊んだとして、反省文を書かされることになったのは、言うまでも無かった。
第6話に続く
「もらたっあ!」
「くっ……!」
ガシッ……ゴロッ!
片足を上げて踏みつけようとしてくる相手の軸足を、自身の両脚で挟み込み横転することで、相手を転ばせようとする。
「のわっ!」
ドサッ!
シャロレッタの思惑どおり、訓練兵は再度地面に倒れた。
「くらえっ!」
「ぐあっ!? てめっ、汚ねぇぞ!」
転んだ相手の顔に泥を投げつけ、時間を稼いだ。
「勝負に卑怯も汚いもあるもんか!!」
顔の泥を払おうとする相手の腕を自分の両脚で挟んで固定し、同時に親指を天井に向かせる形で相手手首を掴み、自身の体に密着させる。
「今度は何をするつもりだ!?」
「こうするんだよっ!」
この状態から骨盤のあたりを支点にして相手の腕を反らせる。
柔道で最もポピュラーな関節技、[腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)」だ。
「ぐああっ!! お、折れる……」
「痴漢するような奴の腕なんて、へし折ってやるぜ!!」
茶髪の訓練兵の肘関節が可動域を越えて伸ばされる。
こうなってしまえば、体格差等関係無かった。
この男も降参すれば良いものを、女であるシャロレッタに負けることを嫌がり、意地を張っていた。
「な、なんの証拠があって……」
「この引っ掻き傷が何よりの証拠だぁ!」
この期に及んで、罪を認めない彼に業を煮やしたシャロレッタは、とどめを刺すべく、更に体を仰け反らせた。
ゴキッ……
思ったより小さな音が響いて、相手の肘が有らぬ方向へ曲がっていた。
「ウギャァァ゛ァ゛ァ゛!!?」
腕を折られた相手はその痛みから、今までに出したことの無いほど、大きな悲鳴をあげた。
「お、おい! お前、大丈夫か!?」
「い、いでぇよぉ゛!! 母ちゃん~!」
「おい、グリーブス! 何もここまですること無いだろ!!」
 茶髪の訓練兵の元に駆け寄った教官が、怪我をさせたことを叱責する。
「教官! 失礼ながら彼は降参の意思を示しませんでした! なので、彼にも責任が有るかと思います!」
ここで彼の所業を話しても良かったのだが、それを承知で入隊しているのもあり、今回は黙っておくのが得策と判断した。
「な……!? だからと言って……」
「私も見てましたが、彼は降参しませんでした!」
既に自分の相手を倒し、シャロレッタと茶髪の訓練兵の戦いを見ていたジャックが、掩護射撃に入る。
「ジャック、お前……」
 予期していなかった友の助力に、言葉が見つからなかった。
「それに、最初にこのルールを示したのは教官ですよね?」
「そうだよな……降参しないのに、解放したら不意打ちされそうだもんな」
「俺だってああしてるぜ」
「ぐぅ……もういい! 誰かコイツを運ぶのを手伝え!」
茶髪の訓練兵は、あまり日頃の評判が良くないのか、他の訓練兵もジャックに同意する。
その場の空気が自分にとって不利だと察した教官が、最もな理由で話を打ち切った。
何人かの訓練兵が搬送に手を貸して、教官達は救護施設に向かった。
そして、教官達の姿が見えなくなった所で……
「すげぇじゃねえか、シャロレッタ! お前、あんなに強かったんだな!」
「あぁ、あのいけ好かない大男を無傷で倒したんだもんな!」
「これでアイツも、二度と威張り散らしたりしないだろうな!!」
「グリーブス! あの技、俺にも教えくれよ!」
ジャックを始め、その場に居た訓練兵達が、口々にシャロレッタの強さを賞賛した。
「ま、まぁ……それほどでも、あるかな?」
「なんだよ、ちょっとは謙遜しろよ~!」
同じ組の訓練兵がシャロレッタにじゃれつくように、肩を組んできた。
まるで同性にそうするように。
「ちょ、やめろって!」
「あー!、お前最初あんだけ女が来るのは好かん、って言ってた癖に!」
「あんな戦い見せつけられたら、関係ねぇよ!」
確かに、じゃれついてきた訓練兵は当初、シャロレッタのことを快く思って居なかった。
別に、彼に限った話では無かったが。
しかし、今回の彼女の健闘により、同期の訓練兵達からの見方が変わり、仲間と認めるようになったようだ。
「よーし!じゃあ教官も居ないことだし、皆でフットボール(8世紀頃のイングランド発祥の球技。サッカーの起源ともされている)やろうぜ!」
「おう、やろうぜ! サボってもバレねえだろ」
「グリーブスも来いよ!」
一人の訓練兵の提案により、皆が広場に向かって歩き出した。
シャロレッタも他の皆と歩きながら、ジャックの横に並ぶ。
「なあ、ジャック……ありがとな。お前の一言が無ければ俺が罰を受けてたかもしれなかった」
「気にすんな、仲間だろ?」
「……おう!」
その後シャロレッタは仲間たちと、心の底からフットボールを楽しんだ。
今の彼らからは、性別の違いによる隔たりはもう感じられなかった。
その日の夜、彼らは訓練中に遊んだとして、反省文を書かされることになったのは、言うまでも無かった。
第6話に続く
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