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海賊に殺された現代船乗りだけど、異世界転生のしたので、色々あって海軍に入隊します! 〜知恵と経験を武器に、海賊だらけの海を生き抜いていく~

ノベルバユーザー379152

第1.5話 転機

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 フォルトルナの町 大通り

 勢いに任せ、父の部屋を飛び出したシャロレッタは、行く宛も無く町をさ迷っていた。

「男と結婚して宿屋を継ぐなんて、冗談じゃねえぞ……」

 彼女は、あまり宿の仕事が好きでは無かった。
 気遣いや、心配りというものを過大に要求され、宿泊客の理不尽なクレームにも対応する必要があり、生前から細かい事には気にしないシャロレッタには、向いている仕事ではなかった。

 その点、ヒロだった頃にしていた船員という仕事は、自信を持って好きな仕事だと言えた。
 元々、海が好きで目指した仕事でもあり、その為なら多少の不満や理不尽も飲み込めた。

「また、船の仕事に就けねえかな……」

 勿論、シャロレッタは幾度となく船乗りの求人を探した。
 が、現代世界でも多くはない女性可の求人は、なかなか見付からなかった。

 そんな、どうしようも無い事を思いながら道を歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「シャロレッタ、何してるの? 今仕事の途中じゃないの?」
「ん? ……あぁ、ミア。まあ、ちょっと色々あってな」

 シャロレッタが振り返ると、そこには彼女と同年代位で、ナチュラルボブの髪型をした少女が立っていた。

「そうなんだ! じゃあ、どこか遊びに行こ?」
「悪いな、今そんな気分にはなれないんだ。それと、あまり人前でくっつくな……色々と悪く言う奴も居るから」

 ミアと呼ばれた少女が、シャロレッタの腕に抱きつきながら遊びに誘ってきたが、それを軽く突き放す。

 このミアと言う少女は、一応シャロレッタの恋人ということになっている。
 15年間女の体で、純粋な女の脳で生きて来たが、どういう訳か、シャロレッタの思考回路は男だった頃のままで、恋愛対象・性的対象も女性のままだった。

「えぇ? 私達、付き合ってるんだよね? じゃあ他の人達なんて関係無いじゃない?」
「俺たちが良くても、世間はそう甘くないんだ」

 女として転生したこの世界……少なくともこの国では、同性愛に対する風当たりは非常にキツかった。
 それでも、シャロレッタは男と交際するつもりはない為、恵まれた容姿を武器に、隣に連れる女性を取っ替え引っ替えしていた。

 ミアもその一人に過ぎなかったが、シャロレッタが交際してきた相手の中で、一番付き合いが長かった。

「む~! シャロレッタ、最近付き合い悪すぎ! また浮気してるの!?」
「もうしてないって! 実を言うと、親父とちょっと喧嘩して飛び出してきたんだ。……婿を取らせて、そいつと宿屋を継がせるつもりなんだ。だから、少しムシャクシャしてるだけだ 」
「え!? シャロレッタ、結婚しちゃうの?」
「するかよ、男となんて冗談じゃねぇ……。そういや、ミアの親は何も言わないのか?」
「ん~、特に言われないね。二人とも私には優しいからかな?」

 ミアもシャロレッタと同様、それなりに裕福な家庭に生まれているため、両親からはかなり甘やかされた箱入り娘だ。
 彼女の両親は、多少の事は黙認しているようだった。

「へぇ……まあ、こっちの問題はどうにか片付けるから、落ち着いたらまたどっか行こうな?」
「うん! 約束だよ?」

 そう簡単に片付く問題では無かったが、とりあえずミアには、社交辞令的な言葉を掛けてやった。

 勿論、シャロレッタは大人しく両親の宿を継ぐ気は無い、男と結婚するとなれば尚更だ。
 機会が有れば家出をしてでも、一人立ちしようと考えていた。

 その機会は思いの外、直ぐにやって来た。

 ───────
 後日
 シャロレッタの家 早朝

 朝、宿泊客が目覚める前から宿屋の仕事は始まる。
 父は朝食の仕込み、母は一部の早発ちする客の世話をしていた。

 勿論シャロレッタにも役割があり、ポストに投函された朝刊の回収も彼女の日課の一つだ。

「うぅ……寒っ!」

 彼女が中等学校を卒業して間もない、つまり日本でいう3月上旬頃の早朝の寒さは、まだ上着を脱ぐには程遠いと感じさせる。

「新聞ぐらい家の中まで持ってこいよ……」

 ブツブツ文句を言いながらも、働かざる者食うべからずの精神で、与えられた仕事はこなすシャロレッタは、投函された新聞を回収して、記事に目を通す。

「うわっ、また海賊被害かよ。どこの世界でもロクなことしねぇな」

 飛行機等存在しないこの世界では、国家間での人や物の輸送を船に頼っている。
 当然、それらを狙う海賊被害も後を絶たない。
 シャロレッタは、この世界での海賊達の悪行を知る度に、15年前に海賊に殺されたことが蒸し返される様で、虫酸が走る思いだった。

「数年前も病院船が襲われたし、海賊マジ滅べ……ん? この記事は……」

 海賊被害を報じる記事の近くに、海軍入隊者を募る記事を発見した。

 普段ならその手の記事には見向きもしない。
 しかし、今回はいつもと違うことが記載されていた。

 それは[男女不問]の四文字。

 シャロレッタの生まれた国、ガリア王国では、長らく男尊女卑の時代が続いていた。
 今まで女の就ける仕事と言えば、娼婦を除くとほとんど無かった。

 しかし、近年では[性別で仕事を制限されてはならない]という考え方が広がりつつあり、様々な職業に女性が進出していた。
 それが軍の入隊に関することも、今年の採用から取り入れられたのだ。

[これだ!]

 シャロレッタは早朝にも関わらず、近所にも聞こえそうな大きな声を上げて、記事の続きを食い入るように読む。

 仕事内容 軍艦内での船務、海賊、海獣の討伐
 給与 金貨15枚/月(この世界の平均月収は金貨10枚位)
 男女不問※但し15歳以上19歳未満とする

「海軍だ……海軍に入れば、俺の大嫌いな海賊を取り締まれるし、この忌々しい家からも離れ、好きな海に携わって、自分の力で生きていくことも出来る!」

 別にこの世界の海賊に殺された訳ではないが、現在は海賊そのものを憎んでいた。
 単なる当て付けに過ぎないが、この際海賊なら誰でも良かった。

 それに、この家にいる限り男と結婚させられるのは目に見えていた。
 記事に書いてある給金なら、女であるシャロレッタが得るには、十分過ぎる金額であった。

 シャロレッタはその日の内に荷物をまとめて家を飛び出した。
 勿論、両親には何も言わず、海軍に入隊するとだけ書いた手紙を残した。
 仮にも、15年間育ててくれた二人には悪いと思ったが、言ったところで許してくれないのは分かっていた。

 因みに……ミアにもこの事は全く話していない。

 目指すはガリア王国首都マリンバール、そこにある募兵所で入隊に関わる審査が行われるそうだ。

 第2話に続く 

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