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ファンタジー生物保護ってなんですか?

真白 悟

第26話 あといくつ

 僕は昨日の宮下家訪問という重大なイベントを終えた後,若干の緊張感を抱きながらもぐっすりと眠ることが出来た。良い睡眠には程よい緊張感というわけなのだろう。まあそんな話は聞いたことないけど。
 夜更かしばかりしてきた生活ともこれでおさらばというのもいいかもしれない。
 ともかく、せっかく朝早く目覚めた僕は家にいてもすることがないので、仕方なく学校に行く準備を始めた。

「それで、どうだったの?」

 誰もいないはずのリビングから声が聞こえたので、少しだけびくついてしまった。リビングにいたのは、僕の妹だ。
 妹は勝手に家に入り、勝手に朝食を作り、勝手にテレビをつけてくつろいでいた。
 いつにもなくさわやかな朝を迎えた僕にとって、妹の存在は少しだけありがたい。折角いい目覚めであっても、おいしい朝食と心置きなく食事を一緒にできる家族がいなければ少しだけ物足りないからだ。
 だからといって、妹が勝手に家に来たことに対しては言及しないわけにはいかないわけだ。

「で?」
「まあまあ、せっかく作った料理が冷めちゃうから先に食べようよ」

 妹のよくわからない説得に促されるまま、僕は椅子に座る。
 僕の前の机に並んだ料理は、朝食に似つかわしくないごちそうといったところだろうか。スクランブルエッグにハンバーグ、サラダ、それに大盛りのご飯ときたら見るだけで胸焼けしそうで仕方がない。
 しかし、せっかく作ってもらったものを食べないというのは、たとえ家族が作ったものだったとしても失礼だろう。
 僕は手を合わせて箸をつかんだ。
 思えば、こんな風に誰かと食事をするのはいつ以来だろう。たいていは一人ですましていたから少しだけ感慨深いものがある。

「それで、どうしてここに?」

 僕は茶碗を手に持ち引き寄せると、妹に尋ねた。

「いや、どうせ碌なもの食べてないんだろうなと思って」
「確かに食べてないけど……それが目的じゃないだろう?」

 妹のにやけた顔つきから見るに、もっと重大な目的がありそうだ。何をもってそう思うのかと聞かれたら答えられないが、兄の感というものだ。
 僕の質問に表情は崩さずに黙々と食事を続ける。
 おそらく、黙って食べろということなのだろう。妹はこと料理に関してはめっぽう厳しい。食べながら話すというのもあまり好かないたちだ。
 仕方なく、僕も同じようにご飯を食べ始める。
 うん、妹の料理の腕はかなり上達しているようだ。僕のおおざっぱな舌だからかもしれないが、どれをとっても、文句のつけどころがないぐらいにはおいしく感じた。

「それで?」

 最後の一口を飲み込んで、手を合わせ、僕は再度妹に尋ねる。
 ちょうど、コップに入ったお茶を飲みほしたところだった。彼女のコップから滴る水滴を眺めながら、僕は返事を待った。
 妹は口に含んだお茶を喉の奥へと流し込むと、ひと呼吸おいて返事をする。

「実はもっと大きな問題が発生して……」

 一体どんな問題だというのだろうか、妹は少しだけ残念がっている様子だ。
 僕は机の上に置かれた食器を流し台へと運ぶために立ち上がった。
 妹はかなり言いにくそうだし、このまま妹から話始めるのを待った方がいいだろう。僕から問い返したところで、どうせ時間がかかるだけだ。
 だったら時間は有意義につかいたい。だからそのまま洗い物を始めることにした。そのタイミングで気が付いたが、流し台には朝食を作るのに使用されたであろうフライパンや包丁がそのまま置かれている。

「いいよ、私が洗うから!」

 いつの間にか背後には妹がやってきていた。
 本当に突然やってくる奴だ。だが、一つだけ言わせてもらおう。

「お前が作って、僕が洗う。いつものことだろう?」
「それって、何年前の話?」
「さあね……だけど、作ってもらっておいて何もしないというのは性に合わないってだけさ。お前はお前がしなくちゃいけないことをしてくれればいい。兄が妹の世話にばかりなっていたら恥ずかしいだろう?」

 僕は少しだけ昔のことを思い出して、なんだかとっても気恥ずかしくなった。
 今思えば、実家でも妹の世話になりっぱなしだった。まあ、いろんな世話もしてやったが、それでも僕は妹の兄だからプラスマイナスゼロというのはいけないだろう? 兄である僕が妹のプラスにならなくちゃいけないんだから。

「分かった。どうせ話さなきゃ帰れないし、引っ張っても状況がよくなるわけじゃないし……うん、お兄ちゃん聞いてくれる?」

 何かを決心したかのように妹は大きくうなずいた。
 妹はまだ小学生の身でありながらも、僕以上にまじめで他人に頼るのを嫌う節があった。それは僕が不甲斐ないからなのかもしれない。
 一度目の相談事の時だってそうだった。僕なんて電話でこき使えばいいのに、直接会いに来てお願いをする。相談をするのに電話では失礼だとか思ったのかもしれない。普通、そんな気の使い方をする小学生はいない。
 妹がそこまで僕に気を遣うというのはやはり僕のせいだろう。僕が親から逃げたからだ。
 だったら、せめて妹からは逃げない自分でいたい。

「ああ」

 僕はすべてを洗い終えると、ゆっくりと妹の方を振り返った。
 妹はいつにもなく緊張している様子だ。もしかしたら、僕が思っている以上に厄介な案件を持ってきたのかもしれない。
 だがどんなものだったとしても、僕は妹の頼みを断るつもりはない。

「山田君のお兄さんが……また襲われた」

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