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ファンタジー生物保護ってなんですか?

真白 悟

第24話 代わり1

「あなたの心が読めないのは、あなたの能力によるものですか?」

 直球すぎる先輩の一言に、僕はどのような反応をしていいか非常に困った。だが、宮下アヤメは最初から分かっていたかのように冷静だ。

「ええ、私の能力です。それにしても、先生の前で能力のことを話されるなんて思ってもみなかった……なんて、最初から分かっていましたけどね」
「最初からおかしいと思っていたんです。あなたの心が読めないことが」
「ふーん、まあいいでしょう。先輩は私と同族ですからね……気が付くのも予想通りです」

 二人は一体何の話をしているんだ。彼女の能力が心をどうにかする能力ってことはわかっているけど、先輩はもっと詳しく能力を把握していたということなのか?
 置いてきぼりの僕と先生を置き去りにして、二人の会話は続く。

「同族ですか……いいえ、それは違いますね。あなたは私よりもはるかに格上の存在だと思いますよ」
「まあ、先輩からほめていただけるなんて嬉しいです」
「あなたは嘘ばかりですね。でも嘘は簡単に見破ることが出来る」

 先輩の言葉と同時にみんながぼくの方をみる。先輩の言う通りで、僕は今のところ宮下の嘘が全部わかる。
 彼女は先輩から褒めてもらうことを嬉しいだなんてこれっぽっちも思っていないらしい。その理由は定かではない。
 そんな中で宮下が僕から目線を外し、先輩の方を見直した。

「彼の力のことですね。しかし実はそれは大した問題ではない。だって、私は最初から隠し事をするつもりなんてないですもの……私が山田さんを襲ったことも、先輩のことを愛していることも、私が政府の言う『ファンタジー生物』だってことすらも。誰も気が付かなかっただけで、隠したつもりもない」
「確かに誠君に簡単にばらす程度のことだからあまり気にもしてなかったんでしょうね……」

 先輩は再び僕の方をちらりとみる。彼女が嘘をついているかどうか確かめたかったのだろうが、残念ながら今度はまるで嘘をついていない。
 僕は大きく首を振った。それをみた先生は少しだけ動揺しているようだが、それでも先輩の邪魔をしないように黙り込んでいる。

「だったら、どうして私から心を隠すのですか?」
「だって心を読まれたら嫌じゃないですか……好きな人に心を読まれるってちょっと辛いものがありますよね?」

 彼女が言っていることは至極まとうで普通ならほほえましいことだが、人を一人病院送りにした人物の口から出たと思えばぞっとしない。
 だから僕は口を挟むことにした。

「面白くもなんともない」

 僕は多少のことでは怒らないという自信がある。だからこそ、自分自信こめかみの辺りが痛いことに驚いている。それ程までになにかに対して怒りを抱けることに驚いたのだ。
 それに気が付いてからは、かえって冷静さを取り戻したような気もする。
 しかし、時すでに遅い。もう口には出してしまっていたからひっこめることもできないし、ひっこめるつもりもない。

「べつに冗談で言ってるわけじゃないからね。あなたにはよくわかるでしょう?」
「ああ、君は嘘をついていない。だが、それが僕には面白くない。人を傷つけておいて冗談っぽく言うのが気に入らない」

 言葉ではうまく説明できないが、ともかく彼女の態度がなんとなく気に入らなかった。
 彼女はあくまで主体的に話しているようで、どこか他人のことを嫌々話しているような雰囲気に包まれている。
 それが僕には気持ち悪くて、気分が悪かった。

「なにが言いたいのかわからないわ。私はあなたたちが思ってるよりも頭が悪いのよ……ただすべてが恐ろしいだけ。人っていうのはね他の動物よりも多く差別を繰り返す生物なのよ。犬も猫も感情のままに差別するかもしれない。だけど、人間は心なんていうくだらないもののために……ううん、それよりももっとおぞましいものを守るためだけに人を傷つける生き物なの。私だっていつかは、他の人と違うということをねたまれ、くだらないもののために排除されるでしょう……私はそれが怖い」

 怖いと口にした彼女だが、その表情からはまるで恐怖を感じさせない。だが、たしかに彼女は嘘をついていない。
 僕は訳が分からなくなった。
 
「それと山田を傷つけたことになんの関係がある!?」

 先生が宮下を怒鳴りつける。教師としては失格かもしれないが、先生はいつもそうだ。生徒を果てしなく平等に扱い、そして守ってくれた。
 今回も先生は、宮下のために怒りとは違う感情で叱りつけたのだろう。
 しかし、宮下はまるで反省などしていない。

「あいつがあのままだったら、私たちの差別は増え続けたでしょうね。あいつには悪いとは思っているけど、私のために痛い目にあってもらっただけのこと。大人だってよくするでしょう? 他人を貶めて自分を高めることぐらい。それと同じ」

 彼女の言葉はある意味では正しいのかもしれない。だからといって、人を傷つけていい理由にはならない。
 それに、彼女はある一点について勘違いをしている。
 僕は思わず口を挟んだ。

「ふう……実際のところ僕は山田なんてどうでもいいんだけど、それがお前の本心というわけか……だけどそれがFAを貶めることになるってことはわかってるんだろう?」

 宮下も今度は反省したようだ。申し訳なさそうな顔で僕の方を見る。

「そうね。さすがにそこまでは考えてなかったみたいだけど」
「他人事みたいな言い方をするんだな」

 その一瞬だけ、まるで時が止まったかのようにみんなが動きを止めた。
 宮下の言葉ではまるで他人のことについて話しているようだ。そして、それは矛盾している。彼女は自分がストーカーであると言ったからだ。だったら山田を傷つけたのも彼女だ。
 僕の頭の中とは裏腹にこの空間では誰も話そうとしなかった。それが気持ち悪かったのか、問い詰められた宮下が先輩の方を向く。

「先輩は私の能力についてどれぐらい気が付きましたか?」

 宮下のことばに先輩は少しだけ考えて言葉にする。

「あなたの力は心を操る能力です」

 今の段階でわかるのはそれぐらいだろう。先輩だけではなく、僕だってそう思っている。
 しかし、宮下は指を横に振りながら面白そうに言った。

「半分正解……といったところでしょうか」

 彼女の笑顔はまるでゲームをしている時に一人勝ちしているような勝ち誇ったものだ。それだけに、彼女の精神が異常をきたしていることがわかる。
 そんな彼女を見ながらも、先輩は唾を飲み込み聞き返す。

「半分?」

 先輩の反応を宮下は楽しんでいるようで微笑した。

「答えは教えませんけどね」

 今のままでは彼女のペースで話が進んでしまう気がしてならない。
 だから、僕は思い切って確信に迫ることにした。

「で?」
「はい?」

 突然の僕の問いかけに、彼女は意味が分かっていないように問い返す。それも彼女の作戦なのだろうが、話が進まないのでは彼女のペースを狂わすことも出来ない。

「別に僕たちは警察でもなんでもないからお前を捕まえることなんて出来ないけど、一応言わせてもらう。もうこんなことやめないか?」
「別に私だってしたくてしてるわけでもありませんし、なんなら代わりにあなたたちがきちんと取り締まってくれるというのならやめてもいいと思います」

 彼女はどうでも良さそうにそう言った。
 実際どうでもいいと感じていたのだろう、彼女は全く嘘をついていない。彼女はただ、自分たちの評価を落とさないために制裁を加えていただけだと言いたげだ。
 だけど、僕たちに彼女の代わりなどできるはずもない。

「言っただろう……僕たちは警察じゃない。警察じゃない僕たちに犯罪を取り締まるのは無理だ」

 それに、彼女は僕の能力ではわからないように嘘をついているような気がしてならない。頭では彼女が嘘をついていないということがわかっているが、なんだか僕の心の奥底にあるなにかによってそう思わせられているようで気持ちが悪い。
 一つだけ言えることは、今回のことは彼女こと宮下アヤメに対しての牽制にしかならないだろうということだ。――確信はないが、なんとなくそう感じた。

「それが、出来るんだよ」

 突然先生が口にする。
 いきなりなにを言い出すのだろうか、もしFA取り締まりに関して『出来る』と断言したのならそれは先生らしくない。
 先輩も僕と同じことを思ったのだろう、それでも冷静に先生に問いかける。

「生徒が生徒を取り締まる……それは禍根を生むだけでは?」
「ただの生徒だったらな」

 先生は頭をかきむしりながら、悩んだ末に言葉を吐いたのだろう。冷や汗をかいている。

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