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ファンタジー生物保護ってなんですか?

真白 悟

第10話 妹1

 朝早く目を覚ますのは、人生の数ある苦難の内どれだけ難しいことよりも重要なことだ。別に誰かの名言というわけでもなく、僕が今適当に思いついた言葉だ。真に迫っているようで、実際は何が言いたいのかわからないというのが面白いところである。
 なんて、くだらないことを考えているわけだが、それだけ余裕がある時間に起きたというわけではない。普通の学生であれば、絶望するような時間に起きているのだが、僕は普通じゃない。
 目をこすりつけながら、時計を確認し、本格的に遅刻であることを確認したのち、僕は再び
眠りについたはずだった。

「おにいちゃん! また授業サボる気!?」

 布団の上から何か重たいものが僕の上に乗っかっていることがわかる。
 眠いから本当は無視したいが、残念ながらそういうわけにもいかない。声の主である妹を無視することは僕にはできない。

「わかったよ。起きるから……とにかく下りてくれ」
「いや! ちゃんと起きるまで下りない」
「下りてくれなきゃ、起きられないんだよ……」

 僕の言葉にようやく納得したようで、ゆっくりと僕の上からおりる妹だった。

「ところで、お前なんで家にいるんだ……? お前こそちゃんと学校いけよ」

 朦朧とする意識で、それでもしっかりと意識を保つように頑張りながらも、僕は妹に尋ねる。
 妹はというと、何を馬鹿なことを言っているんだといった表情で、兄を兄とも思っていないような僕を馬鹿にしたような顔をしている。

「お兄ちゃんと一緒にしないでもらえる……あたしが学校をサボるわけがないじゃない!」
「そりゃ、まじめなお前のことだから、学校をサボるはずないよな。じゃあなんで家にいるんだ?」
「創立記念日だからだよ」
「創立記念日?」
「学校を創立した記念日のこと」
「お前は僕のことを馬鹿にしているのか?」

 妹は目をそらす。
 それではまるで、僕のことを馬鹿だと思っているが、本当のことを告げることがさも可哀想なことだと思っているみたいじゃないか。
 まあ、それはいいとして……

「それで?」
「なに?」

 僕の問いかけに、妹はとぼけたような顔をしている。僕が言いたいことなんてわかっているはずなのに。

「どうしてここにいるんだ?」
「いや、妹が兄の部屋を訪れることなんて別に変じゃないでしょう?」
「ああ……同じ家に住んでいるんなら確かにお前の言うとおりだ。でも、僕の記憶が正しければ、僕は一人暮らしをしていたはずだ。実家から結構離れたここで」

 歩いて20分、自転車でも10分はかかる距離だ。こんな早朝に訪れるような場所ではないだろう。特に、妹以外の家族は来たことすらない。そのことは家の距離とはまったく関係ないが、ともかく、妹がこんな時間にここにいることは不自然なのだ。
 なにはともあれ、せっかく来てくれた妹をむげにすることもできない。
 僕は妹にお茶ぐらい出してやろうと、冷蔵庫を開けた。
 いつもは昼ごろまで寝ているし、さすがに眠い。眠気眼で、冷蔵庫の内部を見つめるが、どこにもお茶が見当たらない。
 そういえば昨日お茶を沸かして、冷ましておこうとそのまま置いておいたのだった。僕はふと我にかえって、やかんのもとへと足を運ぶ。

「いや、なにをしているのさ?」

 妹が馬鹿を見るような目で僕を見ている。
 いい加減、兄に対する態度を改めてもらいたいものだが、まあ兄弟なんてこんなもんだろう。持ちつ持たれつというやつだ。……そういう意味じゃなかった気もするが、そこは気にしないのが僕のいいところだ。
 僕は妹の質問に答えるために眠気で重い口を開いた。

「いや、お前にお茶でもいれてやろうかと」
「そんな場合じゃないでしょう? 普通に一時間目にも間に合わないわよ」

 一時間目って、なんだか子供みたいな言い回しだな。まあ、小学生である妹にはお似合いの言い回しではある。
 そんなことはどうでもよくて、僕の授業よりも妹を優先するという兄心を感じ取ってもらいたいものだ。

「せっかく来たんだからお茶ぐらい出さないと失礼だろう」
「家族に対して失礼も何もないでしょう?」

 なんかよくわからないけど、呆れ顔の妹は、わが妹ながらかわいらしい。もちろん僕はシスコンではない。だが、小学生ながらなかなかの美貌の持ち主だと思っている。身内贔屓というやつかもしれないが、クラスメートだってほうって置かないなだおう。
 まあ、手を出したやつは僕が許さいけどね。

「親しき中にも礼儀はあるだろう?」
「お兄ちゃんが頭よさそうなこと言っている!?」
「やっぱり僕を馬鹿にしているだろう?」
「いや、お兄ちゃんは馬鹿でしょう?」
「馬鹿は高校に行けないんだよ」
「その考えがいかにもバカって感じ」

 くっ! 妹にも口げんかで勝てない。ここは少し話をそらすことで、自分の自我を休めることにしよう。

「僕のことはいいんだよ。それより、意味もなく僕のところに来ることをあの人たちが許さないだろう? なにがあったんだ?」
「学校!」

 妹は納得できていないようだが、もともと、どうせ今から学校に行ったところで授業時間には間に合わないだろう。だからこそ、僕は妹の件をおわらせてからすっきりとした気持ちで、部活の方に挑みたいというものだ。
 別に、妹のことが気になるというわけではない。僕はそこまで妹に甘いつもりはない。
 
「どうせ、もう間に合わない。昼からちゃんと行くから……とにかく話して見ようぜ」
「わかった」

「実は、私のクラスの山田君」

 どこかで聞いたことがあるような名前が出てきた。だが、まあ、山田なんて名前は日本に八十万人ほどいるわけだし、別の山田さんだろう。

「その山田がどうかしたのか?」
「ううん、山田君はなにも。でも、山田君のお兄さんがちょっと変でね」
「そいつがどうかしたのか?」

 正直他人のことなんてどうでもいいわけだが、妹が神妙は顔をしているのだから聞かないわけにもいかない。僕も妹には甘いもんだな。――え? さっきは甘くないと言ったって? 不真面目な奴が意見を曲げるのなんて普通のことだろう?
 なんて、僕にとっての唯一の肉親みたいな妹なのだから、最初から甘いに決まっているだろう。甘やかさないようにはしているけどな。

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