異世界で神から最強の力を手に入れたはずがそれが最弱だった件について
第三十二話 螺旋迷宮ギルディア④〜竜二視点〜
窓に差し込む日に当たりながら俺は頭の上で手を組み、天井を眺めていた。
「あいつらはどうしたものか?」
俺は思いにふけり、ふと言葉をこぼす。
エリシアやアリシャは放っておいても大丈夫なはずだ。だが、明日香やティナは一刻を争う事態だ。
「でも、明日香がやられるはずがないよな」
襲ってきた男たちを仕留めたことや灯台から無傷で着地したことなど簡単にやられる奴ではない。
それよりティナが心配だ、明日香はティナを助けてくれるのだろうか、あいつに限って、ティナまで殺してしまうかもしれない。
「真実を確かめる為には早く探すしかないな」
俺は猛烈な痛みを感じながら、ゆっくりとベットに横たわっている体を起こしていく。そして、地面に足をつけると、
「イッテーーーーーー死んじまうーーーー」
今でも倒れてしまうほどの痛みが体全体に迸り、歩く気力までも奪っていく。
だが、また同じ過ちは繰り返したくない、俺はそう思い、片膝をつき徐々に立ち上がる。
「くっそ、肉が引きちぎれそうだ!」
俺は立ち上がり、足を引きずらせながらドアノブをひねり、部屋を後にした。
扉を出てしばらくするとリビングと思わしき部屋があった。その中は縦長に長く丈夫な机にキッチンやまな板包丁までもが置かれていた。
「えらく、広いな」
部屋からこのリビングまで来るのにも相当歩いたはずだが、やはりこのギルドホームとやらは広すぎる。
「早く出口を探さないと」
俺はリビングを通り過ぎ、長い廊下を歩く。
すると、2分程歩いた時、この家の出口と思わしき赤い扉があった。扉の上下左右にはガラスが貼られてあり、そこから外の光が木の床を照らす。
俺は引きずる足を懸命に動かし、ドラノブに手をかけたその刹那、後ろから少し棘のある声が耳を伝えた。
「君、どこいくんだい?」
振り返ると、茶色い淵のメガネをかけ、どこか大人びているが身長はとても低い。綺麗な黒髪ロングだが、ボサボサ髪で若干拒絶反応を覚えてしまう少女がいた。
「仲間を探しに行く」
「それは駄目だ。リーナから君を外に出すなと言われているのでな」
「仲間が心配だ。もう体は治っている。俺を止める理由はないだろう」
「いや、まだ君の体は危ない状況にある。部屋に戻って休め」
「それは出来ない。ありがとうとリーナに伝えといてくれ。それじゃ俺は行くからな」
「待て!もしそのドアノブを少しでも捻ってたら、力ずくでも止めないといけない」
「何でだよ!お前にはもう関係ないだろ!仲間が心配なんだ!ほっといてくれ!」
「そんな体でよく言うな。リーナの言うことを破ったらこの僕までも危ない目にあうんだよ」
「だったら勝手にしろ!俺には関係ねぇー。じゃあな、お世話になった」
俺は扉のドアノブを捻った途端、メガネの少女は見えない速度で俺の腹に思い切りパンチを繰り出すが後数ミリの所で俺は横に避けた。
「今のを避けるか、なら次はこれだ!」
一度元の位置に戻ったメガネ少女は両足で大きなためを作り、そのまま床を強く蹴った。光の速さにも遅れを取らないそのスピードが俺目掛けて迫り来る。
これは避けきれないと思い、俺は真正面から両手で受け止めた。物凄い反動で、押されるが、扉が支えてくれたおかげで何とか抑え込めた。
衝撃が収まると二人ともその場に倒れ込んだ。
俺とメガネ少女はお互いに咳き込み、膝をつく。 
「これで満足か?もういいだろ。これ以上やっても結果は同じだ」
「くっっ、貴様の力を認めざるおえないな。貴様は仲間を探すと言っていたな」
「あぁ、お前にはどうでもいいことだろ」
「こんな広い街を探すつもりか?それもたった一人で。もしそうならこの私が力を貸そう。私の書庫へ来い、人探しの書があるきっと役に立つぞ」
「本当か!それなら助かる。この街を探すなんて何日かかるか不安だったんだ、恩にきるぜ」
「ふっ、造作もないことよ。貴様は強い、私には止められないかったからな。これぐらい当然だ」
「サンキューな。俺は竜二よろしくな。お前は?」
「私はルナ・リカルド書庫の魔女だ」
「おう!それにしてもルナも魔女だったのか?」
「も、ってことは私以外に誰かいるのか?」
「アリシャって言う俺の仲間も魔女だ」
「そうか、、、アリシャね...」
「なんだ知り合いか?」
 
「いや、なんでもない、それより早く行くぞ」
「そうだな。お願い」
どこか感情を抑え込んでいる少女は俺の前を颯爽と走り去っていった。
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俺とルナは二階へと登り、内部から異常に闇が漂う扉の前へと来ていた。
「ここが、我が書庫だ。気をしっかり持って入れ」
「嫌な予感しかないんだが。まぁーとにかく開けるぞ」
俺は意識を強く持ち扉を開けた。 
扉の中は意外にもとても広く、いくつもの本棚が数メートル先まであり、丁寧に本が並べてある。だが、この部屋は暗く、瘴気が漂ってくる。
紫色に光る火が点々とあるおかげで、周りが見渡せる。
「なんでこんなにも嫌な雰囲気が漂うんだよ」
「それは禁書や闇魔法などの伝説書物もここに置いてあるからだな。部屋を暗くしないと効力をなくす本も多少あるので、そこは気にしないでくれ」
「へー、そんなものを持っているのか。ルナは凄いやつなんだな!」
「ほ、褒めても何も出ないからな!もう、さっさとやるぞ!」
「そうだな。それで人探しの書物とやらはどこにあるんだ?」
「こっち来い。案内する」
ルナに先導され、ついていく。
ルナが案内した先は書庫の端に扉があり、そこをくぐり抜けた先の小さな扉だった。周りには分厚い本がずらっと並べてあり、俺には少し息苦しく感じる。
「ここはなんだ?」
「この部屋はな、特に貴重とされている国宝級の本が並んである。一眼読んだだけで、伝説級の勇者にも匹敵する本がそこかしこにあってな、私はこの本たちを死守しているのだ」
「マジかよ!俺にも読ませてくれ!」
「それは無理じゃな、国宝級とは言われているが、これら全部禁書なんだ。国王様に許可された者だけが読めるので、もちろん私も読んだことはない」
「俺は力が欲しい。要するにその本を読むためには国王様に気に入られないとダメだっていうことかよ」
「まー表向きはそうじゃ。だが、もう一つ方法がある」
「なんだその方法は?」
「金貨50億。この本一冊の値段じゃ。でも一生冒険しても手に入れないがな」
「そうなのか。それはいい情報を聞いた、頭に入れとくよ。それで本題だ、ここは禁書しかないんだろ?人探しの書物はあるのか?」 
「まぁー見てみろ」
ルナは本棚から一冊赤い本を手に取った。タイトルは魔王と不吉な文字が綴られてあった。
その本の表紙を人差し指でSの文字を書くと、空中にこの国全体の地図が浮かび上がった。
「これは?」
「禁書の抜け穴みたいなものだ。本自体には凄まじい魔力が込められている、私はただそれを活用したまでだ」
「そんな使い方があったんだな。それでこれからどうするんだ?」
「この本に手を当て、探したい人のことを思えば、この地図に表示される」
「そうか!やってみる」
 
俺は手を当て、ティナ、明日香、エリシア、アリシャを思い浮かべる。
すると、地図上に点が4つ表示された。
「えーと、ティナという奴と明日香という奴がスイートタウン!!?それとエリシアという奴とアリシャという奴が螺旋迷宮ギルディアの最上階!!?」
「なんだその驚き様は?」
「どちらも侵入は至難の業だ。危険が伴うと思え。まずスイートタウンは貴族特区だ。我々平民は入ることもおこがましく、入り口には選りすぐりの騎士たちが佇んでいて、入るには貴族の証を見せるほかない。そして、最も危険なのが、螺旋迷宮ギルディアだ」 
「リーナたちが行った所だろう?そんなに危険な所なのか?」
「甘く見てたら足元救われるぞ、君の実力は十分に理解しているが、それ以上にギルディアは危険なんだ。最上階となるとSS級モンスターの住処もあると噂されているほどだ。エリシア、アリシャが居ることが本当に不思議でならない」
「大丈夫だ。そこはあまり気にしてない。どっちもぶっ飛ばせば済むことだ」
「君ってやつは、自分の力に自信を持つのはいいことだけど、多少の心配は持っといた方がいいと思うけど」
「そんなの知らねー。俺は行く」
「そうだな。一刻も早く行かないと二人が危険だ。早く行けと言いたいところだが、その傷では走れもしないだろ。治癒魔法をかけてやる。そこに座れ」
「有難い。本当世話になってばっかだな。いつか恩返しにくる」
俺は床に腰を下ろし、ルナに背中を向ける。
ルナは禁書にSの文字を描き、その魔力が集まった人差し指を俺の体に触れさせる。すると、みるみる内に傷や痛みがなくなり、元どおりに戻った。
「寄せ寄せ。私は君に恩を売りたくてやってるんじゃない。君の実力を買って、力になりたいと思ったからやっただけだ。何も恩を感じないでくれ」
「そうか、まぁ、いつか期待しといてくれ」
「わかったよ」
俺は立つ上がり、ドアノブに手をかざそうとした時、一つ気になっていたことを聞きたいと思い振り返る。 
「最後に聞いていいか?」
「なんだい?」
「ルナは一体何者なんだ?」
「秘密だ」
ルナは満面の笑みそう答えた。
「そうか、そう言うと思った。じゃあな。お世話になった」
「あぁ、気をつけて、絶対に仲間を取り戻すんだよ、頑張って本当に...」
「ありがとう」
俺は扉を開け、ギルドホームを後にした。
ルナは最後まで俺の背中を切実に見送るのだった。
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※久々の投稿でもし待っていてくれた人がいたのなら遅れてすみません。感想などモチベーションに繋がりますので書いてくださると嬉しいです。
これからぼちぼちと投稿していきますのでよろしくお願いします。
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