異世界で神から最強の力を手に入れたはずがそれが最弱だった件について
第二十七話 消えていく仲間たち
ティアについて行った先は壁で囲われている裏だった。ということは俺たちが入ろうとした入り口の真反対ということになる。
ティアは壁に備え作られている長い階段を登っていくので、俺たちもその後を追う。
何段と続く階段は冒険で養われた俺でも少しきつく、明日香も横の棒を掴みながら登っている。
「なぁ、ティア。お前はどうして逃げないんだ?」
ティアの下を行く俺はティアを見上げながら疑問に思っていたことを口にする。
け、決して、ティアのパンツを見ている訳ではないよ。決してね。
「え、え、えーと。この主従の首輪がある限り逃げることなんてできないんです。もし逃げようとしたら首輪が閉まり、私は死んでしまうんです」
「それは大変だな...でも待ってろ、俺がお前の主人を懲らしめてやるから」
「き、き、気持ちだけでも有難いです」
階段を駆け上りながらでも、ティアは俺たちがちゃんとついて来ているかを確認してくる。
「それにしてもティアちゃんは目が見れないのによく迷わず進めるね」
俺の後ろにいた明日香は息を切らしていた。
「こ、こ、ここら辺の場所は記憶していますので進めます。それと後は感覚です」
「凄いねティアちゃんは。なんか欲しくなりそう」
「お前、気色悪いこというなよ!」
「だってー。ティアちゃんが可愛いんだもん」
「ティアごめんな。変なこと言って」
「い、い、いえ。私を必要とされたことがなかったので、少し嬉しいです」
「そうか、、、」
「み、み、皆さん。もう少しで壁の頂上です」
俺たちは階段を登り、壁の頂上に着いた。
その頂上から見える街の中の景色はとても美しく、それと街の広さが尋常じゃないほど大きい。
住民が血気盛んに走り回っていたり、店が並んであったりととても魅了される。
その中でも一際目立つのが、城みたいに携わる家だ。
高い城みたいな家は俺が冒険者になった街にあった城の倍以上の大きさはある。
多分エリシアが住んでいたみたいに王族が住んでいるのだろう。
と、景色に見惚れていると俺の横に立つティアが俺たちの方を向いてきた。
「あ、あ、あの。この反対側にご主人様がいらっしゃいます」
「壁の反対側というと門の入り口方面じゃないか?」
「そ、そ、そうです。門の上でご主人様が待っています」
そうか、門の上でこの街に入る観光客を見て、気に入った人をこうやってティアに頼んで連れて来させているのか。自分はその場に留まりながら待つだけなんて、非道すぎる!
「もしかして、あの豪華そうなソファーにくつろいでいるやつか?」
俺は目を凝らし、反対側にいる人影を捉える。
「は、は、はい。あんなに遠くの場所が見えるだなんてお兄さん凄いですね」
「お、お兄さん?」
「い、い、いえ。頼もしくてつい言ってしまいました」
「いや、お兄さんで構わないよ」
「あ、あ、ありがとうございます」
「待ってよ。私は?」
「お、お、お姉さんと呼んで良いですか?」
「うん!お姉さんとお呼びなさい!」
「あ、あ、ありがとうございます。では行きましょう」
「おう!連れてってくれ」
俺たちは壁の上を円状にそりながら走っていく。
壁の間隔は二メートルくらいの幅で少しでもバランスを崩してしまうと、三十メートル下の地面に落ちてしまいそうだ。もし、落ちたら絶対死ぬ。
後、もう少しでティアのご主人様に会えると思った時、白い靄が俺たちを包み込んだ。
さっきまで太陽が出ていたのに、曇りの天気みたいに空全体が暗くなる。
「これは何だ?」
「わ、わ、私にもわかりません。でもお兄さんを警戒しているのかもしれません」
「そうか。でも進むしかないな、警戒しているのなら好都合、怯えているのなら簡単そうだ」
「で、で、では進みましょう」
白い靄が漂っている。俺とティア、明日香はその中を進む。
そして、俺たちはご主人様がいると思う門の入り口の上まで辿り着いた。
だが、誰もいなかった。あたりを見渡してもいない。さっき遠くから見えていたはずの人物が消えていたのだ。
それより、明日香やティアはどこへ行った?
二人の姿が見当たらない。
白い靄で、見失ったのか?
「おーい!明日香ー。ティアー」
そう呼びかけても、街の賑わう声が下から聞こえるくらいで明日香やティアの声は聞こえない。
「いないのかー」
何度も何度も呼びかけても一向に返事がない。
そして数分が経つと、白い靄が消え、太陽が再び顔をだす。
視界も鮮明になり、改めてあたりを見渡すと、
 
「何だと...」
誰一人いなかった。
明日香やティアはどこへ行ってしまったんだろうか?
多分だが、ティアのご主人様が何らかの方法で二人を連れて行ってしまった可能性が高い。
「くそ!俺がもっと注意を払っておけば!」
俺はその場に倒れ込み、地面を叩いて、自分の情けなさを悔やむ。
「何で何で俺は...何も学ばないんだ...」
理沙やリア、明日香やティシフォネのことがあったのに俺はまた同じことを繰り返してしまうのか。
この刹那、脳裏にエリシアやアリシャの記憶が蘇る。冒険で楽しかったことやお食事処フェリアでの思い出、まだ二人と会って間もないが、俺は二人を絶望させたくない!
「いや、まだ終わった訳ではないんだ。探すぞ!!!」
俺は決意を固め、立ち上がる。
そして、走りだす。円状に囲む街の壁上を全速力で駆け巡る。
目では見えなくても物理的にはそこにいるかもしれないと微かな希望を持ったが、実際にはそんなに甘くなく、明日香やティアはいなかった。
すると、全速力で円状を回っていた俺は曲がり角で急に止まろうとしたが止まれずにそのまま三十メートルもある高さから落ちてしまった。
しまった...
「あ、やべ...」
そのまま、街の中に落ち、ゴトンッと一際大きな音が街に響き渡るのだった。
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