勇者が蔓延るこの世界で···

燕子花 山葵

第四話 寮





·····じん、起きなさいよ·····


かすかに女子っぽい声がする。俺いつの間にか寝てたのか?とりあえず起きてみるか。
俺はめを起き上がる。しかし誰もいない。


「あれ? 気のせいか?」


「やっと起きたのね、ご主人!」


机の方から声がする。机の端にちょこんと座っていた羽の生えた手乗り人形のようなものがこちらに飛んでくる


「遅いわよ! ご主人。今日から学校なんでしょ!」


妖精的ななにかなのか?シャルロ先生もたしかエルフだったし多分妖精だろう。


「·····どちら様?」


「え? リード様から聞いてないの? 私はプリムローズ。貴方のサポートをする為に派遣された妖精よ」


「サポート? 聞いてないな」


「やっぱり···まぁ、リード様はそういう抜けてる所も可愛いんだけどね!」


何故か誇らしげにしているプリムローズだが、そこは忘れちゃだめでしょリードさん···


「分からない事があったら聞いてね、ご主人!」


「その、ご主人は辞めない? 花月か桂樹でいいよ」


「そうね、わかったわ。これからよろしくね、桂樹!」


ニッコリ笑い朱色の髪の毛をなびかせる。
可愛い! 可愛いんだけどこれはロリコンとかそういうものではない。勘違いしないでよね!


「桂樹! お腹すいたわ、食堂行きましょ!」


「そうだな、寝落ちして夕飯食べてないし早く行くか」


ロッカーに入っていた新しい制服に着替える。
新しい制服着るとちょっぴり気分が高揚してくるのがわかる。
気持ち高らかに俺とプリムローズは食堂へ向かった。




うちの学校では寮生と通学組の二種類がある。
といっても学生寮は合計で10部屋。
それ以外の生徒は通学のため、寮に入る人は条件があり、かなり珍しいらしい。


食堂にはアスターとアキレア、その他には2人の女性が座っている。


「おっ、桂樹。おはよう。」


「おぅ、アキレアおはよう、アスターもおはよう。」


「おはよっ!花月君。あ、先輩っ!こちらの人が転校生の花月 桂樹君ですよ!」


「あらあら〜、どうも私は二年生のペチュニアと申します。」


「ガウラ···同じく二年···よろしく···」


ほんわかしている癒し系先輩のペチュニア先輩、小柄で無口なクールタイプのガウラ先輩。
なんだか親子か姉妹みたいだな。


「花月 桂樹です。よろしくお願いします! ペチュニア先輩! ガウラ先輩!」


「あら〜プリムローズちゃんも来てたのね。おはよう」


「おはよぉーです!ペチュニア先輩。ガウラ先輩!」


「花月···プリムローズ···朝ごはん冷めちゃう」


「桂樹! 早く食べようぜ! 昨日寝落ちして何も食べてないだろ?」


「アキレア、これで全員なのか?」


「いや、他にもいるけど依頼で昨日から居ないんだ」


「依頼?」


「そっか桂樹はまだ知らないよな。この寮に住んでいる人は全員、便利屋として学校内から来る依頼をこなして行くんだ。」


「なるほど、それで他の人達は居ないのか」


「ま、詳しくは先輩達が帰ってきたら教えるよ」


朝食を食べ終え、俺は一足先に職員室へ向かった


「失礼します。シャルロ先生いますか?」


「おぅ、来たな」


窓際で煙草を吸っているシャルロ先生、めっちゃ似合ってる。てか異世界にも煙草はあるのか。


「煙草、様になってますね」


「あぁ、ありがとう。朝は一服しないと仕事に集中出来ん」


「じゃあもうすぐ時間だし教室に向かうか」


自己紹介は済ませてる為、教室についてからは普通に授業をするようだ


「花月、異世界転移してきた事は誰にも伝えないでくれ」


「何故ですか?」


「異世界から転移出来ると公に知られてしまったら悪事に使われかねんからな」


そりゃそうだ、それにたくさん呼んできたら日本じゃ失踪事件とかになりかねないし、


「わかりました。善処します」


教室へ向かい、授業を受けた。魔法学、能力学、装備学、など様々な変わった授業がある、まだ全員、入学から1ヶ月ということもあり、授業自体は分からないなりにどうにかなってると思う。


何とか今日の授業は終わった。
挨拶が終わりアスターが近づいてくる。


「花月君! 今日これから依頼が来るらしいから寮に戻ろ!」


「わかった、けどアキレアは行かないのか?」


「アキレアは掃除当番で遅れるってさ」


箒を持ったアキレアが声をかけてくる


「そういう事だから桂樹、先頼むわ」


「花月君にとっての初依頼、頑張ろうね!」


「そうだな、俺に何が出来るかはいまいちわからんけど頑張るよ」


初依頼かぁ、まぁ頑張ってみるか
なんだか勇者からどんどん離れていく気がする。
 

そんな事を考えながら寮へ足を運んだ。









コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品