ソルミア魔獣討伐記〜魔獣になった彼女と共に〜
3話
「よっ…と。う〜ん、やっぱり重力は操り辛いな…スキル構成が悪いのかな…」
飛び上がった時とは正反対の速さで降りてきた男は、天使のようにふわりと俺たちの前に何かを呟きながら着地した。外見は天使とは正反対だが。
「さ〜て、直人くんと芽衣さん。これで私の遊びに興味は持ってもらえたかな?」
「…確かにあなたが特殊な力を持ってることは分かりました。だけどそれとこれとは違う。俺はメイを異世界だろうが何だろうが、危険な目に合わせるわけにはいかない。申し訳無いけど諦めてください」
「ナオくん…」
俺はさっきの力を見て決めた。勿論、俺にだって異世界とか魔法に憧れがないわけじゃない。だけど、男が本当に異世界人ならば、そんな得体の知れない力で溢れていて、小説通りならばモンスターとか盗賊とか、死に至るような危険があるかもしれない世界に俺はメイを連れていけない。
俺は異世界よりもメイがいればそれだけでいいってことに気づいたんだ。
「…ふ〜ん。さっき言ったこと覚えてる?君たちに拒否権は無いってこと。その上で言ってるんだったら私は君たちを尊敬するよ」
「…もし無理やり連れていくってんだったら、やれるものなら俺だけで。だけど、メイを行かせるのだけは無理です」
…やばい、さっきからかっこつけたことばっかり言ってるけどそろそろ心臓が限界だ。周りに響き渡ってるんじゃないかと思うくらいの拍動をなんとか抑えながら、俺は男の目を睨む。
「…あ〜あ〜あ〜。そういうのさ、本当にいらないよ、直人くん。恋とか愛とか下らない。反吐が出そうだ」
何だ?あいつの表情が急変し、作り笑いを浮かべていた顔は憎悪に満ちている。背筋にぞくりと寒気が走る。一層強くメイが抱きしめてくるのを感じるが、感触を気にする余裕も今の俺にはない。
全くもって目の前の男から逃げられる未来が見えない恐怖に戦慄が走る。どうすれば逃げられる?どうすればいい?どうすれば…
「はぁ〜。気が変わったよ。最初は穏便に連れて行こうと思ったんだけどな。その代わりにと言ってもなんだけど、君たちのその愛情という名の泥に免じて一つ呪いをかけてあげよう。何、可愛いものさ、本当にね」
そう、男が言った瞬間だった。眩いばかりの光が辺りを包みこみ、俺は首筋に何かを当てられるのを感じた。
避ける間もない、ほんの一瞬のこと。目の前の理不尽な相手からメイを守ることだけを常に考えていた俺が、光によって怯んだその一瞬。それが俺の人生を狂わせる最初で最大の間違いだった。
意識がなくなる寸前、俺が最後に聞いたのは男のこの一言だった。
「人は愛する者に手を出されたら、いったいどれほどの力を発揮できるんだろうね?」
読んでくれてありがとうございます。
飛び上がった時とは正反対の速さで降りてきた男は、天使のようにふわりと俺たちの前に何かを呟きながら着地した。外見は天使とは正反対だが。
「さ〜て、直人くんと芽衣さん。これで私の遊びに興味は持ってもらえたかな?」
「…確かにあなたが特殊な力を持ってることは分かりました。だけどそれとこれとは違う。俺はメイを異世界だろうが何だろうが、危険な目に合わせるわけにはいかない。申し訳無いけど諦めてください」
「ナオくん…」
俺はさっきの力を見て決めた。勿論、俺にだって異世界とか魔法に憧れがないわけじゃない。だけど、男が本当に異世界人ならば、そんな得体の知れない力で溢れていて、小説通りならばモンスターとか盗賊とか、死に至るような危険があるかもしれない世界に俺はメイを連れていけない。
俺は異世界よりもメイがいればそれだけでいいってことに気づいたんだ。
「…ふ〜ん。さっき言ったこと覚えてる?君たちに拒否権は無いってこと。その上で言ってるんだったら私は君たちを尊敬するよ」
「…もし無理やり連れていくってんだったら、やれるものなら俺だけで。だけど、メイを行かせるのだけは無理です」
…やばい、さっきからかっこつけたことばっかり言ってるけどそろそろ心臓が限界だ。周りに響き渡ってるんじゃないかと思うくらいの拍動をなんとか抑えながら、俺は男の目を睨む。
「…あ〜あ〜あ〜。そういうのさ、本当にいらないよ、直人くん。恋とか愛とか下らない。反吐が出そうだ」
何だ?あいつの表情が急変し、作り笑いを浮かべていた顔は憎悪に満ちている。背筋にぞくりと寒気が走る。一層強くメイが抱きしめてくるのを感じるが、感触を気にする余裕も今の俺にはない。
全くもって目の前の男から逃げられる未来が見えない恐怖に戦慄が走る。どうすれば逃げられる?どうすればいい?どうすれば…
「はぁ〜。気が変わったよ。最初は穏便に連れて行こうと思ったんだけどな。その代わりにと言ってもなんだけど、君たちのその愛情という名の泥に免じて一つ呪いをかけてあげよう。何、可愛いものさ、本当にね」
そう、男が言った瞬間だった。眩いばかりの光が辺りを包みこみ、俺は首筋に何かを当てられるのを感じた。
避ける間もない、ほんの一瞬のこと。目の前の理不尽な相手からメイを守ることだけを常に考えていた俺が、光によって怯んだその一瞬。それが俺の人生を狂わせる最初で最大の間違いだった。
意識がなくなる寸前、俺が最後に聞いたのは男のこの一言だった。
「人は愛する者に手を出されたら、いったいどれほどの力を発揮できるんだろうね?」
読んでくれてありがとうございます。
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