夢源華守姫のノエシス
至宝五月と生徒会長
☆暁中学校門前
「はぁ、ふぅ……と。……っあ!」
坂を駆け上がり五月が校門にまで辿り着くと、見知った少年がこちらに目角を立てているのが眼界に入った。
端整な容姿とアルビノな白髪、赤みがかった瞳。この少年は不知火凪斗暁中学の生徒会長であり、五月とは同学年の二年生でもある。今は挨拶運動中らしい。
「お、おはよう。凪斗くん」
「……遅刻ギリギリだ。副会長」
「うっ……今日も切れ味バツグンの皮肉っぷりだね……」
ぎこちない挨拶を嫌味で返され、五月はしゅんとなりながら返事をする。
そう実は五月は、暁中の生徒会委員で、しかも、副会長なのだった。
「会長として然るべき注意を促したまでだ。遅刻だけならまだ許せる……だが、時と場所を問わず行われる超能力の修練と題した君の珍奇な行動は生徒会の悩みの種だからな。いわゆる、問題児。言いたい事は山ほどある。だいたいなんだ、その妙ちきりんな髪留めは。僕達は取り締まる側だぞ。そもそもだな――」
「あ、あはは~凪斗くん。低気圧なのはよく分かるんだけど、こっちは低血圧、なんだよ? 朝からお説教はかんべんしてよ~」
「……なんだ、今のは。もしかして、韻を踏んだつもりなのか……? いや、とりあえず、君の益体の無い駄洒落は置いておくとして、だ。――そもそも――」
一瞬、惚けた凪斗だったが、すぐ気を取り直す。
(うぅ、駄目だったかぁ……凪斗くん、こうなると長いんだもん。駄洒落でも何でも凪斗くんの説教を中断させる、きっかけなってくれれば……って思ったのに。……よ、よ~し、こうなったら……!)
「あぁ~! そうだった~!」
小言の再開を測る凪斗に、二の句を継がさない勢いで五月がわざとらしい声を上げた。
「私、今日日直だったんだ~! 日直という字は、その《日》になったら《直ち》にだからね。時間までに不在だったら、他の生徒や先生に迷惑かけちゃうだろうし! と、いうわけで凪斗くん。その話しはまた今度ということで……! じゃーねー!」
(このまま話しを聞いてたら、本当に遅れちゃうもんね)
五月はやや力技で会話を打ちきり、そして背後から、「至宝! 話はまだ――」そう呼び止める凪斗の言葉を振り切ってその場を後にする。
「はぁ、ふぅ……と。……っあ!」
坂を駆け上がり五月が校門にまで辿り着くと、見知った少年がこちらに目角を立てているのが眼界に入った。
端整な容姿とアルビノな白髪、赤みがかった瞳。この少年は不知火凪斗暁中学の生徒会長であり、五月とは同学年の二年生でもある。今は挨拶運動中らしい。
「お、おはよう。凪斗くん」
「……遅刻ギリギリだ。副会長」
「うっ……今日も切れ味バツグンの皮肉っぷりだね……」
ぎこちない挨拶を嫌味で返され、五月はしゅんとなりながら返事をする。
そう実は五月は、暁中の生徒会委員で、しかも、副会長なのだった。
「会長として然るべき注意を促したまでだ。遅刻だけならまだ許せる……だが、時と場所を問わず行われる超能力の修練と題した君の珍奇な行動は生徒会の悩みの種だからな。いわゆる、問題児。言いたい事は山ほどある。だいたいなんだ、その妙ちきりんな髪留めは。僕達は取り締まる側だぞ。そもそもだな――」
「あ、あはは~凪斗くん。低気圧なのはよく分かるんだけど、こっちは低血圧、なんだよ? 朝からお説教はかんべんしてよ~」
「……なんだ、今のは。もしかして、韻を踏んだつもりなのか……? いや、とりあえず、君の益体の無い駄洒落は置いておくとして、だ。――そもそも――」
一瞬、惚けた凪斗だったが、すぐ気を取り直す。
(うぅ、駄目だったかぁ……凪斗くん、こうなると長いんだもん。駄洒落でも何でも凪斗くんの説教を中断させる、きっかけなってくれれば……って思ったのに。……よ、よ~し、こうなったら……!)
「あぁ~! そうだった~!」
小言の再開を測る凪斗に、二の句を継がさない勢いで五月がわざとらしい声を上げた。
「私、今日日直だったんだ~! 日直という字は、その《日》になったら《直ち》にだからね。時間までに不在だったら、他の生徒や先生に迷惑かけちゃうだろうし! と、いうわけで凪斗くん。その話しはまた今度ということで……! じゃーねー!」
(このまま話しを聞いてたら、本当に遅れちゃうもんね)
五月はやや力技で会話を打ちきり、そして背後から、「至宝! 話はまだ――」そう呼び止める凪斗の言葉を振り切ってその場を後にする。
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