話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

色災ユートピア

0名

30.ラスト アンコール

荒れ果てた土地を歩き続け、やがて遠目に街のようなものが見え始めてきた。

「お、見えてきたな。あれが俺と枉徒の、元いた場所だ。」

「私はここで育ったんですね…。」

言われてみれば、懐かしい感じが胸に込み上げてきた。
四人が進もうと一歩踏み出すと、ピキッ、と亀裂が入るような音がした。
それに気付いたS.0は振り返る。

「…ゼロ、どうかした?」

「…いや、なんか、音が鳴ったような気がして……。…気のせいか。」

!!!」

ドンッ、と突き飛ばされて、よろけるS.0。
何かが貫かれるような音が響き、生温かい何かが頬についた。

「やぁ…無事……?」

「コドク……?」

ぽたり、ぽたりと鮮血が流れ落ちていく。

「良かった…あとはよろしく……………。」

S.10は嬉しそうに笑い、そのまま目を閉じた。
支えるものを失い落下する肉体を、S.0は受け止める。

「…………。」

S.0はそっとS.10を地面に寝かせて、立ち上がる。

「赦無、白理、枉徒、気合い入れろ。来るぞ。」

ぞわりと身の毛がよだつ。
それがS.0のものなのか、あるいは来たる敵のものなのかは分からないが。
赦無たちは武器を構える。

それと同時に、真っ黒い壁のようなもので囲われ、逃げ道を失った。
空間が裂けてそこから出てきたのは、人の形をした何かだった。

───見覚えがある。

「なんで……」

そう…出てきたのは、赦無が殺したはずの両親だった。
それがヘレティクスなら遠慮なく殺せていただろう。
だが、目の前にいる二人は、どことなくヘレティクスとは違う。

『ごめんなさいシャナ…私たちが悪かったわ…。』

『ごめんなハクリ、俺たちはお前のことを全く考えてやれなかったよ…。』

酷く目眩と吐き気がした。
人格が変わったどころの話ではない。
もはや、別の存在だ。

『でも、俺たちは反省したよ…。本当にすまないと思ってる。』

『それに、私は取り返しのつかないことをしてしまった…。ごめんなさい、レイ。私はあなたを殺した。産まれてくるはずだったあなたを、私たちは身勝手なエゴで殺してしまった…。』

「え……?」

『全部を許してほしいとは言わないわ…、でも、今度は三人で暮らしましょう?あなたと、シャナと、ハクリで。』

『これでお前は、望んでいた二人の"お兄ちゃん"になれるんだ。今度こそ、本当に家族になれるんだ。』

「ふざけるな…俺の弟を…かくりを殺しておいて、俺を殺しておいて何が家族だ…。貴様らさえいなければ…!貴様らさえいなければ、俺も、幽も、赦無も白理も幸せだったんだ…!」

『何を言っているの?その子はうちの子じゃ───』

言い切る前に、S.0が飛びかかる。
切って、突き立てて、抉って。
それは、怯える子供の反撃のように見えた。

「お兄様、事実確認は後です。今は、あっちを殺しましょう。」

「…そうだね白、ゼロを死なせちゃいけない。コドクだって…助かる可能性はあるんだ。やろう、二人とも。」

白理の一言で我に返った赦無は、S.0からもらったナイフを構える。
そして、白理とともに、男の方に襲いかかった。

切り付ける度、断末魔と謝罪が聞こえた。
三人を取り込もうと、どす黒い何かが暴れる。
枉徒の正確な援護射撃もあって、やがてソレは、ついに動きを止めた。

「はぁ…はぁ……。」

三人は息を切らして、地面に座り込む。
枉徒もへたりと、地面に腰を下ろした。

「終わった…、これで終わったんだ……。きっと…これで……。」

重い体を引きずって、S.0はS.10を抱きしめる。
泣きそうな顔で、笑っていた。

「ゼロ……。」

初めて見るS.0の表情に、三人は戸惑いを隠せなかった。
だが、嬉しそうにしているS.0を見て、ふと安堵する三人。

だが───

「………!!!!」

S.0の背後に、黒い影。
ドロドロに溶けたそれは、アウトサイダーに酷似している。

手を伸ばしても、届かない。
必死に叫ぶが、刹那の時間もない。

ドスッ、と貫かれるような音が響き、立て続けに何かが潰され、破裂する音が聞こえた。

「ふん…監視者が初めに死んでどうする、馬鹿なのかコイツは。」

「それを言ったら、もれなくマスターも馬鹿ということになってしまいますよ。」

変質した両親は、跡形もなく、塵も残さずに消滅した。
視線を向けると、そこにはあの仮面の人物…エクリプス・メアと、咎喰がいた。

「最後の最後で油断するのはゼロの悪い癖です。相手は抹消してからでないと、安堵してはいけませんよ。」

「二人とも…。」

「…長かったな、ここまで。」

ようやく悲願が達成されたような、そんな声だった。

「なぁ…こいつ、死ぬのか…?ここまで来て…この程度で……。」

「あれは、根本的にアウトサイダーと同じものです。理をねじ曲げることも可能でしょう。あなたたちには効かなくても、私たちにだけ効果がある。」

「どうにか出来ないの…?」

赦無は心配そうな顔で、そう尋ねた。
咎喰は笑っている。

「安心してください、私はそのために生まれてきたんですから。コドクは私を自分自身のバックアップとして生み出し、武器 咎喰という役割を与えました。そして、コドクが何らかの理由で活動を停止した時、それを再開させるのが、私です。」

「それじゃあ…あなたはどうなる?」

「大丈夫ですよ、また会えますから。少しの間の辛抱です。だから───」

咎喰は二本の腕で、ぎゅうっと二人を抱きしめる。

「だから、。」

ずっと大好きだよ、と言い残し、咎喰は消えた。
それと同時に、酷い眠気に襲われた。
抵抗も虚しく、赦無、白理、枉徒はそのまま深い眠りへと落ちていった。

「色災ユートピア」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く