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色災ユートピア

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25.作戦

学園祭最終日、赦無、白理、枉徒はシーリスとシオンを連れて、出し物を見て回っていた。
驚いたことに、二人はこういう経験がないらしく、屋台そのものも見たことがない、というのだ。
それでも、二日前と比べてだいぶ調子が戻ってきているように見えたので、連れてきたことは間違いではなかったのだろう。

白理たちを襲った怪物が出現したこと以外は、特に問題もなく、学園祭は当初の予定通り進められていた。
三年生の、無駄に洗練された無駄のない無駄な動き。
何を言っているのか分からないと思う。
だが、本当にそういうしかない。
そして、そんな動きを三年生がノリノリでやるものだから、観客は爆笑。
腹筋が崩壊する、と何とツッコめばいいのか分からない声も聞こえてきたほどだった。

そして、学園祭も無事に終わり、赦無たちはシーリスとシオンを連れて、ディープ・ネロの本拠地に戻ってきた。

「ここがあんたたちの本拠地?なんか、随分ぼろっちいっていうか…可愛げがないのね。」

「機能すれば何でもいいよ。二人の部屋はこっち、一応お忍びってことだからね。」

「大人気アイドルのお二人には、このベッドは合わないでしょうけど、我慢してください。」

「部屋の中も超せまいし…。」

「…お金持ちはこれだから。」

両親が死んでからの幼少期、それは普通の子供にとって過酷なもので。
壊れかけた社の中で、雨風を凌いだりすることは既に経験済みだ。
いくら無機質だろうと、設備さえ整っているのなら、双子にとってそれ以上望むものはないのだろう。

「ともかく、君らがいるってことがバレるとすごく面倒なことになる。別の施設に行ったり、外に出る場合は顔を隠して。」

「まぁ、ここにいてもらった方が安全なんですけどね。」

「どうしてよ。」

「このディープ・ネロの本拠地は、一種の結界みたいなものなんです。だから、侵入者がいる場合は即座に気付けるし、罠なども任意で発動させられるみたいなんですよ。」

枉徒がニコニコと笑いながら説明する。
まるで要塞みたいね、と若干引き気味にシーリスが呟いた。
だが、それほどならば、ある程度は危機をしのげるだろう。
そして、さらに言えば、ディープ・ネロの本拠地を知っている者は少なく、知っていても好き好んで入ってきたりはしない。
そもそもディープ・ネロ以外は立ち入り禁止の領域であるため、入ってきた場合は、大抵ろくでもない人間である。

「この人数になると、晩御飯の材料が足りるか心配ですね。」

「そうだね…。」

「でも、だからと言って誰かが買い出しに行けるわけでもありませんよね……。」

どうしようかと悩みつつ、赦無は部屋の扉を開ける。
その瞬間───

「「「きゃあああああ!!?」」」

枉徒、シーリス、シオンから、甲高い悲鳴が上がる。
その悲鳴に驚いた赦無と白理は、ビクッと身体を揺らした。

何事かと視線を向けると、そこには咎喰が佇んでいた。
これには別に驚かなかったが、大きい音にはビックリする双子だった。

「咎喰ちゃん、こんなところで何をしていたんですか?」

その問いに、咎喰は人型に戻り答えた。

「食料に困るかと思いまして、予めこちらで買い出しをしておきました。あと、咎喰だと本当に女の子に間違えられてしまうのですが…。」

「ドクちゃんもドクちゃんなので、咎喰ちゃんと呼ばせていただきます。」

「むぅ…仕方がないですね、その代わり私も妹ちゃんと呼ばせていただきますよ。」

お互い頷き、納得したようだ。
赦無は首をかしげる。

「なんで、わざわざ驚かすような形で立ってたの?」

「いやぁ、驚いてもらえるかなーと思いまして。つい、出来心で。」

「出来心でやらないでよ!?心臓止まるかと思ったじゃない!」

「そういうのが好きなので、やらないでと言われると余計にやりたくなってしまうのですが。」

「性格ひん曲がってない!?」

枉徒とシオンは、未だにブルブル震えたまま。
シーリスはギリギリ、ホラー系に耐性がある、といったところだろうか。

「咎喰ちゃんはどうやらイタズラとかが大好きそうですね。私も大好きです。」

「ありがとうございます、妹ちゃん。それでは、買ってきた食材はここに置いていきますので、また何か用があればお呼びください。」

そう言うと、咎喰は黒い球体に姿を変えて、すうっと机の横に降り立った。
便利だなぁと思いつつ、赦無たちは咎喰の好意に甘えることにした。




そして、ほぼ同時刻。
ナナキ、S.0、S.10はサラマンドラ族の長の元を尋ねていた。

「おぉ、ナナキ殿!随分と早い再会だ!」

サラマンドラ族の長はナナキの手を握り、嬉しそうに笑っている。

「それで、如何されたかな?」

「実は渡したいものと…少し相談がありまして。まずはこちらの方をご覧下さい。」

ナナキはそう言うと、学園祭の時に撮影したライブ映像を流す。

「こちらが娘さん方だと思います。どうでしょう、見覚えはありますか?」

「ふむ……。」

サラマンドラ族の長は、険しい顔つきで映像とにらめっこしている。
それから少しして、ふと口を開いた。

「あぁ、うちの娘で間違いない。首にかかっているネックレスが見えるだろう?あれは、私と妻が二人にプレゼントしたものでね。オーダーメイドだから、同じものはないはずだ。」

「よかった…。」

ナナキはほっと胸をなでおろした。

「…まだ、身に付けていてくれたのか。親の顔も覚えていないだろうに……。」

「そのことで相談があるんです。二人に話を聞くと、二人の父親はアルフ族だと言うんです。」

「何……?」

「どうやら、助けられた後に拾われたというか、誘拐されたというか…。コドクたちの話だと、その父親を名乗るアルフ族は、二人を利用してお金稼ぎをしているみたいです。」

「そ、それは本当か!?」

「はい、コドクたちが言うんだから、間違いないと思います。その真偽を確かめるために、皆さんに協力していただきたいのですが…。」

「分かった。願ってもないことだ、こちらも全力で協力させてもらうことにしよう。我々はどうしたらいい?」

「父親だと触れ回るアルフ族の本拠地に、二人を潜入させます。それにあたって、俺と一緒に人身売買に協力してほしいんです。あくまで騙すだけなので、心配しないでください。」

「…分かった。」

「ありがとうございます!」

「いや…、礼を言うのはこちらの方だ。国も違う私たちのために、力を貸してくれて感謝する。本当にありがとう、そしてよろしく頼む。」

「はい!」

ナナキの目には、強く決意の色が浮かんでいた。

この日から、サラマンドラ族を巻き込んだ、潜入調査が始まった。
矛盾のない噂を撒き、S.10に感情を喰われて以来、人が変わったように謙虚になったナナキの兄 ミカゲを通して、アルフ族に。
何かの力が働いているかのように、作戦は滞りなく進んだ。

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