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色災ユートピア

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21.待ちに待った学園祭

早五日が過ぎた。
今日は学園祭、延期することなく行われた学園祭では、去年と比べても圧倒的な入場者数だった。

そして、その学園祭には、S.0はもちろん、ナナキとS.10も訪れていた。

「いやしっかし、すっげぇ人だな……。」

「学園祭ってこんなに賑わうものなのか?」

「あの三人がいるし、大人気アイドルも飛び入り参加するみたいだよ。」

「それってサラマンドラ族の長の娘さんたちか?」

「そうそう、名前はたしか…シーリスとシオンだったかな。シーリスが妹、シオンが姉。シオンはお淑やかだけど、シーリスはツンデレ。」

「ほー、なら元気に歌って踊る勇姿を、動画で撮って送ってやるか!」

「それならきっと喜ぶね。僕らには特等席が用意されているから、席取りの心配はないよ。」

「予定も決まったし、あの三人のところに行ってみないか?軽食を取るには充分だろ。」

S.0の提案に、二人は賛成する。
しかし…知らない人間が見ると、従兄弟の子供を預かって遊びに来たお兄さんに見える。

三人は赦無たちが開く喫茶店へと向かう。
不思議なことに、喫茶店を開いている教室前には、何故か凄まじい人集りが。
並んでいるわけではなく、何かを見て興奮しているようだ。

「なんだあれ?」

「野次馬かな、僕らには関係ないだろうし入ろう。」

「放っとくの!?」

ナナキのツッコミ。
中で何が起こっているのか分からない。
赦無は無表情だが、ああ見えて仲間思いの隊長だ。
白理や枉徒に何かあれば…想像に難くないだろう。

「いらっしゃいま───あ」

目と目が合う。
三人の前には、メイド服を着用した黒髪の美少女がいる。
瞬時に状況を理解した、S.0とS.10は、必死に笑いを堪えようとした。

「ひーっ!な、何だそれ…!誰に着せられたんだよ…!」

「ちょ、腹筋…!腹筋崩壊する…!」

「二人して笑わなくてもいいじゃん…。」

ちょっと拗ねたように眉をひそめる少女(?)。
ハッとナナキが我に返る。
そして、一言。

「お前やっぱり…女の子だったのか…!?」

「ナナちゃんまで酷い。俺は男だもん、お兄様だもん…。」

「お兄様〜!」

向こうから、白い髪の執事の格好をした人物が、笑顔で走ってきた。
お兄様、ということは白理だろう。

白理は男装でも似合うのかぁ、と見当違いな感想を持つ、センチネルの二人。

「あ、おはようございます、来ていたんですね!」

「おはよう白理、これはいったいどういうことなんだい?」

「一応喫茶店なので。まぁ、クリーチャーの被り物をした店員もよく見かけますけど。何故かお兄様がお姉様に、私が僕になってしまいました!」

「外の人集りはそれか…。よく似合ってるけどな。」

「嬉しくないよゼロ…。」

「ん?枉徒はどうした?」

S.0が、不思議に思い尋ねる。
いつもなら二人のそばを着いて回る枉徒がいない。

「枉徒ちゃんは、恥ずかしがって出てこられないんですよ。後で連れてきますね。」

「恐ろしいなお前。」

「枉徒ちゃん、メイド服がよく似合ってましたよ〜。」

「それはちょっと気になるけどさ…。まぁいいや、白理、オーダー頼めるか?」

「はい!こちらメニューになります!」

「用意周到だな!」

というかどこから取り出したんだ!とツッコミたくなるナナキ、だがこの双子にとっては日常茶飯事なことだろう。

「お、じゃあ俺、ハンバーグとホットケーキにする。」

「朝からガッツリじゃん。軽食は?」

「ハンバーグ美味いんだよ、美味いんだ。」

「よほど美味しかったんだねぇ。」

しっとりした視線を向けるS.10。
S.0は子供のように目を輝かせている。

「じゃあ僕はココアとフレンチトーストにしようかな。」

「俺は…コーヒーとバタートーストで。」

「分かりました、お好きな席でお待ちください。お兄様、行きましょう!」

「せめて服だけ着替えたい…。」

そんな願いも叶うことなく、赦無は白理に引きずられていった。
祭り好きは子供の性だろう。
そんな二人の様子を見送って、三人は正面が見える席に着いた。
忙しなく生徒たちが動いている。

「やっぱり学園祭はいいよなぁ、こういうイベントは絶対に必要だ。」

「ナナキはこういうのに参加したことあるの?」

「俺にも学生時代はあったからな。うちの先輩たちはすっげぇバカやらかす人たちでさ、度々問題にされてたんだけど…最終的には教師も諦めて、恒例行事みたいな感じで増えたのもあったんだよ。」

「そりゃいいな。」

「というか、何やらかしたの?」

「その伝説は数知れず、というか多すぎて覚えてないっていうな。それでも、ボランティアには人一倍関心を持って参加してた人たちだよ。」

「だから釣り合いが取れてたんだね。」

「おう、冬になれば近所の子供を集めて、滑り台とか作って遊んでたし。」

「平和な世界だったんだな。こっちじゃあ、いつもヘレティクスと追いかけっこだぞ。」

「何かやらかすと拘束されて、説教されるんだよね。もしくは写経。」

「なんでそこで写経が入ってきた!?」

「正座が辛いから?」

「そんな適当な理由でいいのかよ!」

「実際それで一時的には鎮圧出来てるからな。でも、新しい統率者が生まれると、またやらかすんだ。バカだよな。」

「バカだよね。」

「救いようがないくらいバカだ…!男子中学生のノリだ…!」

「それは男子中学生のノリがバカだと言っているようなものだけど。」

「いや、だってたまーに突拍子もないことやり始めるだろ?」

「うーん、間違ってないから何とも言えないなぁ。」

と、昔やらかしたことがあるS.10が申した。
三人が適当な雑談を交わしていると、三人が頼んだ食事が運ばれてきた。

「お待たせしました〜。」

「お、お待たせしました…!」

やって来たのは白理と枉徒だった。
そして、白理はいつの間にかメイド服に着替えていた。
おそらく赦無と交換したのだろう。

「二人とも似合うね〜、短すぎず長すぎずが最高だと思う!」

「コドクさん、なんだか爺やっぽいです!」

「まー、枉徒に似合わない服を探す方が大変だろ。」

「ゼロお兄ちゃんさんまで!」

「やはり私の言う通り枉徒ちゃんは可愛いんですね!」

「んー、お前もどっこいどっこい。」

「うな?」

S.0の言葉に、白理は首を傾げた。

「そういえば、お前たちは劇をやるって聞いたぞ。何時からなんだ?」

「私たちは十時半からです。場所は体育館ですよ。」

「楽しみだな、何の役をやるんだ?」

「なんでか主役に抜擢されたんですよね〜。個人的には草の役とかやってみたかったんですけど。」

「迫真の草の役ってどうなんだ…。」

「セリフがない分、ですよねぇ。」

料理を運び終えた二人は、別れを告げてまたすぐに仕事に戻っていった。
なんだかんだ馴染めている二人を見て、ナナキとS.0は安堵した。

それから食事を終えて、三人はそれぞれ別行動をしていた。
S.0が綿あめを頬張りながら見回っていると、ふと見覚えのある後ろ姿が。
今日は仮装する日じゃないと思いつつ、S.0は背後から肩を叩く。

「おーいコドク、今日はハロウィンじゃないぞ。」

「!」

振り返ったその人物は、仮面をつけていた。
唖然として口を開いたまま固まっている。

「お、その仮面イケてるな、どこで売ってたんだ?」

「……………。」

「おーい、黙り込んでどうした?体調でも悪いのか?綿あめやろうか?」

いくら話しかけても応えない。
だが、その代わりS.0を一瞥すると、霧のように姿を消した。

「無視か…お兄ちゃん悲しいぞ……。」

若干しょんぼりしつつ、時計を確かめると、十時過ぎだった。
そろそろ集合場所に向かうか、と道中綿あめとチョコバナナをもう一つ購入して、集合場所へと向かった。




集合場所に向かうと、既にS.10とナナキが席に座っていた。

「遅かったねゼロ。」

「綿あめとチョコバナナ買ってたからな。ってかお前、ハロウィンじゃないのに仮装してたろ。」

「…?してないけど。」

「んじゃ、さっき会ったのは誰だよ。紛うことなきお前だったぞ。」

「いや、"僕は"ゼロに会ってないよ。別れてからここに来るまで、ゼロとはすれ違ってもいない。」

「…………。」

「…………?」

顔を見合わせる二人。
S.0の顔が、サァッと青くなった。
それを見たS.10がニヤッと笑う。

「まさか幽れ───」

「んなわけないだろ馬鹿野郎!幽霊なんて存在しないんだよ!」

珍しく怯えた様子のS.0、どうやら幽霊やお化けが苦手なようだ。

「お前、怖いのが苦手なのか?」

「怖いのなんてみんな苦手だろ!好奇心で見るだけで!」

「いや、僕は恐怖なんてないから怖いの平気だけど。ゼロはいつまで経っても赤ちゃんだねぇ。」

「こちとら産まれる前に死んでるからな!」

「しっかし、幽霊より恐ろしい状況下にいるのに、何で怖いんだ?」

「だってあいつら触れないだろ!」

「落ち着いてゼロ、君も同じようなものだよ。ヘレティクスも幽霊も同じだよ。」

「俺も幽霊……?」

「おい、精神が限界を迎えそうだからやめて差し上げろ!可哀想だろ!」

「いやー、ごめんね、からかうのが楽しくってさ。冗談だよ冗談、幽霊なんているわけないじゃん。いたならこの世界は幽霊で溢れかえってるし、人間以外の存在だっているだろうからね。」

「だ…だよなー!幽霊なんているわけないよな!」

「そうそう、そんな非現実的な存在がいるわけないじゃん。」

今まさに、非現実的な存在が二人で話し合っているのだが、とナナキは思う。
どこからツッコもうかと悩んでいると、ブーッとブザーが鳴って、体育館が暗転した。

『間もなく、一年A組による演劇が始まります。もうしばらくお待ちください。』

アナウンスが流れる。
S.0が席に着いて待っていると、少ししたら幕が上がった。
盛大な拍手と、歓声が響く。
そして、劇は少女の一言から始まる。

「まだ人間が、ロウソクに頼っていた時代。ある小さな村に、とても仲のいい、兄妹たちがいました───」

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