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色災ユートピア

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14.たとえ血が繋がっていなくとも

総司令室の前までやって来た赦無、白理、枉徒、そしてS.0。
赦無は一応、ノックをして部屋に入る。

「来てやったぞ。」

「ご苦労、…そっちのやつが、センチネルの統率者か?」

そう言うと、ミカゲはS.0を指さした。
赦無は不機嫌そうに眉を顰める。

「あぁ、S.0センチネル・ゼロだ。」

「ふむ…隣と比べると貧相な体つきだが、なかなかの"美女"だ。特別に俺の嫁にしてやろう。」

「いや、そういうの間に合ってるんで。」

No!の意思をしっかりと示したS.0。
相変わらず女好きだなぁ、と呑気に考えている白理。
ミカゲの頭の中の構造は、いったいどうなっているのだろうか。

「で、俺は何をしたらいいんだ?情報提供か?」

「ゼロのスルースキルが半端ないですね。」

あっさり振られたミカゲを、白理はケラケラと笑っていた。
確かに、言われてみたら慣れている感がある。

「うぐぅ…貴様まで…。」

「…いやほんとに、何で呼び出されたんだ?」

「よくあることだから気にしないで。白を嫁にするとか、枉徒を嫁にするとか、ほざいてるだけ。仕事しない。」

「ダメなやつだな、嫁探しに来ただけか。」

「だっ、誰がダメなやつだ!!!!」

「なら言わせてもらうが。」

S.0は前に歩み寄って、じっと見つめる。

「お前、ナナキ・ハヤセの兄だろう。弟の噂を聞き付けたお前は、コネの力でここまで来た。じゃなきゃ、こんな場所、お前のような者が来るはずがないからな。」

「ッ…その情報、どこから…!」

「俺には優秀な部下がたくさんいる。お前みたいなやつの情報を集めることは容易い。で、未成年愛者のお前は、あわよくばこいつらを権力と金で手に入れようとした。でも、こいつらはそれじゃあ動かなかった。と、いうか反感を買っただけだったみたいだな。」

「貴様……!」

「その点、ナナキは賢かった。だからこそディープ・ネロは上手く成り立っていたんだろう。もし最初に来たのがナナキじゃなくて、お前のようなやつだったら、確実に殺されていただろうし、こいつらも人間の味方はしなかっただろう。」

「センチネルだかなんだか知らないが、俺はアルフ族だぞ!貴様らよりずっと優れている!」

「そうだな、だがお前たち新人類は力を持つだけあって領域から脱出した試しはない。旧人類の方が、まだ脱出する可能性がある。」

「新人類が、旧人類風情に負けるとでも言うのか!?」

「さてな、勝ち負けなど俺にはどうでもいいことだし。そもそもお前、こいつらがどれだけ傷付いてここまで来たと思ってる?椅子に座ってふんぞり返ってるお前は、一瞬の判断で命取りになる命の奪い合いをしてきたのか?」

「ふん、そんなもの必要ない!俺は選ばれた種族だからな!」

「そういうやつは領域で嫌という程見てきたが、傲慢なやつに限って簡単に死んでいくんだよ。泣き喚いて、叫んで、そうして苦痛と絶望の中で死んでいく。お前みたいに、自分の力を過大評価しているやつほどな。」

「なんだと……!?」

「領域じゃあお前ら新人類の能力なんて、意味を成さない。頼れるのは自分の力だけだ。旧人類はその点、そういうのが当たり前だったみたいで、おしいところまで行ったやつはたくさんいたよ。」

「ッ…貴様…俺を愚弄するのもいい加減にしろ…!!!!」

「事実を述べているだけだ。よく白理のことを狂人だ、非道なやつだと騒ぎ立てる人間がいる。赦無のことを、天才だと嫉妬するやつもいる。だけどな、それがこいつらの伸ばすべきもので、お前らはそれに救われてる。こいつらが初めから強かったなら、白理だって殺されかけることもなかった。」

S.0は、怒りを押し殺したような表情で、そう告げた。
S.0がここまで怒っている姿は、長く付き合いのある赦無と白理でも、見たことがない。

「俺はそれでいいと思うよ。虐殺が大好きでも、他人のことが考えられなくても。戦闘や殺し合いは、気合いじゃどうにもならない。こいつらが強いのは当たり前だ、どんな人間より努力してきたんだから。死のうが、潰されようが、殴られようが、それでも諦めずに勝ち取った強さなんだ。そして、今の在り方が、こいつら自身の存在証明だ。それを否定して汚そうとするお前を、俺は許せない。」

「ゼロ…」

「まぁ、少し忠告でもしようか。ヘレティクスとセンチネルは別の思考をする同一生命体だ。それは間違いじゃない。だけどな、あいにくセンチネルというよりアウトサイダーに近い。俺に手を出してみろ、アイツらは禁忌を犯してでもお前を殺すぞ。」

「な…何を…そんな、嘘に決まってる…!」

「なら試してみろよ。お前のせいでアルフ族が全滅するかもしれないが。自分に力があると思うなら、脱出出来るだろうさ。もっとも…お前が脱出したところで、ヘレティクスになったお前の仲間が恨んで殺しに来るだろうがな。」

「…くそっ」

「そういうわけだから、今後はあまり俺を怒らせないでくれよ。」

S.0はニッコリ笑って、そう告げた。
その威圧の仕方は、白理にそっくりだ。

「俺からの情報は以上だ。というか、情報提供とか得意じゃないしな。最近はヘレティクスの活動も沈静化してきてるし、必要以上に警戒することはないだろう。」

「それはそれでつまらないですね〜。」

「お前たちが領域で暴れ回るからだよ…、まぁ助かってるけどさ。監視対象が減って。」

「やっぱりゼロはおかしい。」

改めてS.0の異常さを認識した赦無は、そう言って頷いた。
若干不服そうな顔をするS.0。

「今回はこれくらいでいいかな。ゼロ、時間はある?」

「おー、いつ帰るか不明だって伝えてきたからな。有り余ってるぞ。」

「じゃあ、一緒に遊びに行きましょう!」

「いや、仕事は?」

「お休みです!」

さぁ行きましょう!と白理は嬉しそうに笑って、S.0の手を引いて部屋を出た。
枉徒もその後を追う。

「…ゼロはああ見えて嘘は吐かないから、馬鹿なマネはするなよ。」

冷めた瞳で一瞥し、赦無も部屋を出て三人の後を追う。

「どこに行きますか?遊園地ですか?それとも映画館でしょうか?」

「あーもう分かった、分かったからくっ付くなって。転んだら危ないぞ。」

とか言いつつ、満更でもなさそうなS.0。
仲がいいなぁ、と思いつつ、赦無はS.0の裾を引く。

「ん?どうした?」

「枉徒について、聞きたいことがある。」

赦無がそう告げると、あー…と思い出したかのように、S.0は頬をかいた。

「結論から言うと、枉徒は…えー、センチネル寄りだ。お前たちの敵じゃない。」

「そっか…よかった。」

「領域内でも、かなり中枢に近い場所で生まれてな。その時はまだ、アウトサイダーとか、そういう名前はなかったんだが。閑静な市街地で育ったんだ。それで、そこはお前たちの知るアウトサイダーとは別のアウトサイダーの領域だ。そのアウトサイダーは"お嬢様"と称しておこう。」

S.0は一つ一つ、確かに思い出すように、そしてやはり、同時に苦い顔をしながら、言葉を紡いだ。

「お嬢様の領域でも、ヘレティクスが消える事件が起きてた。今思えば、お前たちの知るアウトサイダーが勝手に攫ってたんだろうが……。」

「それに枉徒も巻き込まれた…?」

「そういうことだ。お嬢様の領域のヘレティクスは、人間が変質したものじゃない。数値的にはヘレティクスと変わらないが、凶暴性がないんだ。大人しいと言ってもいいな。脅かしてくるし邪魔するだけで、攻撃はしてこないし。」

「なるほど…だから枉徒ちゃんはヘレティクスでも、人を襲ったりしないんですね。」

「そう、赦無には前に伝えたが、領域内での時間は狂ってる。早い時があれば遅い時もある。」

「ゼロが枉徒を知ってたのは?」

「俺が枉徒の"お兄ちゃん"だったんだよ。血は繋がってないけどな。まだ俺がセンチネルになる前、一緒に育ったんだ。でも、少し目を離した隙に消えた。必死に探し回ったよ。」

S.0は困ったように笑った。
その顔からは、少し寂しさが感じ取れた。
知っている相手に忘れ去られるというのは、心にぽっかり穴が空いたような気分になるだろう。
それが妹として可愛がっていたならなおさら。

「数百年経った、領域を走り回っても見つからなかった。でも…お前たちに拾われててよかったよ。生きてて、よかった。」

いったい今、どんな思いでいるのだろうか。
寂しさか、喜びか、あるいは様々な感情が入り混じって複雑になっているのか。

「ごめんなさい…、私…何も覚えてなくて…。」

「気にすんなよ、お前が笑って幸せで生きていてくれたら構わないさ。」

泣き出しそうな枉徒の頭を、S.0は昔のように撫でる。
ふと、赦無と白理に疑問が浮かんだ。

「でも、待ってください。枉徒ちゃんがヘレティクスならどうして襲われていたのでしょうか?」

「それに、タイムラグが起こったことも不明だよ。」

「ふむ…そうだな、人型なら見分けはついていただろうが、襲っていたのは人型じゃなかったろう?」

「あ、確かに。」

「よほど知能が低かったんだろうな。だから見境なく襲ってたのかもしれない。」

なるほど、と白理は頷く。

「タイムラグは…多分、俺たちとは違う方法で表世界に出てきた反動だろうな。」

「違う方法…?」

「…一人だけ、それが可能な奴を知ってる。そいつ自身も、そうやってこっちの世界に出てきては行動してるからな。」

「へぇ…。」

「あいにくだが、お前たちの敵じゃないから叩き切るなよ。大切な人材なんだ。」

「それは残念。」

「ほんとお前虐殺大好きだな…いいけどさ。」

呆れたようにS.0は肩を竦めた。

「ま、俺から伝えられるのは、今はこれくらいだな。しっかし、こっちにいると何でか腹が減ってくるなぁ。」

「ゼロ、普段からあまり食べてないからじゃないかな。」

「なるほど、そういうことか。と、いうわけで美味い飯を所望しよう。」

「まずは腹ごしらえですね。近くの食堂に行きましょうか。あそこ、ハンバーグが美味しいんですよ。」

「はんばーぐ。」

聞いたこともないのだろうか。
白理の言葉を繰り返すS.0は、幼子のようだ。
三人はS.0を連れて、食堂へと向かった。

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