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色災ユートピア

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13.表世界

学園を終えた赦無は、白理、枉徒と別れ、領域に来ていた。
街を徘徊していたセンチネルは、一人で領域に来た赦無に驚きつつ、挨拶を交わしていた。
しばらく歩き続け、S.0がこもっている執務室までたどり着いた。

「物資が足りない…弾薬を作ってるのは"施設"だけだしな…、なんで急に来なくなったんだ…。」

S.0は険しい顔つきで、物資不足の報告書と睨めっこしていた。
その姿は、いつかのナナキを思い出させた。

「ゼロ、少しいい?」

「コドクか、案外早かった───って、赦無!?」

「俺を別の人と間違えないでよ…。」

赦無は肩を竦め、拗ねた顔をした。
それに気が付いたS.0は、ごめんごめん、と謝った。

「お前一人か?」

「そうだよ、白理には新しく入った隊員の護衛を任せてる。」

「そうか、どうした?こんなとこまで来て。」

S.0は嫌な顔一つせず、…どことなく嬉しそうな顔をして、出迎えてくれた。
不思議なことに、S.0は赦無、白理がいると嬉しそうにしている、と道中であったセンチネルが教えてくれたのを、赦無は思い出す。

「ナナちゃん、いなくなった。」

「異動したんだって?喧嘩別れしたと聞いたぞ。」

「だって、ナナちゃんがそっけなく行くから…白、すごく寂しがってた。」

「お前はほんと妹想いのお兄ちゃんだなぁ。自分の感情より先に妹の感情を悟るとこ、お前らしいよ。ようは、ナナキがそっけないから、少しくらい別れを惜しんでほしかったんだろう?」

「うん…。」

「お前はどう思ってるんだ?ナナキがいなくなって。」

「…少し、寂しい?」

赦無は首を傾げて、そう答えた。
なんで疑問形なんだよ、と思わずツッコむS.0。

「お前は病的に自分の感情に無関心だな。白理がいてようやく釣り合いが取れるくらいだ。ま、双子だからそれがちょうどいいのかもしれないがな。」

「自分に無関心なのは、悪い?」

「悪いとは言わないが、白理にもっと心配かける気か?」

「…分かった、気を付ける。」

赦無は素直に頷いた。

「それで、ナナちゃんの代わり、来た。そいつが、ゼロを連れてこいって。」

「へぇ。」

S.0の赤い目が細められる。
その表情からは、感情を読み取れない。

「でも、俺は連れていきたくない。」

「なんでまた?」

「ゼロは優しい、センチネルにはゼロが必要。俺も…ゼロがいないのは、やだ。ゼロまでいなくなるのは、やだ。」

赦無は悲痛な声で、そう呟いた。
赦無にとっては数少ない理解者だ。
ナナキと離れ離れになり、そのうえ甘やかしてくれるS.0まで失うというのは…流石の赦無でも、きっと辛いのだろう。

「ぷっ…ははは!馬鹿だなぁお前、俺がそんなに弱く見えるのか?」

だが、そんな赦無が意外だったのか、S.0は腹を抱えて笑った。
思わぬ反応に、赦無はたじろぐ。

「よ、弱くないよ、ゼロは強い。でも…何があるか分からないから…。」

「心配してくれるのか?ありがとな。」

S.0は笑って、赦無の頭を撫でた。

「大丈夫さ、俺は無事だ。夢で見た。」

「夢…?」

「おう、夢だ。断片的にしか分からないが、俺は生きてた。だから、お前が心配するようなことは起こらない。そもそも、俺が酷い目に遭って泣き寝入りすると思うか?」

「…どっちかって言うと、相手を自殺に追い込むと思う。」

「俺ってそこまで非道に思われてんの?」

「ううん、冗談。でも…ゼロが言うなら、大丈夫なんだね。」

ようやく安心したのか、赦無はへにゃりと笑った。

確かに、S.0の強さは、嫌という程目の当たりにしている。
そしてどうやら、S.0は予知夢を見ることが出来るらしい。
だからきっと、大丈夫だと言うのだろう。

「まぁ、最近はずっとデスクワークだけだったからな。気分転換にもちょうどいいし、ついてってやるよ。」

「いいの?」

「おう、デスクワークがそんだけ辛いんだ。」

「…分かった、ありがとうゼロ。」

「よし、俺はちょっと他の奴らに伝えてくる。お前はココアでも飲んで待ってな。」

「うん。」

S.0はそう告げると、部屋を出ていった。
赦無はS.0の言葉に甘えてココアを作る。
そして、S.0が頭を悩ませていた書類を覗き見た。

「物資の不足…。ゼロの字って案外可愛い…。」

見当違いな言葉を零しながら、書類に目を通す。

どうやら"施設"と名称される場所があるらしく、そこで武器や弾薬、その他生活に必要なものが作られているようだ。
水道や電気なども含まれている。
だが、そういうわけかその物資…弾薬の補給が滞っているらしい。

「この領域には、俺たちが知らないところがまだまだあるんだ…。」

若干湧き出てくる、好奇心。
どんな場所だろうかと想像していると、S.0はすぐに戻ってきた。

「あ…おかえり。」

「ただいま、それ見てたのか?」

「うん…ごめん。」

「んな顔するなよ、別に見られて困るものじゃないし。」

「…大丈夫なの?」

「銃弾だけだからな。俺には特に支障ないし、俺が見に行けばいいだけの話なんだが…。」

S.0は頭を抱える。
何か良くないことでもあったのだろう。

「何かあった?」

「もう何百年も前の話だ、出来れば行きたくないんだよ。こっちの時間の流れは随分不安定で、早い時もあれば遅い時もある。」

「なるほど。よほど嫌なことがあったんだね。」

「あそこにいるお嬢様のことは別に嫌いでもない、だけど側近とか大臣がうるさいんだよ…。俺一人で行ってたら今ここにいないと思う。」

「そのくらい危ない場所なの?」

「危ない…わけじゃないんだが…大人がいる、俺はそいつらが苦手なんだ。」

「そうなんだ…ろくな大人じゃないんだね。」

「方やロリコン疑惑、方や爆殺野郎だし。爆殺野郎は今だと牢屋で大人しくしてるがな。」

ざまーみろ、とでも言いたげにS.0は鼻で笑った。
やはり何かあったのだろうが、とても聞けるような雰囲気ではない。
と、いうか聞いたら絶対にS.0の精神がさらにすり減るような、よろしくない話だ。

「ま、いずれ道案内することになるだろうから、その時また話してやるよ。絶対ドン引きするぞ。」

「覚悟しておく。」

S.0は笑って、手を差し出した。

「そんじゃ、道案内頼むぞ、隊長くん。」

「…ゼロに隊長扱いされるのは、すごく違和感がある。」

「えぇ…。」

困惑するS.0の手を取って、赦無は笑う。

「でも…ありがとう。」

なんとなく認められたような気がして、なんとなく近付けたような気がして。
感じたことのない嬉しさを、赦無は噛み締めた。




赦無はS.0とともに、本部前に転移してきた。
そして、まだまだ案内したいところがあるから、と先にS.0が休めるような部屋に向かう。
場所はディープ・ネロの本拠地、赦無、白理、枉徒の部屋の隣だ。

「ここがゼロの部屋、ベッドくらいしかないから、暇なら俺たちの部屋に遊びに来てね。」

「なんか…簡素というか、無機質だな…。」

「場所がここしか勝ち取れなかった。改装しようにもセンスなんてないから、放置してる。」

「そっか、人員不足か。」

「うん、人がいたらお願いしてた。」

赦無は頷き、そう答えた。
そして、次に赦無、白理の部屋に入る。
ここは二人部屋となっており、かなり広い。
白理の要望で、二人は一緒の部屋で寝泊まりしている。
それがこの部屋というわけだ。

「あ、お兄様!」

「ただいま、ゼロを連れてきたよ。」

「あ、ゼロ!ゼロです!」

白理はキャッキャと子供のように喜び、S.0に飛びかかる。
唖然としていたS.0は、それに反応出来ずにもろに頭突きをくらった。

「ゴフッ!…お、お前なぁ……。」

「うわっ、大丈夫ですか!?」

枉徒は慌てて近寄る。
S.0が唖然としていた理由は、枉徒が大いに関係しているのだが。

「枉徒ちゃん、この人が領域から脱出するのを手助けしてくれた人ですよ。」

「へ?そうなんですか?あ…じゃあ、ゼロさんってあなたの事だったんですね。初めまして、私、禍時 枉徒といいます。」

「…マト、やっぱりお前…」

「…ゼロ?」

抱きついていた白理が、顔を上げる。
S.0は、少しだけ震えていた。
その反応は、今まで見たことがない。

「…なんだ、生きてたんだな。よかった……。」

そして、S.0は心底安堵したような笑みを浮かべた。
ふと、枉徒の中で何かが引っかかる。

───どこかで見たことがある気がする。

「───?」

無意識に、枉徒からそんな言葉が零れ落ちた。
その響きは、酷く懐かしく感じた。

「ゼロは、やっぱり何か知ってるんだね。枉徒はいったい───」

何者なの?と尋ねようとしたその時、呼び出し特有のチャイムが鳴り響いた。

『ディープ・ネロ、招集命令です。至急、総司令室へ向かってください。』

「チッ…空気の読めない奴だ…。行こう、ゼロ。」

「お、おう…。」

性格変わりすぎじゃ…?と思ったS.0だったが、おそらく無自覚だろう。
S.0から離れた白理は枉徒の手を引いて、赦無、S.0と一緒に総司令室へと向かった。

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