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色災ユートピア

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9.ヘレティクスの襲来

放課後、予定通り白理と赦無はグラウンドに集まった。
暇なのか、自衛団のメンバーは既に集まっている。

「遅い!」

「私たちはあなた方と違って、授業の免除を受けているわけではないので。」

「ほんっと生意気、イキがれないよう徹底的に潰してあげるわ。」

「楽しみですねぇ。」

ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべる白理に、メンバーは苛立ちを隠せずにいる。
すぐに隊長であるアヤカがやって来た。

「すまない、待たせた。それでは決闘を行う。立ち会い人は私、アヤカだ。ルールは相手に先に一撃入れた方が勝ち、1vs1で行うが、それで構わないか?」

「私はどんなルールでも構いませんよ。」

「こっちはOKです。」

「よろしい、ではお互い前に出ろ。」

先鋒は、一番初めに抗議した男子生徒だ。
白理は男子生徒の目の前に立つ。
決して、武器は構えない。

「いいのか、構えなくて。オレが勝っちまうぜ。」

「あはは、ご冗談を。」

白理は笑っている。
お互い立ち位置に立った所で、アヤカは笛を鳴らした。

次の瞬間───男子生徒は、空中に飛ばされていた。

「ガハッ!!?」

何が起こったのか、全く分からない。
白理を見れば、蹴ったような格好にはなっているが、決して武器を使っているわけではないようだ。

男子生徒は背中から地面に落ちて、可哀想なことに二度ダメージを負った。

「私の勝ちですね、ヘレティクスならギリギリ対応出来ていましたよ?」

「うぅ…げほっげほっ…。」

「しょ、勝負あり!おい、大丈夫か!?」

「だ…大丈夫…です、ごほっ…。」

「安心してください、骨折はしていません。むしろ健康的になったと思いますよ?」

「な…何…を……、ん?」

ふと、違和感を覚える。
なんだか、無性に身体が軽い。
そして、気持ちがいい。

「な、なんだ?すごく動きやすいぞ!?」

「蹴った時に骨の矯正をさせていただきました。肩の痛みもなくなったのでは?」

「た…確かに…!すごく回る!」

くるくると肩を回し、男子生徒は実感する。

「さぁ、次は?」

くるりと振り向き笑う白理に、恐怖を覚えずにはいられない。
どんな種を使っていても、見えないのであれば反応出来ない。
勝敗はもはや、戦う前に決まっていた。

「ひ…卑怯よ!どんな種を使ったのか知らないけど、今のは絶対におかしいわ!」

「そ、そうだ!何かやったんだろ!じゃなきゃ負けるはずがない!オレとコイツの中でずば抜けて強いんだぞ!」

「お兄様、大変です。おバカがいます。」

「見ちゃダメだよ、バカになっちゃう。」

「なっ、誰がバカですって!?」

白理と赦無は容赦なく挑発する。
だが、勝てるわけがないと悟ってしまった二人は、負け犬の遠吠えしか出来ない。
そんな四人の間に、先程負けた男子生徒が割り込んできた。

「まーまー落ち着けよ、美少女に蹴られるってのも悪くないぜ?」

ドヤ顔で親指を立てる。
白い歯が輝いているのに、何故だか無性に腹が立つ。

「きっも。」

「嘘だろテッちゃん!さっきのでドMになっちまったのかよ!帰ってこい!」

「いやぁ、あれは真性だと思いますけどねぇ。ほら、優秀な生徒ほどそういうのにのめり込み安いですから。」

「白が宇宙一可愛いのは認めるけど、お前に言われるのは何故かムカつく。」

拗ねたように赦無は白理に抱きつく。
白理は白理で幸せそうに笑っている。

「さぁ、次はどなたですか?」

「くっ…分かったよ、降参だ。」

「はぁ!?何言ってんの!?」

「テッちゃんが負けたんだ、オレらで勝てるわけないだろ。」

「ふざけないでよ!私は絶対反対なんだから!」

二人は言い争いをしているが、当の本人である白理は二人相手でも負ける気がしないので煽りにいく。
そして、何がなんでも経験値を手に入れようとしていることが、赦無にははっきり感じ取れた。

───あぁ、これは逃がしてもらえないな、と。

「なら二人がかりでかかってきたらどうです?運が良ければ勝てるかもしれませんよ。」

ケラケラ笑う白理に、女子生徒は舌打ちする。

「大口叩くのもいい加減にしなさいよ。そもそも、そんな大きい武器背負って使えるわけがないのよ。」

「別に使うことを強制されているわけではありませんし。吠えている暇があるならかかってきてはいかがです?」

「っ…死んでも文句言わないことね!」

「あはは、殺されて死ぬなら、今頃死んでますって。」

赦無は白理に耳打ちして、離れる。
白理は頷くと、女子生徒と向かい合うように配置につく。

「それでは…二回戦目を始める。」

女子生徒は薙刀を構える。
白理はやはり突っ立ったままだ。

「始め!!!!」

笛が鳴ると同時に、白理は先程のように突っ込んで蹴りを放つ。
が、ギリギリのところで女子生徒はそれを受け止める。

「くぅっ…!」

「…なるほど。」

薙刀を蹴って、白理はバックステップし距離を取る。
そして、瞬時に追撃に移る。

じわりじわりと追い詰めるかのような攻撃。
周りには女子生徒がギリギリ防いでいるようにしか見えない。
が、実際はそうではない。

「あはは!防御一択では私には勝てませんよ!」

時間稼ぎだ。
そうでなければ、この試合は一瞬で終わっている。
終わらない理由は一つ、初撃が防がれたことだ。

「───いい加減にしなさいよ。」

防御一択で持ち堪えていた女子生徒の雰囲気が変わる。
体の下から覗く、銀色に輝くもの。
白理はそれが何かを瞬時に理解し、咄嗟に体を捻って躱す。
続けざまに鳴り響く銃声。
銃弾は白理の横をすり抜けて、真っ直ぐ赦無に飛んでいった。
だが、赦無はいとも簡単に、その銃弾をナイフで弾き返した。

「ば…馬鹿者!銃の所持、使用は禁止されているんだぞ!?」

「…はぁ、ばっかみたい。何甘ったれたこと言ってんの?隊長さん。」

感情のない冷めた瞳に、アヤカは思わず息を飲んだ。
…確実に、人間とは違う。

「ついに尻尾を出しましたか、ヘレティクス。」

「「「なっ!!?」」」

思わぬ事実が、白理の口から紡がれる。
女子生徒…もとい、人型のヘレティクスは、嘲り笑いを浮かべていた。

「残念、気付かれなかったら、まず邪魔なコイツらから連れていこうと思ってたんだけど。」

「なかなか良い擬態でしたよ、才能はあります。」

白理は太刀に手をかける。
ヘレティクスも、薙刀を捨てて銃に持ち変える。

一触即発の雰囲気の中、納得出来ないアヤカが叫んだ。

「待て!嘘だ、嘘に決まってる!今まで一緒に戦ってきた仲間だろう!?」

「そ…そうだ!ヘレティクスなんて、なんかの冗談だ!」

男子生徒も、同じく叫んだ。
納得出来ないのは当然だ。
今までずっと、協力して、ヘレティクスを撃退してきたのだから。

「ばっかじゃないの?アンタらを騙すための演技よ、演技。私はヘレティクス、その中でも力を持つ、人型のヘレティクスよ。」

「そんな…嘘だ……。」

「塩の雪を降らしていたのも、あなたですね?」

「そうよ、正解。」

「ヘレティクス動きがおかしいと思えば…なるほど、あれは一種の範囲指定でしたか。考えるものですね。」

「大正解。…で?そこまで分かってるなら、さすがにこの先の展開も分かるわよね?」

「えぇ、もちろんです。」

白理はニッコリ笑う。
ヘレティクスも、嘲り笑いを浮かべ、腕を上げる。

「もうすぐお姉様が、この学園にやって来るわ。今は放課後、アンタらを攫うことなんて造作もない。」

「残念ながら、その筋書きは上手くいきませんよ。あなたは喋りすぎましたから。死ぬ直前の悪役ほどよく喋るんです、知ってます?」

「なんですっ───」

何かを斬るような音が聞こえた。
続けざまに赤く、熱い液体が吹き出して、何かが地面にぐちゃりと落ちた。

「て……?」

「負けフラグなんですよ、その行為。」

白理が、太刀を抜いていた。
赤黒いそれは、液体が滴っている。
何が起こったのか一瞬分からなかったが、凄まじい痛みによって、理解した。

───腕を切り落とされたのは、自分だと。

「さて、お姉さんが来るまで、少し痛めつけておきましょう。悲鳴を聞き付けて来てくれるかもしれません。」

ね?と白理は笑う。
ゾッと身の毛がよだった。
身の丈ほどある太刀を、片腕で、しかも目に負えないスピードで振ったのだ。
最初から、手加減されていた。
太刀を使う必要など、微塵もなかった。

「あ…あぁ…いや…いやああああああ!!!!誰か!!!!助けて!!!!助けてぇえええええ!!!!」

「ヘレティクスって、顎を切り落としても死なないんですよ。知ってます?人間と違って、失血で死ぬことはないんです。」

「来るな来るな来るな!!!!化け物!!!!嫌だこっちに来ないでええええ!!!!」

「どうしてですか?私もあなたも変わらないでしょう?私は人間の味方、あなたは人間の敵、それだけです。化け物が化け物と言うなんて、情けないにもほどがあるでしょう。」

逃げようとする脚を切り落とし、転んだところで背中に太刀を突き刺し、縫い付ける。

「逃がしませんよ、逃がすわけないじゃないですか。こんな美味しい餌、滅多にいないんですから。」

太刀を動かして、ぐちぐちと傷を開いていく。
ヘレティクスは喉が裂けそうなほどの、絶叫をあげた。
それはもう、聞くに堪えない声だった。

「や…やめてくれ…もう…やめて……。」

助けることは出来ない。
ただ、悲願し、その光景から目を背けることしか、出来ない。

耳を塞いでも、脳裏に焼き付いて、消えることのない声。
だが、本当の恐ろしさはここから始まるのだ。

人型のヘレティクスを痛めつけて笑っていた白理。
傍から見れば狂気としか思えず、怪物にしか見えない。
だが、ふと手を止めて顔を上げ、虚空を見た。

何事かと思い目を向ける。
次の瞬間、視線を向けた先の空間が、突如裂け始めた。
そして、その先には人型のヘレティクスが数体と、雑魚のヘレティクスが数十体わらわらと群れをなしていた。

「…くも」

ふと、人型のヘレティクスの一人が、声を漏らした。

「よくも…よくも私の妹を……!サラを殺したな……!」

憎悪に満ちた顔で、銃を構え、そして撃った。
白理は避けることもせず、まともにその銃弾をくらってしまった。
鮮血が飛び散り、ふらりと体が傾く。
───だが、倒れない。

「死ね、死ね、死ねえっ!!!!怪物め!!!!ここで死ね!!!!」

人型のヘレティクスはすかさず、さらに銃弾を撃った。
肩、腹、足、所々に穴が空く。
肉が抉れ、血が飛び散る。
赦無は無表情で、それを眺めているだけだった。

「私の妹を…サラをかえせ…かえせよぉ……!」

バンッ、と放たれた一発の銃弾が、白理の片腕を吹き飛ばした。
全弾撃ち切った人型のヘレティクスは、ナイフを持って斬りかかった。

「死ね、化け物…!!!!」

ドスッ、と鈍い音が響く。
ジワジワと血が溢れ出てくる。

「…これで…やったんだ…どうだ…ざまぁみろ……!殺してやったぞ…!私が仇を取ったんだ───」

人型のヘレティクスは乾いた笑みを浮かべた。
白理はなおも笑ったまま。
次の瞬間、取り囲むように出てきていたヘレティクスが、その場で、一匹も残らず切り刻まれる。

───何が起こったのか分からない。

唯一変わっているとすれば…

(こいつが持っていた武器は……?)

白理が持っていたはずの武器は、どこにも見当たらない。
後退ろうと動いた瞬間、グサッ、と衝撃があった。

「あ゙……?」

声が出ない。
白理が、笑っている。

「…この程度で死ぬと思いました?たかが片腕がもげた程度で、私が殺すのをやめると思ったんですか?」

ずる、と血まみれのナイフが、喉元から引き抜かれる。
赤黒いそのナイフは、霧状に霧散し、白理の手元に集まり、見慣れた太刀へと変化した。

「この程度で諦めるなら、私は虐殺好きになんてなってなかったのですが。バラバラにされるの、私、慣れてるんですよ。アウトサイダーを殺せるようになるまで、好き勝手ちぎられましたから。」

「ぐ…ゔっえ゙……」

?えぇ、狂ってますよ。私は産まれた時から異常でしたので。ですが、私は気付いてしまったんです。」

地に伏せたヘレティクスに目線を合わせるように、白理はしゃがむ。

「私はどうしたって狂う運命だって。一方的に殺すことが大好きなんだって。だから、素直になることにしたんです。少しずつちぎられて死ぬ痛みだって、相手を虐殺出来るならいいのです。そんなものは、虐殺たのしみの前では何のストッパーにもなりはしない。」

赤い目が細められる。
白理は心底楽しそうな笑みを浮かべている。

「私は、虐殺が出来るなら何度だってやり直します。殺されるわけじゃない。殺すのは私で、死ぬのはあなたたちです。今回はあなたを誘き出すために利用させてもらいましたけど、いつもならあんなことしませんよ。」

「……!」

「私は虐殺好きであって、拷問好きではないので。勘違いしないでくださいね。まぁ、今から殺されるあなたに何を言っても無駄でしょうけど。殺したあと、思う存分語ることにします。」

無慈悲で無邪気な笑顔だ。
人型のヘレティクスは、殺された妹に手を伸ばす。
それはまるで、人間のようでいて。

「最期はせめて、妹と一緒におやすみなさい。」

首を切る白理は、まるで死神のようだった。

「さて、人間の脳は死後も少しは生きている、と聞いたので。もしかしたらヘレティクスも生きているかもしれませんし、これから死に逝くあなたに少し種明かしかいせつを。」

太刀についた血を払い、納刀して、飛ばされた腕を拾い上げてくっつけると、また近寄ってしゃがんで話し始めた。

「私は虐殺が大好きで、太刀を好き好んで使ってますけど、実は扱える武器に制限がありません。そして、この武器は私の意思で変形するものでして、さらに言うと私は空間を少しだけ操れちゃうんですよ。」

その様子は、まるで自慢をする子供のようだった。
だからこそ、異質だと思わざるを得ない。

「空間に斬撃を固定し、リピートする。そうすれば今回のようなことが起こります。ヘレティクスが取り囲むように陣取るのは大方予想していました。今回、あの一撃目であなた以外を殺せたのは、運が良かったです。とまぁ、これが今回の種明かしです。」

ぱちぱち、と自分自身に拍手をする白理。
それに合わせて、死んだヘレティクスの死体も塵となって消えた。
積もっていた塩の雪は嘘のように消えて、なくなってしまう。

「さ、今回の件は万事解決ですね。」

「そうだね白、帰ろうか。」

「待ってくれよ…お前ら…なんなんだよ……!?なんであいつを殺したんだ…!お前らは…旧人類で…能力なんて使えないはずじゃないのか……!?」

「…白、先に帰ってて。」

「分かりました、お兄様。」

白理は先に転移で戻って行った。
赦無は興味なさげな視線を向けた。

「ヘレティクスは殺す、俺はそう約束した。たとえそれが、最愛の妹でも。俺は妹を殺して自分も死ぬ。俺たちは双子だから、死ぬ時も一緒だ。でも、白は死ななかった。死にたくなかった。だから、領域に向かった。」

「攫われたんじゃないのか…!?」

「そう、そして俺も、白を連れ戻すために行った。領域内にいた影響で、俺たちは変質した。それでも…俺たちは殺されなかった。だから力を持ったまま、脱出出来た。」

「脱出…!?バカな…あそこは脱出不可能な領域だぞ…!?」

「だが俺たちは出てきた、それだけは今ここにある事実だろう。話はそれだけか?俺はもう帰るぞ。」

赦無は白理を追って、姿を消した。

領域内は確かに脱出不可能と言われている。
一度攫われれば、二度と戻って来られない。
それが一般的に広まっている常識で、脱出出来たものがいたなど、そんな情報は知らされていなかった。

そして、その場に居合わせた人間は、立ち直るまでに数日を要した。

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