名探偵の推理日記零〜哀情のブラッドジュエル〜
第6章 牢獄からの脱出 2
22時15分。
「よし、後は頼んだぞ」
圭介はシーツで作った簡易の梯子に手をかけると、浴室の天井にある小さな穴へと消えていった。
「本当に大丈夫なんだよな」
圭介の後ろ姿を見送った鳥羽が呟く。
「大丈夫ですよ。あの名探偵ですよ?うまくいくに決まってますよ。後は警部の腕にかかってます」
クロウは鳥羽の肩をポンと叩くと、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「おい、今笑っただろ?」
「笑ってなんかいませんよ。オレは脳みそを使わない警視庁刑事部捜査一課所属の警部さんに気の利いたコメントをしてあげただけですよ」
「キサマ___。この事件の片がついたら絶対捕まえてやるからな!!」
「今回は見逃すって言ってたじゃないですか」
「いいや、俺はそんなこと断じて言ってない!!俺は絶対お前を捕まえてやる!!」
「ま、まぁまぁ。警部落ち着いて。確かに怪盗は良くないけど、この計画にはクロウの力が必要なんだから」
2人の言い合いに半ば呆れた様子の亜美が間に割って入る。
「す、すまん。つい……」
自分よりも若い者に注意されたのが情けなかったのか、鳥羽は肩を落としてソファに座り、黙りこくってしまった。
鳥羽は警部である自分が自ら犯罪者の力を借りなくてはいけないことに屈辱を感じていた。
圭介の言う通り、確かにクロウの力がいなくては今回の計画は遂行できないのだが、それでも警部としての誇りがそれを許さなかったのだ。
「どうかしたんですか?警部。私お茶でも淹れましょうか?」
ソファに座って険しい顔をしている鳥羽に亜美が声をかける。
「あぁ、すまんな。頼むよ」
亜美は鳥羽の答えを聞くと、黙々と急須に茶葉をいれ、ポットからお湯を注いだ。
しばらくして茶葉から色が出たのを確認すると、亜美は鳥羽の目も前に置かれた湯呑みにお茶を注いだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
鳥羽は亜美に礼を言うと、湯呑みに口をつけた。
味はまちまちではあったが、疲れっていた鳥羽には束の間の至福であった。
「よし、そろそろ作戦の準備でもするか」
鳥羽は気合を入れるために両腿を叩くと、ソファから立ち上がった。
「よし、じゃあオレも準備に取り掛かるか」
クロウも座っていたベッドから勢いをつけて立ち上がると、部屋の窓から外の景色を眺め始めた。
「いつの間にかこんなに暗くなっちゃいましたね」
藤島が外の景色と腕時計を見比べながらそう囁いた。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
亜美は心の中でそう3回唱えると、目蓋の裏にある男の姿を思い描いた。
「よし、後は頼んだぞ」
圭介はシーツで作った簡易の梯子に手をかけると、浴室の天井にある小さな穴へと消えていった。
「本当に大丈夫なんだよな」
圭介の後ろ姿を見送った鳥羽が呟く。
「大丈夫ですよ。あの名探偵ですよ?うまくいくに決まってますよ。後は警部の腕にかかってます」
クロウは鳥羽の肩をポンと叩くと、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「おい、今笑っただろ?」
「笑ってなんかいませんよ。オレは脳みそを使わない警視庁刑事部捜査一課所属の警部さんに気の利いたコメントをしてあげただけですよ」
「キサマ___。この事件の片がついたら絶対捕まえてやるからな!!」
「今回は見逃すって言ってたじゃないですか」
「いいや、俺はそんなこと断じて言ってない!!俺は絶対お前を捕まえてやる!!」
「ま、まぁまぁ。警部落ち着いて。確かに怪盗は良くないけど、この計画にはクロウの力が必要なんだから」
2人の言い合いに半ば呆れた様子の亜美が間に割って入る。
「す、すまん。つい……」
自分よりも若い者に注意されたのが情けなかったのか、鳥羽は肩を落としてソファに座り、黙りこくってしまった。
鳥羽は警部である自分が自ら犯罪者の力を借りなくてはいけないことに屈辱を感じていた。
圭介の言う通り、確かにクロウの力がいなくては今回の計画は遂行できないのだが、それでも警部としての誇りがそれを許さなかったのだ。
「どうかしたんですか?警部。私お茶でも淹れましょうか?」
ソファに座って険しい顔をしている鳥羽に亜美が声をかける。
「あぁ、すまんな。頼むよ」
亜美は鳥羽の答えを聞くと、黙々と急須に茶葉をいれ、ポットからお湯を注いだ。
しばらくして茶葉から色が出たのを確認すると、亜美は鳥羽の目も前に置かれた湯呑みにお茶を注いだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
鳥羽は亜美に礼を言うと、湯呑みに口をつけた。
味はまちまちではあったが、疲れっていた鳥羽には束の間の至福であった。
「よし、そろそろ作戦の準備でもするか」
鳥羽は気合を入れるために両腿を叩くと、ソファから立ち上がった。
「よし、じゃあオレも準備に取り掛かるか」
クロウも座っていたベッドから勢いをつけて立ち上がると、部屋の窓から外の景色を眺め始めた。
「いつの間にかこんなに暗くなっちゃいましたね」
藤島が外の景色と腕時計を見比べながらそう囁いた。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
亜美は心の中でそう3回唱えると、目蓋の裏にある男の姿を思い描いた。
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