名探偵の推理日記零〜哀情のブラッドジュエル〜

耕一

第3章 恐怖の"カグツチ" 1

 「なんでお前がいるんだ?」
後部座席で圭介が隣に座る亜美を睨む。

「一応私だって美琴のクラスメイトなんだよ?行かないわけないじゃん!!!」
亜美は満面の笑みで圭介に擦り寄る。

「美琴って一体誰なんだ?」
2人の会話を聞いていた鳥羽が、助手席から顔を覗かせた。

「赤澤美琴。赤澤財閥のトップ赤澤勉のお嬢様だよ」
圭介が窓に映る景色を眺めながらそう言った。

「えぇぇーーー!!!」
鳥羽が驚きのあまり、雷鳴のような大声を上げる。

「うるせーよ、オッサン!」
両耳を塞ぎながら圭介が鳥羽を睨む。

圭介は運転席に座っていた鳥羽の部下だと思われる男から一瞬殺気のようなものを感じたような気がした。

圭介もなんとなくその理由が分かっていた。

恐らくその男にとっては雲の上の存在である鳥羽警部をオッサン呼ばわりする男に怒りでも感じたのだろう。

そんな刑事の思いを尻目に
「すまんすまん」
と鳥羽が頭を掻き、笑いながら謝る。

「でもさっきの話だと、彼女もそのホテルにいるってことだよな?」

「そう。美琴はお嬢様だから赤澤財閥ご自慢の宝石お披露目会には出席するんだと」
まるで他人事のように圭介は頭の上で手を組んだ。

「ホテル内に知り合いがいるとなれば、こちらとしてもやりやすいな」
鳥羽は前に向き直り、顎に手を置く。

窓の外の景色はいつの間にか閑静な住宅街から車や人や電車の行き交う、あわただしい風景へと変わっていた。

「着きました」
運転席に座っていた刑事が車を脇に停車させ、鳥羽の方を見る。

「おぉ、ご苦労さん」
鳥羽は笑顔で刑事の肩を軽くポンポンと叩き、後ろの2人に視線を向けると
「よし、じゃあ行くか」
と言ってパトカーを降りていった。

「俺たちも行くぞ」
圭介も鳥羽の後に続く。

「ありがとうございました」
圭介の後に続くようにパトカーを降りた亜美は踵を返し、運転席の刑事に礼を言うと、ドアを閉め急ぎ足で2人の後を追った。

3人がパトカーを降りていったのを確認すると、刑事は吹き出す汗をポケットから取り出したハンカチで拭った。
「オッサンはダメだろ!!!」

いくら優しい警部とはいえ、今朝のことで機嫌が悪かった警部を目の当たりにしてしまった刑事からしたらいつ怒りが爆発するか、気が気でなかったのだ。

おかげでハンカチはビチャビチャになってしまった。

これでは満足に手も拭けない。

3人の背中を見送る刑事はガックシと肩を落とした。

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