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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第276話 過去は振り返らなくてもいいことも思い出す

 一方その頃、オーブを追いかけて商店街跡まで来たメア達は……

「はぁ、はぁ。このオーブ、よく逃げるのぅ」
「けどここまで追い詰めりゃ、フヨフヨしてても逃げらんねぇだろうよ」

 走っているうちに元の姿に戻ったアリーナは、すぅっと大きく息を吸いながら、マントから2本のサーベルを取り出し、オーブに剣先を向ける。それに続いて、メアもノエルも吾郎も、そしてオニキスも武器を構えた。
 すると、オーブは周囲の重力を乱しながら、ゆっくりと身体を形成させた。そこから現れたのは、なんと近未来的な機械の腕だった。

「な、なんでござるかあの絡繰は!」
「何だかヤバい予感がします。この感じ……」
「避けろテメェら!赤ん坊に戻されるぞ!」

 その瞬間、黒い煙から緑色の光が発生し、放射状にレーザーが飛び上がった。オニキスの忠告でなんとか避けられたが、レーザービームが通った場所は荒廃した街とは対象的に、綺麗な緑生い茂る道に変わってしまった。

「草木が復活したじゃと?」
『お前達は実に効率が悪い。それは何故か?答えはそう、草木のように時間が経てばゆっくりと朽ち、最後には死ぬ有機な肉体、そして不完全な脳を持つからだ』
「なんだこの偉そうな鎧。黙って聞いてりゃムカつくな」
『私の名はナルシエル。虚飾の罪源にして、時を司りし堕天使なり』

 ナルシエル。その姿は全体的に機械でできており、見た目もどこかサイボーグの天使のような姿をしていた。声は女八割男二割で構成されたような機械音声で、顔には聖女のような鉄仮面が貼り付けられていた。まるで、ロボットの素顔を隠すかのように、不自然に貼り付けられている。

「堕天使だぁ?笑わせんな!テメェみたいな堕天使、見たことも聞いたこともねぇ!」
「そうだそうだ!このロリコンロボットめ、この街ごと破壊し尽くしてやるぜ!」

 そう言うとアリーナは、いの1番にナルシエルへ突撃した。それに続いて、後列も走り出す。
 するとナルシエルも、迎撃モードと称して腕からビームソードを出現させた。オーブと同様緑色で、なんとも芸術的に見える。

『効率的にやろう。さあ、全員でかかってくるがいい』
「ならお望み通り行ってやるのじゃ!《メガ・ドゥンケルボム》!!」
「弱点なら多分!《メガ・ウォーター》!」
「「「はぁっ!!」」」

 ナルシエルが挑発した通り、5人は一斉に攻撃を仕掛けた。しかも、どれか1つでも対応出来ずに食らわせられるように、アリーナとオニキス、吾郎は背後から斬りかかる。
 だが、メアの闇魔法が命中する刹那、ナルシエルの目が一瞬赤く発光した。するとナルシエルは、その一瞬で全てを計算し尽くしたのか、迷いなくメアの闇魔法を真っ二つに斬り裂き、上半身を素早く回転させながらメアの方に距離を詰めた。その背後では、真っ二つにされた闇魔法がアリーナ達に命中し、3人は負傷してしまった。

「アリーナ!ぐっ……」
『確かに君達は仲間で間違いない。言わずともしっかりとした連携が取れている。しかし──』

 メアの首を掴み持ち上げたナルシエルは、紳士的な態度でメア達の事を褒め称える。しかし、諦め悪く突進してきたオニキスの気配を察知すると、彼の接近を目で見ずにビームソードで反撃した。
 そして、追い討ちをかけるように、メアをオニキスに向かって投げつけた。

『甘い、君達は甘すぎる。砂糖をそのまま摂取しているようで、余計に気分が悪くなる』
「んだとゴラァ!だったらビターな一撃を食らわせてやらぁ!」
「アリーナさん!いけません!」

 ノエルが慌てて叫ぶもアリーナは止まらず、2本のサーベルで《ウェーブ・クライシス》を放つ準備をした。
 するとナルシエルは、それを待っていたかのように胸を曝け出すと、コアのオーブから緑色の光を照射した。

「うわぁぁぁ!!」
「アリーナ殿!まずい、これは……」

 ビームを直に食らったアリーナの体は、段々と小さくなっていく。まるで長い年月を逆回しにされているかのように、背が縮んでいく。そして、変化は彼女が10歳くらいの姿になった所で止まった。
 すると、チビで無抵抗になったアリーナを狙い、ナルシエルはビームソードを振り下ろした。

「まずい!アリーナ、危ない!」

 メアは咄嗟に地面を蹴り上げ、そのままアリーナを抱き抱えて攻撃を回避した。

「アリーナさん、大丈夫ですか?」
「くそっ。アタチ、またやられちまったぜ」
「やっぱり時を戻すみてーだな。αの野郎、こんなウェポン隠し持ってやがったのか」
『どうですか?これこそ、私の最高傑作にして最強のアタッチメントなのです!』
「なんであろうと、拙者達はそんなものには屈しないでござる!オニキス殿!」
「指図すんなクソジジィ!」

 そう言うとオニキスは剣に血を与え、吾郎は抜刀の構えをしながら突撃した。メアとノエルはアリーナを保護しているため、代わりに2人が剣を取った。
 ナルシエルは2人同時に相手するため、左腕からもビームソードを展開し、両サイドから来るリズム違いの斬撃を適正な動きで対応した。
 左はオニキスの乱暴な剣技、右は吾郎の綿密な剣技に対応しており、なんだか楽しそうにしている。

『君達の動きは実に単調だ。攻撃をする前から、次にどう動くのか手に取るように見えて来る』
「その調子がどこまで続くだろうかなぁ!《クリムゾン・スマッシュ》!」
「《月光・打兎の一太刀》!」

 ナルシエルの腕を踏み台に飛び上がった両者は、剣に力を込めて一気に攻撃をかました。オニキスは赤黒い大剣と化した剣が、吾郎は月光の色に輝いた刀がナルシエルの両腕を切断し、砂煙が舞い上がった。

「おお!おお!さっすがアタチのダーリンだ!」
「や、やったか……?」
「おいバカ!ノエル、それはやれてないフラグじゃと──」

 案の定、まだやっていなかった。なんと砂煙から現れたのは、触手のような機械コードだったのだ。
 
「ぐっ!コイツ、腕がねぇのにどうして……」
「拙者としたことが、不覚ッ」

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