コピー使いの異世界探検記
第261話 知恵と勇気は基本ゲームから学ぶ
「あーもうリュウヤの奴、言ったそばからまた消えちゃって……」
怒りよりも先に、心細さと呆れが来て、タクマは怒る気にはならなかった。それにしても、みんなの所に戻るにしろ、方角が分からない以上下手に動くのはマズイ。
畜生、こんなことならコンパスの一個や二個持ち歩いておくべきだった。何なら、ちぎったパンでも置いて道標にすればよかった。
いや、後悔したってもう遅い。とにかくまずは、置いていってしまった皆と再開するのが先だ。
けど、本当に恐ろしい場所だ。ずっと辺りは暗いままだし、それに耳元で悪霊の呼び声が聞こえてくる。
いや、風だ。瓦礫の隙間から吹いた風が、リコーダーのように音を出しているだけだ。もう、そうやって全てを適当な科学的根拠に当て嵌めていかなければ、体がもたなかった。
「頼む、誰か近くに来てくれ……」
と思ってふと顔を上げると、朽ちた民家の中に人影が見えた。生存者だろうか、床に跪いて何かをしている。
服装的にその人は男のようだが、少なくとも吾郎とかではないようだ。
「あの、すみません。俺、生きてる人です」
生きてる人って何だ。自然と頭の中でもう1人の自分に突っ込まれるが、気にせず民家に入ろうとしたその時。
凄まじい腐敗臭が鼻の奥をツンと突いた。嫌な予感がする。すると、その予感が当たり、男の横から半分白骨化した人の頭が転がった。
「ヒィッ!」
あまりの恐怖に、タクマは後退りする。しかし、運悪く足元の氷に足を滑らせてしまい、男が振り向いた。口から黄色の膿らしき唾液を垂らしながら、白濁とした目で歯をガチガチさせている。
ゾンビだ。確かにこれでは、メアもノエルも生体反応をキャッチできない。
「く、来るな!来たら斬るぞ!」
咄嗟に剣を抜き、ゾンビ相手にハッタリをかます。だが、タクマは気付いていなかった。ゾンビに知性がない事を。とどのつまり、どれだけ刃物を見せようと、ゾンビには何の効果もない無駄な行動でしかないのだ。
でも、こんな歪んだ家の中に居るのなら、出ることなんて不可能な筈。それも、少し間接を無理に動かしたら崩れてしまいそうな体で、そんな芸当できるわけ……
しかし、その甘い考えがいけなかった。なんとゾンビは、鋭い爪で木の檻を一刀両断した。そして、解放されたゾンビは何事もなかったかのように近付いてきた。
「……………」
理解が追いつかず、タクマは深刻そうな顔で固まった。あ、多分今の俺モアイみたいな顔してるわ。
そして、タクマは落ち着こうと大きく息を吸った。
「ギャァァァァァァァァァァ!!」
やっと理解した。このゾンビ、ヤバい!
戦うとかそう言った次元じゃない。ゾンビを1匹見つけたら30匹は居ると思えとも言う。とどのつまり、日本刀みたいな爪を持つゾンビがあと29匹、いやそれ以上がこのエンドポリス内に生息している。
なんて噂をしていると、悲鳴を聞きつけたゾンビが暗い物陰から姿を現した。皆全身がボロボロで、人間だった頃の面影はそろそろ消えかかっているのがほとんどだった。右半分の髪が抜け落ちた女性のゾンビ、片腕のない子供ゾンビ、完全に腹部に穴が空いているゾンビなど、まさに地獄絵図だった。
ああ、帰りたい。アルゴでぬくぬくとティグノウスにビビっていたあの頃に帰りたい。ノブナガ様達と一緒に、リュウヤの美味い飯を食っていたあの日に帰りたい。
……いやいや、弱気になってどうする。ここで挫けてたら、お前本当に死ぬぞ。思い出せ、ジ○・バレンタインだってゴリスだって、コイツみたいなヤベー奴と勇敢に渡り歩いてきたんだぞ。イー○ンだって、ただの普通の親父だったんだぞ。
できるできる!俺ならできる!心の中のリトル松○修○を召喚し、鼓舞する。
「逃げてたまるかってんだ!来い、俺が相手だ!」
そう言って、ゾンビを引きつける。どうせ来るなら、何とか無双みたいにザクザク斬りつける爽快アクションでやっつけた方が効率がいい。
何故か脳裏にそんな発想が過るが、すぐに別の何かがそれを堰き止めた。
そして、まずは一撃、ゾンビの腕を斬り落とした。少々リスキーな行為ではあったが、鋭い爪を持つ腕を一本でも奪ったのは大きい。
しかし、それで満足するには、まだ早い。何故なら、今周りには腕を斬った個体含めて5体。気を抜けば速攻ゲームオーバー、がめおべらなんて呑気な事は言ってられない。コンテニューできないのだから尚更だ。
「はぁ!どらぁ!」
タクマは必死で剣を振り、ゾンビを圧倒した。肉が腐ってボロボロだと思い込んでいたが、まるでタイヤを斬っているような、ゴムに近い手応えが返ってくる。
しかも、倒したはずのゾンビが、まるで時が戻ったように生き返る。
「う、嘘だろ……」
こ、こんなことあるのかよ。こんな時、どうしたらいいんだよ。戸惑っている間にも、ゾンビはゆっくりと様子を見るように動く。
頼むリュウヤ、助けてくれ。情けなく思うが、今この中で助けを呼べそうなのはリュウヤしか居ない。他にも仲間はいるはずなのに、リュウヤだけが名指しで出てしまうのが、本当に情けない。
しかしその時、ふと頭の中にリュウヤが現れた。
『いや、策はあるぜタクマ!』
策?何だって、リュウヤ?
『たった一つだけ策があるぜ!とっておきのな!』
とっておき?そうだ!
「息が止まるまでとことんやる。その、策!それは!」
それは!アレだ、Jの人たちの言葉を完全に丸パクリした、リュウヤが教えてくれた最強の策!
「『逃ぃげるんだよォォォーーーーーッ!!』」
逃げる。とにかく逃げる。そして、その間に何かいい策を考えるんだ。運動をすれば、脳がよく働くとかテレビで偉い人が言ってた気がする。
偉い人の言葉通り、何か見えてきた。光みたいに、ピカピカした最高のアイデアが。
来た。来た来た、キタキタキタ!
「キターーーーー!!!」
しかしその時。
ドンッ!
人かゾンビか、判別はできないが、誰かにぶつかった。
「……えっ」
「待て、落ち着けオレ、1、2の3で振り返るんだ」
この声、聞き覚えがあるぞ。しかし、気づくより前に、ゾンビにぶつかったと思い込んだタクマは、震えながら顔を上げた。
すると、相手もゾンビがぶつかってきたと思い込んでいるのか、「1、2の3」と振り返った。
そして……
「ああああああああああああ!!」
「わぁああああああああああ!!」
タクマは、オニキスと共に悲鳴を上げた。
怒りよりも先に、心細さと呆れが来て、タクマは怒る気にはならなかった。それにしても、みんなの所に戻るにしろ、方角が分からない以上下手に動くのはマズイ。
畜生、こんなことならコンパスの一個や二個持ち歩いておくべきだった。何なら、ちぎったパンでも置いて道標にすればよかった。
いや、後悔したってもう遅い。とにかくまずは、置いていってしまった皆と再開するのが先だ。
けど、本当に恐ろしい場所だ。ずっと辺りは暗いままだし、それに耳元で悪霊の呼び声が聞こえてくる。
いや、風だ。瓦礫の隙間から吹いた風が、リコーダーのように音を出しているだけだ。もう、そうやって全てを適当な科学的根拠に当て嵌めていかなければ、体がもたなかった。
「頼む、誰か近くに来てくれ……」
と思ってふと顔を上げると、朽ちた民家の中に人影が見えた。生存者だろうか、床に跪いて何かをしている。
服装的にその人は男のようだが、少なくとも吾郎とかではないようだ。
「あの、すみません。俺、生きてる人です」
生きてる人って何だ。自然と頭の中でもう1人の自分に突っ込まれるが、気にせず民家に入ろうとしたその時。
凄まじい腐敗臭が鼻の奥をツンと突いた。嫌な予感がする。すると、その予感が当たり、男の横から半分白骨化した人の頭が転がった。
「ヒィッ!」
あまりの恐怖に、タクマは後退りする。しかし、運悪く足元の氷に足を滑らせてしまい、男が振り向いた。口から黄色の膿らしき唾液を垂らしながら、白濁とした目で歯をガチガチさせている。
ゾンビだ。確かにこれでは、メアもノエルも生体反応をキャッチできない。
「く、来るな!来たら斬るぞ!」
咄嗟に剣を抜き、ゾンビ相手にハッタリをかます。だが、タクマは気付いていなかった。ゾンビに知性がない事を。とどのつまり、どれだけ刃物を見せようと、ゾンビには何の効果もない無駄な行動でしかないのだ。
でも、こんな歪んだ家の中に居るのなら、出ることなんて不可能な筈。それも、少し間接を無理に動かしたら崩れてしまいそうな体で、そんな芸当できるわけ……
しかし、その甘い考えがいけなかった。なんとゾンビは、鋭い爪で木の檻を一刀両断した。そして、解放されたゾンビは何事もなかったかのように近付いてきた。
「……………」
理解が追いつかず、タクマは深刻そうな顔で固まった。あ、多分今の俺モアイみたいな顔してるわ。
そして、タクマは落ち着こうと大きく息を吸った。
「ギャァァァァァァァァァァ!!」
やっと理解した。このゾンビ、ヤバい!
戦うとかそう言った次元じゃない。ゾンビを1匹見つけたら30匹は居ると思えとも言う。とどのつまり、日本刀みたいな爪を持つゾンビがあと29匹、いやそれ以上がこのエンドポリス内に生息している。
なんて噂をしていると、悲鳴を聞きつけたゾンビが暗い物陰から姿を現した。皆全身がボロボロで、人間だった頃の面影はそろそろ消えかかっているのがほとんどだった。右半分の髪が抜け落ちた女性のゾンビ、片腕のない子供ゾンビ、完全に腹部に穴が空いているゾンビなど、まさに地獄絵図だった。
ああ、帰りたい。アルゴでぬくぬくとティグノウスにビビっていたあの頃に帰りたい。ノブナガ様達と一緒に、リュウヤの美味い飯を食っていたあの日に帰りたい。
……いやいや、弱気になってどうする。ここで挫けてたら、お前本当に死ぬぞ。思い出せ、ジ○・バレンタインだってゴリスだって、コイツみたいなヤベー奴と勇敢に渡り歩いてきたんだぞ。イー○ンだって、ただの普通の親父だったんだぞ。
できるできる!俺ならできる!心の中のリトル松○修○を召喚し、鼓舞する。
「逃げてたまるかってんだ!来い、俺が相手だ!」
そう言って、ゾンビを引きつける。どうせ来るなら、何とか無双みたいにザクザク斬りつける爽快アクションでやっつけた方が効率がいい。
何故か脳裏にそんな発想が過るが、すぐに別の何かがそれを堰き止めた。
そして、まずは一撃、ゾンビの腕を斬り落とした。少々リスキーな行為ではあったが、鋭い爪を持つ腕を一本でも奪ったのは大きい。
しかし、それで満足するには、まだ早い。何故なら、今周りには腕を斬った個体含めて5体。気を抜けば速攻ゲームオーバー、がめおべらなんて呑気な事は言ってられない。コンテニューできないのだから尚更だ。
「はぁ!どらぁ!」
タクマは必死で剣を振り、ゾンビを圧倒した。肉が腐ってボロボロだと思い込んでいたが、まるでタイヤを斬っているような、ゴムに近い手応えが返ってくる。
しかも、倒したはずのゾンビが、まるで時が戻ったように生き返る。
「う、嘘だろ……」
こ、こんなことあるのかよ。こんな時、どうしたらいいんだよ。戸惑っている間にも、ゾンビはゆっくりと様子を見るように動く。
頼むリュウヤ、助けてくれ。情けなく思うが、今この中で助けを呼べそうなのはリュウヤしか居ない。他にも仲間はいるはずなのに、リュウヤだけが名指しで出てしまうのが、本当に情けない。
しかしその時、ふと頭の中にリュウヤが現れた。
『いや、策はあるぜタクマ!』
策?何だって、リュウヤ?
『たった一つだけ策があるぜ!とっておきのな!』
とっておき?そうだ!
「息が止まるまでとことんやる。その、策!それは!」
それは!アレだ、Jの人たちの言葉を完全に丸パクリした、リュウヤが教えてくれた最強の策!
「『逃ぃげるんだよォォォーーーーーッ!!』」
逃げる。とにかく逃げる。そして、その間に何かいい策を考えるんだ。運動をすれば、脳がよく働くとかテレビで偉い人が言ってた気がする。
偉い人の言葉通り、何か見えてきた。光みたいに、ピカピカした最高のアイデアが。
来た。来た来た、キタキタキタ!
「キターーーーー!!!」
しかしその時。
ドンッ!
人かゾンビか、判別はできないが、誰かにぶつかった。
「……えっ」
「待て、落ち着けオレ、1、2の3で振り返るんだ」
この声、聞き覚えがあるぞ。しかし、気づくより前に、ゾンビにぶつかったと思い込んだタクマは、震えながら顔を上げた。
すると、相手もゾンビがぶつかってきたと思い込んでいるのか、「1、2の3」と振り返った。
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