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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第257話 蛻晄律縺ョ謐懈渊(※正常です)

「どわぁぁっ!ぐへぇ!」

 タクマは悪夢の恐怖に飛び起き、そのままベッドから転げ落ちてしまった。
 全く、朝起きたと同時に、夢と同じように頭を打つなんて、縁起が悪い。それにしても、捜索1日目にして、変な夢を見たものだ。
 そう言えば、今の時間は?
 タクマは時間を確認した。時刻は丁度5時50分、後10分で6時だ。

「まだ、誰も起きてないか」

 その時、一瞬夢の中の記憶が脳裏によぎった。確か夢で、俺達はメアの悲鳴で目を覚ました。赤のシュシュを無くしたからだ。
 ……いや、まさかそんなことがあるはずない。夢は夢、考えすぎだ。
 タクマは早起きできたことを前向きに考え、下に降りた。すると、扉を開けた瞬間、美味しそうな味噌汁の匂いが漂ってきた。
 そう言えば、リュウヤはいつも誰よりも先に起きて、朝食の仕込みをしていたっけ。凄い時は、真夜中にサバ味噌の仕込みをしたりしている。
 キッチンの方を見てみると、やはりそこには味見をするリュウヤの姿があった。

「よし!塩分うま味、オールオッケー。そろそろ皆起きる頃だし……」
「のわー!大変じゃー!」

 とその時、部屋からメアの悲鳴が聞こえてきた。まさか、Zの刺客が!?
 タクマは急いで部屋に戻った。そこには、何かを必死に探すメアと、悲鳴に驚く仲間の姿があった。

「ど、どうしたんですかメアさん!?」
「な、ないのじゃ!シュシュがないのじゃ!」
「しゅしゅ?それって、メイが頭にいつも付けてるアレか?」
「そうじゃ!昨日棚の上に置いたはずなのに、無いのじゃ!」

 相当焦っているようで、メアは慌てながらベッドの下を探している。そして、コレじゃないアレじゃないとベッドの下が発掘され、「むっつりバニー」というタイトルのエロ本が出てきた。

「メアメア、こっちにはなかったで」
「んぅ?皆、何探してるのん?」

 寝ぼけてぼーっとしている仲間達の前に、突然リュウヤが現れた。

「ああお前様、実は……」
「いや、皆まで言うな。シュシュ、無くしたんだろ?」
「うむ。そうで……って、リュウヤ殿何故それを!?」
「細けぇ事は何だっていいだろ?ソイツならほら、ここに」

 そう言うと、リュウヤはまるで何かに導かれるようにベッドと棚の間に手を入れ、そこからシュシュを見つけ出した。
 そして、何事もなかったように、メアの手にシュシュを包み込ませた。

「リュウヤ、お前……」
「話は後だ。それよりほら、善は急げって言うだろ?早く飯食って、早くエンドポリスの場所を探そうぜ」
「おい、まだ話は──」

 しかし、話を最後まで聞かず、リュウヤは柵から飛び降り、一階へとショートカットで降りてしまった。

 ──それから、食事を終えたタクマ達はこれからまず、どこを探すかの作戦会議を始めようとしていた。
 早速案を出そう、と至った時、タクマはそっと手を挙げた。

「おろ?タクマ殿、どうかしたでござるか?」
「何か、心当たりがあるん?」
「定かじゃないけど、誰かアコンダリアの時のトーナメント表持ってる人って、居る?」
「トーナメント表?何を言うておるタクマ、今はエンドポリスの事を探していて、アコンダリアは何も関係ないじゃろう」

 確かにそうだ。今、アコンダリアの事は関係ない。こんな真面目な時に、過去を振り返る時間などない。それでも、不思議とそこに深い手掛かりがあるような気がするのだ。
 すると、リュウヤが不思議そうな顔をしながら血塗れのトーナメント表を見せた。サレオスとの戦いで、結構グロいことになっている。しかし幸いにも、名前の部分はしっかり読み取ることができた。

「タクマさん、これがどうかしたんですか?」
「実はさ、今日ふと夢を見たんだよ。この、オリーブと会う夢」

 そう言って、タクマは「オリーブ」の名前を指さした。すると、その名前に聞き覚えのあったおタツが、「あ!」と声を上げた。

「そう言えば彼、エスジネス出身でありんしたね。それに、近くのゴーストタウンが好きって……」
「あああああ!!でかしたぞおりょう!タクロー!それ多分エンドポリスの事だぜ!」

 ──こうして、魔道学生を中心に、タクマ達は聞き込みを開始した。最終的に死んでしまったものの、初日にしてこんな大きな手掛かりとなる夢を見るなんて、運が良いのか悪いのか。
 しかし、
「最近見かけないな」「アイツ影薄いから」「エンドポリスを見に行くとか何とか言ったっきり消えちまった」「まさか、例の神隠しに遭ってたりして……」
 誰も彼の消息を知る者は居なかった。確かに、エンドポリスはZの隠れ家でもある。とどのつまり、侵入がバレたとなれば、彼は既に死んでいる可能性が高い。
 いや、それでもあのやけにリアルな夢には、オリーブが出ていた。仮に死んでいたにしろ、幽霊として何かを伝えようとしているとも考えられる。
 普通、まずそんな発想に至る事自体この場ではただのおふざけに過ぎない。しかし、ネクロマンサーである彼ならあり得なくはない。

「いやはや、やっぱ居ねぇもんだな探しても」
「せやなぁ。あの暗い兄ちゃん、どこ行ったんやろ」

 昼食休憩のためカフェに集まった一行は、各々手にした情報を共有した。勿論、どこも殆ど同じような答えだった。

「しかし、何もこんな時期にエンドポリスに征かなくても良いものを……」と吾郎は言う。
「まさか本当にしんでました、なんて言わぬと良いが……」

 そう会議から雑談に変わろうとしていたその時、突然ノエルが額を抑えて悶え出した。続けて、タクマも頭が割れそうな頭痛に襲われた。

「ぐがぁぁぁぁぁ!」
「痛っ……うっ……」
「タクロー!ノエチビ!大丈夫か!」

 アリーナは大声を出しているようだが、頭痛による激痛で遠く聞こえてしまう。他の5人も心配そうに声をかけるが、アリーナよりも声が小さくて、何を言っているのか聞こえなかった。
 
「どど、どうしやしょう。頭痛薬なんて持ってないでありんすよ!」

 すると、近くに街の人達も群がってきた。皆、頭痛にのたうち回る二人を心配している。けどこのままじゃ、助けが来る前に、頭が割れて死んじまう。タクマは怖くてたまらなかった。突然襲ってきた頭痛で全てを終わらされてしまう恐怖に。
 必死に意識を飛ばさないように堪えていたが、抵抗虚しく、タクマは気を失ってしまった。

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