コピー使いの異世界探検記
第254話 終のチテンへ
それから、宿屋でチェックインを済ませたタクマ達は、一先ずZの故郷であるエンドポリスがどこにあるのか探るため、地図を広げた。
「えっと、まずこのエスジネスが、カプリブルグから南西。内陸の方だな」
「それでアトランカ帝国が、ここから南に向かった方にあるのじゃな」
基本的に、カプリブルグ以外は内陸に位置している事は大体わかった。国の周りに山々が立ち並んでいるためか、簡単に都市を建設できないのだろう。
続いてアトランカを中心に南東に出ると、すぐ近くに大規模な都市が二つあった。東海沿いのハクラジュ、南の山に囲まれたアストラ。
「あれ?エンドポリスどこや?」
「え?まさかそんなわけ……ない……じゃん……」
ナノの純粋な一言に、タクマ達は目を疑った。しかし、ペルドゥラスの頭から足元までの国名を調べても、エンドポリスのエの字すらなかった。あっても、ここエスジネスくらいしかない。
これは困る。エンドポリスと具体的な足取りが掴めても、そもそもそこが何処なのかを知らなければ意味がない。
いや待て、希望はある。アリーナなら何か知っているかもしれない。一応彼女は海賊、しかも世界をまたにかける大海賊だ。エンドポリスの一回や二回、入ったことはあるだろう。
「あ。言っとくけどアタシ、行ったことねぇぜ?」
アリーナは周りからの視線が来るような気がしたのか、タクマが顔を上げる前に宣言した。
「何なら、ペルドゥラスはカプリ以外行ったことねぇ」
場の空気が完全に凍りついた。やはり他の6人も同じ発想だったのか、アリーナに全てを覆された驚きと絶望で、全員が石像のように固まってしまった。何なら、リュウヤに関してはお得意のマ○ク芸──口をあんぐり開け、目や歯茎がポンと飛び出す──をしたまま固まっている。
いや、悪くない。アリーナは何も悪くないのだ。勝手に期待をしたこっちが悪い。よく考えれば、海という最高の逃げ場がない山中に現れる海賊など存在しない。それはただの山賊だ。
「アリーナさん、世界をまたにかけたって、ウソだったんですか?」
「ウソじゃあねぇよ。ただペルドゥラスは山が多いし冬クソ寒いし、エンドポリスに関しては呪われた国だから行きたくねぇってだけで、ちゃんと三大陸回ったぜ」
「内陸の国も初なのに、世界をまたにかけた、でありんすか」
すると、アリーナはゴンと机を叩き「何か言いたそうだなぁ」とおタツに顔を近付けた。
「2人とも、喧嘩はこの騒動を終わらせてからにするでござる」
「だよなダーリン。アタシ頭冷やすわ」
「じゃあアリーナ、場所は分からないでいいけど、どう言った国か、くらいは分かるか?」
何とかほとぼりが冷めた所に、リュウヤが質問を挟んだ。そう言えば、エスジネスに向かう途中、αの“エンドポリス”と言う言葉に強く反応を示したのはアリーナだった。しかも、ハッキリと“ゴーストタウン”とハッキリ言っていた。
「どうなのじゃアリーナ?」
「あそこはな、元々“エントポリス”って国だったみてーだ」
そう言って、アリーナは話を続けた。
エンドポリス、又の名をエントポリス。それはかつて、あらゆる学に強い国として、繁栄を築き上げた。日夜天才達が研究を積み重ねてきた結果、エントポリスで沢山の技術が生まれ、少しずつ世界に広がっていった。まさに、エントポリス産業革命の国となりつつあった。
しかしある日、国民全員が忽然と姿を消し、空全体が夜の闇に覆われてしまったのだとか。
それ以来、行った者は二度と帰ってこなかった。なんて都市伝説が生まれ、終わりを意味する“エンド”と掛けて、終わりの都市、エンドポリスと呼ばれて今に至る。
「「「きゃーーーー!!」」」
話し終わった瞬間、メア、ノエル、おタツの3人は恐怖のあまり悲鳴を上げて3人仲良く抱きついた。
それを見て、アリーナはゲラゲラと笑う。
「ダハハハハ!どーよ、怖かったか?怖かったろ!」
「その辺にしてやってくだせぇよ有菜先輩。ほんで、その話マジ?」
リュウヤが訊くと、アリーナは突然黙り込み、静かに「マジだ」と答えた。
「成程、つまり呪われた地に人を寄せつけないために、あえて地図から消した。といった所でござるか」
「だろうな。ま、嘆いても仕方ないし、アタシはもう寝るぜ」
「アリリン、飯食いに行かんの?」
寝転ぶアリーナに、ナノが訊く。しかしアリーナは、乗り気じゃないのか「夜中に勝手に食いに行く」と言い、布団に潜り込んだ。
まあ、真偽が定かではないとはいえ、呪われた国の話なんかしたら気分が悪くなるのも頷ける。
一行はアリーナを置いて、食事に向かったのだった。
──一方その頃、エンドポリスの地下深く。暗がりの中で一人、Zはオーブを眺めていた。
光が一切ないはずなのに、オーブだけがぽぉっと緑色に光っている。
「えぇ、順調ですヨ。天才は私一人だけで十分なのですかラ」
Zはワインをグラスに注ぎながら、オーブに話しかける。彼には何が聞こえているのか、オーブはうんともすんとも喋らない。
「この世界は全て、私のものになるのでス。α様にも、魔王にも渡す訳にはいかなイ」
言いながらZは、足元でクラッカーのカスを貪るネズミの前に、毒々しい薬を一滴垂らしたクラッカーを落とした。
すると、ネズミは仲間のネズミを呼び、大きなクラッカーを4匹で仲良く食べた。
だが、毒が盛られていたと気付く頃には遅く、ネズミ達は苦しそうにのたうち回り、コロリと息を引き取った。
しかし、死んだ筈のネズミはゾンビのように起き上がり、筋肉を膨張させた。そして、皮膚が破け、筋肉だけになったネズミは、ナイフのように鋭い牙を剥き出しにして、同じく変化したネズミだったものに齧り付いた。
ネズミだったものの、痛々しい悲鳴がチューと部屋にこだまする。
「賽は投げられましタ。さて、そろそろ歓迎の準備でもしましょうかネ」
「えっと、まずこのエスジネスが、カプリブルグから南西。内陸の方だな」
「それでアトランカ帝国が、ここから南に向かった方にあるのじゃな」
基本的に、カプリブルグ以外は内陸に位置している事は大体わかった。国の周りに山々が立ち並んでいるためか、簡単に都市を建設できないのだろう。
続いてアトランカを中心に南東に出ると、すぐ近くに大規模な都市が二つあった。東海沿いのハクラジュ、南の山に囲まれたアストラ。
「あれ?エンドポリスどこや?」
「え?まさかそんなわけ……ない……じゃん……」
ナノの純粋な一言に、タクマ達は目を疑った。しかし、ペルドゥラスの頭から足元までの国名を調べても、エンドポリスのエの字すらなかった。あっても、ここエスジネスくらいしかない。
これは困る。エンドポリスと具体的な足取りが掴めても、そもそもそこが何処なのかを知らなければ意味がない。
いや待て、希望はある。アリーナなら何か知っているかもしれない。一応彼女は海賊、しかも世界をまたにかける大海賊だ。エンドポリスの一回や二回、入ったことはあるだろう。
「あ。言っとくけどアタシ、行ったことねぇぜ?」
アリーナは周りからの視線が来るような気がしたのか、タクマが顔を上げる前に宣言した。
「何なら、ペルドゥラスはカプリ以外行ったことねぇ」
場の空気が完全に凍りついた。やはり他の6人も同じ発想だったのか、アリーナに全てを覆された驚きと絶望で、全員が石像のように固まってしまった。何なら、リュウヤに関してはお得意のマ○ク芸──口をあんぐり開け、目や歯茎がポンと飛び出す──をしたまま固まっている。
いや、悪くない。アリーナは何も悪くないのだ。勝手に期待をしたこっちが悪い。よく考えれば、海という最高の逃げ場がない山中に現れる海賊など存在しない。それはただの山賊だ。
「アリーナさん、世界をまたにかけたって、ウソだったんですか?」
「ウソじゃあねぇよ。ただペルドゥラスは山が多いし冬クソ寒いし、エンドポリスに関しては呪われた国だから行きたくねぇってだけで、ちゃんと三大陸回ったぜ」
「内陸の国も初なのに、世界をまたにかけた、でありんすか」
すると、アリーナはゴンと机を叩き「何か言いたそうだなぁ」とおタツに顔を近付けた。
「2人とも、喧嘩はこの騒動を終わらせてからにするでござる」
「だよなダーリン。アタシ頭冷やすわ」
「じゃあアリーナ、場所は分からないでいいけど、どう言った国か、くらいは分かるか?」
何とかほとぼりが冷めた所に、リュウヤが質問を挟んだ。そう言えば、エスジネスに向かう途中、αの“エンドポリス”と言う言葉に強く反応を示したのはアリーナだった。しかも、ハッキリと“ゴーストタウン”とハッキリ言っていた。
「どうなのじゃアリーナ?」
「あそこはな、元々“エントポリス”って国だったみてーだ」
そう言って、アリーナは話を続けた。
エンドポリス、又の名をエントポリス。それはかつて、あらゆる学に強い国として、繁栄を築き上げた。日夜天才達が研究を積み重ねてきた結果、エントポリスで沢山の技術が生まれ、少しずつ世界に広がっていった。まさに、エントポリス産業革命の国となりつつあった。
しかしある日、国民全員が忽然と姿を消し、空全体が夜の闇に覆われてしまったのだとか。
それ以来、行った者は二度と帰ってこなかった。なんて都市伝説が生まれ、終わりを意味する“エンド”と掛けて、終わりの都市、エンドポリスと呼ばれて今に至る。
「「「きゃーーーー!!」」」
話し終わった瞬間、メア、ノエル、おタツの3人は恐怖のあまり悲鳴を上げて3人仲良く抱きついた。
それを見て、アリーナはゲラゲラと笑う。
「ダハハハハ!どーよ、怖かったか?怖かったろ!」
「その辺にしてやってくだせぇよ有菜先輩。ほんで、その話マジ?」
リュウヤが訊くと、アリーナは突然黙り込み、静かに「マジだ」と答えた。
「成程、つまり呪われた地に人を寄せつけないために、あえて地図から消した。といった所でござるか」
「だろうな。ま、嘆いても仕方ないし、アタシはもう寝るぜ」
「アリリン、飯食いに行かんの?」
寝転ぶアリーナに、ナノが訊く。しかしアリーナは、乗り気じゃないのか「夜中に勝手に食いに行く」と言い、布団に潜り込んだ。
まあ、真偽が定かではないとはいえ、呪われた国の話なんかしたら気分が悪くなるのも頷ける。
一行はアリーナを置いて、食事に向かったのだった。
──一方その頃、エンドポリスの地下深く。暗がりの中で一人、Zはオーブを眺めていた。
光が一切ないはずなのに、オーブだけがぽぉっと緑色に光っている。
「えぇ、順調ですヨ。天才は私一人だけで十分なのですかラ」
Zはワインをグラスに注ぎながら、オーブに話しかける。彼には何が聞こえているのか、オーブはうんともすんとも喋らない。
「この世界は全て、私のものになるのでス。α様にも、魔王にも渡す訳にはいかなイ」
言いながらZは、足元でクラッカーのカスを貪るネズミの前に、毒々しい薬を一滴垂らしたクラッカーを落とした。
すると、ネズミは仲間のネズミを呼び、大きなクラッカーを4匹で仲良く食べた。
だが、毒が盛られていたと気付く頃には遅く、ネズミ達は苦しそうにのたうち回り、コロリと息を引き取った。
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