コピー使いの異世界探検記
第252話 ハジマリの野望
『私の目的は、報われない者達への救済だ』
「きゅうさい?つまり、どういうことだってばよ?」
「まさかお主、死は救済なんて野蛮なことは言わぬよな?」
αの発言に驚いたメアは、やばい奴を見るような疑いの目を向けた。
彼女の感覚の通り、彼のように力や地位の全てを兼ね備えてそうな奴ほど、死こそが救済とかヤバい事を言い出す。
しかし、αはその偏見に対して逆に驚き、「まさか」と否定した。
「違う、となると何を救済すると申すでござるか?」
『人間が、神の定めた運命によって感情を奪われ、心が壊れてしまわないように守り導く。それが、私の為す救済だ』
言い終わると、アリーナは煩わしそうに頭を抱えた。
「サダメとか心とか、アタシにゃさっぱり理解できねぇぜ」
「うう、ウチには難しすぎて何にも分からんわ」
『おっと、これはすまない事をした。簡単に言えば、人々が悲しまない世界を作る。といったところだ』
そう言い直すと、明らかにげんなりとしていたアリーナもナノも、成程!と合点が行ったようで、仲良く大きく頷いた。
するとその時、リュウヤは何かにピンと来たようで、もしかして、と呟きそっと手を挙げた。
「もしかしてだけど、Zを家族として迎えたってのも、アイツも運命に感情を奪われちまったからか?」
「あっ。そう言えばオニキスも。じゃあ、アルルも……?」
リュウヤの発言により、一瞬にしてα一味の共通点が浮き彫りになった。最強狩り、マッドサイエンティスト、サキュバス、全く接点のない3人と1人の鎧男の間にあったダイヤ型の関係。その関係が露わになった時、一同は一斉にピンと来た。
彼らには、心が関係している、と。それも、過去の悲劇によってバラバラに砕かれてしまった“心”が。
『その通り。オニキス君もZも、アルルも皆、心に深い傷を負い、感情を失ったのさ』
「えーっと、オニキスは確か、ご両親を殺された事が原因でありんしたね」
「でも、Zとアルルに関しては、まだ謎ですね」
「とどのつまり、Zを殺さなかったワケってのは、その感情を失った“理由”があるんだな?」
やっと気分が落ち着いたアリーナは、自分のお茶だけでは物足りず、おタツの分も飲みながら言う。
「教えてくれα、Zは何でああなったんだ?」
タクマが訊くと、αはううんと唸り出し、黙り込んでしまった。
そして、しんと数秒の静寂が過ぎた後、αは一言『話せば長くなる』と答えを返した。
「おいおいαのオッサン、そりゃないだろ」
『そう言われても、彼の心に亀裂が入ったのは幼い頃からの話だ。細かい理由はいつか分かる』
「幼い頃から、か。親に愛されなかったとか、そんな所じゃろうな」
「ですけど、親に愛されなかったくらいで、あんな風になるものなのでありんすか?」
『極端な話、人間の心と言うのはガラスと同じだ。一度壊れてしまえば、完全修復は不可能に等しい。彼のあの非道な性格も、きっと心の崩壊によるものだろう』
そう言って、αは茶を飲んだ。構造が気になるところだが、それはそれだ。
するとその時、門の方から何やら凄まじい爆発音が鳴った。
「な、なんや!?」
「この気配、タクマさん大変です!きっとこれは……」
『くそっ、時間がない』
メルサバの危機を察したのか、αは口調を荒くして席を立った。
言わずもがな、魔物の軍勢が再び押し寄せたのだろう。
「待てα、俺も行く!」
キリがない。タクマは急いで剣を取り、αよりも先に部屋から出ようとした。しかし、αを追い越そうとした時、急に体の動きが止まった。まるで、蛇に睨まれた蛙のように、いきなり。
そして、αは抑揚のない口調で『来るな』と一言突き放した。
『家族のケジメは私のケジメだ。敵は私が殲滅する、君達はエスジネスからエンドポリスに向かってくれ』
「エンドポリスって、ゴーストタウンのエンドポリスか?」
アリーナは目を丸くして訊く。するとαは、頷いた後にタクマの手を握った。
すると、まだピリピリと痛みがあった筈の足から痛みが消え、万全の状態に戻った。
「待ってくれα殿!エンドポリスには何があるでござる!」
『……Zだ。エントポリスは、Zの故郷だ』
「なんじゃと!?」
「よし!そうと決まれば行こうぜタクマ!おいって、行こうぜって!」
突然、リュウヤはタクマに擦り寄り、ゲートを開くように催促し始めた。
仕方がない。もしこのままZを放っていたら、αの言う通り、人類が滅亡しかねない。それを止めるなら、1秒でも早い方がいい。
「α、頼んだぞ。《ワープ》!」
タクマは壁にゲートを開いた。近くの木に繋がったのか、有名な魔法学校らしき黒く大きな建物が、白い壁から顔を出しているのが見えた。
ここが、件のエスジネスなのだろう。
一刻も早く、Zを止める。タクマ達はゲートを通り、メルサバを後にした。
『……何かを得るには、対価を支払わなければならない、か。やはり運命は、残酷だな』
ゲートが閉じ、部屋から人が消えた宿屋の一室で、αはビショップの駒を見つめた。
そして、それを握り潰し、αも部屋を後にした。
「きゅうさい?つまり、どういうことだってばよ?」
「まさかお主、死は救済なんて野蛮なことは言わぬよな?」
αの発言に驚いたメアは、やばい奴を見るような疑いの目を向けた。
彼女の感覚の通り、彼のように力や地位の全てを兼ね備えてそうな奴ほど、死こそが救済とかヤバい事を言い出す。
しかし、αはその偏見に対して逆に驚き、「まさか」と否定した。
「違う、となると何を救済すると申すでござるか?」
『人間が、神の定めた運命によって感情を奪われ、心が壊れてしまわないように守り導く。それが、私の為す救済だ』
言い終わると、アリーナは煩わしそうに頭を抱えた。
「サダメとか心とか、アタシにゃさっぱり理解できねぇぜ」
「うう、ウチには難しすぎて何にも分からんわ」
『おっと、これはすまない事をした。簡単に言えば、人々が悲しまない世界を作る。といったところだ』
そう言い直すと、明らかにげんなりとしていたアリーナもナノも、成程!と合点が行ったようで、仲良く大きく頷いた。
するとその時、リュウヤは何かにピンと来たようで、もしかして、と呟きそっと手を挙げた。
「もしかしてだけど、Zを家族として迎えたってのも、アイツも運命に感情を奪われちまったからか?」
「あっ。そう言えばオニキスも。じゃあ、アルルも……?」
リュウヤの発言により、一瞬にしてα一味の共通点が浮き彫りになった。最強狩り、マッドサイエンティスト、サキュバス、全く接点のない3人と1人の鎧男の間にあったダイヤ型の関係。その関係が露わになった時、一同は一斉にピンと来た。
彼らには、心が関係している、と。それも、過去の悲劇によってバラバラに砕かれてしまった“心”が。
『その通り。オニキス君もZも、アルルも皆、心に深い傷を負い、感情を失ったのさ』
「えーっと、オニキスは確か、ご両親を殺された事が原因でありんしたね」
「でも、Zとアルルに関しては、まだ謎ですね」
「とどのつまり、Zを殺さなかったワケってのは、その感情を失った“理由”があるんだな?」
やっと気分が落ち着いたアリーナは、自分のお茶だけでは物足りず、おタツの分も飲みながら言う。
「教えてくれα、Zは何でああなったんだ?」
タクマが訊くと、αはううんと唸り出し、黙り込んでしまった。
そして、しんと数秒の静寂が過ぎた後、αは一言『話せば長くなる』と答えを返した。
「おいおいαのオッサン、そりゃないだろ」
『そう言われても、彼の心に亀裂が入ったのは幼い頃からの話だ。細かい理由はいつか分かる』
「幼い頃から、か。親に愛されなかったとか、そんな所じゃろうな」
「ですけど、親に愛されなかったくらいで、あんな風になるものなのでありんすか?」
『極端な話、人間の心と言うのはガラスと同じだ。一度壊れてしまえば、完全修復は不可能に等しい。彼のあの非道な性格も、きっと心の崩壊によるものだろう』
そう言って、αは茶を飲んだ。構造が気になるところだが、それはそれだ。
するとその時、門の方から何やら凄まじい爆発音が鳴った。
「な、なんや!?」
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『くそっ、時間がない』
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言わずもがな、魔物の軍勢が再び押し寄せたのだろう。
「待てα、俺も行く!」
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そして、αは抑揚のない口調で『来るな』と一言突き放した。
『家族のケジメは私のケジメだ。敵は私が殲滅する、君達はエスジネスからエンドポリスに向かってくれ』
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アリーナは目を丸くして訊く。するとαは、頷いた後にタクマの手を握った。
すると、まだピリピリと痛みがあった筈の足から痛みが消え、万全の状態に戻った。
「待ってくれα殿!エンドポリスには何があるでござる!」
『……Zだ。エントポリスは、Zの故郷だ』
「なんじゃと!?」
「よし!そうと決まれば行こうぜタクマ!おいって、行こうぜって!」
突然、リュウヤはタクマに擦り寄り、ゲートを開くように催促し始めた。
仕方がない。もしこのままZを放っていたら、αの言う通り、人類が滅亡しかねない。それを止めるなら、1秒でも早い方がいい。
「α、頼んだぞ。《ワープ》!」
タクマは壁にゲートを開いた。近くの木に繋がったのか、有名な魔法学校らしき黒く大きな建物が、白い壁から顔を出しているのが見えた。
ここが、件のエスジネスなのだろう。
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