コピー使いの異世界探検記
第250話 シの属性獣
「何じゃと!?人間が、魔物に!?」
「ではまさか、この怪物共も、かつては人間だった可能性が……?」
「認めたくないけど、そうみたい。いや、実際に起きてるんだし、そうだろうね」
タクマは魔物化した元・冒険家に蹴りを入れ、魔法軍と交戦した。
しかし、どれも再生能力に長けており、なかなかダメージを与えることができなかった。サラマンダーは斬られた傷を炎で塞いでから再生し、スライムはそもそも痛くも痒くもなさそうにしている。泥人形はランディオで生み出した泥を体の再構築に使い、雷獣に関しては速すぎてかすり傷程度で済んだのか、何事もなかったように音速で駆け回っている。
「ちっ、しつこい奴め!《コピー・ランディオ》!」
狼狽えている暇なんてない。タクマは残りの魔物達をメアと吾郎に任せ、コピーした大地の力を岩雪崩に変えてサラマンダーを生き埋めにした。
そして、雷獣が発射した雷を剣に宿し、それをスライムに容赦なく突き刺した。例えどんなに上位のスライムだろうと、元を辿れば水の塊のようなもの。つまりは、電気を流せば確実に仕留めることができる。
しかし、その計算には小さな誤算が生じていた。
「うっ!」
「た、タクマ殿!」
タクマはスライムの体から作られた氷の針に貫かれてしまった。まち針を刺された布のように、背中を貫通している。
スライムだからそんなに強くないだろう、と詰めの甘い計算をしてしまったが故に攻撃を喰らってしまった。
体にコピーした電流が逆流してくる。自分のものとしたはずなのに、それが自分に返ってきている。剣以外の武器を使っている訳でもないのに、体が痺れてしまう。
久々の対価の痛みを痛感しつつも、タクマは剣から手を離さなかった。それどころか、逆に雷をスライムの中に解放した。そして、飛び散るスライムの欠片を剣ごと泥人形に当て、同時撃破を狙った。
「ぶっ飛びやがれ!《雷閃の剣・転》!」
多少のダメージは受けつつも、タクマの狙い通り、スライムの欠片が泥人形にかかった。すると、スライムは身体の再生をしようと泥人形を捕食し、湿り気と分解作用によって泥人形の体は崩れていった。
これで2体撃破、残るは雷獣1体のみ。しかしそう思った矢先、岩で封じ込めた筈のサラマンダーが噴火のように脱出し、タクマ達に襲いかかってきた。
「わぁっ!タクマ、此奴は死んだはずではなかったのか!?」
「まさか、熱が籠ったせいで……」
タクマの勘は当たっていた。
実は雪崩を食らわせた時、サラマンダーは仮死状態になっていた。しかし、死んだと思い込んで残りの3体の相手をしていたのが時間稼ぎとなり、サラマンダーは復活したのだ。しかも、重なった岩が煙突効果を生み出し、不死鳥の灯火程度だったサラマンダーの命の炎は、火山の溶岩を超える高温に達したのだった。
その事に気づいたタクマは、自分のしでかした事に発狂してあああああ!と叫び出したくなった。
するとその時、奥の方から潮風が吹いてきた。メルサバは海に面していないのにだ。
「どけどけどけぇ〜い!《ウェーブ・クライシス》!」
なんと、これから炎で焼き殺してやる、と意気込んでいたであろうサラマンダーは、荒波のサーベルによって真っ二つに切り裂かれた。
「アリーナ殿、どこに行っていたでござるか!」
「んな事は後でいいだろダーリン!それよりも、あと一息でこの軍勢も全滅だ。全部ぶった斬ろうぜ!」
「待つのじゃアリーナ!彼奴等は……」
メアは向こう見ずで突っ込むアリーナを制止させようと声を掛けた。しかし、それを遮るようにして、吾郎は抜刀の構えを取った。
アリーナの向かった先は、メアと吾郎の戦っている場所よりも更に先の遺体群。とどのつまり、人間だった魔物がうじゃうじゃと集まっている危険地達だ。解散していない遺体群に入るなど、自ら新しい遺体になりに行くようなものだ。
しかし、何を言ってもアリーナは止まらない。その事をよく知る吾郎は、あえてアリーナを行かせた。
「躊躇う暇はない。この殺生も、致し方なし。〈天照・陽炎の太刀〉」
「すまぬお主ら。戦いが終わった後、必ず厚く弔おう。《メガ・ドゥンケルボム》!」
メアと吾郎は、深く目を瞑りながら技を放った。例え元人間だったとしても、今はただの魔物でしかない。そうして苦しむ人達を解放するのも、ギルドの役目なのかもしれない。
タクマも、2人の覚悟を見習い、襲いかかってきた雷獣に向かって突きを放った。
「〈王手〉!」
「……はぁ、はぁ。どうか安らかに」
一息ついて振り返り、タクマは魔物の亡骸達に黙祷を捧げた。
すると、前線に出ていた兵士達が大声を上げながら戻ってきた。しかも、その中にはしれっとリュウヤも混じっていた。
「リュウヤお前、いつの間に!?」
「アッハハ!どーよ驚いたか?兵士が集まって門から出て行くもんだからよぉ、しれっと混じって遊びに行ってきたぜ!」
相変わらず何を考えているんだお前は。アリーナよりもぶっ飛んだ行動をしたリュウヤに呆れながらも、タクマは彼の帰還を喜んだ。だが、生きての再会を喜ぶ暇もなく、門の方から呼び声がする。
「門を閉じるぞー!早く入れー!」
「わぁあ!タクマ、こんな所で油を売っておったら締め出されるぞ!」
「おっといけねぇ!急いで戻ろう!」
呼び声に急かされて、冒険家はぞろぞろとメルサバに帰っていく。その後を追い、タクマ達もメルサバに走って戻る。
まるで青春のように、夕日に向かう仲間のように、5人は駆け出す。
しかしその途中、リュウヤは足を止めて、駆ける皆の後ろ姿を見た。特に何もなく、ただ門に向かっている。
そんな彼らの姿を少し見た後、立ち止まった事を気づかれないよう、リュウヤも急いで追いかけた。
「ではまさか、この怪物共も、かつては人間だった可能性が……?」
「認めたくないけど、そうみたい。いや、実際に起きてるんだし、そうだろうね」
タクマは魔物化した元・冒険家に蹴りを入れ、魔法軍と交戦した。
しかし、どれも再生能力に長けており、なかなかダメージを与えることができなかった。サラマンダーは斬られた傷を炎で塞いでから再生し、スライムはそもそも痛くも痒くもなさそうにしている。泥人形はランディオで生み出した泥を体の再構築に使い、雷獣に関しては速すぎてかすり傷程度で済んだのか、何事もなかったように音速で駆け回っている。
「ちっ、しつこい奴め!《コピー・ランディオ》!」
狼狽えている暇なんてない。タクマは残りの魔物達をメアと吾郎に任せ、コピーした大地の力を岩雪崩に変えてサラマンダーを生き埋めにした。
そして、雷獣が発射した雷を剣に宿し、それをスライムに容赦なく突き刺した。例えどんなに上位のスライムだろうと、元を辿れば水の塊のようなもの。つまりは、電気を流せば確実に仕留めることができる。
しかし、その計算には小さな誤算が生じていた。
「うっ!」
「た、タクマ殿!」
タクマはスライムの体から作られた氷の針に貫かれてしまった。まち針を刺された布のように、背中を貫通している。
スライムだからそんなに強くないだろう、と詰めの甘い計算をしてしまったが故に攻撃を喰らってしまった。
体にコピーした電流が逆流してくる。自分のものとしたはずなのに、それが自分に返ってきている。剣以外の武器を使っている訳でもないのに、体が痺れてしまう。
久々の対価の痛みを痛感しつつも、タクマは剣から手を離さなかった。それどころか、逆に雷をスライムの中に解放した。そして、飛び散るスライムの欠片を剣ごと泥人形に当て、同時撃破を狙った。
「ぶっ飛びやがれ!《雷閃の剣・転》!」
多少のダメージは受けつつも、タクマの狙い通り、スライムの欠片が泥人形にかかった。すると、スライムは身体の再生をしようと泥人形を捕食し、湿り気と分解作用によって泥人形の体は崩れていった。
これで2体撃破、残るは雷獣1体のみ。しかしそう思った矢先、岩で封じ込めた筈のサラマンダーが噴火のように脱出し、タクマ達に襲いかかってきた。
「わぁっ!タクマ、此奴は死んだはずではなかったのか!?」
「まさか、熱が籠ったせいで……」
タクマの勘は当たっていた。
実は雪崩を食らわせた時、サラマンダーは仮死状態になっていた。しかし、死んだと思い込んで残りの3体の相手をしていたのが時間稼ぎとなり、サラマンダーは復活したのだ。しかも、重なった岩が煙突効果を生み出し、不死鳥の灯火程度だったサラマンダーの命の炎は、火山の溶岩を超える高温に達したのだった。
その事に気づいたタクマは、自分のしでかした事に発狂してあああああ!と叫び出したくなった。
するとその時、奥の方から潮風が吹いてきた。メルサバは海に面していないのにだ。
「どけどけどけぇ〜い!《ウェーブ・クライシス》!」
なんと、これから炎で焼き殺してやる、と意気込んでいたであろうサラマンダーは、荒波のサーベルによって真っ二つに切り裂かれた。
「アリーナ殿、どこに行っていたでござるか!」
「んな事は後でいいだろダーリン!それよりも、あと一息でこの軍勢も全滅だ。全部ぶった斬ろうぜ!」
「待つのじゃアリーナ!彼奴等は……」
メアは向こう見ずで突っ込むアリーナを制止させようと声を掛けた。しかし、それを遮るようにして、吾郎は抜刀の構えを取った。
アリーナの向かった先は、メアと吾郎の戦っている場所よりも更に先の遺体群。とどのつまり、人間だった魔物がうじゃうじゃと集まっている危険地達だ。解散していない遺体群に入るなど、自ら新しい遺体になりに行くようなものだ。
しかし、何を言ってもアリーナは止まらない。その事をよく知る吾郎は、あえてアリーナを行かせた。
「躊躇う暇はない。この殺生も、致し方なし。〈天照・陽炎の太刀〉」
「すまぬお主ら。戦いが終わった後、必ず厚く弔おう。《メガ・ドゥンケルボム》!」
メアと吾郎は、深く目を瞑りながら技を放った。例え元人間だったとしても、今はただの魔物でしかない。そうして苦しむ人達を解放するのも、ギルドの役目なのかもしれない。
タクマも、2人の覚悟を見習い、襲いかかってきた雷獣に向かって突きを放った。
「〈王手〉!」
「……はぁ、はぁ。どうか安らかに」
一息ついて振り返り、タクマは魔物の亡骸達に黙祷を捧げた。
すると、前線に出ていた兵士達が大声を上げながら戻ってきた。しかも、その中にはしれっとリュウヤも混じっていた。
「リュウヤお前、いつの間に!?」
「アッハハ!どーよ驚いたか?兵士が集まって門から出て行くもんだからよぉ、しれっと混じって遊びに行ってきたぜ!」
相変わらず何を考えているんだお前は。アリーナよりもぶっ飛んだ行動をしたリュウヤに呆れながらも、タクマは彼の帰還を喜んだ。だが、生きての再会を喜ぶ暇もなく、門の方から呼び声がする。
「門を閉じるぞー!早く入れー!」
「わぁあ!タクマ、こんな所で油を売っておったら締め出されるぞ!」
「おっといけねぇ!急いで戻ろう!」
呼び声に急かされて、冒険家はぞろぞろとメルサバに帰っていく。その後を追い、タクマ達もメルサバに走って戻る。
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