コピー使いの異世界探検記
第233話 雷神グ輪入道
「いざ参らん!ノエル殿!」
「はい!せーのっ!」
吾郎は早速ノエルに指示を出し、彼の手を踏み台に飛び上がった。そして、続けてノエルも杖を出して魔力を溜めた。
どういった仕組みかはまだ分からないが、吾郎は先ず周りの小太鼓のようなものに雷を起こすヒントがあると睨み、上空から斬り落とす事を考えた。
そして、残りの二人は、片割れ同士の仮面が壊れるのではないかと仮説を立て、後から攻撃を開始した。
「くらえ!ヤマアラシミサイル!」
「よっ、はっ、〈閃の剣〉!」
「《メガ・フリズ》!」
ナノのミサイルを経由し、タクマは仮面に〈閃の剣〉を放った。続いて、ナノの被弾したミサイルが爆発し、スロウドの周りが黒煙で塗り潰される。そして最後、ノエルのメガ・フリズが炸裂し、一瞬凍りつくような風が吹いた。
「頼む吾郎爺、後は──」
『何だ?それで終いか?折角ノってやろうと思ったのに、こんなじゃわざわざ相手してやった意味がねぇぞ?』
「この気配……皆さん、避けて!」
黒煙の奥、やる気のない声が聞こえると同時に、ノエルはビリビリと毛先が震え立つような雷の気配を感じた。そう、雷魔法を会得しているノエルは、スロウドの攻撃の予兆を読み取ったのである。
ノエルの警告を聞いて、タクマはナノを庇いつつ避ける。すると警告通り、付近に雷が落ち、イバラが真っ黒に焼け焦げた。
「大変やでタっくん!このままじゃ綺麗なバラの庭が燃えてまう!」
「安心するでござる!この園も国も、拙者が“守人”として守り抜く!〈月兎の太刀〉!」
『ジジィも、飛び上がったくせにこの程度か。どらぁ!』
「なぬっ!どあらっ!」
吾郎なら車輪の一欠でも斬る事ができる。きっと何処かでそう信じていたのだろうか、それがいけなかった。
勝手な思い込みが災いし、刀は車輪を切り裂く事なく刺さるだけで終わり、吾郎は刀と共にスロウドの高速回転で振り落とされてしまった。
『仲間だけでなく、こんなちっぽけな花も守るか。わざわざ面倒な事に首を突っ込むお前らを見てると、腹が立ってくるぜ!』
「面倒でも、守ると決めたからには、俺達は必ず守る!」
『くだらぬ戯言を!《テラ・サンダー》!』
タクマの反論に呆れたスロウドは、高速回転させて溜め込んだ魔力を使い、一段と大きな雷でタクマ達を攻撃した。まるで神の槍でも落とされたかのような、そんな太く力強い一撃が襲いかかる。
流石は最終魔法、テラ。これまで受けてきたメガやギガなどを遥かに凌駕する威力だ。立ち上がりたくても、体が痺れて動けない。
「こんなの、私聞いてません」
「これが、最強魔法でござるか……っ!」
『おいおい、まさか俺様の雷にビビっちまった、とか言わねぇよなぁ!』
そんな筈はない。これまで同等な異形に立ち向かってきたのだ。今更、雷神輪入道に恐れを抱くものか。なんて、強がりたかった。しかし、煙の退けた奥から現れた物を見て、強がりは一瞬にして打ち砕かれた。
なんと、本当に神の槍が落ちたとでも言いたいのか、そこには大きなクレーターが作られていたのだ。こんなものを、1センチでも直撃してしまえば、骨どころか塵すら残らないだろう。
そう思うと、余計に体の痺れが強くなりそうになる。もう逃げて帰りたい、心の何処かでそんな風に思ってしまう。
──ダメだ。逃げちゃダメだ。少なくとも今、コイツを止められるのは誰だ?
今一度、タクマは自分に問うた。仮に相手が一枚だけでなく、数枚も上手だったとしても、やらなければならない。それは、誰かに「やれ」と言われたものでも、ましてや神に与えられた使命でもない。“約束”だ。
自分自身が、絶対に守りたいと思った約束、それを果たす、果たしたい。だから戦うんだ。
「実は少しビビってるよ。でも、もうビビり終わった!」
「せやせや!よく考えたら、タツ姐が折角整えてくれた髪をこんなツンツンにして!どれだけ時間かけたと思うとるんや!」
立ち上がると、ナノもハンマーを構えて言い出した。しかもよく見ると、ナノの髪は雷の発した電気により、夜空の方向へと立ち上がっていた。
まさかと思い、タクマも自分の頭を触ってみる。するとやはり、立っていた。鏡がないため確認不能だが、きっとヘビメタバンドのようなウニ頭になっているに違いない。
って、言っている場合じゃない。敵の見せた手の内がアレなのだ。呑気に言っていられない。
タクマは反撃の狼煙を上げるべく、指を鳴らし、早速スロウドの放った魔法、《テラ・サンダー》をコピーした。
「うむ。守るのが一筋縄では行かぬのは、今も昔も変わらぬな。しかし最大級の雷一つに、臆しはせぬ!」
「皆さん、反撃しましょう!」
『無駄な足掻きを。だがまあ、2000年ぶりのシャバだ。運動がてら付き合ってやるか』
やる気なさげに、スロウドも本気を出そうと力を込める。すると、バラ園のバラ達が手や足、バラバラの四肢へと形を形成し、スロウドの体と合わさる。
首だけの存在だったのが、顔のない巨人の上で浮遊し、輪入道だったものが薔薇の巨人へと姿を変えた。
するとその時、後ろに隠れていたキャシーが柱の影から現れ、やめて!、と叫んだ。
「キャシー殿」
「やめて!私が育てたバラを、こんなことに使わないで!」
『黙れ!力のない小娘が、引っ込んでいろ!』
「きゃっ!」
スロウドは聞く耳を持たず、キャシーに向かってイバラの鞭を放った。しかし、幸いにもキャシーが頭を下げた事で、被害は先ほど隠れていた柱だけに留まった。
まさか彼女の育てた花とは知らなかったが、そう思うとますます許せなくなる。
タクマは柄を強く握りしめ、無意識のうちに雷の力を剣に宿していた。
「はい!せーのっ!」
吾郎は早速ノエルに指示を出し、彼の手を踏み台に飛び上がった。そして、続けてノエルも杖を出して魔力を溜めた。
どういった仕組みかはまだ分からないが、吾郎は先ず周りの小太鼓のようなものに雷を起こすヒントがあると睨み、上空から斬り落とす事を考えた。
そして、残りの二人は、片割れ同士の仮面が壊れるのではないかと仮説を立て、後から攻撃を開始した。
「くらえ!ヤマアラシミサイル!」
「よっ、はっ、〈閃の剣〉!」
「《メガ・フリズ》!」
ナノのミサイルを経由し、タクマは仮面に〈閃の剣〉を放った。続いて、ナノの被弾したミサイルが爆発し、スロウドの周りが黒煙で塗り潰される。そして最後、ノエルのメガ・フリズが炸裂し、一瞬凍りつくような風が吹いた。
「頼む吾郎爺、後は──」
『何だ?それで終いか?折角ノってやろうと思ったのに、こんなじゃわざわざ相手してやった意味がねぇぞ?』
「この気配……皆さん、避けて!」
黒煙の奥、やる気のない声が聞こえると同時に、ノエルはビリビリと毛先が震え立つような雷の気配を感じた。そう、雷魔法を会得しているノエルは、スロウドの攻撃の予兆を読み取ったのである。
ノエルの警告を聞いて、タクマはナノを庇いつつ避ける。すると警告通り、付近に雷が落ち、イバラが真っ黒に焼け焦げた。
「大変やでタっくん!このままじゃ綺麗なバラの庭が燃えてまう!」
「安心するでござる!この園も国も、拙者が“守人”として守り抜く!〈月兎の太刀〉!」
『ジジィも、飛び上がったくせにこの程度か。どらぁ!』
「なぬっ!どあらっ!」
吾郎なら車輪の一欠でも斬る事ができる。きっと何処かでそう信じていたのだろうか、それがいけなかった。
勝手な思い込みが災いし、刀は車輪を切り裂く事なく刺さるだけで終わり、吾郎は刀と共にスロウドの高速回転で振り落とされてしまった。
『仲間だけでなく、こんなちっぽけな花も守るか。わざわざ面倒な事に首を突っ込むお前らを見てると、腹が立ってくるぜ!』
「面倒でも、守ると決めたからには、俺達は必ず守る!」
『くだらぬ戯言を!《テラ・サンダー》!』
タクマの反論に呆れたスロウドは、高速回転させて溜め込んだ魔力を使い、一段と大きな雷でタクマ達を攻撃した。まるで神の槍でも落とされたかのような、そんな太く力強い一撃が襲いかかる。
流石は最終魔法、テラ。これまで受けてきたメガやギガなどを遥かに凌駕する威力だ。立ち上がりたくても、体が痺れて動けない。
「こんなの、私聞いてません」
「これが、最強魔法でござるか……っ!」
『おいおい、まさか俺様の雷にビビっちまった、とか言わねぇよなぁ!』
そんな筈はない。これまで同等な異形に立ち向かってきたのだ。今更、雷神輪入道に恐れを抱くものか。なんて、強がりたかった。しかし、煙の退けた奥から現れた物を見て、強がりは一瞬にして打ち砕かれた。
なんと、本当に神の槍が落ちたとでも言いたいのか、そこには大きなクレーターが作られていたのだ。こんなものを、1センチでも直撃してしまえば、骨どころか塵すら残らないだろう。
そう思うと、余計に体の痺れが強くなりそうになる。もう逃げて帰りたい、心の何処かでそんな風に思ってしまう。
──ダメだ。逃げちゃダメだ。少なくとも今、コイツを止められるのは誰だ?
今一度、タクマは自分に問うた。仮に相手が一枚だけでなく、数枚も上手だったとしても、やらなければならない。それは、誰かに「やれ」と言われたものでも、ましてや神に与えられた使命でもない。“約束”だ。
自分自身が、絶対に守りたいと思った約束、それを果たす、果たしたい。だから戦うんだ。
「実は少しビビってるよ。でも、もうビビり終わった!」
「せやせや!よく考えたら、タツ姐が折角整えてくれた髪をこんなツンツンにして!どれだけ時間かけたと思うとるんや!」
立ち上がると、ナノもハンマーを構えて言い出した。しかもよく見ると、ナノの髪は雷の発した電気により、夜空の方向へと立ち上がっていた。
まさかと思い、タクマも自分の頭を触ってみる。するとやはり、立っていた。鏡がないため確認不能だが、きっとヘビメタバンドのようなウニ頭になっているに違いない。
って、言っている場合じゃない。敵の見せた手の内がアレなのだ。呑気に言っていられない。
タクマは反撃の狼煙を上げるべく、指を鳴らし、早速スロウドの放った魔法、《テラ・サンダー》をコピーした。
「うむ。守るのが一筋縄では行かぬのは、今も昔も変わらぬな。しかし最大級の雷一つに、臆しはせぬ!」
「皆さん、反撃しましょう!」
『無駄な足掻きを。だがまあ、2000年ぶりのシャバだ。運動がてら付き合ってやるか』
やる気なさげに、スロウドも本気を出そうと力を込める。すると、バラ園のバラ達が手や足、バラバラの四肢へと形を形成し、スロウドの体と合わさる。
首だけの存在だったのが、顔のない巨人の上で浮遊し、輪入道だったものが薔薇の巨人へと姿を変えた。
するとその時、後ろに隠れていたキャシーが柱の影から現れ、やめて!、と叫んだ。
「キャシー殿」
「やめて!私が育てたバラを、こんなことに使わないで!」
『黙れ!力のない小娘が、引っ込んでいろ!』
「きゃっ!」
スロウドは聞く耳を持たず、キャシーに向かってイバラの鞭を放った。しかし、幸いにもキャシーが頭を下げた事で、被害は先ほど隠れていた柱だけに留まった。
まさか彼女の育てた花とは知らなかったが、そう思うとますます許せなくなる。
タクマは柄を強く握りしめ、無意識のうちに雷の力を剣に宿していた。
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