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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第232話 鎌も刀も使いよう

「ああそうかい!なら俺ちゃんも、端からクライマックスでやらせてもらうぜ!」

 リュウヤは力強く踏み込み、早速水の宝玉を使って刀に水の力を宿した。その際に、何故か一息呼吸を添えて。
 そして、どれほどの強さなのか身をもって知るべく、リュウヤは誰よりも先に攻撃を仕掛けた。だが、その攻撃はクライマックスにしてはあまりにも鈍く、アケイドにひらりとかわされてしまった。
 ……と思いきや、それは策略のうちであり、避けた先にメアとおタツの飛び道具が投げ込まれ、ダメージを負わせることに成功した。

『ほぉ、これはなかなか。油断も隙もありませんね』
「リュウヤだけではない。妾も、いや妾達も、油断なしのクライマックスでやらせてもらうのじゃ!」
「さぁ、まだまだ行かせてもらうぜ!ドッカン樽バズーカ!」

 アリーナも勢いに乗り、威力など関係なしに、樽型バズーカ砲を撃ち込んだ。やる気がないなら集中砲火で確実にダメージを稼げる筈だ、と。
 だがしかし、そう上手くは行かなかった。なんと炸裂するその瞬間、一瞬の閃光の後にバズーカ弾が真っ二つに切り裂かれてしまったのだ。

「アタシの弾が……」
「っ!アリーナ、危ない!」

 更に遅れてもう一撃、今度は屋根に一本の爪痕が現れた。しかしアリーナの咄嗟の行動によって、ギリギリの所で回避できた。

「おタツ!やいてめぇ、その鎌稲刈りに使えそうだなぁオイ!」
「いや怒るところ違うじゃろ!」
『なんとアナタ、この鎌の良さが分かるのですか。敵ながら天晴れです』

 リュウヤはおタツに危害を加えた事ではなく、何故かいい鎌を使っていることに腹を立て、剣を振った。宝玉を風に変え、振り回す際に生じる風圧で素早く切り込む。
 更に、おタツもその風の斬り合いに参加し、忍者刀でコンビ技を叩き込んだ。

「アタシらも負けてらんねぇぜ!行くぞメイ!」
「だから、妾はメアじゃと言うておるじゃろ!」

 アケイドが二人に集中している中、アリーナとメアは後方支援のため、銃や強力な闇を纏ったナイフを撃ち込んだ。そして、それはアケイドの尻尾に被弾し、爆発した。
 例え弱くとも、この小さな稼ぎが後々大きくなる。しかし、それが命取りとなってしまった。
 なんとアケイドの尻尾が突然分離し、そのお返しと言わんばかりに自身の毛を飛ばしてきたのである。

「あなた、尻尾を切り落とせるでありんすか!?」
「しかもアレ、ぐほっ!」
『私を前にして余所見とは、仲間ではなく自身の心配をなさったら如何かと』

 アケイドの後ろで、彼の毛に返り討ちにされている二人を見て、リュウヤは見せた隙を突かれ、切り込みを入れられる。
 そして、おタツは負傷したリュウヤのカバーに入るため、氷結の術で凍らせた屋根の上を滑り、距離を離した。
 だが、それによって、向こうでも負傷していた二人にターゲットが変わってしまった。

「アリーナ!メアちゃん!」
『どうですかな?私の毛は、柔らかくとも、針のように攻撃に徹することも可能なのです』
「へぇ、これはまた最高につまる話じゃあねぇの!着脱可能だってんなら、アタシが全部切り取ってやるぜ!」

 そう言うと、アリーナは拳銃の代わりに、彼女の身長くらいある大剣を取り出した。

 ────
【カプリ城 廊下】
『悪く思わないで欲しい。これは変えられない運命だったのだよ』
「大の総統様が、こんなクソッタレな運命にすら抗おうとすらしないとは、テメェも落ちたモンだな、α!」

 オニキスはαの素早い剣戟を防ぎながら、彼との闘いを楽しんでいた。αとは2度戦ったのみ、1回目は全く刃が立たないまま一撃で攻め落とされ、2回目は戦うと言うよりは、プレゼントされた魔剣を一発、不意打ちで貫いたのみ。まともに、それも互角にやり合う戦いは、今回が初めてなのである。
 もう俺は死神業から足を洗った。だが、それでもコイツだけは狩らないと気が済まない。やっぱり、二年間続けた事を今更辞めようたって、体は言う事を聞かないらしい。だったらいっそ、正直になって殺るだけのこと!
 
「グハハ!どうだα、お前に一撃も与えられなかった昨日の俺はもう死んだ!今の俺は、お前にこうして張り合えているぞ!」
『そのようだね。やはり、Zの薬の効力は素晴らしいようだ。お陰で彼への細やかな土産話が出来たよ』
「あんなイカれ科学者の薬なんざ、ただのスタミナ剤だ。とっくの昔に効き目は切れてるぜ!」
『つまりこの力、君の実力というワケか。面白い、ならばこの技、受けるがいい』

 抑揚のない声で言うと、αは刀身を天井側に向け、オニキスの斬撃をあえて右手に食らわせた。そして、初の一撃が入った余韻を見逃さず、左手でオニキスの腕を掴んだ。だが、強く掴んだ訳ではなかったため、オニキスに振り解かれる。

『〈獰猛剣・猫爪(びょうしょう)〉』

 αは振り解いた瞬間の隙を突き、猫の爪のように剣を振り上げた。それにより、オニキスの首に付いたチョーカーが切れ、肩に切り傷が生じた。
 それでもオニキスは臆する事なく、お返しの一撃を与えようと剣を振る。

「お前からも臭うな。やっぱり、持ってるな?」
『その鋭い嗅覚、わざわざ見せる必要もないみたいだね。〈ナイフ・ド・スコール〉』

 オニキスが感じた臭い、それは罪源が放つ、煮えたぎった泥のようにドロドロとした、大罪の感情の臭い。しかも、これまでアイツらが倒してきた、5種類の感情。そう、オニキスは臭いだけで、タクマ達の気付かなかった罪源の能力を感じ取ったのである。
 それに気付いたαは、わざわざ説明する手間が省けた事に微かな得感情を抱きつつ、ブラックホールのようなゲートを翼のように展開し、鋼鉄ナイフの雨を放った。
 剣で弾く度に、キンキンと綺麗な音色が響き、ズサズサとドレスを切り裂いていく。

「そうだ。戦いはこうでなくちゃな。コイツはお返しだ!〈クリムゾン・クロー〉!」
『効かないよ……おや?』

 ダメだ、近付きすぎた。それに、場所も悪い。ここは一旦立て直す為に、場所を変えるしかない!
 どうせ逃げてもコイツは追ってくる。それも、鬼ごっこから隠れんぼに変えても、一瞬で見つけちまう。
 オニキスはαが追跡する事を想定し、クリムゾンに夢中になっている隙に影の中に身を潜めた。
 潜れる時間はせいぜい3分。だが、広い部屋に逃げ込むのなら、3分なんて多すぎるくらいだ。

『そろそろ、出て来てもいいんじゃあないかな?《ライトニング》』
(しまっ!)
「ぐわぁっ!テメェ、魔法まで会得してやがるのか!」
『この程度の芸当、私にとっては造作もない事さ。さあ、次はどう楽しませてくれるのだね?』

 例え影に隠れられたとしても、その影が光でかき消されて仕舞えば、意味がない。あまり使うような所を見なかったといえ、全属性の魔法を扱えるとは思っても見なかった。
 こうなれば背に腹はかえられぬ。例えここより狭い小部屋だとしても、体制を整えられるのなら!
 オニキスはαを誘き寄せるつもりで、近くの扉を蹴り破って中に入った。

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