コピー使いの異世界探検記
第231話 一玉性の双生罪源
「おやっさん!おやっさん!」
「くそっ、俺がもっと早く来ていれば……」
『後悔先に立たず、まさしく、この事だな』
『まさしく。これほど滑稽なのは実に愉快でございます』
オーブから立ち込める煙の中、二人の声が聞こえてくる。もう、ビナーは助からない、罪源を討伐しない限り。
しかし、これまでは一人しか聴こえなかったのに、まさか……
嫌な予感がした一行は、即座に武器を取って相手の様子を伺う。すると、煙は二つに分離し、扉から抜け出てしまった。
やはり相手は巨体の持ち主なのか、ここでは戦いにくいらしい。いや、これまでを考えれば、奴、いや奴らもまた巨体であってもおかしくない。
「タクマさま、アレってオーブに封印されている、じゃあビナーさまは……」
「残念じゃが、彼奴はもう罪源どもの中じゃ」
「けどアイツぶっ倒したら、おっさん帰ってくんだろ?誰だか知らねぇけど、戦うならスカート破っときな!」
そう言って、アリーナはキャシーの肩に手を置き、風のように走り去っていった。それに続いて、リュウヤ達も追いかける。
どちらも、奴を絶対に倒さなければならない理由がある。ハルトマンのため、そして、唯一分かり合えた、ビナーのために。
「タクマさん、早う行かんと遅れるでありんすよ!」
「分かりましたおタツさん。けどキャシーちゃん巻き込む訳には……」
タクマは迷った。彼女を守りながら戦う事は難しい。かといって誰かを付けて彼女を逃そうにも、道中にはα、そして最悪配下の二人が現れるかもしれない。本格的に戦った事がないため、強さは未知数だが、強い事は確か。それこそ、守りながら戦うなど無理に等しい。
しかしその時、突然頭に強い衝撃が走った。まるで本の角で頭を殴られたような……あれ、この展開前にも?
振り返ると、回復術の書を持ったノエルがぷんすこした表情でタクマを見ていた。
「何躊躇ってるんですか。ほら、さっさと行く!」
「でもキャシーちゃんに怪我させたら俺達」
「いえ、構いません!亡命なんて一生できない経験、怪我でもしないと臨場感がないですわ!」
嘘だろ。彼女、オニキスが「羊娘」と呼んでいたせいか少しおっとりした少女だと思い込んでいたが、結構お転婆だった。メアといいリオといい、姫は皆お転婆なものなのだろうか。
いや違う。彼女の場合、オニキスが彼女を変えたのだろう。この覚悟、何事も楽しもうとする態度、そして内から湧き出てくる、凄まじい力。
タクマは彼女の覚悟を信じ、メアとノエルに一度顔を合わせた後、行くぞ!、と叫んだ。
【カプリ城 中庭】
急いで黒い煙の後を追うと、煙はステンドグラスの窓を勢いよく破って、中庭へと抜け出た。しかもその先には、真っ赤な薔薇の咲き誇る庭園があった。
まるで、不思議なアリスの国に出る、赤の王女の庭園のようで、かの傍若無人なサージとよくマッチした、そんな庭園だった。
しかしそれらは、罪源の発する風によって吹き荒らされ、一方はゴロゴロと唸る稲妻に脅かされ、枯れてしまう。
「な、なんじゃこの気候!こんなの聞いておらぬぞ!」
「やはり罪源の魔力でござるか……ところで、オニキス殿は何処に?」
「それなら今、αと……」
吾郎に訊ねられ、ノエルは答えようとする。だが、説明の必要が無いとでも言うのか、屋内から激しい爆発音が鳴り響いた。
しかも、一瞬吾郎の感じられる量の覇気が溢れ出し、彼はすぐに察した。
「おいオメェら、そろそろお出ましらしいぜ?」
『名乗るのも面倒だが、やっぱり言わなきゃいけねぇか』
『大変無駄かと思われますが、これも礼儀ですからね』
二つに分離した煙は段々と体を形成して行き、タクマ達の前に姿を現した。
少々口の荒い方は、馬車の車輪のような姿をしており、顔には熊と二角の鬼の仮面を片割れづつ合体させたような仮面を付けている。勿論、片割れのため角は右側に一角しか存在しない。
続いて口調が丁寧な方は、カマキリのような鎌を手に持ったイタチの姿になり、顔にはカタツムリのような溶けた仮面と、一角の鬼の仮面の片割れを合わせたようなものを付けていた。
「な、なんやこのお面!どっちも、半分こやないか!」
「ははーん。俺ちゃんわかったぞ、モチーフ風神と雷神だろ」
「これが、罪源の……仮面……」
「キャシーちゃん、ウチらが良い言うまで隠れてるでありんす」
おタツは瞬時に忍び装束へとフォームチェンジし、柱の影に身を隠せるよう、忍者刀を構えて罪源を睨みつけた。
だが罪源はキャシーなどに興味はないのか、タクマ達を見下している。
『俺様は怠惰のスロウド。罪源の仮面にして、嵐の魔術師なり』
『同じく、私怠惰のアケイド。以下同文にして、雷の魔術師でございます』
『『我ら、二人で一人、人呼んで災禍の双子なり』』
「成程、今回は二体同時って事ね。リュウヤ、片割れ頼める?」
「ガッテン承知の助よ!やいカマキリ野郎、俺ちゃんに大人しく調理されて連載終了しな!」
何を言い出すかと思えばまた、どこからそんなネタを仕入れるのか。リュウヤは刀身の輝きをカマキリ野郎、ことアケイドに見せた。
するとアケイドは、凄まじい暴風で周りの仲間を引き込みながら屋根の上に登った。それにより、リュウヤ、アリーナ、おタツ、そしてメアの4人は連れ去られてしまった。
そして、残ったタクマ、ノエル、吾郎、ナノの四人は取り残され、スロウドの前に取り残されてしまった。
「リュウヤさん!皆さん!」
「大丈夫でござる。あの4人ならきっと、アケイドを倒してくれるはずでござるよ」
「だな。あの意気、信じなくて誰が信じるよ」
「せやな!皆、やっつけてビナーのおっちゃん助け出すで!」
連れ去られてしまったが、それでもアイツらはやってくれる。タクマ達はそう信じ、スロウドと戦う覚悟を決めた。
だが、流石は怠惰の罪源。この男、戦うのが嫌なのか深いため息を吐く。すると、ため息による風で車輪が回り、目の前に雷が一発撃ち落とされた。
『ったく、面倒な奴が来たもんだ。だが、パパっと殺せば済む話なら、テメェら纏めて黒焦げにしてやらぁ!』
『私は面倒なものは真っ先に消してしまうタイプですので、貴方達はそうですね、30分以内に、皆様の首を取らせていただきます』
「くそっ、俺がもっと早く来ていれば……」
『後悔先に立たず、まさしく、この事だな』
『まさしく。これほど滑稽なのは実に愉快でございます』
オーブから立ち込める煙の中、二人の声が聞こえてくる。もう、ビナーは助からない、罪源を討伐しない限り。
しかし、これまでは一人しか聴こえなかったのに、まさか……
嫌な予感がした一行は、即座に武器を取って相手の様子を伺う。すると、煙は二つに分離し、扉から抜け出てしまった。
やはり相手は巨体の持ち主なのか、ここでは戦いにくいらしい。いや、これまでを考えれば、奴、いや奴らもまた巨体であってもおかしくない。
「タクマさま、アレってオーブに封印されている、じゃあビナーさまは……」
「残念じゃが、彼奴はもう罪源どもの中じゃ」
「けどアイツぶっ倒したら、おっさん帰ってくんだろ?誰だか知らねぇけど、戦うならスカート破っときな!」
そう言って、アリーナはキャシーの肩に手を置き、風のように走り去っていった。それに続いて、リュウヤ達も追いかける。
どちらも、奴を絶対に倒さなければならない理由がある。ハルトマンのため、そして、唯一分かり合えた、ビナーのために。
「タクマさん、早う行かんと遅れるでありんすよ!」
「分かりましたおタツさん。けどキャシーちゃん巻き込む訳には……」
タクマは迷った。彼女を守りながら戦う事は難しい。かといって誰かを付けて彼女を逃そうにも、道中にはα、そして最悪配下の二人が現れるかもしれない。本格的に戦った事がないため、強さは未知数だが、強い事は確か。それこそ、守りながら戦うなど無理に等しい。
しかしその時、突然頭に強い衝撃が走った。まるで本の角で頭を殴られたような……あれ、この展開前にも?
振り返ると、回復術の書を持ったノエルがぷんすこした表情でタクマを見ていた。
「何躊躇ってるんですか。ほら、さっさと行く!」
「でもキャシーちゃんに怪我させたら俺達」
「いえ、構いません!亡命なんて一生できない経験、怪我でもしないと臨場感がないですわ!」
嘘だろ。彼女、オニキスが「羊娘」と呼んでいたせいか少しおっとりした少女だと思い込んでいたが、結構お転婆だった。メアといいリオといい、姫は皆お転婆なものなのだろうか。
いや違う。彼女の場合、オニキスが彼女を変えたのだろう。この覚悟、何事も楽しもうとする態度、そして内から湧き出てくる、凄まじい力。
タクマは彼女の覚悟を信じ、メアとノエルに一度顔を合わせた後、行くぞ!、と叫んだ。
【カプリ城 中庭】
急いで黒い煙の後を追うと、煙はステンドグラスの窓を勢いよく破って、中庭へと抜け出た。しかもその先には、真っ赤な薔薇の咲き誇る庭園があった。
まるで、不思議なアリスの国に出る、赤の王女の庭園のようで、かの傍若無人なサージとよくマッチした、そんな庭園だった。
しかしそれらは、罪源の発する風によって吹き荒らされ、一方はゴロゴロと唸る稲妻に脅かされ、枯れてしまう。
「な、なんじゃこの気候!こんなの聞いておらぬぞ!」
「やはり罪源の魔力でござるか……ところで、オニキス殿は何処に?」
「それなら今、αと……」
吾郎に訊ねられ、ノエルは答えようとする。だが、説明の必要が無いとでも言うのか、屋内から激しい爆発音が鳴り響いた。
しかも、一瞬吾郎の感じられる量の覇気が溢れ出し、彼はすぐに察した。
「おいオメェら、そろそろお出ましらしいぜ?」
『名乗るのも面倒だが、やっぱり言わなきゃいけねぇか』
『大変無駄かと思われますが、これも礼儀ですからね』
二つに分離した煙は段々と体を形成して行き、タクマ達の前に姿を現した。
少々口の荒い方は、馬車の車輪のような姿をしており、顔には熊と二角の鬼の仮面を片割れづつ合体させたような仮面を付けている。勿論、片割れのため角は右側に一角しか存在しない。
続いて口調が丁寧な方は、カマキリのような鎌を手に持ったイタチの姿になり、顔にはカタツムリのような溶けた仮面と、一角の鬼の仮面の片割れを合わせたようなものを付けていた。
「な、なんやこのお面!どっちも、半分こやないか!」
「ははーん。俺ちゃんわかったぞ、モチーフ風神と雷神だろ」
「これが、罪源の……仮面……」
「キャシーちゃん、ウチらが良い言うまで隠れてるでありんす」
おタツは瞬時に忍び装束へとフォームチェンジし、柱の影に身を隠せるよう、忍者刀を構えて罪源を睨みつけた。
だが罪源はキャシーなどに興味はないのか、タクマ達を見下している。
『俺様は怠惰のスロウド。罪源の仮面にして、嵐の魔術師なり』
『同じく、私怠惰のアケイド。以下同文にして、雷の魔術師でございます』
『『我ら、二人で一人、人呼んで災禍の双子なり』』
「成程、今回は二体同時って事ね。リュウヤ、片割れ頼める?」
「ガッテン承知の助よ!やいカマキリ野郎、俺ちゃんに大人しく調理されて連載終了しな!」
何を言い出すかと思えばまた、どこからそんなネタを仕入れるのか。リュウヤは刀身の輝きをカマキリ野郎、ことアケイドに見せた。
するとアケイドは、凄まじい暴風で周りの仲間を引き込みながら屋根の上に登った。それにより、リュウヤ、アリーナ、おタツ、そしてメアの4人は連れ去られてしまった。
そして、残ったタクマ、ノエル、吾郎、ナノの四人は取り残され、スロウドの前に取り残されてしまった。
「リュウヤさん!皆さん!」
「大丈夫でござる。あの4人ならきっと、アケイドを倒してくれるはずでござるよ」
「だな。あの意気、信じなくて誰が信じるよ」
「せやな!皆、やっつけてビナーのおっちゃん助け出すで!」
連れ去られてしまったが、それでもアイツらはやってくれる。タクマ達はそう信じ、スロウドと戦う覚悟を決めた。
だが、流石は怠惰の罪源。この男、戦うのが嫌なのか深いため息を吐く。すると、ため息による風で車輪が回り、目の前に雷が一発撃ち落とされた。
『ったく、面倒な奴が来たもんだ。だが、パパっと殺せば済む話なら、テメェら纏めて黒焦げにしてやらぁ!』
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