コピー使いの異世界探検記
第225話 要人
一方、タクマ達はと言うと、きっと先に階段に向かったのだろうと思い、消えた事を特に気にせず、そのまま進んでいった。そして、その通路の奥、階段専用の部屋へと続く扉にたどり着いた。
「おいタヌキ、本当にここなんだな?」
「妾の記憶力を侮るでないわ女もどき。いや、今はもう女じゃったか」
「んだとタヌキ、今ここでやってもいいんだぞ?あぁん?」
「あーこらこら2人とも、やめてくださいって」
「おっ、メアの記憶通りだ」
オニキスとメアとの喧嘩が勃発する中、それを横目にタクマは扉を開けた。おタツの描いた地図の通り、ちゃんと扉の奥には階段があった。完全に“2階に上がるため”だけに作られたような造りになっており、階段以外何もない。
しかも、消えたはずの足音が階段の先から聞こえて来る。だが、タクマは真っ先に向かう事はなかった。何故なら、ここに来るまでに、リュウヤ達に合わなかったからだ。
「タクマさん、リュウヤさん達どこ行ったんでしょうか?」
「やっぱりそうだよな。だって──」
だって、もし来ているならこの辺りで待っていなきゃおかしい。そう言おうとした時、突然「キャアアアア!」と大きな悲鳴が聞こえてきた。更に、鏡を叩き割ったかのような凄まじい音も一緒に鳴り響く。
まずい。非常にまずい。このままでは、人影にキャシーが殺されてしまうかもしれない。そう思うと気が気でなくなり、タクマは無意識に向かってしまった。
「タクマさん!待ってください!」
「……ああくそ!仕方ねぇ、付き合ってやらぁ!」
【カプリ城 2階】
「う、嘘……何で……」
「キャシー姫!大丈夫ですか!」
急いで駆けつけると、ノエルが手に入れていた手記通り、そこにはキャシーの姿があった。桃色の髪で青のドレス、まさかとは思っていたが、やはりノエルと踊っていた少女こそ、要人の姫だった。
ただ、少女は怯えた様子で、割れた三面鏡の前にへたり込んでいた。
「タクマテメェ、俺の足、ヒールなんだから、置いてくんじゃあねぇ」
「ごめん。とりあえず、無事そうで何よりです。貴女が、キャシー姫?」
「だ、誰……?あ」
少女、もといキャシーは初めて見るタクマの顔に震えるが、後から現れたノエルを見てすぐに彼が仲間であると察した。
とにかく敵意がないと分かってくれてよかった。タクマはそのまま少女の手を引き、鏡から離すようにノエルに譲り渡した。
「しかしお主、何故鏡の前で尻餅をついておったのじゃ?」
「実はその、鏡が……ケホッ、ケホッ」
「おい羊娘、コイツを飲め。それで、何があった」
咳をしたキャシーを気にかけたのか、オニキスは回復薬を飲ませる。そして、飲み干したキャシーはオニキスに一度礼をした後、何があったのかをゆっくりと話した。
彼女は、ノエルに直筆のメッセージを託して会場から消えた後、一歩も指定した部屋から出てはいない。と正直に話してくれた。そして、何故鏡が割れたのか、それを話そうとした時、突然鏡の破片が宙に舞った。
「皆伏せて!やっぱり何か居る!」
タクマは咄嗟に剣を抜き、破片の吹き荒れる部屋からメア達を遠ざけた。しかし、部屋の中に残っていたタクマは、飛び回る破片が刺さり、傷を負ってしまった。
話されては困るようなのか、隙を見つけるとすぐさまキャシーに向かって破片が飛ぶ。
「ったく、世話の焼ける!」
「オニキス、お主……!」
ドスっと小さく音がする。振り返ると、オニキスが腹部から血を流して膝をついていた。その後ろには、キャシーが倒れている。オニキスが身代わりになったようだ。
だが、オニキスは平気な顔でニヤリと笑い、部屋の中にあった人形に近くの花瓶を投げつけた。すると、殺す為に吹き荒れていた風は止み、殺意を持っていた破片達は糸の切れた操り人形のようにその場に落ちていった。
「オニキスお前、なんて無茶を……」
「バカが、こっちの台詞だ。あのまま部屋に残ってたらテメェ死んで……あっ」
「おっ、男同士の友情って奴ですね!アツいですアツいですッ!」
そう言うノエルに対し、オニキスは頬を赤く染めながら胸ぐらを掴み、「別にそんなじゃあねぇ」と釘を刺した。そして、約束した以上死なれちゃ困る、と目を逸らしながら理由を呟いた。
オニキス、やっぱり優しいじゃないか。とタクマが見ていると、デコに向かって小石を投げられた。
「まあでも、とにかく要人の確保は完了じゃな。タクマ、早速頼むぞ」
「あ、あぁ。《ワープ》!」
タクマは唱えた。しかし、何も起こらなかった。ちゃんと魔力は消費しているような気はするのに、光の魔法陣が現れない。それに、今日は一日魔力の消費はしていない。そのため、使えて当然のはず。
すると、それに見かねたノエルは、背中から魔力を注入した。
しかし、ノエルから貰った魔力でワープを唱えても、ワープは発動しなかった。
「そんな。ワープが使えません」
「チッ、めんどくせぇなぁ。おい羊娘、出口まで案内しろ」
「は、はい。こっちです」
ワープが使えないと分かった今、無事に出る方法は一つ。そのまま脱出して亡命する事。こうして、タクマ一行は一度、キャシーを無事な場所へと移動する為に歩みを進めたのだった。
「おいタヌキ、本当にここなんだな?」
「妾の記憶力を侮るでないわ女もどき。いや、今はもう女じゃったか」
「んだとタヌキ、今ここでやってもいいんだぞ?あぁん?」
「あーこらこら2人とも、やめてくださいって」
「おっ、メアの記憶通りだ」
オニキスとメアとの喧嘩が勃発する中、それを横目にタクマは扉を開けた。おタツの描いた地図の通り、ちゃんと扉の奥には階段があった。完全に“2階に上がるため”だけに作られたような造りになっており、階段以外何もない。
しかも、消えたはずの足音が階段の先から聞こえて来る。だが、タクマは真っ先に向かう事はなかった。何故なら、ここに来るまでに、リュウヤ達に合わなかったからだ。
「タクマさん、リュウヤさん達どこ行ったんでしょうか?」
「やっぱりそうだよな。だって──」
だって、もし来ているならこの辺りで待っていなきゃおかしい。そう言おうとした時、突然「キャアアアア!」と大きな悲鳴が聞こえてきた。更に、鏡を叩き割ったかのような凄まじい音も一緒に鳴り響く。
まずい。非常にまずい。このままでは、人影にキャシーが殺されてしまうかもしれない。そう思うと気が気でなくなり、タクマは無意識に向かってしまった。
「タクマさん!待ってください!」
「……ああくそ!仕方ねぇ、付き合ってやらぁ!」
【カプリ城 2階】
「う、嘘……何で……」
「キャシー姫!大丈夫ですか!」
急いで駆けつけると、ノエルが手に入れていた手記通り、そこにはキャシーの姿があった。桃色の髪で青のドレス、まさかとは思っていたが、やはりノエルと踊っていた少女こそ、要人の姫だった。
ただ、少女は怯えた様子で、割れた三面鏡の前にへたり込んでいた。
「タクマテメェ、俺の足、ヒールなんだから、置いてくんじゃあねぇ」
「ごめん。とりあえず、無事そうで何よりです。貴女が、キャシー姫?」
「だ、誰……?あ」
少女、もといキャシーは初めて見るタクマの顔に震えるが、後から現れたノエルを見てすぐに彼が仲間であると察した。
とにかく敵意がないと分かってくれてよかった。タクマはそのまま少女の手を引き、鏡から離すようにノエルに譲り渡した。
「しかしお主、何故鏡の前で尻餅をついておったのじゃ?」
「実はその、鏡が……ケホッ、ケホッ」
「おい羊娘、コイツを飲め。それで、何があった」
咳をしたキャシーを気にかけたのか、オニキスは回復薬を飲ませる。そして、飲み干したキャシーはオニキスに一度礼をした後、何があったのかをゆっくりと話した。
彼女は、ノエルに直筆のメッセージを託して会場から消えた後、一歩も指定した部屋から出てはいない。と正直に話してくれた。そして、何故鏡が割れたのか、それを話そうとした時、突然鏡の破片が宙に舞った。
「皆伏せて!やっぱり何か居る!」
タクマは咄嗟に剣を抜き、破片の吹き荒れる部屋からメア達を遠ざけた。しかし、部屋の中に残っていたタクマは、飛び回る破片が刺さり、傷を負ってしまった。
話されては困るようなのか、隙を見つけるとすぐさまキャシーに向かって破片が飛ぶ。
「ったく、世話の焼ける!」
「オニキス、お主……!」
ドスっと小さく音がする。振り返ると、オニキスが腹部から血を流して膝をついていた。その後ろには、キャシーが倒れている。オニキスが身代わりになったようだ。
だが、オニキスは平気な顔でニヤリと笑い、部屋の中にあった人形に近くの花瓶を投げつけた。すると、殺す為に吹き荒れていた風は止み、殺意を持っていた破片達は糸の切れた操り人形のようにその場に落ちていった。
「オニキスお前、なんて無茶を……」
「バカが、こっちの台詞だ。あのまま部屋に残ってたらテメェ死んで……あっ」
「おっ、男同士の友情って奴ですね!アツいですアツいですッ!」
そう言うノエルに対し、オニキスは頬を赤く染めながら胸ぐらを掴み、「別にそんなじゃあねぇ」と釘を刺した。そして、約束した以上死なれちゃ困る、と目を逸らしながら理由を呟いた。
オニキス、やっぱり優しいじゃないか。とタクマが見ていると、デコに向かって小石を投げられた。
「まあでも、とにかく要人の確保は完了じゃな。タクマ、早速頼むぞ」
「あ、あぁ。《ワープ》!」
タクマは唱えた。しかし、何も起こらなかった。ちゃんと魔力は消費しているような気はするのに、光の魔法陣が現れない。それに、今日は一日魔力の消費はしていない。そのため、使えて当然のはず。
すると、それに見かねたノエルは、背中から魔力を注入した。
しかし、ノエルから貰った魔力でワープを唱えても、ワープは発動しなかった。
「そんな。ワープが使えません」
「チッ、めんどくせぇなぁ。おい羊娘、出口まで案内しろ」
「は、はい。こっちです」
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