コピー使いの異世界探検記
第222話 歴代フルコース
タクマ一行はメイド達に促され、椅子に座る。
すると、目の前に美味しそうな料理が並べられた。メルサバのスィーツ技術を用いて作られたデザート、ガルキュイの魚を使ったムニエル、アルゴ産小麦を使った口直しのパン、ゴルド産猪肉を用いたステーキ、そしてカプリブルグ産のキングシュリンプと呼ばれる海老を出汁に使ったスープ。まるで、これまでの旅の記録を詰め込んだようなフルコースだった。
リオ達メルサバの姫を出禁にしてるくせにスィーツ技術だけは奪っているのを見ると、無性に腹が立つ。しかし、あまりにも美味そうなので、怒りが現れたり消えたりと不安定になる。
「さて、これでマズかったらシェフをしばいてくれる」
「こらこらオニコさん、そう野蛮になっちゃダメですぞ?」
タクマは御立腹のオニキスを止めつつ、ナイフとフォークを手に取る。
これはただの食事といえ、マナーを守りゆっくりと食べなければならない。少しでも間違って大食いなんて真似したらどうなるか分からない。特に、今回の場合はサージ王女の目下。余計に碌でもないことをされる気がして堪らない。
「リュウ、リュウ。マナー講師頼む」
「マジかよタクマ。俺も知らんよ?」
「頼む。アリーナは今居ないけど、この面子だ。大食い2人とクレーマー1人だ。俺じゃ対処しきれない」
不安でしょうがないタクマは、飯の強豪であるリュウヤに頼んだ。勿論、リュウヤもこんなマナー祭りの食事会は初めてだ。しかし、他に頼めそうな人は居ない。
するとリュウヤも、その事を察したのか、ナイフとフォークをそっと肉の上に置いた。
そして、フォークで肉を押さえ、ナイフをそっと引いた。
「おお、全く切れなかったのによく切れます」
「ノコギリ切りじゃ、ダメなのでありんすか?」
「いや、あながち間違いじゃあない。肉もそうだが、こういうのはゆっくり引いて切った方が切りやすい。と、俺は思う」
「ホンマや、無理に力入れんくてもええ」
殆ど周りのやっていることの見様見真似を教えてるだけだが、確かに音を立てることなく食事ができる。やはりリュウヤに頼んで正解だったようだ。
しかし、肉がオニキスの口に合わなかったのか、彼は口直しにスープのカップを持ち上げた。だが、周りにそんな事をする人はいなかったため、嫌な予感がしてメアは手を止めさせた。
「何だタヌキ、人の食事にケチ付ける気か?」
「いやお主、ここは人の目前じゃ。いつも1人で食ってクレーム入れるのとは訳が違うのじゃよ」
「そうだぞオニちゃん。こういう時は、スプーンの8分目まで掬って、音を立てずに飲むんだ、と俺は思う」
「それにしても、見様見真似といえ詳しいでありんすな、お前様」
おタツの呟きを聞いたリュウヤは、突然フリーズし、冷や汗を流した。そして、何の弁明なのか、しどろもどろになりながら「べべ、別にこんな事もあろうかと、調べてきた訳じゃあないから……な?」と言った。
すると、油断していた所を吾郎に突かれ、尻ポケットに入れていた紙を取られてしまった。広げると、地元のレストランのチラシが顔を表した。しかもその下には、マナー講師付きフレンチの予約受付中!、と大きく宣伝されていた。
「リューくん、学んどるやないの」
「何故こんな無益な嘘を吐いたでござるか」
「いやだって、こんなの見せたらさ、死んじまったタクマに悪いかなーって……」
嘘が下手なくせに、リュウヤは頭を少しだけ下げながら言う。確かに、このチラシを見る限り、このレストランは自分の命日から数ヶ月も経った後にできたレストランのようだ。実際羨むつもりはないが、自分だけ食べてきた事に罪悪感があったのだろう。
なんて思っているその時だった。なんと、食事中の客達がいきなり倒れ込んでしまったのだ。しかも、皆テーブルマナーなどどうでも良くなったのか、ガツガツと食事を貪り出し、中には他の人の皿を奪ってまで食べる者まで現れた。
「な、何の騒ぎですかこれは!皆おとなしく食べてたのに!」
「あーめんどくせぇ!うんっ!」
しかも、突然の豹変は周りだけでなく、タクマ一行のテーブルでも起きてしまった。オニキスは痺れを切らしてスープを飲み干し、吾郎は刀でステーキをサイコロサイズに切り裂き、米をかき込むかのように食べた。
「ちょっとちょっと吾郎爺まで!何してるの!」
「……ハッ!拙者は何を!?突然ゆっくり食べるのが面倒になりつい」
「面倒、だって?」
面倒。そのワードに引っかかりを覚えたタクマは、周りに耳を傾けた。
「チマチマ食うなんてめんどくせぇんだよ!」
「ったく、何もかも面倒だ。俺ぁ酒飲んで寝る!」
「ああ、アタクシのムニエルが……けど、怒るのも面倒だしいっか」
「あらあら、一体何が起きましたの?まあ面倒だからどうでもいいけど」
「ええ。調べるのも面倒くさいです。もう執事も面倒だし辞めましょうかね」
見渡す限り、皆面倒だ面倒だと嘆き、テーブルや床に突っ伏している。更に、一番奥の玉座でも、サージ女王が怠そうに座っている。おまけに執事も、ダラけた状態で座り込んで、とんでもない爆弾発言をしている。
「こんな事って、一体何がどうなって……」
「あり?ノエちゃん、なんか落ちたぁよ」
リュウヤはすぐにノエルの落とし物を拾い、ノエルに返そうとした。しかし、本人は見覚えがないようで、不思議そうに「何ですかこれ」と首を傾げた。
見るからに怪しいそれは紙で出来ており、角もピシッとした小さい四角形に折られていた。きっと誰かからの隠しメッセージかも知れない。そう思い、リュウヤは謎の紙を広げた。
「……なるほどね。ノエちゃん、アンタすげぇ強運だわ」
「強運?リューくん、どう言う事なん?」
ナノは訊く。するとリュウヤは、テーブルのスィーツをパクりと一口で飲み込み、「こう言う事」と、広げた紙を見せた。
そこには、「二階の階段右、三番目の部屋に来て。キャシー」と、要人であるキャシーからのメッセージが書かれていた。
そう。ノエルはあの時、既にキャシーと会っていたのである。
「嘘、あの子が……」
「ノエル、お手柄じゃな!さて、そうと決まれば早速行くぞ!」
すると、目の前に美味しそうな料理が並べられた。メルサバのスィーツ技術を用いて作られたデザート、ガルキュイの魚を使ったムニエル、アルゴ産小麦を使った口直しのパン、ゴルド産猪肉を用いたステーキ、そしてカプリブルグ産のキングシュリンプと呼ばれる海老を出汁に使ったスープ。まるで、これまでの旅の記録を詰め込んだようなフルコースだった。
リオ達メルサバの姫を出禁にしてるくせにスィーツ技術だけは奪っているのを見ると、無性に腹が立つ。しかし、あまりにも美味そうなので、怒りが現れたり消えたりと不安定になる。
「さて、これでマズかったらシェフをしばいてくれる」
「こらこらオニコさん、そう野蛮になっちゃダメですぞ?」
タクマは御立腹のオニキスを止めつつ、ナイフとフォークを手に取る。
これはただの食事といえ、マナーを守りゆっくりと食べなければならない。少しでも間違って大食いなんて真似したらどうなるか分からない。特に、今回の場合はサージ王女の目下。余計に碌でもないことをされる気がして堪らない。
「リュウ、リュウ。マナー講師頼む」
「マジかよタクマ。俺も知らんよ?」
「頼む。アリーナは今居ないけど、この面子だ。大食い2人とクレーマー1人だ。俺じゃ対処しきれない」
不安でしょうがないタクマは、飯の強豪であるリュウヤに頼んだ。勿論、リュウヤもこんなマナー祭りの食事会は初めてだ。しかし、他に頼めそうな人は居ない。
するとリュウヤも、その事を察したのか、ナイフとフォークをそっと肉の上に置いた。
そして、フォークで肉を押さえ、ナイフをそっと引いた。
「おお、全く切れなかったのによく切れます」
「ノコギリ切りじゃ、ダメなのでありんすか?」
「いや、あながち間違いじゃあない。肉もそうだが、こういうのはゆっくり引いて切った方が切りやすい。と、俺は思う」
「ホンマや、無理に力入れんくてもええ」
殆ど周りのやっていることの見様見真似を教えてるだけだが、確かに音を立てることなく食事ができる。やはりリュウヤに頼んで正解だったようだ。
しかし、肉がオニキスの口に合わなかったのか、彼は口直しにスープのカップを持ち上げた。だが、周りにそんな事をする人はいなかったため、嫌な予感がしてメアは手を止めさせた。
「何だタヌキ、人の食事にケチ付ける気か?」
「いやお主、ここは人の目前じゃ。いつも1人で食ってクレーム入れるのとは訳が違うのじゃよ」
「そうだぞオニちゃん。こういう時は、スプーンの8分目まで掬って、音を立てずに飲むんだ、と俺は思う」
「それにしても、見様見真似といえ詳しいでありんすな、お前様」
おタツの呟きを聞いたリュウヤは、突然フリーズし、冷や汗を流した。そして、何の弁明なのか、しどろもどろになりながら「べべ、別にこんな事もあろうかと、調べてきた訳じゃあないから……な?」と言った。
すると、油断していた所を吾郎に突かれ、尻ポケットに入れていた紙を取られてしまった。広げると、地元のレストランのチラシが顔を表した。しかもその下には、マナー講師付きフレンチの予約受付中!、と大きく宣伝されていた。
「リューくん、学んどるやないの」
「何故こんな無益な嘘を吐いたでござるか」
「いやだって、こんなの見せたらさ、死んじまったタクマに悪いかなーって……」
嘘が下手なくせに、リュウヤは頭を少しだけ下げながら言う。確かに、このチラシを見る限り、このレストランは自分の命日から数ヶ月も経った後にできたレストランのようだ。実際羨むつもりはないが、自分だけ食べてきた事に罪悪感があったのだろう。
なんて思っているその時だった。なんと、食事中の客達がいきなり倒れ込んでしまったのだ。しかも、皆テーブルマナーなどどうでも良くなったのか、ガツガツと食事を貪り出し、中には他の人の皿を奪ってまで食べる者まで現れた。
「な、何の騒ぎですかこれは!皆おとなしく食べてたのに!」
「あーめんどくせぇ!うんっ!」
しかも、突然の豹変は周りだけでなく、タクマ一行のテーブルでも起きてしまった。オニキスは痺れを切らしてスープを飲み干し、吾郎は刀でステーキをサイコロサイズに切り裂き、米をかき込むかのように食べた。
「ちょっとちょっと吾郎爺まで!何してるの!」
「……ハッ!拙者は何を!?突然ゆっくり食べるのが面倒になりつい」
「面倒、だって?」
面倒。そのワードに引っかかりを覚えたタクマは、周りに耳を傾けた。
「チマチマ食うなんてめんどくせぇんだよ!」
「ったく、何もかも面倒だ。俺ぁ酒飲んで寝る!」
「ああ、アタクシのムニエルが……けど、怒るのも面倒だしいっか」
「あらあら、一体何が起きましたの?まあ面倒だからどうでもいいけど」
「ええ。調べるのも面倒くさいです。もう執事も面倒だし辞めましょうかね」
見渡す限り、皆面倒だ面倒だと嘆き、テーブルや床に突っ伏している。更に、一番奥の玉座でも、サージ女王が怠そうに座っている。おまけに執事も、ダラけた状態で座り込んで、とんでもない爆弾発言をしている。
「こんな事って、一体何がどうなって……」
「あり?ノエちゃん、なんか落ちたぁよ」
リュウヤはすぐにノエルの落とし物を拾い、ノエルに返そうとした。しかし、本人は見覚えがないようで、不思議そうに「何ですかこれ」と首を傾げた。
見るからに怪しいそれは紙で出来ており、角もピシッとした小さい四角形に折られていた。きっと誰かからの隠しメッセージかも知れない。そう思い、リュウヤは謎の紙を広げた。
「……なるほどね。ノエちゃん、アンタすげぇ強運だわ」
「強運?リューくん、どう言う事なん?」
ナノは訊く。するとリュウヤは、テーブルのスィーツをパクりと一口で飲み込み、「こう言う事」と、広げた紙を見せた。
そこには、「二階の階段右、三番目の部屋に来て。キャシー」と、要人であるキャシーからのメッセージが書かれていた。
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