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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第216話 傍若夫人?王女の謁見

「陛下、ワンダ様達が話しておられたタクマ一行を連れて参りました」
「ほぉ、そうかそうか」

 扉の奥、恰幅の良い女は玉座の灰皿に葉巻の灰を落とす。しかも、その臭いは扉の外側からも感じ取れるほど臭かった。
 親父の臭い。思い出したくないものを思い出し、タクマの背中がゾクっとした。

「そこに居るのは分かっておる。入りたまえ」
「邪魔するでござる」

 ここはタバコに耐性のある歳と言う事で、吾郎が先陣を切って挨拶をし、部屋の中に入った。案の定、中は凄まじいほどに臭いが充満している。流石にこの中に居ればメアやナノ達の健康に悪い。
 タクマは仕方なく彼女達とノエルを兵士の下に預け、残った男3人で玉座の前に向かった。
 一応、親の影響で小さい頃からこの臭いには慣れているが、久々に吸うと耐性が薄れているもので、すぐに頭が痛くなり始めた。よくもまあこんな場所に呼び出そうと思えるものだ。

「お初にお目にかかります、サージ国王陛下。この度は私達を舞踏会にお招き頂き、誠にありがとうございまっする」
「何で最後マッスル入れたし。言い方誤魔化してもダメだから」

 こんな真面目な時にさえもふざけるのかコイツは。タクマは小声でツッコミつつ、こっそり笑った。お陰で緊張が解れたような気がしたからだ。
 国王と言うものだから男だと勝手に思い込んでいたが、流石にその考えは古過ぎたようだ。姿はまあ擁護し切れないが、色んな意味で王としてのインパクトがある。
 すると、サージはタクマ達の顔を見て深くため息を吐いた。

「2人が絶賛しておったから美男美女集団と思うていたが、何じゃこれは」
「何じゃ、と言いますと?」
「よく見れば、ただの田舎者の集まりではないか。通りで田舎臭いわけじゃ」

 サージは期待外れだった事をぼやき、嫌がらせの如く煙を吐き、視界に映るタクマを煙でかき消そうとした。
 更に、奥に待機している女子陣を見て、更に深くため息を吐き「呼ぶんじゃあなかった」と小さく呟いた。遠くに聞こえる声で言う辺り性格が悪い。
 リュウヤの期待は外れ、この国の王もまた傲慢な王のようだ。しかし、青のオーブ──傲慢──は既に持っているため、少なくとも彼女がオーブを持っているとは考えにくい。

「この男共は頼りにならなそうじゃし、女も含めて田舎臭い。おまけに薄汚い奴隷獣人が何故いい服を着ておるのじゃ?」
「ちゃうわ!ウチは奴隷やないし汚くもないわ!」
「そ、そうです。もっとこう、言い方ってものがあるじゃな──」
「黙れい!!」

 タクマが意見した時、サージは胸に響く大声を出し、一行を沈黙させた。更に、同時に風魔法のような圧が飛び、髪がブワッとなびいた。
 それからサージは玉座から立ち上がり、兵士に女を部屋に入れろと命令する。すると、兵士は人が変わったように槍を叩きつけ、入れと低い声で命令した。

「よく見れば見るほど、醜いのぅ。アルゴの姫君が来ておると言うから期待していたが、こんな陰気なドレスで来るとは、あの馬鹿は教育がなっておらぬ」
「何じゃと!?妾はまだしも、パパを馬鹿にしおって!」
「メアちゃん、気持ちは分かるけど落ち着くでありんす」
「お前のそのありんすとか言うふざけた語尾もじゃ。アルゴとメルサバのお墨付きは名ばかりで礼儀もなってない」
「はぁ?おいババァ、アンタのそののじゃ口調もババ臭くて敵わんってんだよゴラァ!」

 堪忍袋の尾が切れたアリーナは、アルビスの皮を破りつい素が出てキレてしまった。だが、叫んですぐ、アリーナは自分の発言の過ちに気づいた。
 そう、メアもこのサージと同じく、のじゃ口調だったのだ。更に、癖とはいえ一国の王にに向かってババァと呼んだ事で、サージの顔に血管が浮き出てしまった。
 全く笑えない状況なのに、アリーナにスッパリと斬られたサージが面白すぎて、つい吹き出しそうになる。

「……ま、まぁいい。元々招待状を送ったのは妾じゃ。今更返すなんて酷い真似はせぬ」
「散々見下した態度取ってたくせによく言いますよ」
「なんか言ったか?」
「い、いえ何も。アイドル悪イコトイワナイ」

 あまりの威圧感に、毒を吐いたノエルも片言になりながら毒の舌を引っ込める。
 だが、寛容?にパーティーの出席を認めたサージは、ゆっくりとアリーナに指を向けた。そして、後ろの兵士に向かって首を斬れと合図を送った。
 やはり相手は相手。そう簡単にババァ呼びを許すはずがなかった。

「ヤベッ。すまねぇタクロー、皆。アタシ急用思い出したから、先船帰るわ」
「う、うむ。気をつけるでござるよ」

 そう言い残し、アリーナは自分の招待状を置いてスタコラサッサと言いながら走り去ってしまった。

「それでは明日の夜、また此処に来い。特別に妾の娘を紹介してやる」
「は、ははぁ。私も楽しみでございまっする」

 リュウヤは満遍の作り笑いでパーティーに出れる事を喜びながら、悪い空気を吹き飛ばす笑いをこっそりと含めた。
 しかし、空気があまりにも重く、そんな状況にはならなかった。そして、モヤモヤした気持ちを抱きつつ、心の折れたメアを連れて城を後にした。

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