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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第201話 血の滲む焦土

「何という事だ、火で周りを囲まれたではないか!」
「残っている人は居ないみたいですが、これでは……」
『おっと、腹立たしさのあまりつい本気を出してしまった。だがまあいい、貴様らからは嫌な臭いがするからな』
「マジ?もしかして、酢飯の匂い?いやでも、握ってねぇぜ?」

 マドラーの話を間に受けたリュウヤは、手の臭いを確認した。勿論、全く別の意味だったので何も臭わないし、ノエルに「多分違いますよ」とツッコミを入れられる。
 すると、またマドラーは棍棒を地面に叩きつけ、攻撃を仕掛けてきた。

『この臭い、タナカトスもそうだが忌々しきアイツの臭いもする!』
「生憎でござるが、きっとそれは人違いでござる。はぁっ!」

 話の途中だが、吾朗は攻撃後の隙を狙い、足の小指に刀を突き刺した。例え相手が鬼だとしても、生物は共通して小指が弱点。角にぶつけたり何かが刺されば痛いはず。
 しかしどう言う訳か、刺さったにも関わらず、マドラーは痛みを感じていなかった。

「行くぜ!〈雷電一閃〉、どらぁ!」
『鬱陶しいハエ共が!叩き潰してくれる!』
「まずい!皆伏せろ!」

 するとマドラーは、また棍棒に炎の力を溜め込み、振り下ろそうとしてきた。だがそれに対抗し、デンジは自慢のバスターを肩に乗せ、手に向かって連射砲を放った。それも、起爆性の高い強力弾だ。
 マドラーの顔すら見えない大きさの炎が燃え上がり、焼け焦げた地面にカラの弾が降り注いだ。
 これは流石に生きて帰れまい。そう思っていた矢先、なんと爆風の先から真っ赤な拳が飛んできた。

「ぐわぁっ!」
「デンジさん!」
『腹立たしい奴め、あんなもの蚊の針ほど痛くも痒くもないわ!それに、そんなふざけた武器で俺様に勝とうなど、100万光年早い!』
「ぐぬぬ、手強いでござるな……」

 拳に付いたゴミを振り払いながら、マドラーは言う。するとその時、リュウヤが屋根から飛び上がり、マドラーの仮面を狙って天空斬をお見舞いした。

「マドっさん、光年は時間じゃなくて距離の単位でっせ?」
『黙れ!俺様の言葉に間違いはない!』
「おっと、今だノエちゃん!凍らせちゃえ!」
「分かりました!《メガ・フリズ》!」

 リュウヤの合図に合わせ、ノエルは地面に突き刺さった拳に氷魔法を放つ。拳が大きく命中させやすかったお陰で、マドラーの腕は地面に固定された。
 そのチャンスを逃さず、続けて吾朗とデンジが反撃に出た。

「手応えあり!」
『フン、それはどうかな?』
「そんなもの、引っ掛かりませんよ!」
「そうか!ダメだノエちゃん、行くなー!」
「えっ?」
『お返しだ、《煉獄槍》』

 その瞬間地面が変形し、マグマの槍が現れた。このままではノエルに刺さってしまう。そう考えたリュウヤは、風の宝玉でノエルの方に飛び込み、彼の代わりにその槍を食らった。
 槍は軽々とリュウヤの腹部を貫通し、血の雨を降らせた。

「リュウヤ殿ー!」
「そんな、私のせいで……」
『グハハハハ!愉快だ愉快だ!実に愉快だ!凍らせた程度で終わると思うたか!』
「くそう!うあああああああ!!」

 ショックを抑えきれなかったデンジは、マドラーそっちのけで槍に連射砲を放った。だが、マグマで作られた槍は弾が爆発する前にそれを溶かしてしまい、全く効きもしなかった。
 それに、すごい熱気だ。そもそも普通のマグマとは程遠い。

『我は錬金術師!棍棒などただの飾り、本領はこの我が拳なのだ!』
「しまった!氷が溶けたぞ!」
『さぁ、貴様らもこの小僧と同じ目に遭わせてやろう!』

 そう言うとマドラーは錬金術で家の瓦礫を棍棒に作り替え、それを力強く叩きつけた。トランポリンのように地面がぐにゃりと揺れ、一瞬にして周囲の道に窪みができる。そして、鋭い槍が窪みから出現した。
 3人は必死で槍を避けつつ、攻撃の機会を窺った。しかし、次から次へと槍が現れ、機会を窺えない。
 このままではリュウヤの死だけでなく、周囲が針山地獄と化し、全滅してしまう。
 ……ん?リュウヤの死?いや違う、リュウヤはきっと……!

「やむを得ない。とにかくここは避け続けるでござる!」
「吾朗殿、これでは我々は何もできませんぞ!」
「いや、それが良いんですよ!リュウヤさんの場合は!」
「?」

 ノエルの言う通り、リュウヤはこれまで普通死ぬだろというような攻撃を受けても「痛てぇ」の一言であしらってきた。つまり、今回もそれで済むのなら、逆にこちらが避けて引きつけ、その隙をリュウヤに討ってもらう。そういう作戦だ。
 だが、ただ普通に避け続けていれば不信感を持たれ、リュウヤが一撃を外してしまえば、死んだふりマジックも無効化してしまう。そのため、3人は避けながらの攻撃を続けた。

『フン!ちょこまかと鬱陶しいハエ共が!仲間を見捨てて逃げるか!弱々しい!実に弱々しい!』
「せいぜい言うておるが良い、赤鬼よ」
「私だって、これだけではないぞ!」

 デンジは懐から拳銃を取り出し、6発全てをマドラーに命中させた。
 そして、同時にリュウヤの指がピクリと動くのが見えた。更に、リュウヤに背中を見せている。頃合いだ。

「殿!今でござる!」
「オーケイ、これを待ってたんだぜ!」

 吾朗が叫ぶと、それに呼応するようにリュウヤは槍から脱出し、マドラーの首に飛び立った。これで倒せなかったとしても、首に一撃入れることが出来れば、勝負が有利になる。
 リュウヤはガントレットの宝玉を風属性のものに変え、カマイタチの如き素早さで首を斬ろうとした。しかしその時、うなじから針が飛んできた。

「なっ……」

 ズッ。また、リュウヤの体に槍が突き刺さる。そして、そのまま抜け落ち、地面に落ちた瞬間、ハンマーのように飛び出した地面に打たれ、吾朗達の前に投げ返された。

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