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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第200話 皮肉な血戦

「あの日を思い出すじゃあねぇか。本気でやり合った日だ」
「忘れるわけが無い。初めてアンタと対等に渡り合えたからね。それに、約束も果たせた」

 剣を構え、二人は互いに決勝戦時の思い出に浸る。オニキスの圧勝で、一撃でもくらえば死ぬかもしれない時、彼の体調不良で納得いかない勝利を掴んだあの戦い。
 まさかこんな場所で決戦の続きをするなんて、皮肉にしても酷すぎる。

「ずっと前から、俺はテメェが気に食わなかった。だからまずは、テメェからぶっ殺す」
「こ、殺す!?」
「もうどうでもいいんだよ。不殺も何も、ゼンブぶっ壊してやらぁ!」

 真っ赤な目を光らせたオニキスは、早速タクマに斬りかかった。重い。やはり桁違いに強化されている。
 でも、今までの経験のお陰で、辛うじてやり合うことはできる。もしこれがこの世界に来てすぐなら、剣ごと真っ二つにされていた。
 タクマも本気を出して押し返し、斬撃を与える。だが、オニキスも負けておらず、瞬時に剣を防いだ。剣がまるで第三の腕のように動いている。流石は元・最強狩り、踏んできた場数が違う。

「おらおらどうしたぁ!俺を止めるんじゃあなかったのか!」
「ぐっ……止めてやるさ、そしてアイツの約束を守るんだ!」
「またそんなくだらねぇモン気にしてんのか。笑わせる!」

 今度は黄色い目が光り、剣が周囲の風を溜め込んだ。マズイ、何かが来る!
 タクマは近くの服屋のガラスを蹴り破り、店内に身を隠した。するとその時、オニキスは〈大戦風〉と唱え、剣を振り下ろした。
 その名の通り、凄まじい風が吹き荒れ、蹴破った際の破片や店内の物が室内を飛び回り、その中でタクマにも攻撃を与える。

「畜生、判断を間違えちまった」
「本気でやり合う以上、テメェを逃すつもりはパンカス程度もねぇぜ!」
「しまっ!」

 腕に付いたガラス片を振り解こうとしていたその時、オニキスは同じように窓から飛び込み、座り込むタクマに兜割りを仕掛けた。それをタクマは、体勢を整えて防御しつつ、《コピー》!と叫んだ。
 タクマの考えはこうだ。赤い目が光る時は物理的に強くなる兆候。黄色い目が光る時は周囲の元素を集める事で生み出す、魔法的な攻撃が強くなる兆候。つまり、形は違えど、元素の集合体であるものを“魔法”と呼ぶのであればコピーして逆に使ってやる事は可能だろうと予想した。
 すると、その予想通り魔法陣が現れ、オニキスを突き飛ばした。

「魔法陣にこんな使い方があるなんて……」
「フハハハハ、面白れぇ!そうだそうだ、戦いはこうじゃあねぇとなぁ!」

 魔法陣に突き飛ばされたオニキスは、タクマが本来の能力を見せた事に歓喜し、大声で笑った。そして、風に対抗するかのように、傷付き崩れかかった店の砂埃を剣に集め、打撃武器のような大剣に姿を変えた。コピーした風に対し、吹き飛ばされる恐れのない土属性で対抗する気だろう。
 しかしその技も、出している以上コピーする事は可能。タクマはオニキスが飛び上がる瞬間を見計らい指を鳴らした。そして、剣に風の力を宿し、反撃を開始する。

「食らえ!〈閃風の剣〉!」
「それが何だぁ!〈クリムゾン・ストライク〉!」

 オニキスは己が血を剣に与え、黒曜石のように黒くなった岩石剣を地面に叩きつけた。すると、カッターで切り裂かれた紙のように、地面がパックリと割れた。更に、そこから赤黒い炎が血のように吹き出した。

「チッ、外したか。だがまだ、こんくれぇじゃあ終わらせねぇ!」
「俺も、そのつもりで、来たからなぁ!」
「じゃあ楽しませろ、メルサバの変態よりも!もっとォ!」

 その瞬間、タクマの脳裏にフラッシュの姿が映し出された。包帯ぐるぐる巻きで、仮面のお陰で辛うじて誰か判別できた痛々しい姿。そして、彼の放っていた弱気な声。
 何故無関係のフラッシュさんがあんな目に遭わなきゃならなかったんだ。そんな思いが力に変わり、オニキスの剣を押し返す。

「オニキス!どうして、どうしてフラッシュさんをあんな目に遭わせた!」
「アイツは俺に向かって嫌いな正義論を語ってやがった!お陰で無性に腹立っちまってよぉ!だから半殺しにしてやったぜ!」
「ふざけるな!だからって、どうして半殺しにされなきゃいけなかったんだ!」
「黙れェ!正義を過信してるドグサれ脳みそが!正義を騙る野郎に大事なものを奪われた人間の気持ちが、テメェに分かるかぁ!」

 激昂したオニキスは、両眼を光らせて攻撃を仕掛けた。今度は常に赤黒い気を纏わせた姿。まさか、フラッシュさんも激怒させたが故にこの姿で……
 オニキスの正義を嫌うって気持ちも分からなくない。でも、こんなに怒りが爆発していたら、どれだけ説得しても無駄な気がする。

「分かんないかもしれない!でも、どんな理由があろうと俺はアンタを止める!」
「ぬかせぇ!テメェのような弱者に、今の俺は止められねぇ!」
「だからだよ!だから、例え無理でも、俺は俺のやれるなりをやり切るんだ!」

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