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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第186話 傲慢の「G」

『ゴルドの皇帝は仮の姿。影の一部でしか存在できなかったが、貴様らの傲慢のお陰でここまで復活できた』
「ウチらのごーまん?ねぇメアメア、傲慢って何や?」
「平気で人を見下したりする、偉そうな奴じゃ。って、誰が偉そうなのじゃーッ!」
「まあまあ落ち着きなされや。んで、俺達の何が傲慢なんだってんだい、皇帝サマ?」

 リュウヤは訊く。すると皇帝は「鈍い男よ」と大笑いした。
 そして、ゆっくりとリュウヤを指し、言った。

『我に勝てるという自信、その自信も傲慢の一つなのだ』
「じゃあ拙者が上空でやられたのは、拙者の太刀で勝つると自信を持った故!?」
『流石は最年長、ずばりそう言う事だ。貴様らが自信を持つ事により、我が傲慢の念は高まり、強くなる』

 そう言うと、証拠を見せるように翼を広げ、骨の翼から刀のような羽根を生やした。それと同時に、リュウヤ達から力が抜かれる。

『特にリュウヤ、貴様の傲慢さには感謝しかない。お陰で全盛期以上の力が溢れ出る』
「んだよ、つまりは全部俺のせいってーのか?」
「リューくん!今行ったらダメや!」
「何もお主だけの所為ではない!戻るのじゃ!」

 メアとナノは飛び出してしまったリュウヤを呼び戻す。しかしリュウヤは、笑ったままプラドに斬りかかる。
 だが、プラドは当たり前のように翼で刀を防ぎ、刀の羽根で斬り上げた。
 そして、目の前で倒れたリュウヤの背中を踏みつけた。すると、痛々しい音が聞こえてきた。

「リュウヤ殿!」
「アッハハ、いってーな。こりゃ骨折れたわ」
『ほぉ、こんな目に遭ってもなお笑うとは、おめでたい奴め!もっと痛めつけてやる!』

 プラドはリュウヤの態度が気に障り、刀を取って突き刺した。
 しかしリュウヤは、クルリと体を動かし、刀を避けた。そして、ポケットから取り出したレモンをプラドに投げつけ、一緒に斬った。
 辺りにレモンの酸っぱい香りが漂う。

「うっ、何やこの臭い!」
「唐揚げにしてやったらかけるつもりだったけど、人肉はごめんだからな。もうここで使ってやるよ」
『き、貴様!よくも我に変なものを!許さん!』
「リュウヤ、怒らせたけど、どうするつもりなのじゃ?」

 メアは呆れながら訊く。するとリュウヤは、ハチマキ用のタオルを取り出し、目隠しのように目を覆った。
 そして、全く違う方に刀を向けて「一丁あがり!」と叫んだ。

「わぁ、こっち向けるな!妾は味方じゃ!」
「悪い悪い。これ全く見えねぇのよ」
『笑わせる!死ねい!』

 リュウヤが何も見えないままブンブンと素振りしていると、プラドが襲いかかってきた。しかも、吾郎の後ろに隠れているナノを狙っている。
 その時なんと、リュウヤがプラドの刀を防いだ。

『何っ!?』
「ナノナノ、メアちゃん、今だ!」
「まかせい!〈メガ・ドゥンケル〉!」
「オーライ!〈マムート・プレス〉!」

 リュウヤの合図に合わせ、メアはプラドの頭上に闇魔法を放った。そして、小鳥に変身したナノは更にその上で変身を解除し、闇魔法と一緒に落下した。
 そして、辺りに砂煙が巻き起こる中で、リュウヤは斬りつけながら抜け出した。

「〈剣崎流・微塵切りの舞〉!」
『まだだ、まだ我には片方の翼が残っている!』

 プラドの右翼は、微塵切りの舞により斬り落とされてしまった。しかし、残っている傲慢の力で左翼を強化し、リュウヤの背中を狙う。
 その時、同時に砂煙が突然左右に避けた。そして、中から抜刀の構えをする吾郎が現れた。

「〈天照・陽炎の太刀〉!」
『させぬ!はぁっ!』
「そんな、ここまでやって、じぃじの太刀を防ぐなんて!」

 吾郎は抜刀して攻撃するが、プラドの羽根によって防がれる。
 しかし、リュウヤは目隠しをしているにも関わらず、後ろから奇襲を仕掛けた。そして、吾郎とリュウヤの刀がすれ違い、鍔迫り合いに勝利した。

「俺が言うのもアレだけど、よそ見は厳禁だぜ?」
「〈王手〉!」

 吾郎はリュウヤに続いて叫び、納刀した。それにより、プラドの羽根は切り刻まれた写真のようにバラバラになる。

『いいやまだだ!貴様の傲慢を……!?』

 激昂したプラドは、もう一度力を溜めようと試みる。しかし何も起こらなかった。
 おかしいと思い、また試す。しかし何も起こらなかった。

『何故だ!何故力が出ない!』
「実は俺さ、暗所恐怖症なのよ。だから今、すげー怖い。チビっちゃうくらい怖いなう」
「唐突すぎる意外な事実!にしては、平気そうじゃのう」
「我慢してるだけよ。でも、これくらい自信無くしちゃえば、鳥ちゃんの言う傲慢も吸収できないと思ってさ」
「あえて心眼を使って自信を削ぐ事で、相手の強化も防ぐとは、流石はリュウヤ殿でござる!」
「あれ?でもでも、それならレモンは何だったん?アレ結構鼻に来るから嫌いなんに……」
「めんごめんご。でもそれは、どの辺に居るか知りたかったからなのねん」

 笑いながら言うと、リュウヤは後ろを振り返り、不意打ちを仕掛けてきたプラドの攻撃を弾いた。それと同時に、レモンの香りも漂う。
 そして、腹に隠し包丁の舞を食らわせ、弱点であるオーブを露出させた。

「オーブじゃ!皆、一気に畳みかけるぞ!」
「御意、行くでござる!」
「「「「おう!」」」」

 四人は声を揃えて言い、位置についた。
 まずはリュウヤが踏み台となり、ナノとメアが攻撃をしかける。投げナイフで周りに障害物を作り、動きづらくなった所にハンマーを落とし込んだ。
 だが、プラドは残る力を使い、象の足に抵抗する。

『その技はもう見切った!』
「それはどうかの?〈秘術・命取り〉!」

 メアはハンマーに気を取られている隙に短剣で心臓──オーブ──に傷をつけ、怯ませた。
 ここでメアとナノは一旦引き、バトンタッチでリュウヤと吾郎が飛び込む。

「そこに居るのは分かってまっせ!」
「覚悟ッ!」
『そう上手くはやらせぬ!』

 しかしプラドは、水魔法による水圧で飛び上がり、二人の攻撃を避けた。それを撃ち落とすため、引いたナノとメアは爆裂魔法とミサイルで攻撃した。
 だが、プラドには当たらず、周りの岩壁に被弾する。

『何処を狙っている!次は我から行くぞ!』
「しまった!妾の魔法から吸い取られる!」

 メアは絵に描いたように慌てふためく。その様子を見たプラドは勝利を確信し、全ての力を両手に集める。
 だがその時、地面の方から何かが近付いてくるような音が聞こえてきた。
 タンタン、シュタタッ、まるで忍者がやって来るような静かな風切り音が鳴る。

「なーんて、これも計算のうちでござる」
「さーておっさん、おまんの罪数えな」
『な、何ーーッ!』

 そう、ナノとメアが攻撃を外したのはわざと。欲しかったのは、その後に崩れてできる岩だったのだ。リュウヤ達はそれらに乗り継ぎ、プラドと同じ高さまで登ったのである。
 そして更に、メアも短剣を持って現れ、プラドの油断を突いて攻撃を開始した。
 一度攻撃しては壁を蹴り、誰かが攻撃してすぐにまた攻撃してを繰り返す。斬り方は適当だが、一撃一撃はしっかりと重い。

「のじゃーッ!」
「ぬおおおお!」
「そいやっさ!」
『くっ、ぐはぁっ!な、何故我が……こんな目に……』
「「「〈三重連撃奏・乱切り蘭舞〉」」」

 三人は偶然あった岩の出っ張りの上に乗り、気持ちよさそうに技名を言う。
 すると、プラドは無惨にも飛び散り、中央には傷ついたオーブだけが残った。

「ナノナノ、今じゃ!」
「おう!まっかせーい!」

 振り返ると、コウモリに変身していたナノが降下し、ハンマーのヘッド部分に乗りながらオーブと連結する。そして、そのまま隕石のように落下した。
 それによって、辺りに衝撃波が走り、粉々に飛び散ったオーブはプラドの閲覧注意級の残骸と共に集結し、綺麗なオーブへと戻った。

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