コピー使いの異世界探検記
第173話 再開の層
「レンブ、おじさん?」
「まさか、ナノの恩人という?」
「ナノ、久しぶりだな。元気してたかい?」
レンブと呼ばれた男は、優しい笑顔で手を振る。
それもそうだ。おじさん、もといレンブは2年前のナルガ帝国彗星事件、その時にアナザーによって殺された筈だ。それが今目の前に立っている。夢だと思うのも無理はない。
「どないしたん?ワイの事、死人と再開した時みたいな顔で見て。いや、ワイはもう死んどるんか。ハッハッハ」
「え、その口調ってもしや……」
「間違いない。ウチのおじさんや!」
するとナノは、大粒の涙を流しながらレンブとの再開を喜んだ。レンブはナノを高く持ち上げ、大笑いした。
思ったよりも軽快な人に見える。やはり、関西弁だからか、初めて会ったのに初対面な気がしない。
「おや?そこの二人は、お友達かい?」
「せやで!ウチらに新しい家と、一生困らへんお金をくれた最高の仲間や!」
「タクマです。で、こっちのおてんば姫がメアです」
「メア・アルゴ。何を隠そう、アルゴ国の姫じゃ……って、誰がおてんば姫じゃ無礼者ー!」
メアはワーっと怒り、タクマの背中に乗ってポカスカと頭を殴った。
「痛い!痛い!ごめん、悪かったって!」タクマは言うが、メアは一向に殴るのをやめない。
すると、二人はハハハ!と大笑いした。
「なんだかんだ言って、仲良しなんやな君達は。面白い」
「な、なかよし……?」
「メアメア顔真っ赤やで?もしかして、照れとる?」
「ば、馬鹿を言うでない!な、何故妾がこのようなフツーすぎる奴と。それに──」
「ガッハッハ!まあまあそう言いなさんなって、アルゴの嬢ちゃん。男ってーのは捻くれ者でな、誰しも一度は好きな子に対して素直になれへん時期があるのや」
レンブはでっぷりと出ている腹をさすり、メアの背中をドンと叩いた。力が強すぎて、メアはグラッと体制を崩す。
すごく暖かい。まるで理想のお父さんみたいな人だ。ナノ達が尊敬して、好きになるのも納得がいく。
「あれ?そう言えば、レンブさんはどうしてここに?」
「言われてみれば。どうしてお主はここにおるのじゃ?妾は霊歌なんて歌っておらぬぞ?」
「そりゃワイの方が聞きたいわ。でもま、多分下の階への場所を教えればええんやろな」
「ほ、ホンマに教えてくれるの!レンブおじさん、ありがとう!」
「おおきにおおきに。ほな、行きましょか」
レンブは大きな肩にナノをちょこんと乗せ、監獄内を歩いた。
︎
その頃、リュウヤの方も同様に、死んだ筈の吾郎の師範が現れたことに驚いていた。
「やだなあ吾郎君。そんな死人と再開したような顔をしないでくれたまえ」
「師範殿、だって貴殿は……」
「年齢的に見れば年老いている。そして、君たちの目の前で焼き殺された。確かにそうだな」
師範は、落ち着いた口調で言う。
すると、年齢的に違和感を覚えたノエルが、おタツの謎マフラーを引っ張った。そして、小声で「吾郎爺って、おいくつなんです?」と訊いた。
おタツはその問いに、戸惑いながらも「多分、50代だと思うでありんす」と答えた。
「なあ吾郎爺、もしこの人が師範だってんならさあ、本人しか知らない事聞いてみれば?」
「はっ!その手があったでござる!流石リュウヤ殿!」
「ハハッ、新たな仲間も頼もしいものだね。それで、一体どんな質問をするのだい?」
渋い声で、師範は言う。かつての弟子と再開したと言うのに、ここまで落ち着いているとは。リュウヤは目を細めて師範を見る。
そして、吾郎は質問が纏まったのか、すぅーっと大きく深呼吸をした。
「好きなものは!」
「焼酎」
「嫌いなものは!」
「桃」
「足の裏のホクロは!」
「2つ」
「ズバリ特技は!」
「無理矢理茶柱を立たせる」
「弟子の数は!」
「5人だ」
まるでプロの卓球選手同士が繰り広げるラリーのように、ポンポンと質問と答えが返ってくる。
もはや早すぎて何を言っているのか聞き取れない。しかし、その具体的な答えから、彼が偽物であるようには思えなかった。それも、焼酎や桃なんて、少なくともメアやノエル達の暮らす中世的な世界では全く聞かないワードばかりだ。
「ど、どうだったでありんす?」
「この答え、まさしく本物。本物の師範でござる」
吾郎は、目の前の男が市販だと分かるや否や、腰が直角になるような勢いで頭を下げた。
師範はその頭にポンと手を乗せ、「ただいま」と声をかけた。
「紹介するでござる。この二人はリュウヤ殿とおタツ殿。そして、彼?彼女?が──」
「おにゃん娘アイドル、ノエちんことノエルです」
「あいどる?それが何かは分からないが、面白い人達なのは理解したよ。私はミコトと言う。今後ともよろしく」
「よろしくっす!師範殿」
「アハハ、そう固くなる事なはい。気軽にミコトさんとでも呼びなさい」
︎
「それでねそれでね、この前リューくんがねぇ」
「ナノナノ、楽しそうで何よりじゃ。てかタクマ、泣いとるのか?」
「だってこんなシチュ、夢でも幻でも泣くだろ……うぅっ」
タクマは二人の再開に感動し、強く目を瞑る。メアはそんな様子のタクマを見て、やれやれと両手をあげて首を振った。
すると、メアは何もない場所で、何故かつまずいてしまう。
「はわわわわー!」
「メア!」
タクマは咄嗟にメアの手を取り、顔面強打寸前の所で引き上げた。
「大丈夫かいメアちゃん?」
「何もない所で転ぶなんて、珍しい事もあるもんだな」
「いや、妾は今確かに、何かに足を引っ掛けた筈じゃ」
メアはそう言った後、「おかしいのぅ」と言いつつ足元を探してみた。しかし、何も見当たらない。
そう思っていた時、ナノが急に鼻をヒクヒクと動かし、メアの足元を犬のように嗅ぎ回った。
「あぁこらナノナノ、女の子がはしたないぞ!」
「待ってタっくん。やっぱここに何かあるで!ほら!」
ナノはメアの靴に付着していた“何か”を取り、それをタクマに見せた。それは透明だったため最初は何も見えなかったが、試しに懐中電灯を当ててみると、光を反射させた。
「何だコレ、ピアノ線か?」
「ピアノ線じゃと?ピアノなんてどこにも見当たらぬが……」
と、その時。いきなり地面がぱっくりと割れた。
そして、運悪くその上に居たタクマとメアは、空中で目を見開きながらお互いを見つめた。
「わぁぁぁ!!どうしてこうなるのぉぉぉ!!」
「タっくん!メアメア!」
ナノは急いで肩から降り、タクマを助けようと腕を伸ばす。しかし、腕はすれ違ってしまい、タクマとメアは真っ逆さまに落ちてしまった。
奥は今居る場所よりも暗くて、何も見えない。しかし、助けなければタクマが死んでしまうかもしれない。
ナノはゴクリと固唾を飲み、飛び降りた。だが、レンブに引き戻されてしまった。
「何しとるんや!死にたいんかドアホ!」
「話してレンブおじさん!ウチの大事なタっくんとメアメアが落ちたんやで!ウチが助けな!」
「だとしても行かれん!確かに二人も大事や。せやけど、ナノが死んでもうたら元も子もない!ワイはナノが大事なんや!」
「レンブおじさん……」
ナノはレンブの言葉を聞き、涙が溢れる。しかし、ナノは涙を堪えて拭き取る。
そして、分かってくれたとレンブが油断した隙を突き、ナノは肩の腕を振り払った。
「ナノ!」
「でもごめん!ウチはもう、失いたくないんや!」
「ナノ!行くな!ナノー!」
レンブは叫んだ。しかし、その声は穴の奥に、ナノと共に吸い込まれてしまった。
「まさか、ナノの恩人という?」
「ナノ、久しぶりだな。元気してたかい?」
レンブと呼ばれた男は、優しい笑顔で手を振る。
それもそうだ。おじさん、もといレンブは2年前のナルガ帝国彗星事件、その時にアナザーによって殺された筈だ。それが今目の前に立っている。夢だと思うのも無理はない。
「どないしたん?ワイの事、死人と再開した時みたいな顔で見て。いや、ワイはもう死んどるんか。ハッハッハ」
「え、その口調ってもしや……」
「間違いない。ウチのおじさんや!」
するとナノは、大粒の涙を流しながらレンブとの再開を喜んだ。レンブはナノを高く持ち上げ、大笑いした。
思ったよりも軽快な人に見える。やはり、関西弁だからか、初めて会ったのに初対面な気がしない。
「おや?そこの二人は、お友達かい?」
「せやで!ウチらに新しい家と、一生困らへんお金をくれた最高の仲間や!」
「タクマです。で、こっちのおてんば姫がメアです」
「メア・アルゴ。何を隠そう、アルゴ国の姫じゃ……って、誰がおてんば姫じゃ無礼者ー!」
メアはワーっと怒り、タクマの背中に乗ってポカスカと頭を殴った。
「痛い!痛い!ごめん、悪かったって!」タクマは言うが、メアは一向に殴るのをやめない。
すると、二人はハハハ!と大笑いした。
「なんだかんだ言って、仲良しなんやな君達は。面白い」
「な、なかよし……?」
「メアメア顔真っ赤やで?もしかして、照れとる?」
「ば、馬鹿を言うでない!な、何故妾がこのようなフツーすぎる奴と。それに──」
「ガッハッハ!まあまあそう言いなさんなって、アルゴの嬢ちゃん。男ってーのは捻くれ者でな、誰しも一度は好きな子に対して素直になれへん時期があるのや」
レンブはでっぷりと出ている腹をさすり、メアの背中をドンと叩いた。力が強すぎて、メアはグラッと体制を崩す。
すごく暖かい。まるで理想のお父さんみたいな人だ。ナノ達が尊敬して、好きになるのも納得がいく。
「あれ?そう言えば、レンブさんはどうしてここに?」
「言われてみれば。どうしてお主はここにおるのじゃ?妾は霊歌なんて歌っておらぬぞ?」
「そりゃワイの方が聞きたいわ。でもま、多分下の階への場所を教えればええんやろな」
「ほ、ホンマに教えてくれるの!レンブおじさん、ありがとう!」
「おおきにおおきに。ほな、行きましょか」
レンブは大きな肩にナノをちょこんと乗せ、監獄内を歩いた。
︎
その頃、リュウヤの方も同様に、死んだ筈の吾郎の師範が現れたことに驚いていた。
「やだなあ吾郎君。そんな死人と再開したような顔をしないでくれたまえ」
「師範殿、だって貴殿は……」
「年齢的に見れば年老いている。そして、君たちの目の前で焼き殺された。確かにそうだな」
師範は、落ち着いた口調で言う。
すると、年齢的に違和感を覚えたノエルが、おタツの謎マフラーを引っ張った。そして、小声で「吾郎爺って、おいくつなんです?」と訊いた。
おタツはその問いに、戸惑いながらも「多分、50代だと思うでありんす」と答えた。
「なあ吾郎爺、もしこの人が師範だってんならさあ、本人しか知らない事聞いてみれば?」
「はっ!その手があったでござる!流石リュウヤ殿!」
「ハハッ、新たな仲間も頼もしいものだね。それで、一体どんな質問をするのだい?」
渋い声で、師範は言う。かつての弟子と再開したと言うのに、ここまで落ち着いているとは。リュウヤは目を細めて師範を見る。
そして、吾郎は質問が纏まったのか、すぅーっと大きく深呼吸をした。
「好きなものは!」
「焼酎」
「嫌いなものは!」
「桃」
「足の裏のホクロは!」
「2つ」
「ズバリ特技は!」
「無理矢理茶柱を立たせる」
「弟子の数は!」
「5人だ」
まるでプロの卓球選手同士が繰り広げるラリーのように、ポンポンと質問と答えが返ってくる。
もはや早すぎて何を言っているのか聞き取れない。しかし、その具体的な答えから、彼が偽物であるようには思えなかった。それも、焼酎や桃なんて、少なくともメアやノエル達の暮らす中世的な世界では全く聞かないワードばかりだ。
「ど、どうだったでありんす?」
「この答え、まさしく本物。本物の師範でござる」
吾郎は、目の前の男が市販だと分かるや否や、腰が直角になるような勢いで頭を下げた。
師範はその頭にポンと手を乗せ、「ただいま」と声をかけた。
「紹介するでござる。この二人はリュウヤ殿とおタツ殿。そして、彼?彼女?が──」
「おにゃん娘アイドル、ノエちんことノエルです」
「あいどる?それが何かは分からないが、面白い人達なのは理解したよ。私はミコトと言う。今後ともよろしく」
「よろしくっす!師範殿」
「アハハ、そう固くなる事なはい。気軽にミコトさんとでも呼びなさい」
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「それでねそれでね、この前リューくんがねぇ」
「ナノナノ、楽しそうで何よりじゃ。てかタクマ、泣いとるのか?」
「だってこんなシチュ、夢でも幻でも泣くだろ……うぅっ」
タクマは二人の再開に感動し、強く目を瞑る。メアはそんな様子のタクマを見て、やれやれと両手をあげて首を振った。
すると、メアは何もない場所で、何故かつまずいてしまう。
「はわわわわー!」
「メア!」
タクマは咄嗟にメアの手を取り、顔面強打寸前の所で引き上げた。
「大丈夫かいメアちゃん?」
「何もない所で転ぶなんて、珍しい事もあるもんだな」
「いや、妾は今確かに、何かに足を引っ掛けた筈じゃ」
メアはそう言った後、「おかしいのぅ」と言いつつ足元を探してみた。しかし、何も見当たらない。
そう思っていた時、ナノが急に鼻をヒクヒクと動かし、メアの足元を犬のように嗅ぎ回った。
「あぁこらナノナノ、女の子がはしたないぞ!」
「待ってタっくん。やっぱここに何かあるで!ほら!」
ナノはメアの靴に付着していた“何か”を取り、それをタクマに見せた。それは透明だったため最初は何も見えなかったが、試しに懐中電灯を当ててみると、光を反射させた。
「何だコレ、ピアノ線か?」
「ピアノ線じゃと?ピアノなんてどこにも見当たらぬが……」
と、その時。いきなり地面がぱっくりと割れた。
そして、運悪くその上に居たタクマとメアは、空中で目を見開きながらお互いを見つめた。
「わぁぁぁ!!どうしてこうなるのぉぉぉ!!」
「タっくん!メアメア!」
ナノは急いで肩から降り、タクマを助けようと腕を伸ばす。しかし、腕はすれ違ってしまい、タクマとメアは真っ逆さまに落ちてしまった。
奥は今居る場所よりも暗くて、何も見えない。しかし、助けなければタクマが死んでしまうかもしれない。
ナノはゴクリと固唾を飲み、飛び降りた。だが、レンブに引き戻されてしまった。
「何しとるんや!死にたいんかドアホ!」
「話してレンブおじさん!ウチの大事なタっくんとメアメアが落ちたんやで!ウチが助けな!」
「だとしても行かれん!確かに二人も大事や。せやけど、ナノが死んでもうたら元も子もない!ワイはナノが大事なんや!」
「レンブおじさん……」
ナノはレンブの言葉を聞き、涙が溢れる。しかし、ナノは涙を堪えて拭き取る。
そして、分かってくれたとレンブが油断した隙を突き、ナノは肩の腕を振り払った。
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