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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第164話 タクマ、死す!

 ──うわぁぁぁぁぁぁぁ!!
 遠くで何かを強く叩いたような音と、兵士達の野太い断末魔が聞こえてきた。
 そして、ふと民家の間を見てみると、花火のように兵士が打ち上げられていた。

「おー、飛んでる飛んでる。流石は吾郎達じゃのぅ」
「リュウヤ、やりすぎてないといいんだけどなぁ」
「あの人、燃えるとすぐやり過ぎるでありんすからね」
「でも私達、命狙われてる身ですから、あれくらいやっても文句ないですよね?」

 走りながら、ノエルは満点の笑顔で言う。ノエルの毒舌にまた磨きが掛かっている。
 するとその時、進行方向側から無数の兵士達が押し寄せてきた。その兵士はリュウヤと対峙した一般兵とは違い、影のように黒ずんだ鎧を纏っていた。

「ちっ、やはり来おったか……」
「けどこの人達、何か変ですよ」
「とにかく、ちゃっちゃと倒してリュウヤ達と合流しよう!」
「えぇ、例え誰が相手だろうと、クノイチおタツ、引きはせぬ!」

 タクマ達は剣を構え、黒兵集団に攻撃を仕掛けた。
 タクマは多数の敵を倒す方法を思い出しながら戦った。突進するように襲いかかる敵の攻撃を避けつつカウンターで背中を斬りつけ、背中の気配を感じ取り、背後討ちを防いだ。
 
「《コピー》!からの、〈閃の剣・炎〉!」
「どりゃあ!はいやあっ!《フリズ》!」
「コイツで吹き飛べ!《メガ・ドゥンケルボム》!」

 タクマの後を追うように、ノエルは黒兵の顔面を殴り飛ばし、怯んだ隙に凍らせた。
 そして、メアは一掃する為に狭場である事もお構いなしでナイフを投げ、最後に高威力の闇魔法を放った。
 しかし、狭場で使用したせいで、最前線で戦っていたタクマは黒兵諸共爆発の餌食になった。更に、衝撃によって近くのバーが倒壊し、兵士を飲み込んだ後、酒がタクマの剣に引火し、ゴウゴウと燃え上がってしまった。

「あ……やっちゃったのじゃ」テヘペロ
「テヘペロ、じゃないでありんしょうメアちゃん」
「タクマさーん、大丈夫ですかー!」

 おタツとノエルは、水魔法(忍術)で消化しつつ、タクマの救出をしようとした。
 すると、ノエルの呼びかけに応えるかのように、タクマがドカーン と飛び出した。

「メアー!何狭い所でドゥンケルボム使っとんじゃー!」
「うわー!ごめんなさいなのじゃー!」

 タクマはメアの頬をグニグニと引っ張り叱る。メアはその勢いに乗り、叫びながら謝った。
 すると、タクマの煤まみれの姿のせいなのか、ノエルとおタツはぷくくっ、と笑い出した。

「タクマさんって、なんだかんだ言ってメアさんと仲良いですよね」
「ほんと、微笑ましいでありんす」
「こ、これの何処が仲良しなのじゃ〜!」
「アンタねぇ、所構わずポンポンポンポン撃っちゃ危ないでしょ」

 タクマはメアの肩を掴み、母親のように叱った。それを聞いた二人は、あまりの可笑しさにまた吹き出した。
 するとその時、まだ燃え盛る瓦礫がゴソゴソと動き出した。
 そして、その中から、やっつけたはずの兵士が隙間から復活して現れた。

「嘘、どうなってるんですか!」
「皆下がって!爆散手裏剣!」

 おタツは復活途中の兵士に手裏剣を投げ、瓦礫と一緒に爆発させた。それにより砂埃が舞い上がる。
 しかし、巻き起こった砂埃を払ってみると、さっきまでそこに居た筈の兵士が数体消えていた。

「ど、何処に行ったんだ!?」
「けどこの気配、まだ近くに居るぞ……」
「……っ!おタツさん!」

 なんと、消えた兵士はおタツの背中に回っていた。その事に気付いたタクマはおタツの名前を呼ぶ。
 しかし、気付くのが遅かった。
 ザシュ と生きた肉に剣が刺さる、痛々しく鋭い音が鳴った。

「え……」
「嘘……じゃろ?」
「そんな、どうして……タクマさん」

 おタツが目を開けると、そこには腹を貫かれたタクマが立っていた。そう、タクマは名前を呼ぶ前に体を動かしており、自らを盾にしておタツを庇ったのだ。
 そのショッキングな場面を目の当たりにしたノエルは、ショックのあまり失神してしまった。

「っ!……お返しだ!はぁっ!」

 タクマはその隙に兵士の首を斬り、腹の剣を抜いた。
 だが、それによって腹から血が大量に流れ出し、タクマはクラリとよろける。

「馬鹿タクマ!何でこんな事を……」
「愛する奥さんに怪我させたなんて……アイツに言えるか?」
「何こんな時にカッコつけておる!キモいぞ馬鹿!」
「ごめん、こう言ったの慣れてないから……何言えばいいか……わから────」
「タクマさん?タクマさん!」

 最後の言葉を言い残す事なく、タクマは眠りについてしまった。まだ息はあるが、血の量からして持って後1時間だろう。
 メアは涙目になりながら、必死で腹を押さえ、止血しようと頑張った。
 その間、さっきの兵士が立ち上がり、後ろからジリジリと歩み寄ってきた。二人はタクマの事で精一杯だったせいか、全く気付いていない。
 するとその時、「《ライトニング》」と叫び声が聞こえ、辺り一帯に目が眩むような光が差し込んできた。
 
「オーホッホッホッホ!お困りみたいだなお前たち!」
「何じゃ!誰かおるのか!」
「メアちゃん、屋根の上に……」

 おタツが指を差した所を見ると、そこには腕を組んで偉そうに大笑いする女の姿があった。
 すると女は、「シュバっ!」と言いながら飛び降り、「シュタッ」と言いながら着地した。

「自分で言うのでありんすか」
「お困りなら何でもござれ!アタシが助けてやるぜ!」

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