話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第163話 勝負の基本は攻めと逃げ

「お前様!何を言ってるでありんすか!早く逃げないと!」
「いや待っておタツさん。ここはリュウヤに賭けるべきだ」
「死ね!そして闇黒様にその肉を捧げたまえ!」

 その時、タクマを発見した皇帝は鋭い爪を輝かせ、7人を切り刻もうと襲いかかった。
 するとリュウヤは、「今だ!」と叫び、近くにいたおタツとナノ、そしてノエルを庇うように伏せた。
 タクマとメアは吾郎に守られ、標的を失った皇帝は、柱と共に壁を切り裂いた。
 そして、支えを失った城は、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

「よっしゃ!計画通り!」
「成る程、壊せないなら相手の武器を使うという訳でござるか」
「とにかく逃げましょう!」

 タクマ達はその隙を利用し、穴から逃げ出した。
 運良く、穴の空いた先にはちゃんとした道があったため、すぐに逃げ出す事ができた。しかし走っている最中、メアはある事に気付き、息を切らしながら「オーブはどうしたのじゃ?」と訊いた。

「それなら心配ご無用やで!な、タツ姐」
「ほら、無事に鞄ごと取り返したでありんすよ」

 おタツは身軽な動きでタクマの鞄を出し、オーブが無事である証拠を見せる。

「流石クノイチ!おタツさん、ナイスです!」
「フフッ、ありがとうございなんし」
「このまま真っ直ぐ行けば出口の筈でござる!皆、このまま突っ切りましょうぞ!」

 しかし皇帝は執念深く、人とは思えない大声量で「異装のガキ共を意地でも引っ捕らえろ!」と指令を出した。更に、続けて「殺しても構わん!報酬は好きなだけくれてやる!」とも付け加えた。
 すると、タクマ達の逃走経路を阻むように兵士が現れ、更に報酬に釣られた冒険家までもが、報酬のためだけに向かい側から突撃してきた。その勢いは、まるで時代劇の合戦のようだった。
 更に、先頭にはユラと大男が鋭い大剣を片手に立っている。

「くそッ、遠回りするしかないじゃあないか!」
「落ち着くのじゃタクマ。皇帝のあの姿は一般兵や冒険家には見せたくない筈じゃ」
「つまり、あの化け物皇帝は出ないと言う事でござるな」

 吾郎は楽しそうに言い、兵士達をずばっと、まるで無双ゲームのように薙ぎ倒した。
 そして、それが面白かったのか、ナノもハンマーを振り回し、兵士を殴り飛ばす。

「ここはウチとじぃじに任せるんや!」
「でもナノナノ、いくら吾郎爺がついてるといってもそれは────」
「いいからいいから、タツは皆連れて別の道探してくれ!」

 そう言うとリュウヤも抜刀し、逆刃で回転斬りを繰り出した。

「分かりました!皆、こっちでありんす!」
「リュウヤ、あまり無茶するでないぞ!」
「そうだリュウヤ!コイツあげる!」

 メアはリュウヤ達に追っ手の軍勢を預け、右側のルートへと逃げていく。その際タクマは、逃げつつポケットから真実の眼を取り出し、それをリュウヤに投げ渡した。
 そして、逃げたことを確認したリュウヤは、受け取った眼をガントレットに装着し、刀を振った。
 すると、刀を振ってすぐ、人を浮かせるほど強力な風が吹き荒れた。

「こいつぁすげぇ!コレなら殺さずに突破できそうだ」
「感心もええけど、油断は命取りやで!せいっ!」
「くっ!何なのだこのガキ共!貴様ら、何をボサッとしている!突撃しろ!」
「数で押そうと、質が悪けりゃ台無しだ。漢吾郎、推して参る!」

 そう言い、次から次へと現れる兵士達をバッタバッタと薙ぎ倒した。リュウヤは風の力で吹き飛ばし、ナノはハンマーで殴り飛ばした兵士を他の兵士にぶつけてまとめて倒し、吾郎は美しい剣技で武器を防ぎ、手刀で兵士を眠らせた。
 すると、兵士を束ねていたユラが大剣を振るい出し、ついにボスが参戦してきた。

「私の愛刀、国鉄の錆になるがいい!」
「リューくん、危ない!」

 ナノは叫んだ。だが、リュウヤはあえて聞かなかったのか、もう手遅れだったのか、リュウヤの肩には既に大剣が刺さっていた。
 しかしリュウヤは、痛いとも何とも言わず、ケラケラと笑った。

「リュウヤ殿!」
「大丈夫大丈夫、これを待ってたんだ」
「な、何!?」
「〈剣埼流・輪切りの舞〉!」

 リュウヤは叫び、油断していたユラの腹に一撃を与えた。そして、怯んでいる隙に宝玉を取り替え、刀に雷の魔力を宿した。
 
「おー!リューくんやるなぁ!せい!」
「ふっ!はぁっ!〈月兎の太刀〉!」
「ゆ、ユラ様!ここは撤退した方が……」
「ええいごちゃごちゃ抜かすな!死ぬ気で戦え!」
「「ぎょ、御意!」」

 着々と倒されていく仲間を前に、兵士は狼狽える。だが、ユラの命令で士気を取り戻し、殺す気で武器を構え襲いかかってきた。
 だが吾郎もナノも、それに怖気付くことなく、必殺技を繰り出す構えをした。その間、100以上、とどのつまり数えきれない量の兵士が襲いかかってくる。

「とらぁーー!〈だるま落とし〉!からのヤマアラシミサイル!」
「〈天照・陽炎の太刀〉」

 ナノは竜巻を起こす勢いで回転しつつ、背中のミサイル針を鬼のようにばら撒いた。ミサイル自体は、爆発的な意味を含めてもそこまで強くはないが、殺さずに突破するなら最適だった。
 そして吾郎も、陽炎の太刀で器用に武器と鎧だけを斬り、撃退した。

「貴様の剣技、敵でなければスカウトしたかったのだがな」
「いえいえそんな、俺はまだ、スカウトされるほど強かないですぜ」

 リュウヤとユラは、周りの民家に体を打ち付けながら、本気の斬り合いを繰り広げた。しかしその時、ユラは懐から袋を取り出し、それをリュウヤに斬らせた。
 すると、リュウヤの目を狙うように、砂煙が巻き起こった。そう、目眩しである。

「くっ!」
「リューくん!アンタ、それでも男なんか!」
「フン!勝つ為なら私は何だってしてやるさ!」
「なら俺も、見境なくやるけど、いいって事だな?」
「リュ、リュウヤ殿?何を……」
「新技。目が見えないから、隠れた方がいいぜ?」

 リュウヤは目を瞑った状態でウィンクをし、2人に警告した。
 そして、2人が隠れた事を耳で聞き取ると、気配でユラの大剣を防ぎ、必殺技の準備を進めた。

「な、何故私の剣を見抜ける!」
「さっきからずっと、重たい風が吹いてきててね。行くぜ、俺の新技」

 リュウヤはガントレットの宝玉を雷の宝玉に取り替え、雷刀の波動で辺りに白い桜の花びらを作り出した。

「〈風雷戦々・白楼大旋風〉!」

 そう唱え、リュウヤは回転斬りで旋風を巻き起こしつつ、桜吹雪でユラを攻撃した。
 しかし、目が見えないせいか桜吹雪は暴走し、壁や地面に小さな斬り傷を作り出す。

「くっ……もはやこれまでか……」
「に、逃げろ!俺達までやられてたまるか!」
「怪我するくらいなら、俺は帰る!」

 兵士達はリュウヤの無邪気な強さに恐怖を抱き、我先にと逃げ去ってしまった。
 そして路上には、気絶したユラと部下がいい勝負をしたような表情を浮かべ、眠っていた。

「あーもう、目のゴミが……あり?」
「リュウヤ殿の必殺技に恐れをなし、皆逃げたでござる!」
「やったで!よし、ウチらもタツ姐達と合流するで!」
「何だかよくわかんねぇけど、ここはとにかく全速前進だ!ってな」

 リュウヤは頭を掻き、2人を連れて出口へと向かっていった。

「コピー使いの異世界探検記」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く