コピー使いの異世界探検記
第146話 迷惑と言う名のイタズラ
【宿屋 朝】
「「あああああああああああああ!!」」
これからガヤガヤと賑おうとして目を覚ました街に、女の悲鳴がこだまする。
「な、何事でござるか!」
危機を察知した吾郎達は、すぐさま女子部屋へと駆け込む。
すると、そこには顔を真っ赤にして下を向いたメアとおタツが待っていた。
「ど、どうしたってんだ?もしかして、目ん玉抉られた?」
「リュウヤ、アンタ偶にとんでもない事言うよな」
「んな事されたらこんな事態じゃ済まんやろ!」
あまりのパニックのしように、落ち着かない様子のリュウヤはタクマとナノのツッコミを受ける。まあ、誰かが我が妻に何かしたとなったら、誰でも最初は驚きのあまり、落ち着くのは難しいから仕方がない。
タクマはまさか本当にオニキスが何かしたんだと思い、とにかく顔を見せてと二人に頼んだ。
「……笑わない?」
「笑ったらぶつでありんすよ?」
「笑わないから、どうしたか教えて」
そう言うと、メアとおタツはゆっくりと顔を上げた。
すると、マジックでタヌキのように目の周りが黒く塗られたメアと、頬に可愛らしいクルクルマークのような物が描かれたおタツの顔が現れた。
「ぷぷっ、ハッ○リくんかよ……」
「駄目でござる。タヌキなんて言った暁には……」
パァン!パァン!
痛々しい音が、街の中に響き渡った。
………
「そうじゃなぁ、妾はこのパフェを食べたいのぅ」
「ウチはハウスケーキ、二皿」
「メアメア、タツ姉。それ以上はリューくんの財布が死ぬで」
美味しそうにスイーツを頬張る二人に、ナノは言う。
だが、二人は悪魔のような笑みを浮かべ、ナノに「これは戒めでありんすよ」と教えた。
そして、その向かい側には、片頬に赤い手形を付けた五郎とリュウヤが、まるで束縛されたかのように、大人しく座っている。
「まぁそりゃあ、ハッ○リくんなんて言っちゃあキレても仕方ないよな……」
「何も言えないリュウヤさん初めて見ました。これは5年後、尻に敷かれるタイプの優しいお父さんになりますねぇ」
ノエルは得意げにキラッと言い放つ。
そんな中タクマは、昨日オニキスから貰ったビー玉のようなものを見つめた。
どこからどう見ても、ヒスイ色をしたビー玉にしか見えない。が、あのオニキスがどんな理由であれ、わざわざ呼び出してまで渡してきたものなのだ。きっと意味はある。
「タっくん、昨日の事だけどさ……」
「昨日の事?」
「昨日の夜中、ウチの気の所為であればいいんだけど、オニキスはアナザーで間違いないんかな」
ナノは訊いた。そう言えば昨日、ナノはオニキスと対峙し、本当にアナザーなのかどうか訊いた。
まだ真偽がわからないから、現状は「疑い」でしかないが、あの反応は知らない反応だった。
「いや、違うよ。証拠はないし、全部俺の妄想だけど、オニキスはアナザーじゃないと思う」
殺してもいいが、その代わり今の俺よりも重いモノを背負う羽目になる。その言葉から察するに、オニキスは本当に人殺しはしていない。そうじゃなければ、今のオニキスよりも重い罪を背負うと言う話にはどうも繋がらない。
いや、そもそも罪に重さなんてものは関係がない。罪は罪、それで全てだ。
しかしオニキスには、何処か優しさがある。もし仮に俺達へ迷惑をかけるとすれば、地図盗みやメアへの落書きをするのではなく、普通にオーブを盗めばいい話だ。なのにそれをしない。
「タっくん、どうしたんや?」
「いや、ちょっと考え事」
そう返し、タクマはまた考察に入った。だが、特に頭が人一倍冴えている訳ではないタクマには、現状の謎を纏める能力しかなかった。
ただ、仮の答えとしては、わざと盗まず、正々堂々と力づくで奪うためあえて泳がせている説。
ただのバカ説。この二つの仮の答えが出てきた。そして、その瞬間、真面目に考えていた脳に「バカ」と言うワードが出てきた事で、タクマは吹いてしまった。
「ププッ!」
「タクマさん、思い出し笑いですか?もしかして、私の事狙ってたりします?」
「だー違う!話をややこしくしないで!」
タクマは照れながら、勝手に変態視するノエルに言った。
「いいなぁタクマ、天使に囲まれてるよ。一人男だけど」
「さーて、次はどの店で買わせてやろうかのぅ」
「ウチ、この前忍者刀に似た刀を見つけたから、それ買ってもらうつもりでありんす」
「リュ、リュウヤ殿……」
「爺……」
いまだに2人は、怒らせた彼女達の機嫌取りとして支配されている。
そして、2人はタクマの方に目を向け、助けを求めた。が、それと同時に女子からも「助けるな」と目で合図をされた。
「お、俺……急用思い出したから先行くわ……」
「ウ、ウチも行ってくるで」
「生きてたら、また会いましょう」
3人は、心の中で強くごめん!と謝り、仕方なく見捨てて行った。
──それからタクマは、ついでにと寄り道をして、昨日吾郎と見た蜘蛛仮面が消えた路地裏の壁に向かった。
「ひゃあ、ネズミ!こんな所に、本当に居るって言うんですか?」
「間違いないで。ネズミもこの壁に入り込んだ言うてる」
「問題は、何もない壁がどうしてゲートになるか、調べる方法だ」
タクマは言いつつ、レンガの壁を端から端まで触ってみた。
だが、特に何も起こらなかった。
「駄目か、ただの壁だ」
「やっぱり、見間違いだったんですよ」
「そうだったんかなぁ」
タクマは諦め、皆の所に戻ろうとした。するとその時、脳裏にオニキスの言葉が蘇った。
『それ覗いて使え』きっとこのビー玉から壁を覗けば何かが変わるのだろう。
そう信じ、タクマはヒスイ色の玉から壁を覗いてみた。
すると不思議なことに、何もなかった壁に、紫色のカーテンがかけられた不思議な入り口が現れた。
「な、何やこれ!」
「……入るぞ」
「は、入るんですか!?」
「こんな所から隠し扉が出たんだ、関係ない筈がないだろ?」
タクマは固唾を飲んで言った。正直、めちゃくちゃ怖い。
まるで遊園地の本格的なお化け屋敷にでも入る前かのような、怖い雰囲気が背筋を凍らせる。
「わ、私皆さんを呼んできます!」
そう言い、ノエルは韋駄天走りで立ち去ってしまった。
「……逃げたで」
「無理強いさせるのも悪い。俺達だけで行こう」
「「あああああああああああああ!!」」
これからガヤガヤと賑おうとして目を覚ました街に、女の悲鳴がこだまする。
「な、何事でござるか!」
危機を察知した吾郎達は、すぐさま女子部屋へと駆け込む。
すると、そこには顔を真っ赤にして下を向いたメアとおタツが待っていた。
「ど、どうしたってんだ?もしかして、目ん玉抉られた?」
「リュウヤ、アンタ偶にとんでもない事言うよな」
「んな事されたらこんな事態じゃ済まんやろ!」
あまりのパニックのしように、落ち着かない様子のリュウヤはタクマとナノのツッコミを受ける。まあ、誰かが我が妻に何かしたとなったら、誰でも最初は驚きのあまり、落ち着くのは難しいから仕方がない。
タクマはまさか本当にオニキスが何かしたんだと思い、とにかく顔を見せてと二人に頼んだ。
「……笑わない?」
「笑ったらぶつでありんすよ?」
「笑わないから、どうしたか教えて」
そう言うと、メアとおタツはゆっくりと顔を上げた。
すると、マジックでタヌキのように目の周りが黒く塗られたメアと、頬に可愛らしいクルクルマークのような物が描かれたおタツの顔が現れた。
「ぷぷっ、ハッ○リくんかよ……」
「駄目でござる。タヌキなんて言った暁には……」
パァン!パァン!
痛々しい音が、街の中に響き渡った。
………
「そうじゃなぁ、妾はこのパフェを食べたいのぅ」
「ウチはハウスケーキ、二皿」
「メアメア、タツ姉。それ以上はリューくんの財布が死ぬで」
美味しそうにスイーツを頬張る二人に、ナノは言う。
だが、二人は悪魔のような笑みを浮かべ、ナノに「これは戒めでありんすよ」と教えた。
そして、その向かい側には、片頬に赤い手形を付けた五郎とリュウヤが、まるで束縛されたかのように、大人しく座っている。
「まぁそりゃあ、ハッ○リくんなんて言っちゃあキレても仕方ないよな……」
「何も言えないリュウヤさん初めて見ました。これは5年後、尻に敷かれるタイプの優しいお父さんになりますねぇ」
ノエルは得意げにキラッと言い放つ。
そんな中タクマは、昨日オニキスから貰ったビー玉のようなものを見つめた。
どこからどう見ても、ヒスイ色をしたビー玉にしか見えない。が、あのオニキスがどんな理由であれ、わざわざ呼び出してまで渡してきたものなのだ。きっと意味はある。
「タっくん、昨日の事だけどさ……」
「昨日の事?」
「昨日の夜中、ウチの気の所為であればいいんだけど、オニキスはアナザーで間違いないんかな」
ナノは訊いた。そう言えば昨日、ナノはオニキスと対峙し、本当にアナザーなのかどうか訊いた。
まだ真偽がわからないから、現状は「疑い」でしかないが、あの反応は知らない反応だった。
「いや、違うよ。証拠はないし、全部俺の妄想だけど、オニキスはアナザーじゃないと思う」
殺してもいいが、その代わり今の俺よりも重いモノを背負う羽目になる。その言葉から察するに、オニキスは本当に人殺しはしていない。そうじゃなければ、今のオニキスよりも重い罪を背負うと言う話にはどうも繋がらない。
いや、そもそも罪に重さなんてものは関係がない。罪は罪、それで全てだ。
しかしオニキスには、何処か優しさがある。もし仮に俺達へ迷惑をかけるとすれば、地図盗みやメアへの落書きをするのではなく、普通にオーブを盗めばいい話だ。なのにそれをしない。
「タっくん、どうしたんや?」
「いや、ちょっと考え事」
そう返し、タクマはまた考察に入った。だが、特に頭が人一倍冴えている訳ではないタクマには、現状の謎を纏める能力しかなかった。
ただ、仮の答えとしては、わざと盗まず、正々堂々と力づくで奪うためあえて泳がせている説。
ただのバカ説。この二つの仮の答えが出てきた。そして、その瞬間、真面目に考えていた脳に「バカ」と言うワードが出てきた事で、タクマは吹いてしまった。
「ププッ!」
「タクマさん、思い出し笑いですか?もしかして、私の事狙ってたりします?」
「だー違う!話をややこしくしないで!」
タクマは照れながら、勝手に変態視するノエルに言った。
「いいなぁタクマ、天使に囲まれてるよ。一人男だけど」
「さーて、次はどの店で買わせてやろうかのぅ」
「ウチ、この前忍者刀に似た刀を見つけたから、それ買ってもらうつもりでありんす」
「リュ、リュウヤ殿……」
「爺……」
いまだに2人は、怒らせた彼女達の機嫌取りとして支配されている。
そして、2人はタクマの方に目を向け、助けを求めた。が、それと同時に女子からも「助けるな」と目で合図をされた。
「お、俺……急用思い出したから先行くわ……」
「ウ、ウチも行ってくるで」
「生きてたら、また会いましょう」
3人は、心の中で強くごめん!と謝り、仕方なく見捨てて行った。
──それからタクマは、ついでにと寄り道をして、昨日吾郎と見た蜘蛛仮面が消えた路地裏の壁に向かった。
「ひゃあ、ネズミ!こんな所に、本当に居るって言うんですか?」
「間違いないで。ネズミもこの壁に入り込んだ言うてる」
「問題は、何もない壁がどうしてゲートになるか、調べる方法だ」
タクマは言いつつ、レンガの壁を端から端まで触ってみた。
だが、特に何も起こらなかった。
「駄目か、ただの壁だ」
「やっぱり、見間違いだったんですよ」
「そうだったんかなぁ」
タクマは諦め、皆の所に戻ろうとした。するとその時、脳裏にオニキスの言葉が蘇った。
『それ覗いて使え』きっとこのビー玉から壁を覗けば何かが変わるのだろう。
そう信じ、タクマはヒスイ色の玉から壁を覗いてみた。
すると不思議なことに、何もなかった壁に、紫色のカーテンがかけられた不思議な入り口が現れた。
「な、何やこれ!」
「……入るぞ」
「は、入るんですか!?」
「こんな所から隠し扉が出たんだ、関係ない筈がないだろ?」
タクマは固唾を飲んで言った。正直、めちゃくちゃ怖い。
まるで遊園地の本格的なお化け屋敷にでも入る前かのような、怖い雰囲気が背筋を凍らせる。
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