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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第144話 仮面と劇場の謎

【会談室】
「恋の魔術師か、確か我が国、メルサバで噂になっている話だな」
「そうじゃ。それでワンダ国王、この顔に見覚えは?」
「メアちゃん、それは?」

 メアは、デンジから受け取ったメモ帳をワンダ国王とリオに見せ、訊いた。
 するとワンダとリオは、その仮面の男を見るなり、あーーー!と大声を出した。

「な、何の騒ぎでござるか!?」

 悲鳴を聞きつけた吾郎は、会議室に突入するなりそう叫んだ。

「吾郎爺、アンタ一体何処ほっつき歩いてたんだ」
「……リュウヤ、察してくれ」

 どうしても言わせたくないタクマは、小声で上半身裸の吾郎について話した。
 
「知っている!知っているぞ!」
「な、それは本当でありんすか?」
「この仮面、私の爺ちゃんもとい、先代国王がまだ現役バリバリだった頃、メルシー大劇場の演目で使われた仮面よ」
「めるしー、だいげきじょう?」

 聞き慣れない響きに、ノエルは首を傾げる。するとワンダ国王は、ほらあそこと、嘴の長い鳥のような仮面を付けた婦人の絵を見るよう指を差した。
 その額縁の右下には「ナイトメア・ラスト」と、小さく彫られている。

「かつてこの国には、メルシー歌劇団と言う、仮面を付けたメルサバ一の劇団が居た。私も幼き頃、先代と良く見に行ったものだ」

 ワンダ国王は、その頃の事を、懐かしむように話す。

「大迫力のミュージカル!笑いあり、涙ありのグッと来るストーリー!特に一番心に残っているのは、W氏著の悲恋小説を基に作られた『ナイトメア・ラスト』!あの絵は恋煩いの美しき婦人を描いた絵なのだ!そして、この蜘蛛の仮面は、その劇で使われた“色欲の仮面”!」
「……成る程、そこまですげぇ劇だってんなら、俺も見に行きてぇな」
「じゃあウチ、次そこ行く!」

 スイッチが入りベラベラと喋る中、リュウヤとナノはその熱量に惹かれ、二人で一緒に行こう!と約束する。
 しかし、それを聞いていたリオは、それは無理な話だ、と首を横に振った。更に、メアも「お主らそうか、知らないんじゃったな」と言った。

「無理な話……?もしかして、王様しか見れないとか?」
「いやしかし、宴物は平民でも娯楽として楽しむ権利はある。流石にそれはないかと思うでござる」
「それが、その大劇場はもうないのだよ」

 ワンダ国王は、悲しそうに答えた。
 それを聞き、タクマ達は目を丸くした。

「そんなまさか、引退とかでありんすか?」
「違う。30年前、メルサバを襲った大地震で、準備中の劇団員全員纏めて、大劇場ごと……潰れてしまったのよ」
「今もその地震の事は『メルサバの悲劇』として、今も尚語り継がれておるのじゃ」
「そんな……」
「惨い結末でござるな……」

 全く知らなかったリュウヤは、悪い事を言ったと、しゅんとしてしまう。
 が、すぐにリオは「知らなかったからと言って、全てあなたが悪いとは限らないわ」と慰めた。

「大劇場跡は今、祈念公園として、かつて控室だった場所には墓と碑が建てられている。のだが……」
「のだが?」
「この仮面は旧文明時代の遺物を加工して造られた唯一無二の仮面。レプリカは技術的に無理な為、一つも作られていない。更に、それらは全て、埋葬する際に遺品として全て埋めた筈だ」

 ゆっくりと話を聞いていたタクマは、不可解な矛盾点に耳を疑った。
 何故埋められた筈の遺品である蜘蛛の仮面、もとい色欲の仮面を魔術師は付けていたのか。レプリカが無いとすれば、墓を荒らして手に入れたに違いない。
 そう思ったタクマは、あの……と手を挙げようとした。
 だがその時、ナノがタクマより先に「墓掘り起こさない限り無理やろ」とツッコんだ。

「そうでござるな。土の中の物を手に入れるには、掘る以外方法はない」
「なのに何故、この人は仮面を付けているんでしょうか」

 ノエルは、蜘蛛仮面の絵を見て、猫耳をパタパタさせる。

「私にも分からない。ただ言えるのは、墓荒らしの形跡がないため、その説ではないと言う事だけだ」
「えっ!?けど、それ以外に方法は……」

 リュウヤは訊こうとした。だが、訊いても意味はないと、途中で言うのをやめた。
 すると、ワンダ国王は「確かに、嘘だと思うのも無理はない」と言った。

「案内するわ。ついてきて」


【メルサバ 大劇場跡 悲劇の碑】
「コレがその、祈念碑でござるか」
「本当だ、荒らされてる形跡がない」

 リュウヤは、墓と言われた場所を隈なく探し、そう言った。となれば、一体何故埋められた仮面を被っていたのか、謎は深まるばかりである。
 
「じゃあ一体、誰が何のためにやってると言うのですか?」
「さぁ、ウチらは探偵と言う訳ではないから、てんで分からないでありんす」
「そう言やおタツ、ナノナノは何処行ったのじゃ?」

 もう一方の方でも捜索活動を行なっていたメアは訊く。するとどこからともなく「おーい!皆、こっちやで〜!」と声が聞こえてきた。
 見上げると、公園の大木の上に、ウキウキで手を振るナノの姿があった。

「ナノナノいつの間に登ったの!」

 タクマは言う。
 するとナノは、大きな枝の上でおやつ(どんぐり)を取り出し、ポップコーンを食べるように頬張った。
 
「ナノナノ、落ちたら折角のお洋服汚れるでありんすよ!」
「大丈夫大丈夫、ウチは木登り得意だから落ちる心配はないで」

 ナノは余裕ぶり、空高くにどんぐりを投げた。しかし、口の中に入らず、ナノは勢い余って落ちてしまった。
 
「ナノ殿!」
「あ〜れ〜」

 するとその時、タクマは何も言わず、木の下に寝転び、ナノのクッションとなった。
 ただ運悪く、ナノの肘が大変な場所に当たり、泡を吹いて倒れかけてしまった。

「た、タクマ!大丈夫か!?」
「な、何とか……ん?」

 心配して声をかけたリュウヤに、タクマは涙目になりながら答える。それと同時に、逆さまになった道の上で、三毛猫がこちらに近付いてくるのが見えた。

「あれ?猫?」
「おやまぁこれは可愛らしい三毛でありんすな」

 立派なωの付いた猫は、タクマの目の前にぺっと、予告状のような黒いカードを吐き捨て、あざとくおタツの太ももに顔をすりつけた。
 するとナノは、タクマから降り、猫に向かってニャーと鳴き始めた。

「ナノナノ、何してんの?」

 リュウヤは訊く。
 するとナノは「『美しいお姉様、お名前なんてーの』だってさ」と、猫語を翻訳して伝えた。

「ナノナノ、分かるんですか?」
「当たり前や!ウチや獣人族、猫の言葉も犬の言葉もちゃーんと分かるで」
「にゃるほど、これは凄い特技じゃな。よーしよしよし、タツ姐も良いけど、メアお姉ちゃんにも甘えて良いのじゃよ〜」

 そう言うと、猫は鳴いた。そして、ナノが「『フローラルシャンプーの香りがする〜、好き〜』だと」と翻訳した。
 その間、タクマは黒いカードに目を通す。

「何々?夜中の1時、宿屋横の路地裏で面白い物をくれてやる。タクマ一人で来い」
「もし誰かを連れてきた場合は、タヌキ娘とトカゲ娘に迷惑をか……」

 吾郎は追伸部分を読もうとした。だが、タヌキ、トカゲと呼んだ瞬間、苦無と投げナイフが吾郎を襲った。

「吾郎爺ー!!」

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