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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第140話 ぶっ飛び家族との再会

「あーらリオちゃん、おかえり〜!」
「ちょ、お母さんやめて……客来てるから……」

 クルクル髪でいかにも貴族と言うようなドレスを身に纏った王妃は、リオに抱きつく。
 それを隣の玉座に座るメルサバ王は、微笑ましく見守る。

「それで、一体どこに行ってたんだい?」
「アコンダリアの観戦」
「いや〜、第二回戦で惜しくも敗退してしまいましたぁ!ハッハッハ!」
「あらまぁフラッシュ、それは残念だったわねぇ」

 メルサバ王達は、客人が来ている事に気付かず、とんでもない親バカを披露する。
 メアは何度か「あのー」と声を掛けてみるが、なかなか見向きもしてくれない。

「あのー、お久しぶりです。ワンダ国王陛下」
「にしても聞いたよ、アコンダリア武闘会でタクマと言う少年が勝ったんだってな。我が親友アルゴ王も喜んで手紙まで寄越してきたよ」
「あらまぁ、あのアルゴ王が?」

 やはり聞こえていなかった。
 すると、親バカ祭りで嫌気をさしたリオが、大声で「メアちゃんが来てるのーーー!」と叫んだ。
 辺りは、初めて叫び声を聞いた兵士達を含め、静まり返る。
 そして、数秒静まり返った後、国王は「えええええええ!?!?」と驚いた。

「お久しぶりじゃ。ワンダ国王、ウルク王妃」
「あらまぁ、あなたがメアちゃん?見ない間に大きくなったわねぇ」
「王の話だと引き篭もりはやめて旅に出たと聞いたが、まさかここに足を運んでくれるとは!この喜び、今すぐ奴に手紙を出すしかなぁい!」

 メアが来国したと気付いたメルサバ王、もといワンダ国王は、いそいそと国王の部屋へと行ってしまった。
 そして、ウルク王妃は、人懐っこい犬のように、メアの事を可愛がった。更には、腕を掴み「私のお下がりドレス似合うと思うの!」と言い出し、王妃の部屋へと連れて行ってしまった。

「……もう、バカ親」


 ……一方その頃、リュウヤ達はと言うと。

「はぁ〜、美味しかった。満腹やで」
「だなぁ。特にピンクの生地を作るためにイチゴを使うって点、流石洋菓子って感じだぜ」
「けど、毎日食べてたら太るでありんすよ……」
「大丈夫です!その分クエストで運動すれば、この美しく艶かしいボデーもキープできますっ!」

 おタツは、腹をさする。そんなおタツに、ノエルは見せつけるかのように、出来上がった素晴らしい腰のくびれを見せる。
 それに腹を立てたのか、おタツは笑顔でノエルの鳩尾に拳をぐりぐりした。
 リュウヤ達はカフェでの寛ぎを終え、タクマとは別にオーブ探索を始めた。
 勿論、タクマから合言葉「恋する乙女に花束を」は聞いている。

「にしても、一般人に紛れてる訳だろ?違ったらただの迷惑行為だし、困ったもんだなぁ」
「けど、目撃情報がホンマなら、会った人が居るって事や!」

 そう言うとナノは、ポケットから木の葉を取り出し、それを使ってドロンと姿を変えた。
 その姿は、ナノをそのまま大人にしたような姿だった。

「ナノナノ、その姿は何ですか?」
「何って、ウチの成長した姿や!見やがれ、ウチの美貌を!」
「あらまぁ、ウチに似てべっぴんでありんす」

 おタツはクスクスと鈴のように笑い、ナノの隣に立つ。こうして見ると、双子か親子のように見えなくもない。
 そして、こっそりと街の様子を伺った。

「特に変わった事はないな……」
「本当に居るんですかねぇ、恋の魔術師」
「居る筈や!絶対居る!」

 存在を疑いつつあるリュウヤとノエルに、ナノは熱く語る。とは言え、うん万と居る国民の中から恋の魔術師だけを探すのは至難の業。
 目印さえ有れば探し易いのだが、ノーヒントで見つけろと言うのはもっと難しい。

「街の人に訊くの、どうでありんすか?」
「そうするしかねぇな。とすると、恋焦がれる女の子辺りを回ってみるか!」
「そうですね!私、あっちの方に居る子に話を聞いてきます!」
「頼んだで〜ノエちん!」


 その頃、タクマ達も、リュウヤと同じ発想で、女子を中心に魔術師の情報を探っていた。
 しかし、返ってくる言葉は「知らない」だ「噂は噂よ」だと、全く繋がるものは見つからなかった。

「駄目だ。ブレイクさん時みたく本人が教えてくれる訳でもないから尻尾すら見えない」
「まあまあ。ここは一つ、くっきーなるものを食べて元気を溜めるでござるよ」
「吾郎爺、いつの間にソレ買ったの……」

 まだ食べるのかと思いつつも、タクマは吾郎が手に持つクッキーを一枚貰い、景気付けに食べた。
 焦がしたビターなチョコの味が強い、サクサクのクッキーだ。無言主人公の感想みたいな一言が思い浮かぶ。
 
「けど、占い師って事は、何処かに占いの店みたいなの構えてる訳だよな」
「しかし、どこを見てもそんなものは……」
「だよなぁ、流石にないよなぁ」

 タクマは諦めそうになったが、すぐにその気は失せた。
 何故なら、そこで1人の女性が、仮面をつけた怪しい人物に連れて行かれている場面を目撃したからである。
 ただ、その女性は、誘拐されている訳ではなく、自分の意思で歩いていた。

「吾郎爺、アレ」
「うむ、後をつけるでござる」

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