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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第122話 知ってた。強欲親父の野望

「……はい、すみませんでした。全部ラウムに頼んで、オーブも賞金も我が物にするつもりでした。」
「私が相手選手に後で100億あげると言う条件のもと、負けてもらいました」

 観念したラウムは、正座した状態で真実を伝えた。それにタクマとリュウヤは「やっぱりな」と呆れた。
 ただ、チェイスはと言うと、もう完全に壊れてしまったのか、ただただメアとノエルに屈服させられたのか、ノエルの椅子と化していた。

「こらノエル。流石にもういいでしょ。可哀想」
「いいえダメです。ちゃんとお金の出所とか誰からオーブを貰ったのか、全部聞かないと!」
「そうじゃそうじゃ。何たって500億ゼルンじゃぞ?国家資産の三分の一とはいえ結構な大金をこんな胡散臭い親父が持ってるとは思えん」

 メアも、うんうんと頷いてノエルの話に乗る。おタツさんはまぁリュウヤへの独占力が強いってだけだが、どうしてウチの女子陣うち1人男子はこうも過激なのしか居ないのだろうか。
 にしても、500億が国家資産の三分の一と言う事実に驚いた。1ゼルンが日本円で何円かは分からないが、数字から見るにとんでもない額なのは確かだ。それを一体どのような形で手に入れたのだろうか。

「実は、金のオーブを貰った際、金が欲しいとオーブに祈ったんです。そしてら凄いんですよコレが、金が、国家資産レベルの金がポンと現れたんです!」
「おかしな話かもしれませんが、他にも私が欲しがっていた化粧品やら服やらも、祈っただけでポンポン出てきたんです!」

 親子揃って、御伽噺まがいの事を叫ぶように話す。その目は、欲望に溺れたヤバイ人の目をしていた。
 持つ者が欲しいと思ったものを、できる限りポンと用意する能力。それが黄色のオーブ、もとい強欲の罪源が持つ力と言うのだろうか。

「とどのつまり、そんな大金製造機を奪われたくないから、女戦士でもある娘さん使って出来レースで我が物にしたかった。そう言う事か?」
「はい。全くもってその通りです。」

 完全に萎えきったチェイスは、大人しく伝えた。さっきまで狂ったかのようにオーブの素晴らしさに呑まれていたと言うのに、情緒不安定か。
 とは思いつつも、タクマはそんな2人に対し、「とにかく、アレは危険なものなんです」と言う。

「危険?一体何が危険だと?」
「あのオーブには、罪源の仮面なる魔物が封印されているでござる。そして、金のオーブは、その罪源の中の強欲、つまり人間の欲望を糧として復活しようとしているでござる」
「ですから、あなた達がお金を欲した事も、カジノ客達が金の為に賭け事をするのも、ビーチで男が女をナンパするのも、全部アレに餌を与えていた事になるんです。」
「そんな……じゃあ私たちは、そんな危険な存在を生まれさせる為に……」

 罪源の仮面、それがどれほどの物なのかは分からないが、吾郎やノエル、その他4人の顔を見て、とんでもない存在である事を察したラウムは、ショック顔になった。
 その様子に同情したメアは、ラウムの背中をさすって慰める。

「分かりました。あなた方のお陰で、私たちの間違いに気付く事ができました。ですが、景品をここで渡す訳には行きません」
「えぇ。ウチとリュウヤ、そしてタクマさんの3人が既に準決勝まで勝ち進んでいるとはいえ、流石にそんなズルはできないでありんす」
「だから、約束してください。優勝者に、必ず約束通りの賞品を渡すと」
「あぁ、約束しよう。」
「パパ上?」
「は、はい!約束します!」

 娘に睨まれたチェイスは、ビクッと驚き、言葉を訂正した。
 タクマはそんな仲の良さそうな親子を見て、クスクスと笑う。やっぱり、間違った人だとしても、優しくて面白い人は面白いままなんだ、と。
 しかし、まだ何かが引っかかる。そう考えていると、メアが顎を撫でながら「そのオーブ、誰からもらった?」と訊いた。

「名前は名乗っていなかったのですが、黒い鎧を纏った男が、今年は特別な式典にしたいと、提供してくださった」
「鎧の男?ですけど、女騎士さんが男の鎧を着る事もあるのに、どうして男だと?」
「声はなんか、言葉では言い表しにくいけど、普通の人間とは何か違う声だった。しかし、あの声は男のものだった。私の耳はまだ健在、間違える筈がない」

 鎧の男、そう聞いてタクマは目を丸くした。あの時、大和で見た夢。ただの鎧のおじさんと名乗っていた、α。アイツなのかもしれない。
 
「タクマ、何か手がかりがあるのか?」

 メアが訊く。タクマは、違ったらごめんと先に謝った後に、「α。アルファ・オブ・ジーメンス。異文明的な鎧なら、多分」と答えた。
 それを聞き、今度はリュウヤが目を丸くする。

「えぇ、言われてみれば、あの鎧はどの書物にも載ってないものでした。造りもアコンダリア国で使用されている鎧とは違う。全くの別物でした。」
「となると、もしかしたらタクマが夢で見たソレ、あながち間違いじゃないんじゃね?」

 リュウヤは顎に手を当てて考え、鎧の男の姿を思い描く。
 するとそんな時、アナウンスが鳴り出した。そろそろ始まる午後の準決勝を始めるアナウンスだ。
 
「それでは、私は明日の準備もありますので。ノエちん、どいてくれません?」
「ノエル殿、ほら。もう良いでござろう?」

 吾郎に手を取られ、ノエルはちぇっ、と何処か不満げな顔を見せて立ち上がる。
 そして最後に、おタツが「逃げたらどうなるか、分かってるでありんすな?」と釘を刺してから、外へ出ようとした。ただその時、リュウヤだけ、ラウムに引き留められた。

「何?」
「オニキスには気を付けろ。アイツは、悪魔だ」
「悪魔……?よく分からんけど、アドバイスサンキューな。」

 そう言い残し、リュウヤは急いで戦場の方へと向かっていった。


………一方その頃、カジノ裏では。

「や、やめてくれ!まだ死にたく……な……い……」
「私が生きる為の栄養になるんだから、いいじゃないの〜」

 バニーガール姿のアルルは、カジノでボロ負けした男の性気を吸い取り、ミイラのような状態にする。
 その様子を見て、Zはにやけながらワインを飲む。

「やはり、人間が絶望して死に行く様は、なんとも素晴らしイ。ワインのつまみにピッタリでス」
「もぅZお兄ちゃんったら。私の食事なんか見て何が楽しいの?」
「人と言うのはね、どれ程傲慢でも、命を奪われそうになると泣いて媚びるのが大半なのでス。だから私は、そう言った傲慢なゲス共が、地獄に落ちる事を必死で拒みながら死んでいく様を見るのが、大好きなのですヨ!」

 Zは、玉座のような椅子から降り、ワイングラスを片手に不気味で狡猾な笑い声を発する。
 すると、そこにダーツの矢が飛んで来て、Zのグラスを割る。
 そして更に、凄まじい覇気が背中を撫でた。

「はっ、α様!」
『こらこら、君の価値観は非常に素晴らしいとは思っているが、あまり大声を出してはいけないよ。ここは私がカジノ前の壁に作った、特設の強欲蓄積部屋だ。声が漏れて見つかってしまえば、面倒なことになってしまう』
「も、申し訳ございません……」

 Zは、昂りすぎた自分に反省し、素手でワイングラスの欠片を拾う。すると、ワインを失ったことに何らかの思いを持ったZを見て、暗闇のゲートから取り出したワインを、Zに与えた。

『いよいよ、明日が決勝戦か』
「あ、そっか!明日がオニキス君の晴れ舞台なんだよね!たっのしみ〜!」
『いいや、まだ分からないぞ?アルル。リュウヤ、彼は何か面白そうな秘密が隠されている』

 はしゃぐアルルを宥めるように、αは優しい機械音声の声で言う。それを聞いて、アルルは「じゃ、私準決勝見てくるね〜!」と、長いピンク髪で白いワンピースを着た少女に変身し、黒い壁の中へと消えていった。
 Zは、受け取ったワインを新たなワイングラスに注ぎ、カジノでボロ負けし、何処かへ連れて行かれる男の様子を伺う。

『ところで、その黄のオーブは、どれくらい溜まったんだい?』
「ビーチのナンパ等も含めれば、もう完全にお腹いっぱい。いや、もう彼に渡した時点でお腹いっぱいのようでしタ。ですが、まだ復活しようとはしませン」
『そうか。とどのつまり、チェイス君の欲が最上級の餌となったものの、この子は彼を認めなかったと』
「全く、コレではアコンダリア破壊計画が……」

 Zはぼやく。しかしαは、『いや待て』とZに言った。

『この子は強欲。それ故、本当に欲しいもの以外興味がない。なら、彼が認めた欲しい人材を得るまで待とうではないか。それに、このアコンダリアには、まだ利用価値がある。特に、あの子の餌集めには丁度いい』
「左様でございますか、なら私は暫くアコンダリアで休みまス」
『あぁ。君の好きなようにしたまえ』

 そう言い、αはまた何処かへと消えた。
 それから数分、ついに準決勝が幕を開けようとしていた。

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