コピー使いの異世界探検記
第108話 観光!路地裏の死神
それからタクマ達は、リュウヤとサレオスの戦いが始まる夕焼け時まで、アコンダリアの観光を楽しんでいた。その間、リュウヤは控え室で待機していた。
今思えば、ノエル連れ去りだの、いきなりの武闘会参戦だのと色々あったが、よく見れば、ここアコンダリアには沢山の店が並んでいる。
パン屋に黒服から情報を聞き出したカフェ、防具となる服屋に武器屋だってある。メアとノエル、おタツの女子陣(うち一人男子)は大はしゃぎしていた。
行った事はないが、何処かイタリアを彷彿とさせる世界だ。と呟きたかったが、ここで話すと少々面倒になるため、タクマはあえて心の中にしまっておいた。
「うわ〜、いい香りがするでありんすね」
「この匂いは、焼き立てパンの匂いですね」
「リュウヤの寿司食ったばかりだけど、おやつに幾つか買っとくか」
タクマはお腹を摩りながら、後ろに居る四人に言い、パン屋に入っていった。カランカラン、とドアチャイムが鳴る。
するとその瞬間、辺りに美味しいパンの香りが漂った。美味しそう、なんて感じではなく、食べる前から「美味しい」と思える香り。メアはその香りを嗅いだ瞬間、餌を差し出された狸のように目をキラキラと輝かせた。
「タクマタクマ、クロワッサン、これを買うのじゃ!」
「痛い、分かったから背中を強く叩かんで」
タクマはメアに叩かれて小さくなりながらも、財布を取り出し、カウンターに立っていた店員に1200ゼルンを渡した。
クロワッサン一個200ゼルン。それを、6人分買った。
「ありがとうございましたー!」
「あーむ!うーん、この外はカリッと中はフワフワ!そしてこの微かにやってくるミルクの味!これがアコンダリアの名物パンか……」
店を出たメアは、早速そのクロワッサンを食べ、美味しそうにその味を語った。
おタツもノエルも、早速食べている。
「気に入ったようでござるな」
「ノブナガ様の所帰る時、お土産に買ってく?吾郎爺」
「うむ。この味は甘党がひっくり返る味でござるからな」
吾郎はクロワッサンをちぎって食べながら言う。
まだ時間もあるし、控え室に渡しに行こう、そう思いながら歩いていた時だった。
ゴン、と黒フードの男の肩がぶつかった。そして、男はレモンを落としかけた。
「おっと」
「す、すみません!」
ヤンキーとかだったら殴られかねない。心の底に残っているトラウマからか、タクマは率先して頭を下げた。
しかし、フードの男は怒る様子もなく、「悪い」と、少し愛想の悪い返事をしてパン屋に入っていった。
「なんじゃアイツ、タクマがあんだけ謝ったと言うのに悪い。で終わりとは」
「まぁまぁまぁ、俺は嫌な思いしてないから、気にしてないから」
タクマはそう宥め、タクマ達はリュウヤの待つ闘技場へと戻ろうとしたその時だった。
「あれ?これ何でありんしょう」
「何だこれ、黒い袋だな……」
謎の黒い袋を見つけたおタツは、それを拾い上げる。中に何か入っている。硬さからして、石のようだ。
「見たところ、お守りのように見えるでござるが……」
「だったら開けちゃダメですね。お守りは、開けちゃったら神様のご利益が逃げてっちゃうって言いますし」
「じゃあ、コイツは俺が預かっとく。」
タクマは、おタツからお守りを受け取り、それを厳重に鞄の中に入れた。
そして、改めて闘技場へと帰っていった。
………
「親父、クロワッサン一個よこせ」
「はいよ!クロワッサン一つね!」
タクマとすれ違った男は、お代を出し、店員からクロワッサンを受け取った。
そう、そのフードの男と言うのは、オニキスなのである。あのタヌキ娘が、餌を目の前に出された動物みたいに目を輝かせていて食べていたのだ。どんなもんか食ってやろう、と言う事で買った。
「ありがとうございましたー!」
「……買ったはいいが、まずはこっちを食わねぇと」
パンの入った袋を片手に、オニキスは皮ごとレモンにかじりついた。
とその時、どこかで誰かが揉めているような声が聞こえてきた。裏路地から聞こえる。場所を特定したオニキスは、レモンをゴクリと飲み込んでから、その様子を見に行った。
「なぁ。今年の武闘会絶対おかしいって」
「だよな。まさかオニキスが出てくるとは。それもこの辺で名の知れてるカイムさんの攻撃を食らってもピンピンしてて、それでいて一発で沈めちまったんだぞ?」
「これじゃあ、ドン会長の計画が台無しになっちまうぞ!」
休憩を取っていたのだろうか、3人の黒服の男達がそんな話をしていた。
計画だ何だと言っているが、確かに主催者のドン・チェイスだかチェイサーだかって言うデブ男は胡散臭かった。やっぱり、この武闘会には何か裏があるらしい。
とにかく、自分の力でその計画が無茶苦茶になる、と言うのであれば気にしなくていいな。そう思った時だった。
「にしてもドン会長、匿名の協力者から賞品の金水晶を貰ってから何かおかしくなったよな」
「いやいやいや、ドン会長は昔っからあんな感じだぜ?欲しいモンは全部手に入れるってな」
「いやいや、いつもならあんな事言わないのに、今回は……」
「やめとけ。初めっからあんなのは誰の物にもなりゃしねぇっての」
「ですけど、それ以前に昨日の戦いみたんですか?バルバッド選手、魔物だったんですぜ?絶対おかしいって」
匿名の協力者、それつまりα。確かに、アイツは常時静かにふざけている奴だが、何をしたいのかよく分からない野望の為には手段を選ばないような残酷性があるように見える。それにバルバッド。やっぱり、チェイスだけでなく、αまで裏で何かを送り込んでいるのかもしれない。
しかし、これ以上は収穫しても美味しそうな情報は無さそうだ。そう感じたオニキスは、チェイスの計画がどんな物か、少し興味を持ちながらもその場を後にしようとした。
「……気になるが、俺がぶっ潰すまで」
「ニャ〜ン」
だが、不幸にも野良猫がオニキスの足に顔を擦り付け、懐いてしまった。
すると、その鳴き声を聞いた黒服達が、「誰だ!」と叫び、じりじりとこちらに歩いて来た。逃げた所で、ほぼ近くである以上無意味となる。
そう思ったオニキスは、観念して現れ、とりあえず右手を出した。
「だ、誰だお前は!」
「……黙れ。」
するとその時、右手から発せられた何かによって、一瞬だけ時空が歪んだ。目の前に立つ3人の黒服が、曲げても戻るゴムのおもちゃのように歪む。
そして、黒服達はその見慣れない力にねじ伏せられ、苦しそうに倒れ、ヒューヒューと恐怖で怯える人間のような音の聞こえる呼吸をし出した。
「念の為ってのもある。おいグラサン野郎、お前らの言うドン会長って奴がこの大会に仕込んだ事、全部吐いてもらおうか」
「わ……分かりました……だから……命だけは……」
オニキスが黒服の一人の胸ぐらを掴むと、男は呆気なく命乞いをした。その無様な様子を見て、オニキスはため息をつき、口をニヤつかせた。
「滑稽だな。まあ、それはそれとして、さっさと教えろ」
「は、はいぃ……!」
そう言うと男は、オニキスにチェイスが大会の裏で仕組んでいた計画の全てを話した。
すると、オニキスはその話を聞き「ほぉ……」と、不気味な笑みを浮かべた。
「これは面白い収穫をした。サンキューな」
オニキスは、面白い収穫ができた事に喜び、男の腹に拳をたたき込んだ。それにより、男は失神してしまった。
そして、オニキスは運悪く現れた猫を抱き抱え、顎を撫でた。猫は、動物の扱い方に慣れている撫でに満足し、あざとくゴロゴロ〜と喉を鳴らした。
「俺がその計画をぶっ潰した時、アイツがどんな顔するか、どう焦るのか楽しみだ」
今思えば、ノエル連れ去りだの、いきなりの武闘会参戦だのと色々あったが、よく見れば、ここアコンダリアには沢山の店が並んでいる。
パン屋に黒服から情報を聞き出したカフェ、防具となる服屋に武器屋だってある。メアとノエル、おタツの女子陣(うち一人男子)は大はしゃぎしていた。
行った事はないが、何処かイタリアを彷彿とさせる世界だ。と呟きたかったが、ここで話すと少々面倒になるため、タクマはあえて心の中にしまっておいた。
「うわ〜、いい香りがするでありんすね」
「この匂いは、焼き立てパンの匂いですね」
「リュウヤの寿司食ったばかりだけど、おやつに幾つか買っとくか」
タクマはお腹を摩りながら、後ろに居る四人に言い、パン屋に入っていった。カランカラン、とドアチャイムが鳴る。
するとその瞬間、辺りに美味しいパンの香りが漂った。美味しそう、なんて感じではなく、食べる前から「美味しい」と思える香り。メアはその香りを嗅いだ瞬間、餌を差し出された狸のように目をキラキラと輝かせた。
「タクマタクマ、クロワッサン、これを買うのじゃ!」
「痛い、分かったから背中を強く叩かんで」
タクマはメアに叩かれて小さくなりながらも、財布を取り出し、カウンターに立っていた店員に1200ゼルンを渡した。
クロワッサン一個200ゼルン。それを、6人分買った。
「ありがとうございましたー!」
「あーむ!うーん、この外はカリッと中はフワフワ!そしてこの微かにやってくるミルクの味!これがアコンダリアの名物パンか……」
店を出たメアは、早速そのクロワッサンを食べ、美味しそうにその味を語った。
おタツもノエルも、早速食べている。
「気に入ったようでござるな」
「ノブナガ様の所帰る時、お土産に買ってく?吾郎爺」
「うむ。この味は甘党がひっくり返る味でござるからな」
吾郎はクロワッサンをちぎって食べながら言う。
まだ時間もあるし、控え室に渡しに行こう、そう思いながら歩いていた時だった。
ゴン、と黒フードの男の肩がぶつかった。そして、男はレモンを落としかけた。
「おっと」
「す、すみません!」
ヤンキーとかだったら殴られかねない。心の底に残っているトラウマからか、タクマは率先して頭を下げた。
しかし、フードの男は怒る様子もなく、「悪い」と、少し愛想の悪い返事をしてパン屋に入っていった。
「なんじゃアイツ、タクマがあんだけ謝ったと言うのに悪い。で終わりとは」
「まぁまぁまぁ、俺は嫌な思いしてないから、気にしてないから」
タクマはそう宥め、タクマ達はリュウヤの待つ闘技場へと戻ろうとしたその時だった。
「あれ?これ何でありんしょう」
「何だこれ、黒い袋だな……」
謎の黒い袋を見つけたおタツは、それを拾い上げる。中に何か入っている。硬さからして、石のようだ。
「見たところ、お守りのように見えるでござるが……」
「だったら開けちゃダメですね。お守りは、開けちゃったら神様のご利益が逃げてっちゃうって言いますし」
「じゃあ、コイツは俺が預かっとく。」
タクマは、おタツからお守りを受け取り、それを厳重に鞄の中に入れた。
そして、改めて闘技場へと帰っていった。
………
「親父、クロワッサン一個よこせ」
「はいよ!クロワッサン一つね!」
タクマとすれ違った男は、お代を出し、店員からクロワッサンを受け取った。
そう、そのフードの男と言うのは、オニキスなのである。あのタヌキ娘が、餌を目の前に出された動物みたいに目を輝かせていて食べていたのだ。どんなもんか食ってやろう、と言う事で買った。
「ありがとうございましたー!」
「……買ったはいいが、まずはこっちを食わねぇと」
パンの入った袋を片手に、オニキスは皮ごとレモンにかじりついた。
とその時、どこかで誰かが揉めているような声が聞こえてきた。裏路地から聞こえる。場所を特定したオニキスは、レモンをゴクリと飲み込んでから、その様子を見に行った。
「なぁ。今年の武闘会絶対おかしいって」
「だよな。まさかオニキスが出てくるとは。それもこの辺で名の知れてるカイムさんの攻撃を食らってもピンピンしてて、それでいて一発で沈めちまったんだぞ?」
「これじゃあ、ドン会長の計画が台無しになっちまうぞ!」
休憩を取っていたのだろうか、3人の黒服の男達がそんな話をしていた。
計画だ何だと言っているが、確かに主催者のドン・チェイスだかチェイサーだかって言うデブ男は胡散臭かった。やっぱり、この武闘会には何か裏があるらしい。
とにかく、自分の力でその計画が無茶苦茶になる、と言うのであれば気にしなくていいな。そう思った時だった。
「にしてもドン会長、匿名の協力者から賞品の金水晶を貰ってから何かおかしくなったよな」
「いやいやいや、ドン会長は昔っからあんな感じだぜ?欲しいモンは全部手に入れるってな」
「いやいや、いつもならあんな事言わないのに、今回は……」
「やめとけ。初めっからあんなのは誰の物にもなりゃしねぇっての」
「ですけど、それ以前に昨日の戦いみたんですか?バルバッド選手、魔物だったんですぜ?絶対おかしいって」
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しかし、これ以上は収穫しても美味しそうな情報は無さそうだ。そう感じたオニキスは、チェイスの計画がどんな物か、少し興味を持ちながらもその場を後にしようとした。
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「ニャ〜ン」
だが、不幸にも野良猫がオニキスの足に顔を擦り付け、懐いてしまった。
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そして、黒服達はその見慣れない力にねじ伏せられ、苦しそうに倒れ、ヒューヒューと恐怖で怯える人間のような音の聞こえる呼吸をし出した。
「念の為ってのもある。おいグラサン野郎、お前らの言うドン会長って奴がこの大会に仕込んだ事、全部吐いてもらおうか」
「わ……分かりました……だから……命だけは……」
オニキスが黒服の一人の胸ぐらを掴むと、男は呆気なく命乞いをした。その無様な様子を見て、オニキスはため息をつき、口をニヤつかせた。
「滑稽だな。まあ、それはそれとして、さっさと教えろ」
「は、はいぃ……!」
そう言うと男は、オニキスにチェイスが大会の裏で仕組んでいた計画の全てを話した。
すると、オニキスはその話を聞き「ほぉ……」と、不気味な笑みを浮かべた。
「これは面白い収穫をした。サンキューな」
オニキスは、面白い収穫ができた事に喜び、男の腹に拳をたたき込んだ。それにより、男は失神してしまった。
そして、オニキスは運悪く現れた猫を抱き抱え、顎を撫でた。猫は、動物の扱い方に慣れている撫でに満足し、あざとくゴロゴロ〜と喉を鳴らした。
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