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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第105話 闘魂!正義の槍使いと彼岸花

『さぁそれでは第二予選、第4回戦目!選手の紹介です!』
「おぉ始まった始まった!ほらタクマ、早く来んかい!」
「だから引っ張るなって、服破れる!」
「それは妾の幼気な握力で破れる服が悪いのじゃ」

 メアはいつものように屁理屈を言いながら、リュウヤのいる席に座った。
 そして、タクマ達の事を待っていたリュウヤは、メアの持ってきたお菓子の山を見て驚く。それも、ペロペロキャンディーやらクッキーの袋やら、タケノコみたいなお菓子にキノコみたいなお菓子、まさに甘い物ばかりだったからである。

「メアちゃん、そんなお菓子どうしたの……」
「げん担ぎに、アコンダリアのお菓子屋で買ってきたのじゃ!リュウヤも食うか?」
「食うかって、この戦いが終わったら飯休憩だぞ?」
「俺もそう言ったんだけど、まぁオニキスと戦うって言う重役背負っちゃった訳だし、いいかなぁってさ」

 タクマはそう言いながら、メアが美味しそうに食べているお菓子を見た。やっぱり今見ても凄い量だ。更にはサイダーのような甘ったるい炭酸水をもゴクゴクと飲んでいる。
 太るぞとは言いたいが、多分言ったら飲み干したサイダー瓶を顔面に投げられそうだから今はやめよう。
 そうこうしているうちに、おタツが戦場に入ってきた。

『第一予選を勝ち取り、更にとんでもない相手、バルバッドを斬り殺した彼岸花のクノイチ!おタツ選手だぁぁぁぁぁ!!』
「……」

 だが、愛する妻が出てきたと言うのに、リュウヤは何かを考えているのか、喜びもせずに黙っていた。

「リュウヤ、何かあったのか?」
「いや……やっぱりさ、調べたい事はちゃんと訊くべきなのかなぁってよ」
「そんな事で悩むとは、リュウヤにしては珍しいな」
「だよな。けど、今回知りたい事は、もしかしたら人を傷付けるかもしれねぇんだよ。だから、訊くべきかどうか……」
「確かに傷付けるのはダメだよな。けど、リュウヤが知りたいって言うなら、俺もどう訊くのが正しいか、考えるの手伝うよ」

 タクマは笑ってみせた。その顔を見て、リュウヤも勇気を貰ったのか、一緒にどう言うか考えると言う約束をした。

「そんでさ、その訊きたい事ってのは、何?」
「それはだな……」
「えっ……そんな……」


………
 話を戻して、戦場。そこでは、おタツの前に戦隊ヒーローのマスクのような鎧を被った槍使いの男が現れた。

『更に、槍使い同士の戦いで勝ち進んだ、自称正義のヒーロー!アナザーなんて野郎とはキャラが被ってるから許さないと昨日騒いでおりました。フラッシュ選手ですっ!』
「ハーハッハッハッハ!正義の槍使い、フラッシュ・シルバリヲ!参っ上っ!」

 フラッシュは、どことなく昔の戦隊ヒーローのレッドみたいな大きいポーズを取り、そう名乗る。
 だが、戦隊ヒーローの存在自体知らないおタツは「何してんだろうこの人」と言わんばかりの目でその様子を見ていた。

「貴様には、この私が直々に天誅を下そう!」
「ウチが何をしたと言うでありんすか?」

 何か勝手に悪人みたいに言われている事に少し腹を立てたおタツは、フラッシュに訊いた。
 するとフラッシュは、返答に困ったのか「ハーハッハッハッハ!」と、笑って誤魔化した。

「うるさい!とにかく、500億ゼルンを掴み取り、私の素晴らしきフォロワーにキャッキャウフフとモテる為に、そしてキャラ被りまくってるアナザーをぶっ飛ばす為に!悪いが君には退場してもらうッ!」

 何だか熱いような事を語っているが、正直訳がわからない。と言うか、殆ど彼の自己中心的な欲望でしかない。
 面倒な相手が出てきた訳だが、おタツは彼に対しての苛立ちを極力抑え、忍者刀を構え、クノイチ姿に変身した。
 そして、フラッシュも赤い槍を構える。

「行くぞクノイチ!私にやられる事、光栄に思うがよい!」
「何を、その鼻っ柱をへし折ってやるでありんす」
「ならば貴様の目ん玉をほじくってやる!」
「なんのなんの、それならアンタの【自主規制】を……」

 このやり取りを続けていると長くなるからか、やっとゴングが鳴った。
 その瞬間、フラッシュは闘牛の如き速さとパワーでおタツに突進してきた。だが、おタツは丸太を身代わりに、後ろから攻撃を仕掛ける。
 しかし、フラッシュは、背中にも目があるとでも言うのか、槍の一番下に付けられたクローバー型の飾りで防御した。

「ただの猪突猛進野郎だと思ったら大間違い。私にはパーフェクト・アイズがあるこだ!」
「ウチの気配を……そんなものはとっくの昔に殺した筈……」

 おタツはいきなりの事に動揺したが、すぐに体勢を立て直し、忍者刀から苦無に持ち替えた。
 そして、持ち替えた苦無を、フラッシュに投げる。大量に投げる。だが、こちらに振り向いた事で、フラッシュは運良く苦無を避けてしまった。それも全てだ。

「効かぬ効かぬ!私のパーフェクト・アイズにかかればこんなもの容易く避けられ……」
「ちょっと黙るでありんす」
「ぎゃぁぁぁぁ!頭に!なんかよく分からない形した投げナイフがぁぁぁ!!」

 ついにキレたおタツは、真顔でフラッシュの額に手裏剣を投げた。投げられないと思っていたのか、血が出ている訳でもなく、ただ鎧で守られた額に刺さっているだけなのに、フラッシュは取り乱す。
 正直やってられない。おタツはまるで人間以下の存在を見るような目でフラッシュを見た。

「もう許さんぞ!《フレア・ショット》!」

 頭に傷を付けられた事に怒ったフラッシュは、多分奥義の一つである技を繰り出した。右手から炎を出し、その状態で槍を掴む。すると、槍が炎を纏い、少しだけ強くなった。
 
「往生しろ!」
「断るでありんす」

 フラッシュは、炎のオーラを纏った槍でおタツを突く。だが、おタツはその突きを全ての忍者刀で防いだ。
 辺りに槍の先端と忍者刀の刃、金属同士がぶつかる音が響く。
 しかし、普通の突きとは一味違う。だんだんと忍者刀が炎の槍によって熱され、木製の持ち手からもジワジワと伝わるくらい熱くなっていた。
 木製となれば燃える危険性がある。しかし、苦無や手裏剣を投げた所で、奴のぱーふぇくと・あいずと言う訳の分からない能力の前では意味を為さない。

「今だっ!うおらぁっ!」
「きゃんっ!」

 おタツはフラッシュの一撃により!忍者刀ごと吹き飛ばされた。更に、忍者刀と共に強く突かれたせいで、右手の関節が外れてしまった。この状態では苦無も手裏剣も投げられない。無理矢理にでも戻さねば。
 だが、フラッシュはそんな暇も与えない。最初に繰り出したような、素早い突きを繰り出した。炎の力は既に消えている為、さっきの物と比べればマシではあるが、この状態でダメージを蓄積させてしまうのは危険である。

「どうだ!手も足も出ないだろ!」
「くっ……しつこいでありんすね……」
「ヒーローと言うのは結構しつこいんだよ!」

 おタツは右手を何度も戻そうとしながら、槍を避ける。しかし、槍の猛攻が強すぎるため、ギリギリの回避となっていた。そして、ついに頬を切ってしまった。
 それでもおタツは諦めず、右手を戻し、煙玉を投げた。

「わぶっ!何だこれは!辛い!鼻が辛い!ぶぇっくしゅん!」
「朧隠秘伝の煙玉、パーフェクト何たらとやらもこれには勝てないでありんしょう?」
「少しはやるようだな。だがっ!」

 フラッシュは顎の辺りから涙を流しながらも、おタツが居ると思われる方向に槍を強く突いた。
 何かに当たるような感覚あり、突いた。フラッシュはそう確信する。
 しかし、次第に晴れて来る煙の奥から現れたものを見て、フラッシュは驚いた。

「真剣白刃取り……とは全然違うでありんすがね」
「お前……なんて奴だ……」

 なんと、おタツは槍を直で掴んだのである。強く突いた筈。そんなもの、普通は女一人の力では防ぎきれる訳がない。
 ありえない。何かトリックがある筈。フラッシュは必死にこの状態からおタツに追撃を与えられる方法を考えた。
 しかし、そんな隙などはどこにも無かった。何故なら、おタツが槍を止めたのは、彼女の自力の気合で止めたからである。

「ただの女子だと思ったら、大間違いでありんすよ。正義のヒーロー様」
「なっ!貴様、何をするつもりだ!」

 おタツは秘められた力を振り絞り、フラッシュから槍を奪い取った。そして、槍を持って逃げ出した。
 フラッシュはその槍を取り返そうと、全速力でおタツを追いかける。
 だが、あと少しで手が届くと言う所で、おタツは冷静にフラッシュの手を避ける。そして、ドロンと姿を消し、フラッシュの後ろに回った。

「これ、鉄っぽいけど、力加えたら簡単に曲がりそうでありんすね」
「や、やめろ!熱してるからちょっと柔らかいんだ!それだけは!」

 フラッシュはおタツを止めようと走った。しかし、ちょっと柔らかくなっている、と口を滑らした事が災いし、おタツは「へぇ〜」と頬を上げた。
 嫌な予感がする。いや、嫌な予感しかしない。

「えいっ。」
「あああああああああああああああああああああああ!!!」

 やりやがった。この女、涼しい顔して膝でポッキリと折りやがった。しかもその顔を崩さないで膝を摩っている。やっぱり結構痛かったようだ。
 いや、そうではない。問題は槍を折られた事だ。リーチや主武器と言うこともあり、完全に不利になってしまったのだ。どうする、流石に正義の名においてとか何とか言った以上、棄権するわけにはいかない。立ち向かえ、立ち向かわざるを得ない。

「さて、これでやりやすくなったでありんすね」
「何のつもりだ……?」
「ウチも忍者刀がない。あなた様も槍を失った。ならば答えは一つ、運なしのガチンコタイマンと行こうじゃありゃせんか」

 そう言うと、おタツは拳を固め、格闘家のような体制を取った。
 そう、正々堂々と戦う方法、おタツはその方法の中で、格闘を取ったのである。

「成る程、偶には違う戦い方と言うのも悪くはないな。」

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