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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第101話 会議!第二予選への挑戦

 あれからタクマ達は、コロシアム近くの宿屋に泊まり、そこで次の戦いの対策会議を始めた。

「まず、今の所戦うことになるのは、ソーマ、フール、ナノ、フラッシュ、サレオス、そしてオニキスの6人でござるな」
「まずソーマは……」
「俺のコピーで魔法を跳ね返す戦法が良さそうだな。」
「ですが、次のフールは……」

 ノエルは可愛く下唇に人差し指を置いて、ベッドの上で考える。オニキスも危険だが、サイリョーの伝言から、フールも要対策人物となった。
 何がどう危険なのか、それはまだ分からないが、この武闘会には魔物が潜んでいる事は事実。
 すると、おタツが何か思いつき、ノエルに人型の紙を渡した。

「何ですか、これ」
「それは身代わりの式紙。一生物の傷などを負った時、ウチの寿命一年と引き換えに、代わりに傷跡を貰ってくれるものでありんす」
「寿命一年って、何を考えておるのじゃ!」

 寿命が削られる。そう聞いたメアは、必死でおタツを止めた。しかしおタツは、メアの言葉に耳を貸さず、ノエルの手の中に式紙を入れる。
 
「確かに、それに傷を負わせて何が危険なのか調べる事は可能でござる。しかし、その対価におタツ殿の命をかけるのは、流石の拙者も理解しかねる」
「そうだぜおタツ。お前を否定する訳じゃねぇけど、この為だけに一年は勿体ない。」
「だからおタツさん、これはお返しします」

 そう言い、ノエルは式紙をおタツに返そうとした。しかし、おタツはクビを横に振る。何故そこまでして、この作戦に拘るのだろうか……

「おタツさん……」
「あの時、サイリョーさんは大丈夫だったかもしれない。けど、もしその攻撃でノエルちゃんが死ぬかもしれないと思うと……やっぱり……」
「……わかりました」

 ノエルはおタツに返そうとしていた式紙を、再び手の中に包み込んだ。
 何をしているのだ。そう思ったメアは「ノエルまで、何を考えておるのじゃ!」と言う。
 だが、ノエルは無邪気な笑顔をメア達に向け「大丈夫です」と返した。

「確かに私も理解しかねますが、おタツさんの覚悟は否定できません。だから、その代わりに私、おタツさんの一年の分頑張りたいんです」
「ノエル!」
「けど、ノエルがそう言うなら、俺は何も言わないよ。」
「タクマまで……な、なら妾からも頼む。無理だけは、しないでくれ」
「えぇ。了解したでありんす」

 おタツは礼儀正しく、メアに頭を下げる。
 そしてフールの作戦は、普通に全力を出し切り、もし負けた場合は式紙で何が危険なのかを調査する。と言う事で確定した。
 それから、ナノ、シオンの二人は、動きをよく見て即座に判断する。そう決まった。ただ一つ、オニキス戦だけを除いては。

「アイツ、メアの持ってる《メガ・ドゥンケル》よりも強いギガ何たらって奴を食らってもピンピンしてたな」
「となれば、アイツから見れば、妾の使う魔法はたかが知れている、と。」
「あの反応速度から見ても、投げナイフでのダメージ稼ぎってのも難しいな……」

 リュウヤは胡座をかいた足の真ん中で手を組み、どんな対抗策があるか必死で考えた。
 するとその時、リュウヤの頭にあるビジョンが浮かび上がる。侍が味噌汁を飲んでもがき苦しみ、そして死んでいくビジョン。
 そう、大和で起きた殺人事件のビジョンだ。それは毒が原因で起こったもの。そして更に、オニキスは最初、わざと魔法を食らった。
 
「なぁ、変な事聞くけどさ、誰かこん中で毒持ってる奴居る?」

 急で意味不明な質問をするリュウヤに、5人は「はぁ?」と揃えて声を上げた。
 そりゃあそうだ。こんな真面目な話をしている時にこんな事を聞く奴は頭がどうかしている。そう思った時、ノエルだけは荷物を漁った。

「それなら、最後の一本ですが、ここに」
「いやあるんかーい!」

 まさかの展開に驚いたリュウヤは、ツッコミながら首を天井に上げた。
 そして、それを見たおタツは「成る程!」と声を上げる。

「ちょっと姑息ではありんすが、オニキスは最初、わざと魔法を食らった。だから、その先制を利用して猛毒攻撃をするでありんす!」
「うーむ。流石にそれは武士道的な物に反するでござるが、かの死神も実際はただの人。毒には敵わぬと言う訳でござるか。」

 吾郎はその戦い方に不満を感じたが、成す術がないなら仕方ないと割り切り、その作戦を肯定し頷いた。
 タクマ、メア、ノエルの3人も、オニキスには悪いけど……と罪悪感は感じながらも、その作戦で行こうと考えてる。
 そして、タクマは6人の前に拳を出した。それに、リュウヤも拳を出す。

「成る程」
「お前様がやるなら、ウチも」

 そう言い、吾郎とおタツも拳を出した。更に、メアも「やれやれ」と言いながら、付き合って拳を出す。
 そして最後、ノエルは部屋に設置された机から羽ペンを持ってきた。

「皆の心は一つ。だから、この拳にその証を刻みましょうよ」

 そう言って、ノエルは拳を合わせた。それにより、拳で作られた円が白いベッドの中心に出来上がる。

「いいなそれ。どんな奴にする?」
「スマイルマークとか、どうでしょうか」
「駄目じゃ。それだと目がある者とない者が出てくる」
「うーん……そうだ、それならこれはどうだ?」

 タクマは言う。そして、ノエルから羽ペンを受け取り、ノエルの拳の方から線を入れた。
 そしてそれは、そのままメア、タクマ、吾郎、おタツ、リュウヤ、そしてノエルの元へ戻り、大きな丸になる。
 だが、それだけでなく、タクマはメアとノエルの間に丸っこいVを書き、タクマとリュウヤの方から、吾郎とおタツの間までに丸い線を書いた。

「よし、できた!」
「おぉ、タクマにしては中々いいデザインじゃな」
「お前って、結構そう言う所あるよな」

 そう言われ、タクマは頭をかいた。照れている。
 そして、メア達は改めて、自分達の拳に書かれたものを見た。
 それは、丸い円の中に、大きなハートが入っている絵だった。どんな状況であれ、心一つで何とかなる。そう言った意味を込めたが、タクマはその事については何も言わなかった。

「それでは、皆に幸あれ!」
「「「「「おーっ!」」」」」


 それから夜が開け、第二回戦が始まった。

『それでは西コーナー!得意魔法は相手の魔法を使える魔法!その力で昨日の第二回戦でいい勝負をお届け!本日はどんな戦いを繰り広げるか!コピー使い!タクマ選手だぁぁぁぁぁ!!!』

 実況が流れると、控室からタクマが顔を現した。そして、燦々と照らす太陽を見ながら、ぐっと身体を伸ばす。

『そして、対するは東コーナー!明晰な頭脳を用いた戦いで第一回戦を制したアトランカ帝国魔導隊隊長!ソーマ選手です!』

 東側から、鉄の杖を持った、絵に描いたような魔道士がやって来る。
 するとその男は、タクマの前に手を出した。

「お会い出来て光栄だよコピー使いのタクマ君。君の事は我が同志・メイジュから聴いているよ。」
「ど、どうも。お互い頑張りましょう」
「あぁ。悔いのないよう、全力で君を倒そう」
「望む所です」

 凄く礼儀の正しい人だ。この人となら、この戦いの後でも仲良くなれそう。何というか、ノブナガ様と何処か似ているオーラを纏っている。
 多分アトランカ帝国の中でも信頼されているのだろう。それが、彼にとっての、強さの真理なのだろうか。
 そう思いながら、タクマは背中から剣を引き抜いた。

「今日も頼むよ。相棒」
「いざ……」
「「勝負!!」」

 ゴングが力強く鳴ると同時に、二人は激突した。

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