コピー使いの異世界探検記
第99話 俊速!謎の女とサイテ姫
「行くわよ、メアちゃん」
「望む所じゃ!」
ゴングが鳴ると同時に、メアは太ももから投げナイフを取り出し、フローラに向けて投げた。
だが、フローラは凄まじい速さで飛んでくる投げナイフに狼狽る事なく、冷静に炎の鎌を振る。すると、投げナイフの持ち手部分が焼け落ち、フローラの後ろでカランカランと小さな鉄板が落ちる音がした。
「わ、妾のナイフをあんな簡単に……」
「遅いわ。本当の投擲スキルっての、教えてあげる」
そう言うと、フローラは鎌をクルクルと回し、バラバラになった炎の塊を投げナイフ状に変形させた。
そしてそれは、追撃ミサイルかのように宙を舞い、メアに襲いかかる。
「なんて速さじゃ……まだ潰すことは出来るが、それで手一杯じゃ……」
メアは短剣に切り替え、襲いかかって来る炎の投げナイフを斬り倒す。だが、それでもまだ相手の投げナイフは襲いかかる。
やはり短剣も投げナイフも、動きには特化しているが、ダメージを蓄積させるのには不向きなようだ。
「こんなチマチマしたのつまらない。だから次はコレよ」
炎の投げナイフを出しきったフローラは、地面に突き刺さった炎の塊を集め、それをレイピアのような形に作り替えた。
そして、無慈悲的な速度でメアに飛びかかる。それをメアは、短剣で防ぐ。早すぎて、防ぐしかなかった。
「なんて速さじゃ……」
「短剣一本で防ごうなんて無駄よ」
「悪いがこれしか戦闘スキルが無いものでの。往生際悪くってすまんな」
メアはレイピアによる攻撃が一瞬止んだ所に素早く投げナイフを投げ、フローラの腹部を切った。
だが、それでもフローラは屈する事はなく、ただ倒すと言う意思と覚悟のままに攻撃を続ける。
そしてついに、メアは押し負けて後ろに蹴り飛ばされてしまった。
防御のしすぎとレイピアにやられたせいで、右手の掌と甲から血が流れる。まだレイピアの傷程度なら我慢できたが、両方やられているとなると、我慢して戦えば逆に自分を殺す危険性がある。つまり右手は使えなくなったも同然。
「右手、痛そうね。だったらハンデを付けてあげるわ」
そう言うとフローラは、手に持っていた炎のレイピアを弓矢状に変形させ、矢を弓に掛けた。右手が使えなくても、左手だけでもナイフは投げられる。だから、メアがやり易いようにと、わざと遠距離武器戦を仕掛けたと言うのだ。
それを察したメアは、左足の太ももから投げナイフを抜き取り、右手の指と指の間にナイフを装備した。
「来るなら来い!弓矢なんか怖くないわい!」
「ただの弓矢じゃないんだけどなぁ」
ため息を吐きつつも、フローラはメアに向けて炎の弓を放った。そして、その弓は真っ直ぐと放たれた方向、メアの居る方向へと進む。
メアはそれを避け、お返しに指と指の間に挟めたナイフを一本づつバラバラの位置から投げた。
「やっぱり五本纏めて来たわね」
フローラはやっぱりなと言わんばかりに、迷いなく矢を放った。するとその矢は五つの赤い塊に分裂し、小さな五本の矢へと変形する。そして、メアの投げたナイフを爪で抉るようにはたき落とした。
それだけでは終わらず、刺さった矢から炎が上がり、メアの周りを包み込んだ。
「な、何事じゃ!?」
「コレだけでは終わらないのが、私のやり方なのよ。」
心のないような声で、フローラは新しく炎を固め、それを槍に変形させた。
「さてと。そろそろチェックメイトにしてもいいかしら?」
「何を。まだ勝負は始まったばかりじゃよ。」
炎を固めた槍を、メアの目の前に突き出して訊いてくるフローラに、メアはその槍を掴みながら答えた。そして、メアが掴んだ槍から、黒い煙が上がる。
何をしていると言うのだ?彼女もバカではない。炎で錬成した武器を、同じ能力を備えてない人間が触れば火傷する事くらい知っている筈。まさか……!
フローラはすぐにメアが何をしようとしていたかを察し、一旦距離を取ろうとする。
だが、既に察すると気付いていたメアは、お淑やかな女の子らしからぬニヤついた顔で槍ごとフローラを持ち上げ、そこにこっそりと凝縮していた《メガ・ドゥンケル》の気弾を打ち放った。
「いやぁぁっ!」
「まだまだっ!お返しの投げナイフ3連撃じゃ!」
闇の気弾が爆発してすぐ、メアは暗い煙の奥から投げナイフを3本投げた。
そう。初めからメアは、炎の槍でわざと自分の怪我した右手に火傷を負わせ、強制的な止血をし、そこから右手の戦線復帰を狙っていたのだ。どうせ、いくらやり合っても、完全に体から離れない限りは治療室で元どおりになる。そう考えたメアの、勇気ある行動だ。
しかし、やっぱり痛む。メアはジンジンと痛みの来る右手をぐっと堪えながら、何というとんでもない馬鹿をやったんだと、ちょっと後悔した。
「闇の力をもうそこまで使いこなしてるとは。流石はネクロ族の血を引いた女ね。」
「ネクロ族……何故その名前を知っておる!」
やっぱり何か知っている。メアは目の形を変え、フローラにそう訊く。
しかしフローラは、真相を語ろうとせずに「さぁ」と返し、槍を地面に突き刺した。
するとその瞬間、何故か刺した場所から、直線状に凍りついていった。
炎の輪に捕らえられていたメアはその攻撃を避けられず、足を取られてしまう。
「な……炎の槍じゃなかったのか……!?」
「いつ炎だけの槍って言ったかしら?」
「まさかっ!」
ずっと炎のエレメントを圧縮して武器に変形させる能力だと思っていたが、違う。それによく考えてみれば、もし炎の槍なら、掴んだ時にその場所だけ炎に戻せた筈。
そして、赤い槍から出た氷魔法。それつまり……
「成る程な。大体分かったって感じじゃよ」
メアは足元に《フレア》を放ち、足の氷を溶かした。だが、様子を伺う為に使っていた時間のせいで、感覚が死にかけている。
いや、むしろ感覚がないのは好都合。痛くないならダメージ0とほぼ同等!
メアはそのままど根性でメラメラと燃える炎の輪から抜け出し、《フレア》を纏った投げナイフをフローラに向けて放った。
「そんな悪足掻きをした所で何も変わらないわよ」
フローラは、呆れた表情でメアを見つめ、飛んでくる投げナイフを槍で叩き落とした。
そして、もう一度目の前を向いた時、そこには誰も居なかった。
「どこ行ったの?」
「ここじゃぞ!」
「なっ!」
後ろから来たメアに驚きつつも、フローラは冷静さを損なわずに槍を短剣に変えて攻撃を防いだ。
(さっきまで動きが鈍かったのに、速い!それも、力が……何故)
今度は逆にフローラが押されている。強い。一体あんな短時間で何が。フローラにも理解できない。
するとその時、赤い短剣が炎に戻って消えてしまった。よく見ると、メアの短剣に炎のオーラが纏われていた。
「へぇ。気付いたみたいね。」
「あぁ。お主の武器は炎を氷の魔力で固めたもの。だから、炎の攻撃を当てれば溶けて形を保てなくなる!」
「ならもういいわ。一気にケリをつけたげる」
フローラは武器を失ったため一旦距離を取り、そこから《フレア》と《フリズ》の両方を放った。一度に両手から別々の魔法を放つなんて聞いてない。
だが、それにビビっていても仕方がない。メアも覚悟を決め、《メガ・ドゥンケル》をフローラに向けて放った。
そして、その三つの魔法はぶつかり合い、凄まじい魔力と魔力がせめぎ合う。
「まだよ……」
「妾は負けん……!」
両者とも、力を完全に使い切る勢いで魔法を放っているため、足が地面にめり込む。
するとその瞬間、ビッグバン的な爆発が発生し、目の前が真っ白に染まった。
「望む所じゃ!」
ゴングが鳴ると同時に、メアは太ももから投げナイフを取り出し、フローラに向けて投げた。
だが、フローラは凄まじい速さで飛んでくる投げナイフに狼狽る事なく、冷静に炎の鎌を振る。すると、投げナイフの持ち手部分が焼け落ち、フローラの後ろでカランカランと小さな鉄板が落ちる音がした。
「わ、妾のナイフをあんな簡単に……」
「遅いわ。本当の投擲スキルっての、教えてあげる」
そう言うと、フローラは鎌をクルクルと回し、バラバラになった炎の塊を投げナイフ状に変形させた。
そしてそれは、追撃ミサイルかのように宙を舞い、メアに襲いかかる。
「なんて速さじゃ……まだ潰すことは出来るが、それで手一杯じゃ……」
メアは短剣に切り替え、襲いかかって来る炎の投げナイフを斬り倒す。だが、それでもまだ相手の投げナイフは襲いかかる。
やはり短剣も投げナイフも、動きには特化しているが、ダメージを蓄積させるのには不向きなようだ。
「こんなチマチマしたのつまらない。だから次はコレよ」
炎の投げナイフを出しきったフローラは、地面に突き刺さった炎の塊を集め、それをレイピアのような形に作り替えた。
そして、無慈悲的な速度でメアに飛びかかる。それをメアは、短剣で防ぐ。早すぎて、防ぐしかなかった。
「なんて速さじゃ……」
「短剣一本で防ごうなんて無駄よ」
「悪いがこれしか戦闘スキルが無いものでの。往生際悪くってすまんな」
メアはレイピアによる攻撃が一瞬止んだ所に素早く投げナイフを投げ、フローラの腹部を切った。
だが、それでもフローラは屈する事はなく、ただ倒すと言う意思と覚悟のままに攻撃を続ける。
そしてついに、メアは押し負けて後ろに蹴り飛ばされてしまった。
防御のしすぎとレイピアにやられたせいで、右手の掌と甲から血が流れる。まだレイピアの傷程度なら我慢できたが、両方やられているとなると、我慢して戦えば逆に自分を殺す危険性がある。つまり右手は使えなくなったも同然。
「右手、痛そうね。だったらハンデを付けてあげるわ」
そう言うとフローラは、手に持っていた炎のレイピアを弓矢状に変形させ、矢を弓に掛けた。右手が使えなくても、左手だけでもナイフは投げられる。だから、メアがやり易いようにと、わざと遠距離武器戦を仕掛けたと言うのだ。
それを察したメアは、左足の太ももから投げナイフを抜き取り、右手の指と指の間にナイフを装備した。
「来るなら来い!弓矢なんか怖くないわい!」
「ただの弓矢じゃないんだけどなぁ」
ため息を吐きつつも、フローラはメアに向けて炎の弓を放った。そして、その弓は真っ直ぐと放たれた方向、メアの居る方向へと進む。
メアはそれを避け、お返しに指と指の間に挟めたナイフを一本づつバラバラの位置から投げた。
「やっぱり五本纏めて来たわね」
フローラはやっぱりなと言わんばかりに、迷いなく矢を放った。するとその矢は五つの赤い塊に分裂し、小さな五本の矢へと変形する。そして、メアの投げたナイフを爪で抉るようにはたき落とした。
それだけでは終わらず、刺さった矢から炎が上がり、メアの周りを包み込んだ。
「な、何事じゃ!?」
「コレだけでは終わらないのが、私のやり方なのよ。」
心のないような声で、フローラは新しく炎を固め、それを槍に変形させた。
「さてと。そろそろチェックメイトにしてもいいかしら?」
「何を。まだ勝負は始まったばかりじゃよ。」
炎を固めた槍を、メアの目の前に突き出して訊いてくるフローラに、メアはその槍を掴みながら答えた。そして、メアが掴んだ槍から、黒い煙が上がる。
何をしていると言うのだ?彼女もバカではない。炎で錬成した武器を、同じ能力を備えてない人間が触れば火傷する事くらい知っている筈。まさか……!
フローラはすぐにメアが何をしようとしていたかを察し、一旦距離を取ろうとする。
だが、既に察すると気付いていたメアは、お淑やかな女の子らしからぬニヤついた顔で槍ごとフローラを持ち上げ、そこにこっそりと凝縮していた《メガ・ドゥンケル》の気弾を打ち放った。
「いやぁぁっ!」
「まだまだっ!お返しの投げナイフ3連撃じゃ!」
闇の気弾が爆発してすぐ、メアは暗い煙の奥から投げナイフを3本投げた。
そう。初めからメアは、炎の槍でわざと自分の怪我した右手に火傷を負わせ、強制的な止血をし、そこから右手の戦線復帰を狙っていたのだ。どうせ、いくらやり合っても、完全に体から離れない限りは治療室で元どおりになる。そう考えたメアの、勇気ある行動だ。
しかし、やっぱり痛む。メアはジンジンと痛みの来る右手をぐっと堪えながら、何というとんでもない馬鹿をやったんだと、ちょっと後悔した。
「闇の力をもうそこまで使いこなしてるとは。流石はネクロ族の血を引いた女ね。」
「ネクロ族……何故その名前を知っておる!」
やっぱり何か知っている。メアは目の形を変え、フローラにそう訊く。
しかしフローラは、真相を語ろうとせずに「さぁ」と返し、槍を地面に突き刺した。
するとその瞬間、何故か刺した場所から、直線状に凍りついていった。
炎の輪に捕らえられていたメアはその攻撃を避けられず、足を取られてしまう。
「な……炎の槍じゃなかったのか……!?」
「いつ炎だけの槍って言ったかしら?」
「まさかっ!」
ずっと炎のエレメントを圧縮して武器に変形させる能力だと思っていたが、違う。それによく考えてみれば、もし炎の槍なら、掴んだ時にその場所だけ炎に戻せた筈。
そして、赤い槍から出た氷魔法。それつまり……
「成る程な。大体分かったって感じじゃよ」
メアは足元に《フレア》を放ち、足の氷を溶かした。だが、様子を伺う為に使っていた時間のせいで、感覚が死にかけている。
いや、むしろ感覚がないのは好都合。痛くないならダメージ0とほぼ同等!
メアはそのままど根性でメラメラと燃える炎の輪から抜け出し、《フレア》を纏った投げナイフをフローラに向けて放った。
「そんな悪足掻きをした所で何も変わらないわよ」
フローラは、呆れた表情でメアを見つめ、飛んでくる投げナイフを槍で叩き落とした。
そして、もう一度目の前を向いた時、そこには誰も居なかった。
「どこ行ったの?」
「ここじゃぞ!」
「なっ!」
後ろから来たメアに驚きつつも、フローラは冷静さを損なわずに槍を短剣に変えて攻撃を防いだ。
(さっきまで動きが鈍かったのに、速い!それも、力が……何故)
今度は逆にフローラが押されている。強い。一体あんな短時間で何が。フローラにも理解できない。
するとその時、赤い短剣が炎に戻って消えてしまった。よく見ると、メアの短剣に炎のオーラが纏われていた。
「へぇ。気付いたみたいね。」
「あぁ。お主の武器は炎を氷の魔力で固めたもの。だから、炎の攻撃を当てれば溶けて形を保てなくなる!」
「ならもういいわ。一気にケリをつけたげる」
フローラは武器を失ったため一旦距離を取り、そこから《フレア》と《フリズ》の両方を放った。一度に両手から別々の魔法を放つなんて聞いてない。
だが、それにビビっていても仕方がない。メアも覚悟を決め、《メガ・ドゥンケル》をフローラに向けて放った。
そして、その三つの魔法はぶつかり合い、凄まじい魔力と魔力がせめぎ合う。
「まだよ……」
「妾は負けん……!」
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