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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第89話 開戦!コピー使い対根暗マンサー

『さぁやってまいりました第1回戦!対戦相手の紹介です!』

 やっと始まった第1回戦の選手紹介。それを心待ちにしていた観客は皆、西と東の両方から登場してきた筋肉質な男と、魔導書らしきものを持ったいかにもな魔法使いに拍手をする。

『まずは西コーナー!青空の下なら元気百倍!筋肉千倍!最強マッチョマン・ブルースだぁぁ!!』

 その紹介が終わり、辺りに歓声が響くと、ブルースと呼ばれた男は強そうなマッチョポーズで筋肉モリモリの焼けた肌を晒した。
 すると、今度は東側で杖を拭く男にスポットが当たる。

『そして東!魔法の事なら何でもござれ!頭脳明晰!魔力全開!アトランカ帝国魔導隊隊長・ソーマだぁぁぁぁ!!』

 紹介が終わると、ソーマと呼ばれた男は杖をブルースに突きつけ、相手に何か言う。するとブルースはニヤリと笑い、指の骨を鳴らした。相手を侮辱する発言をしたのだろうか、観客席の所にまで指を鳴らす音が聞こえる。
 リュウヤ達がそんな二人の対戦を見守っていると、その横で「あ、あれはソーマ君じゃないか!」と、隣でメイジュが言った。

「知り合いなんですかい?」
「あぁ。僕も一応アルゴ国の魔導隊隊長だからね、偶に国王会談の護衛で会うんだよ」

 そう言い、サイリウム鉢巻をしたままのメイジュはソーマの事について話した。
 そうしている間に、ゴングが鳴り響き、チェイスとギエンの実況が始まっていた。

『ところでチェイスさん。この第1回戦を制するのは、誰だと思いますか?』
『私が予想するに、優勝者はブルースと思いきや、ソーマの優勝となるだろうね』
『おーっとここで、ソーマの得意技の発動だぁ!!』

 その大きく盛り上がる実況を聞き、タクマは戦場の方を見る。するとそこで、ソーマは魔導書を片手に、竜の炎を思わせる強い魔法を放った。実況はそれを 《メガ・ブレス・フレア》と名付けた。

「へんっ!その程度の炎、俺には通用しねぇぜ!」
「へぇ、それならコイツはどうだい?」

 炎を吸い込むブルースに、次にソーマは強い風を吹かせた。風の力で火力を強くする、所謂コンボ魔法と言うものだ。タクマはもし勝った時の相手がどんな相手かを学ぶ為、じっとソーマとブルースの戦い方を学ぶ。

(そうか、属性効果から魔法の火力を強くする。それが今回貰った新しい力の使い方!)
「それがどうした!それでも、そんなのは効かんッ!!」

 それでも男は炎を吸い尽くす。するとブルースはその炎を、蒼い炎に変えて吐き返した。
 待合室であるここからでも分かるくらい、熱い炎が会場を包み込む。

『おーっとぉ、炎のお返しだぁ!こちらも熱いですッ!』
「くっ……なかなかの能力だな……」
「ガーハッハッハッハ!最後はコイツでぶっ飛ばしてやるぜぇ!!」

 炎の息を吐ききると、ブルースは拳に力を込めて炎の渦に閉じ込められたソーマに殴りかかった。
 だがその瞬間、ブルースは何故か殴り返されたかのように吹き飛ばされた。

「貴様は殴りかかる時、身体中に空気を入れていつでも飛びかかれるようにする。そこを突いて一方通行の強風を与えてやった」
「こしゃくな……だがッ!」

 するとブルースは魔法を唱え、戦場の地面を鎧のようにして纏う。
 そこで実況は『これはぁ!ブルースの特異能力と魔法を合わせた技!その名も《マジック・アーマーズ》、今回はそのうちの一つ!《ランディオ・アーマー》だぁぁぁ!!』と叫び出した。チェイスはそれに、
『大地属性の鎧は硬くて重い。さっきのように、《メガ・ウィンド》で吹き飛ばす戦法は難しいが、どうするか見ものだね』
と、勝敗予想をしていたソーマの行動に注目した。

「それを待っていた!」
「何ッ!?」
「大地の鎧を纏った今、さっきの風と熱が貴様を蝕む!」
「何だか分からねぇなぁ!死ねぇッ!!」

 ブルースは大地の鎧を纏った状態で右腕を岩石の剛腕に変え、ソーマに襲い掛かった。だがその時、ブルースは急に叫び声を上げ、大地の鎧を解いた。

「ぐぁぁぁぁ!!何だこれは!熱い!熱いッ!!」
「さっき貴様を投げ飛ばした風、あの力で貴様の中に眠っていた熱を再燃させた!」
「畜生めぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 その大きな叫びと共に、ブルースは倒れてしまった。そして、ゴングが鳴り響く。
 辺りに、ソーマの優勝を祝福する歓声が上がる。



『それでは第二回戦!選手の入場です!』
「よし来た、絶対勝つぞ〜」
『まずは西コーナー!世界を旅する謎の少年!本日初参戦の冴えない男の子!それでも能力はよく分からん!タクマ選手だぁぁぁ!!』

 「タクマ〜!ぶっ飛ばせ〜!!」「必ず勝つでありんすよ〜!!」「頑張るでござる〜!!」と、西側から親友達の声がする。タクマはそちらに手を振り、向かい側からやって来る対戦相手の方に目を向ける。
 そこには、あの髪がボサボサで目の下のクマが凄い特徴的な男が幽霊のようにスーッと現れた。

『そして東!ペルドゥラスのゴーストタウンが大好きなエスジネス魔道学院闇魔導科三年生!得意魔法は闇の特徴的な笑い声の無口君!オリーブだぁぁぁぁ!!』

 ギエンの説明が終わると、また歓声が上がった。だが、オリーブはその歓声が嫌なのか、強く耳を塞ぐ。
 タクマは少年の事を不思議に思いながらも、剣を抜いた。戦場で初めて姿を見せる新しい剣。それが辺りを強く照らす太陽光を反射させる。相手のオリーブも、武器である杖を取り出す。
 その杖は動物の骨と骨を組み合わせ、手の骨が宝珠を掴んでいるような見た目をしている。

「と、特徴的な杖ですね」
「……」
「お、お互い……頑張りましょうね」
「……」

 タクマはこのなんとも言えない空気を変えようと、オリーブに話しかける。するとオリーブはタクマが発言してから約5秒後に、「……コロス」と答えた。
 その瞬間、戦闘開始のゴングが鳴り響く。それと同時に、オリーブは闇魔法で作った槍を複数生み出し、それをタクマに撃ち放った。

「うわっ!もう始まったのか!」

 タクマはすぐに身体を動かし、闇の槍の雨を回転しながら避けた。そして、止む頃に《コピー》を発動し、まず闇の力を獲得した。
 すると、実況は『おーっとぉ!これはなんの魔法だぁッ!!誰も見たことも聞いたこともない!タクマの特異技、コピーだぁぁぁ!!』と叫び出す。

「コピーか。面白い」
「えへへ、それほどで……もっ!!」

 タクマは剣を構え直しながらそう言うが、オリーブはそのような話す時間も与えず、次の攻撃へと出た。今度は水竜のような物を生み出し、それでタクマを襲った。
 水竜は凄まじい速さでタクマを追いかけ、何度も食いかかろうとする。

「無理無理無理無理!食われるぅぅぅぅ!!」
「アレは美味い。ジュルリ」

 オリーブは杖を片手に水竜を操り、自分の唇をなめる。するとその時、タクマに一つの閃きが走った。
(このままオリーブの方に突っ込めば、巻き込めなかったとしても、剣を叩き込む事は出来る!)
そう信じ、タクマはそのままオリーブの立つ方角に足を向け、突撃した。それでもオリーブは、杖を離す事も、逃げる素振りも見せず、ただタクマが走って来るのを待っていた。

「今だっ!!」

 タクマはそう叫び、先程コピーした 《ドゥンケル》のパワーを剣に送り込み、闇の剣として強化させた。
 そして、オリーブの腹部あたりに 〈閃の剣・闇〉と叫びながら、剣を当てた。手応えあり。後ろから追いかけていた竜も消えた。やったか?辺りに勝ちを確信した観客の歓声が飛び交う。実況も『これは痛い〜。このままタクマ選手の勝利となるかぁ〜ッ!!』と話した。
 だがよく見ると、そこにはタクマの容姿となんとなく似ている手作りのぬいぐるみが置いてあり、肝心のオリーブは何処にも居なかった。

『どう言う事だぁぁッ!オリーブ選手が見当たらないぞぉぉッ!!』
「クソッ。こんな縁起でもない身代わりを……」

 場外へ出れば負けと同然の処置を取られる。そう考えると、まだオリーブは遠くには逃げていない。まだこの場に居る。タクマは近くを見回し、オリーブの姿を探す。
 するとその時、タクマの後ろから凄まじい衝撃が走った。
 吹き飛ばされた刹那、タクマは見えた物を見て驚く。
 何故ならそれは、消えた筈の水竜だったからだ。
 しかも、その奥には最狂の笑顔でこちらを見つめるオリーブが居た。

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