コピー使いの異世界探検記
第82話 狙われし男の娘
「おや?タクマさんやっと起きたでありんすね」
「ついさっき……なんだけど、おタツさん……」
タクマは水遁の練習をしているおタツから顔を背けながら言う。
何故なら、おタツが何故か、忍者の服ではなく、黒生地に水色と白のラインが入ったハイカットの競泳水着を着ていたからである。
「あぁ、この服でありんすか?これはリュウヤさんが、ウチの為に水の向こう側から取り寄せた、“すいむうぇあ”と言う物らしいでありんす」
おタツは嬉しそうに、自身の体のラインを見せつけるように、タクマに競泳水着を見せる。
その姿はまさにマーメイドのように美しく、男なら誰でも釘付けになるようなほど輝いて見えた。
しかも後ろを歩いていた男達が、おタツの姿を見て顔を赤らめさせる。
だが彼女にはリュウヤが居る。それに、タクマはソレ系に弱い。
「あ、後作者のせいh……」
「それ以上は言っちゃいけない奴だ、おタツさん」
タクマは何か危機を感じ、急いでおタツの言葉を切った。
するとおタツはクスクスと口に手を当てて笑い、「タクマさんはウブでありんすな」と言う。
「水遁の調子どうだい?」
「あらリュウヤさん。まぁまぁ良い成長でありんすよ」
おタツは近くの大岩にかけていたタオルで髪を拭きながら答える。そこにリュウヤは「ちょいと休憩がてらかき氷食おうぜ」と、6つのかき氷を白いテーブルに置いた。
そのテーブルは、どこか見覚えのある形状をしていた。
確かアイズキューラ号のカフェエリアにあったような……
タクマは疑問に思い、リュウヤにあの後何が起こったのか、具体的な話を訊いた。
「実はあの後、俺達は何故か生きててよぉ……」
リュウヤはメロン果汁のかかったかき氷を口に入れながら、その時の話を始めた。
【数時間前】
「おい!人が倒れてるぞ!」「本当だ!凄い人が倒れてるぞ!」
周りが騒がしい。リュウヤは周りから聞こえる、おじさんが慌てるような声を聞き、何事かと体を起こす。
すると、その近くに居た地元の人らしきおばさんが「ボク大丈夫かい?」と声をかけてきた。
「もしかして、俺の事見えるんですか?」
もしかしたら死んでしまったかもしれない。いや、普通あんな大海原に沈没したら死は免れない。
リュウヤは完全に自分は死んだと思い込み、おばさんに訊く。
するとおばさんは、変な質問を投げかけるリュウヤを見て「は?」と言いながら口を開けた。
「何寝ぼけた事言ってんだいアンタ」
「……はっ!それより皆は!」
リュウヤは一緒に投げ出された荷物や船の事よりも先に、仲間を探しに、嫌な意味で騒がしいビーチの方へ走る。
そこにはアイズキューラ号だったものと、追突してきた船だったものの残骸があり、そしてその奥には乗客達の荷物が入っているであろう木箱やキャリアケースのようなものが、辛うじて残っていた船の残骸の上に綺麗に乗っていた。
そして、その周りには乗組員や乗客が横たわっている。勿論、その中にはリュウヤがイチゴをサービスした少女と、その母親も居た。
「あれは!嬢ちゃん!お母さん!しっかりしてください!」
リュウヤは歩き辛い砂に足を引っ張られながらも、無理矢理体を動かして少女のもとへ向かった。
脈も息もちゃんとある。生きているようだ。リュウヤはホッと胸を撫で下ろした。
するとその少女は、リュウヤの声に気付いたのか、体を起こす。
「あれ……生きてる……」
しかも、次第に倒れていた人達が身体を起こした。辺りから、何故自分が生きているのか、そう疑問に思う声が上がる。
「うわぁ!み、皆生き返ったぞ!!」
「ぞ、ゾンビか!?」
人が倒れてると聞きつけてきた地元の人々は、起き上がった人々を見て驚く。
確かにこの感じは何処かのゾンビ映画を彷彿とさせる。リュウヤは心のどこかで、彼らの言っている事を理解した。
︎
「てな事があってよ、船の中にあった備品も無事で、俺らの荷物も命も無事だったんだ」
リュウヤは眠っていたタクマを歓迎するように、なくしていた筈の鞄を渡した。
中には、しっかりとオーブやアルゴ王から貰った服などが全て入っている。
誰があんな絶望的な状況から救ってくれたかは分からないが、今度会った時は必ずお礼を言っておかないと。
「ん~、氷がフワフワで美味しいのじゃ~」
「体を冷やすのには最適なデザート……うっ!」
「ハッハッハ!キーンと来たか!」
リュウヤは大きな声で、痛そうに頭を抑え出したノエルを笑う。
「もう、リュウヤさんったら」
「やはり、生きていると言うのは素晴らしいでござるな」
6人でそう話をしていた時、タクマはその後ろをウロウロしている怪しい恰幅の良い中年の男を見つけた。
しかも、何故かこちらに近付いてきている。
するとその瞬間、中年の男は、偶然頭を上げたノエルと目を合わせた。
「あ……」
だんだんとノエルの顔から血が抜けていき、白くなる。
そして、ノエルの顔を見た中年の男は「これだぁぁぁぁ!!」といきなり叫び出した。
「じょ、嬢ちゃん!いいもの沢山あげるから、おじさんと一緒に来てくれない?」
中年の男は、ノエルの手を取り、息を荒げながら誘った。
いやうん、これはもしかしなくとも不審者の誘拐文句だ。タクマは、すぐにノエルをリュウヤ達の後ろに隠し「何だお前は」と訊いた。
だが、中年の男は、立ち向かうように仁王立ちをするタクマを無視して、ノエルの方へと近付く。
「ちょ、やめてください!」
「ノエちゃんが困っているでありんしょうが!」
おタツは背中の方から苦無やドスを取り出し、中年の男に向けた。これ以上近付いたら叩っ斬る。そう目で訴えながら、ドスをじわじわと近付ける。
「くぅ……折角のオープニングアイドル候補が……」
「あい?何の話じゃ?」
メアは短剣を怪しい男に突きつけながら、中年の男が放った独り言の意味を訊く。
すると男は、メア達の後ろを指差し「何だあれ!」と叫んだ。
「な、何じゃ?」「何があるでありんすか?」「む?」
男の表情からして、魔物が来た様子と似ている。そう思い、全員後ろを振り返る。
だが、そこにはアイズキューラ号の残骸があるだけで、魔物の姿はなかった。
「キャァッ!タクマさん!」
ノエルの悲鳴が聞こえてきた。そう、タクマ達はまんまと子供騙しに引っかかってしまったのだ。
タクマはすぐに振り返ったが、中年の男は既に豆粒大の大きさに見えるくらい遠い場所まで逃げていた。
「ぐへへ、この嬢ちゃんは借りるぜ!」
「待ちやがれセクハラ親父!」
隙を突かれてノエルを連れて行かれたタクマ達は、必死で男を追った。
「ついさっき……なんだけど、おタツさん……」
タクマは水遁の練習をしているおタツから顔を背けながら言う。
何故なら、おタツが何故か、忍者の服ではなく、黒生地に水色と白のラインが入ったハイカットの競泳水着を着ていたからである。
「あぁ、この服でありんすか?これはリュウヤさんが、ウチの為に水の向こう側から取り寄せた、“すいむうぇあ”と言う物らしいでありんす」
おタツは嬉しそうに、自身の体のラインを見せつけるように、タクマに競泳水着を見せる。
その姿はまさにマーメイドのように美しく、男なら誰でも釘付けになるようなほど輝いて見えた。
しかも後ろを歩いていた男達が、おタツの姿を見て顔を赤らめさせる。
だが彼女にはリュウヤが居る。それに、タクマはソレ系に弱い。
「あ、後作者のせいh……」
「それ以上は言っちゃいけない奴だ、おタツさん」
タクマは何か危機を感じ、急いでおタツの言葉を切った。
するとおタツはクスクスと口に手を当てて笑い、「タクマさんはウブでありんすな」と言う。
「水遁の調子どうだい?」
「あらリュウヤさん。まぁまぁ良い成長でありんすよ」
おタツは近くの大岩にかけていたタオルで髪を拭きながら答える。そこにリュウヤは「ちょいと休憩がてらかき氷食おうぜ」と、6つのかき氷を白いテーブルに置いた。
そのテーブルは、どこか見覚えのある形状をしていた。
確かアイズキューラ号のカフェエリアにあったような……
タクマは疑問に思い、リュウヤにあの後何が起こったのか、具体的な話を訊いた。
「実はあの後、俺達は何故か生きててよぉ……」
リュウヤはメロン果汁のかかったかき氷を口に入れながら、その時の話を始めた。
【数時間前】
「おい!人が倒れてるぞ!」「本当だ!凄い人が倒れてるぞ!」
周りが騒がしい。リュウヤは周りから聞こえる、おじさんが慌てるような声を聞き、何事かと体を起こす。
すると、その近くに居た地元の人らしきおばさんが「ボク大丈夫かい?」と声をかけてきた。
「もしかして、俺の事見えるんですか?」
もしかしたら死んでしまったかもしれない。いや、普通あんな大海原に沈没したら死は免れない。
リュウヤは完全に自分は死んだと思い込み、おばさんに訊く。
するとおばさんは、変な質問を投げかけるリュウヤを見て「は?」と言いながら口を開けた。
「何寝ぼけた事言ってんだいアンタ」
「……はっ!それより皆は!」
リュウヤは一緒に投げ出された荷物や船の事よりも先に、仲間を探しに、嫌な意味で騒がしいビーチの方へ走る。
そこにはアイズキューラ号だったものと、追突してきた船だったものの残骸があり、そしてその奥には乗客達の荷物が入っているであろう木箱やキャリアケースのようなものが、辛うじて残っていた船の残骸の上に綺麗に乗っていた。
そして、その周りには乗組員や乗客が横たわっている。勿論、その中にはリュウヤがイチゴをサービスした少女と、その母親も居た。
「あれは!嬢ちゃん!お母さん!しっかりしてください!」
リュウヤは歩き辛い砂に足を引っ張られながらも、無理矢理体を動かして少女のもとへ向かった。
脈も息もちゃんとある。生きているようだ。リュウヤはホッと胸を撫で下ろした。
するとその少女は、リュウヤの声に気付いたのか、体を起こす。
「あれ……生きてる……」
しかも、次第に倒れていた人達が身体を起こした。辺りから、何故自分が生きているのか、そう疑問に思う声が上がる。
「うわぁ!み、皆生き返ったぞ!!」
「ぞ、ゾンビか!?」
人が倒れてると聞きつけてきた地元の人々は、起き上がった人々を見て驚く。
確かにこの感じは何処かのゾンビ映画を彷彿とさせる。リュウヤは心のどこかで、彼らの言っている事を理解した。
︎
「てな事があってよ、船の中にあった備品も無事で、俺らの荷物も命も無事だったんだ」
リュウヤは眠っていたタクマを歓迎するように、なくしていた筈の鞄を渡した。
中には、しっかりとオーブやアルゴ王から貰った服などが全て入っている。
誰があんな絶望的な状況から救ってくれたかは分からないが、今度会った時は必ずお礼を言っておかないと。
「ん~、氷がフワフワで美味しいのじゃ~」
「体を冷やすのには最適なデザート……うっ!」
「ハッハッハ!キーンと来たか!」
リュウヤは大きな声で、痛そうに頭を抑え出したノエルを笑う。
「もう、リュウヤさんったら」
「やはり、生きていると言うのは素晴らしいでござるな」
6人でそう話をしていた時、タクマはその後ろをウロウロしている怪しい恰幅の良い中年の男を見つけた。
しかも、何故かこちらに近付いてきている。
するとその瞬間、中年の男は、偶然頭を上げたノエルと目を合わせた。
「あ……」
だんだんとノエルの顔から血が抜けていき、白くなる。
そして、ノエルの顔を見た中年の男は「これだぁぁぁぁ!!」といきなり叫び出した。
「じょ、嬢ちゃん!いいもの沢山あげるから、おじさんと一緒に来てくれない?」
中年の男は、ノエルの手を取り、息を荒げながら誘った。
いやうん、これはもしかしなくとも不審者の誘拐文句だ。タクマは、すぐにノエルをリュウヤ達の後ろに隠し「何だお前は」と訊いた。
だが、中年の男は、立ち向かうように仁王立ちをするタクマを無視して、ノエルの方へと近付く。
「ちょ、やめてください!」
「ノエちゃんが困っているでありんしょうが!」
おタツは背中の方から苦無やドスを取り出し、中年の男に向けた。これ以上近付いたら叩っ斬る。そう目で訴えながら、ドスをじわじわと近付ける。
「くぅ……折角のオープニングアイドル候補が……」
「あい?何の話じゃ?」
メアは短剣を怪しい男に突きつけながら、中年の男が放った独り言の意味を訊く。
すると男は、メア達の後ろを指差し「何だあれ!」と叫んだ。
「な、何じゃ?」「何があるでありんすか?」「む?」
男の表情からして、魔物が来た様子と似ている。そう思い、全員後ろを振り返る。
だが、そこにはアイズキューラ号の残骸があるだけで、魔物の姿はなかった。
「キャァッ!タクマさん!」
ノエルの悲鳴が聞こえてきた。そう、タクマ達はまんまと子供騙しに引っかかってしまったのだ。
タクマはすぐに振り返ったが、中年の男は既に豆粒大の大きさに見えるくらい遠い場所まで逃げていた。
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