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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第79話 剣崎流3分クッキング 〜イカの和食〜

「へいお待ち!イカソーメンにイカ天!たこ焼きならぬイカ焼き!そしてイカと猪肉の焼きそばだぁ!!」

 リュウヤは己の料理パワーをフル出力にし、採取したイカゲソから大量のイカ料理を作り出す。
 油の中に、小麦粉を浸したイカを慎重に入れ、たこ焼き器のようなものも回し、鉄板の上で、そばもかき混ぜる。そして更にはイカ足を食べやすいサイズに切る。
 その動きはまさしく、リュウヤが6人に分身して料理をしているかのよう。

「うめぇ!こんなうめぇモン初めて食うぞ!」
「兄さん、朝飯全部出たからって食べ過ぎだよ……」
「そう言ってるお前は、そのイカソーメン何杯目だ」

 ブレイクは口にイカ入り焼きそばを詰め込み、メイジュの横に置かれた山盛りのイカソーメンを見ながら言う。
 吾郎やタクマ達も、そんな兄弟のやりとりを笑いながら、イカ焼きやイカ天を口に入れる。

「あんなに大きなイカの足が、こんなに美味しくなるとはのぅ」
「なかなか食べ応えがあって、クセになりますね」
 
 メアとノエルは、イカ焼きとイカ天の食べ比べをしながらそう話す。

「剣崎流の和食は素晴らしく美味でござるな」
「あたぼうよぉ!まだゲソは大量にある!好きなだけ食いやがれぇ!」

 その叫びと共に、リュウヤの動きが早くなり、だんだんとイカ天やイカ焼きそばが山のように積み上がっていく。

「うわぁ美味しい!」「猪肉も、調理次第ではこんなに美味く出来るものなんだなぁ」「外はカリカリで中はトロトロ!クセになるがや!」

 他の乗客達も、リュウヤが無料で作りまくるイカ料理を頬張る。そして、口々にその天にも昇るような料理の感想を言う。
 そして、船員やシェフ、バーのマスターなどの乗組員達も、イカ料理を食べる。

「無駄のないこの味、絶妙な塩加減、ヘルシーな油、一体何をしたらこんなに美味しいものが出来るのだ!」
「これは世界中で流行るでありんすな」
「あぁ、これは流行らない筈がない。」

 タクマは銀のフォークに刺したイカ焼きを食べ、おタツと話す。


 それから数時間後、乗客や乗組員、吾郎の胃袋にも好評だったようで、太さ約2メートル、長さ6メートルくらいはあった巨大ゲソで作った和食は、綺麗に皿からなくなった。

「ねぇお兄ちゃん、イカ……もうないの?」

 極上の料理に満足して、乗客達が帰っていく中、一人の少女がリュウヤに訊く。
 リュウヤは、その少女に「ない」と伝えて悲しませるのも悪いと思い、答えに困る。
 するとそこに、その子の母親であろう女性が走ってきた。

「ハナちゃん、ダメでしょワガママ言っちゃ!」

 女性は少女を自分の後ろに下げ、頭を下げる。

「ごめんなさい、うちの子が」
「あーいや、その、俺は大丈夫です」

 リュウヤは答えに困りながらも、女性に頭を上げるよう言う。
 そして、荷物から植木鉢を取り出し、少女の方へ向かった。

「悪ぃな嬢ちゃん、もうイカは食われちまった」
「そんな……」

 少女はその事実を認められず、涙を流す。
 リュウヤは、一瞬だけ少女が泣いた事に焦るが、すぐに咳払いで落ち着きを取り戻した。

「だから、お詫びにいいものを見せてやる」

 そう言うとリュウヤはポケットから種を取り出し、それを植木鉢に埋める。
 そして、そこに 《ラピッド》を唱え、成長を促進させた。

「うわぁ、何これ!」

 少女は、今目の前で起きているマジックに似たパフォーマンスに釘付けになる。

「どうだい、面白いだろ?」

 リュウヤは、倍速で成長していく植物に興味津々な少女に言う。
 そして、完全に実ったイチゴをもぎ取り、少女に渡した。

「大きくなれよ」
「ありがとうお兄ちゃん!」

 少女はリュウヤにお礼を言い、出来立てのイチゴにかぶりつく。

「ラピッドも使いこなせて、料理も上手いとはね」
「何でこんなすげぇダチを紹介してくんなかったんだよぉ!水臭ぇぞタクマ!」

 ブレイクはリュウヤのような素晴らしい友を持つタクマを羨ましがり、肘で2度突く。
 タクマはその肘突きを食いながら、えへへと頭の裏を掻く。

「喜んでたでありんすね、お前様」
「やはり子供の笑顔には、拙者達には分からぬパワーが秘められているでござるな」
「だな」

 リュウヤは少女に手を振り返しながら、自分で育てたイチゴを食べる。
 するとそこに、さっき帰っていった筈のシェフが一人やってきた。

「あー、どうされました?」

 リュウヤはやってきたシェフに訊ねる。だが、シェフは何も答えずにじっとリュウヤを見つめるだけ。
 リュウヤはシェフから来る謎の圧に押されながらも、食器やらを風呂敷に入れて片付ける。

「何なんでしょうか、あの人」
「さぁ……」

 謎のシェフを警戒して訊くノエルに、タクマは首を傾げながら答える。
 するとそのシェフはいきなりリュウヤの方に頭を下げ「私達に料理を教えてください!」と叫んだ。

「え、いいよ」

 リュウヤは即答した。
 それを聞いたシェフは、その返答に喜びの声を上げる。

「ほぉ、弟子入りじゃったか」
「これでまた、和食が広がったな。おめっとさん」

 タクマは腕を組み、リュウヤに弟子第1号が生まれた事を祝福した。
 するとその時、シェフはデッキ入り口の方へ「師匠の許可が降りたぞー!」と叫ぶ。そして、それを聞きつけた10人のシェフ達が走ってきた。

「へ?」
「それでは行きますよ!我々の調理デッキへ!」

 そう言うとシェフ達は「ヨーソロー!」と掛け声を上げながら、リュウヤを持ち上げた。

「ちょと待って!教えるけど何もそこまで……」
「遠慮はいりません!私達が責任を持ってお連れいたします!」
「タクマ!メアちゃんでもノエちゃんでもいいから助けて〜!!」

 だが、リュウヤの叫びはタクマ達に届く事はなく、リュウヤはそのまま調理デッキへと連れて行かれてしまった。

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