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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第66話 魅惑の泥棒猫

あれから数時間、タクマ達は迷いに迷い、新たな装備を新調した。
タクマはチェスターコートと中に着るボーダーシャツと、どこかの天才物理学者を彷彿とさせる服。
ノエルは前回買った黒猫の杖と、セーラー服を思わせる薄い上着に、薄ピンクのチュールスカート。
メアは返し付きの短剣と、メイド服のように見える黒い服を購入した。

「ありがとうございやした〜!!」
「それにしても、こんなに買い物してチケット代大丈夫なんですか?」

ノエルは早速買って着替えた服や新しい杖を見ながら、タクマに訊ねる。
するとタクマは鞄からチケットホルダーらしきものを取り出して「ちゃんとクエスト行く前に買っといたから安心だ」と言い、それをノエルに見せた。

「まだ出航日まで2日もあると言うのに、仕事が早いのぅ」
「とりあえず主軸の目標は必ず為しとかなきゃ、いざって時使いすぎてギリギリ買えないとかだったら悲しいだろ?」
「まぁ確かに、言われてみればそうじゃな」

メアとタクマがそんな話をしていると、ノエルはタクマのコートの袖を引っ張った。

「どしたノエル」
「そういえば、リュウヤさん達は何処に行ったんですか?」

ノエルは辺りを見回しながら、タクマに訊ねる。
そういえば「来たばっかで買い替える必要ないから」って言って店前で分かれたっきり、リュウヤの姿を見ない。
タクマもメアも、武器屋の前から居ないか探す。
すると、その300メートル先くらいにあった雑貨屋からリュウヤが出てくるのを見つけた。

「リュウヤ!」

タクマは手を振りながら、リュウヤの方へと向かって行った。
そして、その声に気付いたリュウヤ達も、こちらに向かってくる。

「すまんすまん、ちょっと足りない調理器具とかを買いに行ってた」

再開してすぐ、リュウヤはまるで「いいもん見つけた!」と言わんばかりに、紙袋から折畳式のフライパンを取り出して見せる。
その他にも、バターらしきものや、芋などの食材も取り出して見せた。

「今日のメニューは肉じゃがにしようかなってさ、今日の夜にもクエスト行くだろ?」
「あぁ、ちょうど新しい武器も買った事だし、そうするつもりだ」
「いやしかし、夜は物の怪が活発になる刻でござる。大丈夫なんでござるか?」

肩を回して凝りをほぐす吾郎は、その事について訊ねる。
しかしそれに対してノエルは、「皆でエンヴォスとその部下を倒せたんです、だからきっと大丈夫ですよ!」と自信満々に答えた。
時刻はもう既に3時を過ぎている。そろそろ夜の部のクエストを探さないと。

「さて、ひと段落ついたしクエスト見に行こっか」
「うむ」

タクマは手のホコリを取るようにパンパンと叩き、6人でギルドへと向かって行った。


【ガルキュイギルド クエストボード】
「やっぱり吾郎爺の言う通り、夜になると強そうなのしか無いな……」
「バジリスク達とは格の違いそうなのが多いでありんすなぁ」

おタツとリュウヤ、その他の四人は、とにかく夜のクエストの中でも、自分達のレベルに合っているものを探す。
しかし何処を見ても「ドラゴン討伐」やら「リヴァイアサン討伐」など、ボス級のクエストしかなかった。

「やっぱりそう簡単には見つかりませんね、私達に合ってるクエスト」
「いや、そうとは限らないみたいじゃぞ?」

メアはじっと、クエスト用紙の後ろに隠れたクエストをめくって見つめる。

「白い腕30体掃討、報酬3000ゼルンですか」
「これなら、妾の霊歌を使えばすぐ見つけられるし簡単じゃろうと思うてな」
「よし、じゃあコイツは確定だな」

タクマはそう言い、そのクエスト用紙を取った。
そしてリュウヤの方も何か決まったのか、リュウヤ達も見せてきた。

「ちょうど肉のストックも欲しいからさ、こんなのをね」

そう言って見せた紙には「岩石猪5体の討伐、5000ゼルン」と書かれていた。
しかし、それとリュウヤの「肉が欲しい」といった発言に、メアは驚く。

「こ、コイツを食べるのか……?」
「もしかしてメアちゃん、豚肉嫌い?」

リュウヤはクエスト用紙を剥がしながらメアに訊く。
それに対してメアは「嫌いではないが、こやつは石じゃぞ?」と答えた。

「大丈夫、毒味役は俺がやるから、変なものは食わせないよ」

リュウヤは笑顔でメアの肩を二回叩き、安心させるように言う。
そしてそのクエストを受け取ったタクマは、「じゃあ申請してくる」と言い、受付へ行こうとする。
しかし、向かっていざ出そうと言ったたいみんぐと同時に「ごめ〜ん!どいて〜!」と、可愛らしい声が近付いてきた。
そしてドン!と、タクマは急いで走ってきた女性とぶつかり倒れてしまった。

「イテテ……」
「あーめんごめんご〜、大丈夫?」
「はい……なんと……か……」

タクマは顔を上げたと同時に、その女性の姿を見て顔を真っ赤にした。
髪はツインテールのピンク、詳しくはいえないが露出度の高い服、そして心を蝕むように甘い香りがする香水。まさに男を射抜く為に集めた武器全てを兼ね備えたスーパーレディ。
特に、純粋すぎるタクマからすれば効果抜群である。

「それじゃあね、美味しそうなボウヤ」

謎の女性はタクマに囁くように言い、先にクエストの申請をした。
そんな中、タクマはまだ顔を赤くしてフリーズする。

「大丈夫でござるか、タクマ殿」
「なんて……美しい……」

タクマは吾郎の声が聞こえていないのか、ただじっと彼女の事を見つめて呟く。
それに嫌な気になったのか、メアは口をフグのように膨らませて「この泥棒猫め」と小さく言う。

「メアさん、何か言いましたか?」
「な、なんでもない!」

メアは焦りながら顔を背ける。
そして彼女が居なくなってから、タクマは魔法が解けたかのように意識を取り戻す。

「あれ、俺は一体何を……?」
「気が付いたでありんすな、タクマさん」
「あぁ、ありがとうございます」

タクマは差し伸べてくれたおタツの手を取り、何とか立ち上がる。
そして、その後ろで顔を真っ赤にしてフグのように頬を膨らませたメアを見て「どうした?」と訊ねた。
しかしメアは、タクマに顔を合わせてすぐに「フンッ」と言いながら顔を背けた。
何でそんなツンとした態度を取るのか、タクマには理解できない。
しかし考えていたら時間が過ぎてしまう。
そのためタクマは、すぐに二枚のクエストを申請しに行ったのだった。

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